ビジネスシーンでは取引先とのやりとりにおいて「参る」という言葉を使うことが多いと思います。「参る」は「行くこと」を伝えるときに使いますよね。ただ、一口に「参る」と言っても、目上の人や取引先へ訪問する、上司がどこかへ訪問するなどと、様々な場面が想定できるので、状況に応じた正しい使い分けが大切です。そこで今回は「参る」の意味や使い方、似た言葉の「伺う」との違いについて解説していきます。
「参る」は「行く」の謙譲語です。 謙譲語は、自分の動作をへりくだって表現するので目上の相手に敬意を示します。 「参る」は謙譲語なので、自分が目上の人の元へ行く時に使うのが基本になります。 例外として、「参る」を自分以外の動作に対して「行く・来る」の意味で使うこともあります。その場合は厳密には丁寧語になりますが、謙譲語のニュアンスが残るので目上の人の動作には使えません。ただ、自分以外で目上の人ではない身内などに使う場合があります。聞き手に対する謙譲の気持ちを表現しようとして生まれた語法です。
「参る」は謙譲語として頻繁に使います。謙譲語は相手に優位があることを表現する言葉で、「相手が優位」というニュアンスから転じて「自分が困る、よわる、閉口する」という意味が生まれました。「精神的に参る」「気が参る」などと使います。 異性などに心が奪われて”困る”という意味でも使います。 「困る」というニュアンスから転じて、
などの意味で使われることもあります。しかしこれらの使い方は前代では少し古臭い響きがあり、状況によっては意味が伝わりづらいかもしれませんので注意してください。
「参る」は自分の行動に対して使います。 「△△へ参ります」といったように自分から相手に出向くことを表します。例えば、「明日の午後2時に御社へ参ります」といった用に使うことができます。 「参る」は自分の行動だけでなく、社内の身内の行動に対しても使うことができます。例えば取引先に「上司の田中が御社へ参ります」と使えます。 ただ、「参る」は謙譲語のため、相手に対して使うのは間違いになります。例えば、「◯◯様が明日参られます」というような使い方は間違いです。これは相手に対して謙譲語である「参る」を使っているため誤りになります。正しくは「◯◯様が明日いらっしゃいます」とします。
「参る」の例文を紹介します。
「伺う」は、「聞く」「伝え聞く」「尋ねる」「訪問する」「行く」の謙譲語です。 「訪問する」ときの「伺う」は、「行く」という意味で、自分から目上の相手に出向くことを表しています。 なぜこの場面で「伺う」を使うのかというと、自分の都合で相手が時間を割いてくれていることに対して敬意を示す必要があるからです。 「訪問する」ときの使い方としては、
といったようになります。
「参る」と「伺う」は両方とも「行く」の謙譲語です。 ただ、同じ謙譲語でも「参る」は謙譲語II、「伺う」は謙譲語Iと細かく分けられています。 2つの違いとしては 謙譲語Iは、”自分がへりくだることで相手を立てるときに使う敬語”で、 謙譲語IIは、”聞き手を立てたり、相手に対する敬意を表すときに使う敬語”です。 謙譲語IIは丁重語とも呼ばれ、自分の行為や物事を丁重に伝えたいときに使用します。 「参る」は行く先に敬意を払うべき相手がいてもいなくても使え、「伺う」は、行く先に敬意を払うべき相手がいる場合にのみしか使うことができません。 「伺う」は相手を敬う言葉なので、相手がいない場合に使ってしまうと不自然になります。 例えば、「参る」と「伺う」の違いとして、
(誤)「来週は出張で東京へ伺います」
(誤)「今日は天気が良いので、散歩に伺いましょう」
この場合は、行く先の相手である”東京”と”散歩”に敬意を払う必要がないので「伺う」を使うことはできません。 また「伺う」は、「来週は、久々に実家に伺う」といったように、行く先に敬意を払う相手がいたとしても、その相手が自分の身内だったり、敬意を払うべき相手ではない場合に使用すると不自然になります。
「詣」は音読みだと「ケイ」、訓読みだと「もうでる」「いたる」「まいる」と読みます。 「詣」は「高い所・境地に行きつく」「社寺にもうでる」を意味しています。 「詣」が「参詣(さんけい)する」「初詣(はつもうで)」などと使われているように、 「詣る」は「神社や寺にお参りすること」を意味しています。 「詣る」とした場合は「いたる」と読むのが一般的ですが、「まいる」と読むこともあります。 「詣でる」とした場合は「もうでる」と読みます。どの読み方でも意味は同じです。
◯「参る」・・・「行く」の謙譲語 ◯「詣る」・・・寺社仏閣におまいりすること
「詣る」は「行く」の謙譲語を表していて、「詣る」は主に寺社仏閣に参詣することを表します。 「詣る」はあくまでも、神社・寺院にお参りに行くために足を運ぶことを表しています。 「参る」と「詣る」で間違わないように気をつけましょう。
尊敬語は相手に対しての敬意を示していて、相手の動作や持ち物など、相手に関わるものごとについて述べるときに用います。 「行く」の尊敬語は「いらっしゃる」「おいでになる」「お越しになる」になります。 例えば「明日は何時にいらっしゃいますか」といったように使います。この場合の主語は相手になります。 目上の人に「来てください」と伝えたい場合には、「いらっしゃってください」「お越しになってください」などと使うことができます。 また、「いらっしゃる」は「営業部の△△さんはいらっしゃいますか」などといったように、「いる」の尊敬語として使うこともできます。
例文
◯参上する (意味:人の元へ行くことをへりくだっていう語・目上の相手のところへ行くこと) 「近々お見舞いに参上する所存でおります」 ◯馳せ参じる (意味:大急ぎで参上する) 「先生の元へ馳せ参じる」 ◯拝謁<はいえつ> (意味:身分の高い人に面会することをへりくだっていう語) 「陛下に拝謁する」 ◯お目にかかる (意味:「会う」の謙譲語) 「お初にお目にかかります。山田と申します」
◯困窮する (意味:行き詰まって処置に苦しむこと、貧乏で苦しむこと) 「散財してしまい困窮する」 ◯困惑する (意味:どうして良いか判断がつかず迷うこと) 「困惑してしまい思考が停止する」 ◯頭を抱える (意味:途方に暮れて考え込む) 「新しい考えが浮かばず頭を抱えてしまう」
「参る」を補助動詞で使う場合は「まいる」とひらがな表記をします。 補助動詞とは、他の動詞とセットで使うため、本来の意味が希薄になっている動詞のことです。 別の動詞が直前にある場合は補助動詞になります。 本動詞の後に付けて謙譲のニュアンスを添えることができます。 「まいる」の例としては、
となります。
英語には謙譲語という概念はありませんから、その部分はあまり意識する必要はありません。 「参る」は「行く」の謙譲語なので、「参る」の英語表現は、
などを使えばOKです。 「come」は「来る」じゃないの?と思う方がいるかもしれませんが、英語でも相手目線で自分の動作を発言することがあります。 「今すぐ行くね!」は「I'm coming soon!」となります。 自分からしたら「go」ですが、相手からしたら自分が「come」するわけです。 この英語の言い回しは日本語の謙譲語とどこか似ている気もします。
Okay then, I'm going to visit your office tomorrow morning.
はい、それでは明日の午前中弊社に参ろうと思います。
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「参る」について理解できたでしょうか? ✔︎「参る」は「行く」の謙譲語 ✔︎「参る」は、「困る」「降参する」という意味で使うこともできる ✔︎「参る」は聞き手に敬意を表す謙譲語、「伺う」は、相手を高める謙譲語 ✔︎「参る」の尊敬語は、「いらっしゃる」「おいでになる」となる