「怪我の功名」とは、過失が偶然によい結果をもたらすこと、また、何気なくしたことが偶然よい結果をもたらすことのたとえ。「怪我」は過ちから受ける損失、「功名」は手柄を立てて名をあげること。「功名」は古く「高名」。「過ちの功名」「怪我の頓作」とも。「こうみょう」を「巧妙」「光明」と表記するのは誤りです。
「怪我の功名」の読み方は「けがのこうみょう」です。 「怪我の功名」は古くは「怪我の高名」と表記しました。 現在では「こうみょう」を「高名」とするのは誤りです。
「怪我の功名」の意味は「過失や災難と思ったことが、偶然に良い結果をもたらすこと」です。 病気や怪我、仕事での大失敗、日常の小さなミスなど様々なネガティブなことに対して使うことができます。 それらから好結果を得ることを表します。 例えば、大学受験に失敗をしてしまったことによって、大学生にはなれなかった人が起業をして成功した場合、受験に失敗したことで起業家として成功できたわけなので「怪我の功名」となります。 また「何気なく行ったことが意外と良い結果になること」といった意味もあります。 ちなみに、失敗から輝かしい明るい未来が見えるという意味で「怪我の光明」としたり、きわめてたくみなことを意味する「巧妙」を使い「怪我の巧妙」とするのは誤用です。
「怪我の功名」の例文
「怪我の功名」は、過失や災難だと思っていたことから意外にも好結果を得る、といった故事成語などではなく「怪我」という言葉の比喩から出来たことわざです。 「怪我」は実際に負傷をしたことだけを表しているのではありません。 「けが」を「怪我」とするのは当て字で、元々は「穢れる(けがれる)」のことで「誤ること、偶然負傷してしまったこと」といった意味を持ちます。 そのため、怪我以外の不測の事態やふとした過ちを表します。
「怪我の功名」は人を励ますときに使います。 誰かが失敗した時や災難があった時に、「失敗から幸運を得ることもあるよ」「良い結果もたらすこともあるよ」といった意味で使います。 また「ミスがあったおかげでチームワークが深まった、まさに怪我の功名だね」など、失敗した人を慰めたりもします。 苦しい状況の中、希望を見出すようなシチュエーションで使います。
「怪我の功名」の例文
「災い転じて福となす」ということわざがあります。 意味は「災難がふりかかった際に、あえてそれを活用して幸せになるように取り計らうこと」です。 失敗したことなどを逆に自分の有利になるよう工夫することを指します。 「怪我の功名」は災難から偶然に良い結果が生まれることですが、「災い転じて福となす」は災難が良い結果になるよう自ら工夫することを指します。
「不幸中の幸い」は「ふこうちゅうのさいわい」と読みます。 意味は「不幸な出来事の中で、いくらか救いとなる良い面」です。 気の毒な出来事が起きても、せめてもの慰めとなるような良い事柄を表します。「出来たら起きない方が嬉しかったけど、まだ良い方だ」というニュアンスになります。 「不幸中の幸い」は、運の良さや幸運に恵まれていることを表す語です。 「怪我の功名」は災難があったことで本当に良いことを表しますが、「不幸中の幸い」は災難なことの中でもまだ良いと思えることを指します。
「失敗からよい結果が生まれる」という意味の類語は、
などがあります。 「雨降って地固まる」の意味は「いざこざやアクシデントの後は、かえって前よりも良い状態になること」です。 悪い出来事やゴタゴタが起こった後は、前より基礎が固まって事態が良くなること・結束力が強くなることを表します。 「禍も三年経てば用に立つ」の意味は「災難も時が経てば、何かの役に立ったり幸いの糸口になる」です。 どんなものであっても不用なものはないということのたとえです。
「思いもよらずよい結果がもたらされる」「結果の予測はできない」という意味の類語は、
などです。 「棚からぼたもち」の意味は「思いがけない幸運が転がり込むこと」です。 苦労をせずに、良いものを得るたとえとして使われています。 「人間万事塞翁が馬」の意味は「人生の禍福は最後まで予測できない」という意味です。 良い意味でも、悪い意味でも使われます。
「藪をつついて蛇を出す」は「やぶをつついてへびをだす」と読みます。 意味は「不要な事をして、災いを受けること」です。 わざわざ藪をつついて蛇を追い出そうとすることでその蛇に噛まれてしまうことから、余計なことをして災いを招いたり危険を増やすことです。 しなくて良いことをしたことで、状況を悪化させることを表して使います。
「油断大敵」は「ゆだんたいてき」と読みます。 意味は「少しでも気を抜くと思わぬ失敗を招く」です。 「油断」の意味は、「気を許して注意を怠ること」で、「大敵」は「打ち破りにくい相手・強敵」という意味です。 つまり、たいしたことではないだろうと、たかをくくって油断していると、失敗をしたり痛い思いをするということで、油断が最大の敵であるということを言い表した言葉です。
「lucky break」は「思いがけない幸運」という意味です。 「過失が偶然もたらすよい結果」という意味はありません。 「break」は「〜を壊す」「休憩」という意味ですが、ここでは「機会」という意味です。
What a lucky break!
怪我の功名だね。
「過失や失敗から偶然にもよい結果が生まれる」という意味の英語は「happy accident」です。 「happy」の代わりに「lucky」「fortunate」を使ってもOKです。 「accident」の代わりに「error」「mistake」を使うこともできます。
The college's failure created the happy accident of starting my own company.
怪我の功名で、大学でうまくいかなかったので、起業することができました。
「まぐれ」を意味する英語に「fluke」があります。
She is trying to prove that her success is not a fluke.
彼女は自分の成功が怪我の功名ではないことを証明しようとしている。
「怪我の功名」の英訳として「come out smelling like a rose」が紹介される場合がありますが、この英語はその意味ではありません。 「come out smelling like a rose」は直訳すると「薔薇の香りを放って抜け出す」です。 これは「厳しい状況の中、危機を回避して上手く切り抜ける」という意味になります。
The scandal forced several board members to resign, but the CEO came out smelling like a rose.
スキャンダルで数人の取締役は辞任に追い込まれたが、CEOはうまく切り抜けた。
「怪我の功名(けがのこうみょう)」とは、失敗や過失、または何気なくしたことなどが、偶然によい結果をもたらすことのたとえです。