「鶏口牛後(けいこうぎゅうご)」とは「たとえ小さな集団でも、その中のリーダーになる方が、大きな集団の末端になるよりはよい」という意味の四字熟語です。「寧(むし)ろ鶏口と為(な)るも、牛後と為る無なかれ」の略です。「鶏口」はニワトリの口ばし、「牛後」は牛のお尻を指します。まさに「長いものには巻かれろ」の反対語に該当します。
「鶏口牛後」の読み方は「けいこうぎゅうご」です。 「鶏口牛後」の意味は「小さな集団であってもその中の長(トップやリーダー)になる方が、大きな集団の末端になるより良い」です。 「鶏口」とは「鶏のくちばし」のことで、「弱小なものの首長」のたとえとして使われています。 「牛後」とは「牛のお尻・尻尾」のことで、「強大な者に仕えて使われる者」のたとえとして使われています。
「鶏口牛後」の言葉が出来た由来は、中国戦国時代に遊説家(ゆうぜいか)の蘇秦(そしん)が韓の恵宣王(けいせんおう)に 「たとえ小さな国であっても一国の王として権威を保つことの方が大切であり、大国の秦(しん)に屈しその臣下に成り下がるよりも良い」ということを説いた時に用いたたとえです。 このことは歴史書『史記』に記載されており、原文は寧為鶏口、無為牛後です。 直訳は「寧ろ鶏口と為るとも(むしろけいこうとなるとも)、牛後と為ること無かれ(ぎゅうごとなることなかれ)」です。 そして、蘇秦が韓のほかに魏(ぎ)、趙(ちょう)、燕(えん)、斉(せい)、楚(そ)の六国に合従策(同盟を組むこと)を説得し、恵宣王は六国の宰相になりました。秦は大きな国であったためこの六国に領地を要求していました。 結局この後には六国の同盟は消滅し秦に仕えることとなりますが、同名を組んでから15年の間は、秦が他国を侵略することはありませんでした。
「鶏口牛後」は主に仕事について使うことが多いです。 大企業の下っ端として働くよりも、中小企業で自分の実力を発揮して役職をもらったり大きな仕事を任されたりすることの方がいいなと思った際に「鶏口牛後」を使います。 アスリートなどでも、大きく強いチームで補欠でいるより小さいチームでも一線で活躍したいと思う人もいますよね。 そのために移籍したり国籍を移したりする人もいます。これを「鶏口牛後」と言います。 ちなみに「鶏口」は「鶏のくちばし」を表し、これは「先端=先頭」となります。 小さなものの先頭ですので、「小さな集団の長」といった意味以外はありません。 また「鶏口牛後」を「鶏頭牛尾」とするのはよくある誤記なので注意しましょう。 「鶏口となるとも牛後となるなかれ」の形で使うことも多いです。
例文
「鶏口牛後」の類語には
などがあります。 「鯛の尾より鰯の頭」と「大鳥の尾より小鳥の頭」は、「鶏口牛後」と同じ意味で「大きな集団や組織の下っ端よりも、小さな組織のリーダーやトップの方がいい」ということを表します。 「芋頭でも頭は頭」は「どんなに小さな集団の長でも、長には変わりはない」ということを表します。 ちなみに「芋頭」とは里芋の球茎・親芋のことです。
「鶏口牛後」の対義語には
があります。 「寄らば大樹の陰」の意味は「頼りにするなら、勢力のある者の方が良いということ」です。 これは、雨宿りをするなら大木の下の方が濡れないでいられることから転じています。 「犬になるなら大家の犬になれ」の意味は「仕えるなら頼りがいのある大物を選んだ方がいい」です。 「長いものには巻かれろ」の意味は「強い権力や勢力を持つ者には敵対せずに従っておいた方がいい」です。 これらは処世術を表した言い回しになっています。
「鶏口牛後」という日本語に非常に近い英語表現があります。それは、 Better be the head of a dog than the tail of a lion. です。 直訳すると「ライオンの尻尾になるより、犬の頭になった方がよい」です。 「鶏口牛後」に非常に似ていますね。
いかがだったでしょうか? 「鶏口牛後」について理解出来たでしょうか? ✔読み方は「けいこうぎゅうご」 ✔意味は「小さな集団であってもその中の長になる方が、大きな集団の末端になるより良い」 ✔由来は中国戦国時代に遊説家の蘇秦が韓の恵宣王に説いたもの