「尽力いたします」は「あることのために、自分の持っている力をできる限り出す」という気持ちを伝える敬語表現で、面接や移動の挨拶などでもよく使用されます。今回は「尽力いたします」の意味や使い方を例文付きで解説します。また「尽力いたします」の類語表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「尽力」は「じんりょく」と読みます。 「尽」は音読みで「ジン」、「力」は音読みで「リョク」と読みます。 「盡力」と書くこともできますが、一般的に「尽力」と書きます。 「尽力」は「力をつくす」という意味です。 特に、他人のために骨を折ることをいい、”あることのために、自分の持っている力をできる限り出す”というイメージです。
「尽力いたします」の「いたす」は漢字にすると「致す」となります。 しかし、「尽力致します」と漢字にはしません。 「いたします(=いたす)」のひらがな表記は「補助動詞」であり、「致します(=致す)」の漢字表記は通常の動詞となっています。 他の動詞と付属して使用する補助動詞の「いたす」はひらがな表記で書くという決まりがあります。 「尽力いたします」の「いたす」は補助動詞として使用されているため、平仮名で表記するのが正しい表記です。
「尽力いたします」は、「尽力」に「する」の丁重語である「いたす」と丁寧語の「ます」をつけた敬語表現です。 丁重語は、謙譲語の一種で「謙譲語Ⅱ」ともいわれます。 丁重語とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用される敬語表現です。 例えば「昨日から弟の家で勉強をしております」の「おります」は、弟へ敬意を示しているのではなく話を聞いている人に敬意を示している「丁重語」です。 「尽力いたします」は、丁重語+丁重語であり、丁寧語のみの「尽力します」より丁寧な敬語表現であるといえます。
「ご尽力いたします」は、「尽力」に接頭語の「ご」をつけて、「する」の丁重語である「いたす」と丁寧語の「ます」を使用した敬語表現です。 尽力をするのは自分なので、「尽力」につく接頭語の語は「ご」は謙譲語です。 したがって、「ご尽力いたします」は謙譲語+丁重語+丁寧語で二重敬語ではなく正しい敬語表現です。 ただし接頭語の「ご」を謙譲語ではなく尊敬語として認識している人も多く、「ご尽力いたします」という表現に違和感を覚える人が多いです。 そのため、接頭語の「ご」は付けずに「尽力いたします」を使用するのが無難です。
「尽力いたします」は、「尽力する所存」「 尽力して参る」「尽力させていただく」に言い換えることが可能です。 「尽力する所存です」は「尽力する」に「思う」の謙譲語である「所存」と丁寧語の「です」をつけた敬語表現で、「力をつくそうと思います」という意味です。 「所存です」は、「思いを常に持ち続けている」「思いを常に持ち続けたい」といったニュアンスを持つため、自分の考えや思いを伝えるのに適した表現です。 「尽力してまいる」は、「尽力」に丁重語の「まいる」と、丁寧語の「ます」をつけた敬語表現で、「力をつくしていきます」意味です。 「尽力させていただきます」は、「尽力」に「させてもらう」の謙譲語の「させていただく」と、丁寧語の「ます」をつけた敬語表現で、「力をつくさせてもらいます」という意味です。 ただ、「させていただく」という表現は本来相手から許可を得てから使う文言になります。 文化庁は「基本的に他者の許可を得た上で、自分が行うことについて、その恩恵を受けることに対して敬意を払っている場合」に使うのが適切であるとしています。 したがって「せていただきます」と相手の許可を得ずに一方的に宣言するのは、不適切なので注意しましょう。
「尽力いたします」は、「一生懸命頑張ります」という意味で就職・異動・転職時の挨拶をする場面で使用されます。 「努力します」と言うこともできますが、「尽力します」と言った方が、「ただの努力ではなく、全身全霊で頑張っていく」という強い気持ちを伝えることができます。
例文
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ビジネスメールでも、文末などで「尽力いたします」と使用することがあります。 お礼の言葉などをメールで述べた後に、「これからも精一杯頑張るのでよろしくおねがいします」という気持ちを伝えます。
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「ご協力」は、「ごきょうりょく」と読みます。 「ご協力」の意味は、「ある目的のために心を合わせて努力すること」です。 「ご協力いたします」は、「協力」という言葉に謙譲語の「ご」と、「する」の丁重語の「いたす」に丁寧語の「ます」をつけた敬語表現です。 相手に「協力したい」という意思を伝える場面で使用することができます。
例文
「お手伝い」は、「手伝い」に接頭語の「お」をつけた言葉です。 「手伝い」の意味は「手助けすること」「助力すること」です。 「お手伝いたします」は、「手伝い」に謙譲語の「お」、「する」の丁重語の「いたす」に、丁寧語の「ます」をつけた敬語表現です。 「お手伝いいたします」は、「相手の力になりたい」という気持ちを伝える場面で使用することができます。
例文
「精進」の意味は「一つのことに精神を集中して、一生懸命努力すること」です。 「精進いたします」は、「精進」に「する」の丁重語と丁寧語の「ます」をつけた敬語表現です。 「精進いたします」で、「一生懸命努力します」という意気込みを丁寧に伝えることができます。
例文
「尽力」を意味する英語は、
などがあります。 動詞「尽力する」は英語で、
She has devoted herself to restoration support following the Great East Japan earthquake.
東日本大震災後の復興支援に彼女は尽力してきた。
目上の人の「尽力」つまり「お力添え」「ご助力」というニュアンスならば、
などが当てはまります。
Thanks to everyone's support, proposals have been submitted on the major problems in the Diet of Japan.
皆様の尽力のおかげで、日本の国会で主要な問題に関する議案が提出することができた。
いかがでしたか? 「ご尽力いたします」について理解を深めていただけたでしょうか。 「ご尽力いたします」は、「精一杯頑張ります」という意気込みを丁寧に伝えることができる敬語表現です。 文面で使用する場合は「ご尽力致します」表記することのないように注意してください。 ビジネスシーンでは、口頭でも文面でも使用する場面は沢山あるので、正しい使い方をしっかり覚えましょう。