「恐れながら」 の意味は「無礼で恐れ多いとは思うが」です。「恐れながら申し上げます」など耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。今回は「恐れながら」の意味と使い方を例文付きで紹介します。「恐れながら」のビジネスでの使い方や英語表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「恐れながら」は「おそれながら」と読みます。 「恐れながら」 の意味は「無礼で恐れ多いとは思うが」です。 この場合の「恐れ」は「かしこまること」「敬意」です。 「恐怖」や「よくないことが起こるのではないかという心配・不安」という意味ではありません。 「ながら」は、「〜にもかかわらず」「ではあるが」という意味で使用されています。
「恐れながら申し上げます」は時代劇などで使用されます。 「恐れながら申し上げます」は、「恐れながら」に「申し上げます」という敬語表現を続けた言葉です。 「申し上げます」は「申し上げる」に丁寧語の「ます」をつけた敬語表現で、「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。 したがって、「恐れながら申し上げます」は「無礼で恐れ多いですが言わせてもらいます」という意味になります。 相手に何か依頼をしたり、自分の願いを書くような手紙の定型文として「恐れながら申し上げます」が使用されています。 古文でも、下位の者が上位の者に何かを訴えかけたり、願いを伝える場面で「乍恐以書付奉願上候」(恐れながら書付けを以て願い上げ奉り候)という文言がよく出てきます。
「恐れながら」は、「恐れながらと」の形で副詞的に使うこともできます。 例えば、「恐れながらと○○をする」という使い方です。 「恐れながら○○をする」で、「恐縮しながら○○をする」という意味になります。
「恐れながら」は、「恐れながら○○をしていただけないでしょうか」というように、ビジネスシーンで相手に何か依頼をするときのクッション言葉として使用されます。 クッション言葉とは、相手に何かを依頼したり、お断りをする場合などに言葉の前に添えて使用する言葉のことです。 クッション言葉を使用することで直接的な表現をさせることができ、丁寧で柔らかい印象を与えることができます。
例文
「恐れながら」は、目上の人が言ったことに対して反論を述べるときのクッション言葉にもなります。 目上の人が「AはBだと思う」という意見を述べたときに、「それは違います」とストレートに反論すると角が立ちますが、「恐れながら」を使用して自分をへりくだることで柔らかく伝えることができます。 「恐れながら、○○だと思われます」や、「恐れながら申し上げます。○○の件については〜」という使い方をします。
例文
「恐れながら」を使用することで、「無礼で恐れ多いと思っている」という気持ちを伝えることができるので、相手からの提案や依頼を断る場面でも使用することができます。 例えば仕事の依頼を受けたときに、スケジュールの関係上都合がつかず依頼を受けることができないというときに「恐れながら、スケジュールの関係上お受けいたしかねます。お力になれず大変申し訳ありません」というように使用します。
例文
「恐れながら」の「ながら」は漢字で表記すると「乍ら」となります。 「乍」は、音読みで「サ」、訓読みで「ながら・たちまち」と読む漢字です。 「恐れ乍ら」と漢字で表記しても間違いではありませんが、「恐れながら」と表記されるのが一般的です。 ビジネスメールなど文書で使用するときは「恐れながら」と表記しましょう。
「おそれる」の漢字には「恐れる」の他に「畏れる」があります。 「畏れる(おそれる)」は、「敬いもったいなく感じること」という意味で、神仏や自然などを敬いその前で礼儀を失わないように控えめにするときに使用されます。 例えば「神に畏れながら〜」という使い方です。 ビジネスシーンでは「恐れながら」が正しい漢字表記になります。
「恐縮ですが」は「きょうしゅくですが」と読みます。 「恐縮」の意味は「身もちぢまるほどに恐れ入ること。相手に迷惑をかけたり、厚意を受けたりして申し訳なく思うこと」です。 相手からの自分に対する厚意を「自分には勿体ないと恐れ入ること」を「恐縮する」といいます。 「恐縮ですが」とすると、「恐れ多いのですが...」という謙遜した気持ちを言い表すクッション言葉になります。 相手に何か依頼をするときや、相手からの依頼を断ったり、了承を得たい場合に使用されます。 「恐れながら」と言い換えることが可能です。
「恐れ入りますが」は「おそれいりますが」と読みます。 「恐れ入る」の意味は、「自分の悪かったことについて申し訳なく思う」「相手の厚意にたいして恐縮する」です。 「恐れ入りますが」とすると、相手に依頼やお願いをするときに「申し訳ないですが」と同じように謙虚な気持ちや相手に対して恐縮した思いを表現するクッション言葉になります。 「恐れ入りますが」も「恐れながら」と言い換えることが可能です。
「僭越ながら」は「せんえつながら」と読みます。 「僭越」には「自分の身分・地位をこえて出過ぎたことをすること」「そういう態度」「でしゃばり」という意味があります。 「僭越ながら」で、「身の程をわきまえず、失礼ながら」「失礼を承知の上で、出過ぎたことをいたしますが」という意味になります。 「僭越ながら」は、出過ぎた行動をするときや、意見を伝える場合に「申し訳ありませんが」といった意味合いで使います。例えば、「僭越ながらお話させてください」と言った場合は、「自分のような者が出過ぎた真似をして申し訳ありませんが、お話をさせてください」という意味になります。 「恐れながら」とは異なり、依頼をするときのクッション言葉として使用することはできないので注意してください。
「失礼ながら」は「しつれいながら」と読みます。 「失礼」は「他人に接する際の礼儀や作法の心得をわきまえていないこと」を意味しています。 「失礼ながら」は、相手に対して礼儀を欠くようなことをしてしまうときのクッション言葉として使用されます。 例えば目上の人に何か意見を申し出るときや、依頼をするときです。 ただし、「恐れながら」や「恐縮ですが」のほうが堅い表現であり、ビジネスシーンなどかしこまった場面で使用するには「恐れながら」や「恐縮ですが」のほうが使用されます。
「謹んで」は「つつしんで」と読みます。 「謹んで」の意味は「うやまって。かしこまって。恭しく」です。 「かしこまって〜する」という意味で、敬意を示して礼儀正しく物事をするさまを表します。 「謹んでお礼を申し上げる」や「謹んでお詫びを申し上げる」というように、礼儀正しくかしこまるさまを言い表すのが「謹んで」です。 「無礼で恐れ多いと思う」という意味の「恐れながら」とは意味が異なりますが、「謹んで辞退させていただきます」など断らなければいけない場面で言い換えることができる場合があります。 例えば、依頼をされたときに「自分には相応しくないので(実力不足なので)断ると」いう場合には「謹んで辞退させていただきます」ということができます。
「憚りながら」は「はばかりながら」と読みます。 「憚る」は、「差し障りがあることとしてつつしむ・遠慮する」という意味のある言葉です。 「憚りながら」で、相手に対する自分の低姿勢さを表現するクッション用語になります。 例えば、上司など目上の人に何か意見をするような場面で「憚りながら申し上げます 」という使い方をします。 この場合は、「私が意見を言わせてもらうのは恐れ多いのですが」というニュアンスになります。 また、「恐れながら」と同じように依頼をするときにも使用することができます。
「他事ながら」は「たじながら」と読みます。 「他事」の意味は「相手には関係のないこと」「よそごと」という意味です。 「他事ながら」で、「あなたには関係のないことですが」という意味になります。 例えば、手紙などで自分のことを述べるときに「他事ながら〜」と文頭で使用します。 「恐れながら」のように「恐れ多い」という意味はありません。
依頼する際に使う「恐縮ですが」は英語で表すと、
などになります。
I'd like you to deal with that problem if you don't mind.
恐れながら、その問題を対処してほしいです。