「謹んで」という言葉をご存知でしょうか。「謹んでお悔やみ申し上げます」「謹んで新年のお慶びを申し上げます」などと使います。主に「謹んで〜する」という形で用います。「謹んで」は何か改まった場面や、書面においてなどと、様々な状況において使うことができます。日常会話ではほとんど使うことはありませんが、ビジネスシーンでは頻繁に使われています。なんとなく堅苦しい感じがしますが、一体どういう意味なのでしょうか。難しい感じがしますが、意味を覚えておけばすぐにでも使えます。そこで今回は「謹んで」の意味や使い方、「慎んで・甘んじて」との違い、類語について解説していきます。「謹んで」を正しく知って、上手く使えるようにしましょう!
「謹んで」は<つつしんで>と読みます。 「つつしんで」の送り仮名は「謹しんで」ではなく「謹んで」ですので注意しましょう。
「謹んで」の意味は「うやまって。かしこまって。恭しく」です。 「かしこまって〜する」という意味で、敬意を示して礼儀正しく物事をするさまを表します。 「謹」という漢字は、「行動に注意してかしこまる」「相手に対して敬う気持ちを表す語」を意味します。 「謹」を用いた言葉には、「謹慎」「謹厚」「謹賀」「謹啓」「謹呈」などがあります。 「謹んで」は動詞「謹む」+助詞「で」で成り立っています。 「謹む」は「礼儀正しくかしこまるさま」、「で」は「状況や状態」を表します。
使い方を使用シーンごとに説明していきます。
ビジネスシーンにおいて、大きなミスやトラブルになってしまう場面は多くあります。 そういった時に、「申し訳ございません」や「お詫び申し上げます」などと言っても問題ありませんが、より丁寧にした表現が「謹んでお詫び申し上げます」です。 謝罪する場面で「謹んでお詫び申し上げます」と言うことによって、深く反省している様子を示すことができます。 企業で不祥事があった時に開かれる記者会見でも、「謹んでお詫び申し上げます」というフレーズが多く使われています。
例文
「謹んで」はお悔やみのシーンで使うことが最も多いでしょう。 お悔やみにおいては、「謹んでお悔やみ申しあげます」という表現をよく使います。葬儀の際に使われる言葉で、”謙虚に申し上げる”という意味を含んでいます。 「お悔やみ申し上げます」のみでも十分丁寧ですが、「謹んで」を使うことによって、相手に敬意を示し謙虚な姿勢で物事を伝えることができます。 他にも、「謹んで哀悼の意を表します」「謹んでご冥福をお祈りいたします」などを使います。 「謹んで〜」は遺族に直接向けて言う場合の他に、弔電でも使用できる表現です。 ただ、少々堅い表現ということもあり、弔電の文面で使うことが多いです。 口頭では「謹んで」よりも「心からお悔やみ申し上げます」「心よりお悔やみ申し上げます」を使うのが良いでしょう。
例文
単なる報告もあれば、参加、辞退、用件を受領するときなども「謹んで」を使うことができます。 報告をする場合は「謹んでご報告いたします」「謹んでご報告させていただきます」という形で使います。 何か自分にとって良い報告だったり、賞をとったという場合に「謹んで〜」を付けます。 結婚式の招待状の返信でも「謹んで出席させていただきます」と使います。
例文
取引先や顧客から何か依頼があった場合は「謹んでお受けいたします」と言うことができます。 「ご依頼の件承りました」「ご依頼いただいた件お受けします」と言うよりも、丁寧で謙虚な姿勢を表せます。 ビジネスシーンでは、昇進・辞令・内定の知らせを受けた時に使うことが多いです。採用された時にも「ご採用いただいた旨、謹んでお受けいたします」と言えます。「謹んで」を使うことで、相手にも好印象を与えることができます。
また、依頼を受けたとしても断りたい場合は「謹んで辞退させていただきます」と使います。 ビジネスシーンでも、断らなければならないことは出てきます。 そういった場合に、「謹んで辞退(ご辞退)」を使うことができます。 辞退は、自分には相応しくないので(実力不足なので)断るといった意味で使われています。
「謹んで」は年賀状においても使うことができます。 よく使う表現としては「謹んで新年のお慶びを申し上げます」「謹んで新年のご挨拶を申し上げます」です。 ただ「新春のお慶びを申し上げます」「あけましておめでとうございます」でも丁寧ですが、「謹んで」を使うことで「新年を迎えた喜び」をかしこまって表現することができます。 これらをもっと簡単に言うと「謹賀新年」となります。「謹賀新年」は「謹んで新春のお慶び申し上げます」という意味です。 「謹賀新年」はだいたい1月1日(元旦)〜1月7日(松の内)までの間に使うことができます。 「謹賀新年」は「あけましておめでとうございます」と同義なので、どちらか一つを使うようにしましょう。 寒中見舞いや暑中見舞いにおいても、「謹んで」を使います。主に、「謹んでお見舞い申し上げます」といった形で用います。
例文
お祝い事や、喜ばしい報告を聞いたときに「謹んで」を使います。 「謹んでお祝いの言葉を申します」「お祝いの言葉を述べさせていただきます」などと言います。 「お二人の結婚を謹んでお祝い申し上げます」などと、結婚式のスピーチでも使われることも多いです。 結婚以外にも、昇進・合格・誕生日などという場面で用います。 「謹んで〜」と祝うことで、心から祝福している気持ちを込めることができます。
例文
依頼やお願いをする場合は「謹んでお願い申し上げます」「謹んでお願いいたします」を使います。 「お手数おかけしますが、お願いいたします」などでも失礼には当たりませんが、「謹んで」を付けることでよりかしこまった印象を与えることができます。 例えば、何かお願いする時に「お忙しいところ申し訳ありませんが、謹んでお願い申し上げます」などと言うと、謙虚な改まったイメージを受けますよね。 目上の人に何かを依頼する場合は、なるべく「謹んで」を使うように意識します。 ただ、「謹んで」は堅い表現なので、軽いお願いではなく、相手に少々頼みづらいことだったり、内容が重い依頼をするときに使うのが良いでしょう。
例文
「謹んで」は何か間違えたことや変更があった場合に、訂正をする時にも使うことができます。 訂正をすることで相手にも迷惑をかける場合があります。 ただ、「訂正します」というと失礼にあたることもありますので特にビジネスシーンでは「謹んで訂正いたします」などと使うと良いでしょう。 間違いやミスがあった場合は謝罪の言葉も付け加えるようにしましょう。
○例文
「謹んで」・・・「敬意を示して礼儀正しく物事をするさま」 「慎んで」・・・「相手に失礼のないよう、控えめに行動するさま」
「慎んで」は<つつしんで>と読みます。 「慎」は音読みで「シン」、訓読みで「つつしむ」と読みます。 「慎」は「抜けがないように気を配ること」を意味します。 「慎んで」の意味は、
です。 「謹んで」は「慎んで」と違い、相手に対して敬意を示しています。「謹んで」はそのまま「謹んで」と使いますが、「慎んで」は「慎む」という形で使うことが多いです。 例えば、「言動を慎む」「口を慎む」「身を慎む」などと使います。 このように、同じ「つつしんで」でも、意味が全く異なります。 敬意を払うべき相手に対する挨拶では、「謹んで」を使用するのが一般的です。 「謹んで」は「相手に対しての敬意」、「慎んで」は「自分自身に対しての注意」と覚えておきましょう!
○「慎む」を用いた例文
「謹んで」・・・「敬意を示して礼儀正しく物事をするさま」 「甘んじて」・・・「欠如しているものではあるが、仕方ないと思って受け入れること」
「甘んじる」は「与えられたものが不十分ではあっても、仕方ないと思い受けいれること」です。 「謹んで」と「甘んじて」は全く意味が異なります。 「甘んじて」は「納得していないが...」というニュアンスが込められます。「甘んじて受け入れる」という形でよく使います。 「甘んじて受け入れる」は「欠如している対応や境遇などを受け入れること」です。 「甘んじて」を言い換えると、「仕方なく受け入れる」「不本意ながら受け入れる」などとなります。 「謹んで」と「甘んじて」は音の響きは似ていますが、意味は異なるのでしっかりと使い分けできるようにしましょう。
○「甘んじて」を用いた例文
「謹んで」と言い換えて使える言葉なわけではありませんが、ビジネスシーンで「謹んで」のように礼儀正しい様子を表す言葉や、その言葉を使うことでかしこまった印象を与える言葉を紹介します。
意味:礼儀正しくて丁重なさま
「謝罪の言葉を述べながら恭しく頭を下げる」 「彼はいつも恭しく振る舞える素敵な人だ」
意味:恐れ多いが、かしこまって ※やや古い表現となっています
「畏みてお礼を言う」 「畏みて申し上げます」
意味:恐れ多いことではあるが お願いや依頼をするときや、断るときなどに用いられます。
「この度の件につきましては、恐れながら当社ではご対応しかねます」 「恐れながら至急ご対応いただけますようお願い申し上げます」
意味:身もちぢまるほどに恐れ入ること
「恐縮ながら、関係者以外にはお伝えいたしかねます」 「恐縮ながら、今回の件は辞退させていただきます」
意味:控え目で正直なこと
「社会人として、謙虚さと向上心は忘れてはならない」 「部長はいつも謙虚な態度で、一度も威張ったり命令したりしたことがない」
意味:遠慮する、気兼ねする
「言葉にするのも憚られますが、正直に言います」 「憚る必要はないよ、すべて話してもらえないかな」
意味:考慮するさま、遠慮しがちなさま
「いつも強気な彼も社長のいる会議ではとてもかしこまっていた」 「飲みの場でまで畏まることないよ、今日は無礼講だ」
意味:人として行なうべきことをしっかりとするさま
「どんな状況であっても、顧客相手には礼儀正しくいましょう」 「彼はいつも礼儀正しくて、惚れ惚れしてしまう」
意味:礼儀正しいさま
「彼は折り目正しいから信用できる」 「社会人は常に折り目正しく挨拶をすることが大切である」
意味:心を込めていて細やかなさま、親切で丁寧なこと
「相手を懇ろにお出迎えする」 「彼らは懇ろにもてなしてくれた」
「謹んで」という意味の日本語に一番近い英語は「respectfully」になります。 「respectfully」は「politely」と同義で、「丁寧に」という意味になります。
When he was asked if he had any plan to become the CEO, he respectfully declined to answered the question.
社長になる計画があるのか彼が尋ねられたとき、彼は丁寧に答えるの断った。
「respectfully」はこの例文のように使い、日本語の「謹んで」のようには使いません。 日本語の「謹んで」を英語表現する場合は、わざわざ訳す必要がありません。 「please」などを使い丁寧さを強調すれば問題ありません。
Please accept my sincere condolences.
謹んでお悔やみ申し上げます。
Please accept my sincere apologies.
謹んでお詫び申し上げます。
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「謹んで」について理解できたでしょうか? ✔︎「謹んで」は「つつしんで」と読む ✔︎「謹んで」は「『かしこまって〜する』という意味で、敬意を示して礼儀正しく物事をするさま」を意味 ✔︎「謹んでお悔やみ申し上げます」というように、お悔やみを言うときに使うことが多い ✔︎「謹んで」の類語には、「恭しく」「謙虚に」「かしこまって」などがある