「お忙しい中」は、相手を気遣う言葉としてビジネスシーンでもよく使用される言葉です。今回は「お忙しい中」の正しい使い方と例文を紹介します。「お忙しい中」の言い換え表現や、使用上の注意点なども合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「お忙しい中」の意味は、忙しい状況です。 「忙しい」は、急いでしなくてはならない事に追われている、する事が多くて休む暇もないという意味です。 「中」には多くの意味があります、「お忙しい中」の「中」は、物事が起こっている、その状況下という意味です。
「お忙しい中」の「お」は尊敬を表す接頭語です。 接頭語「お」は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりますが、目上の人に関係する事物や状態、行動に対して使うのは尊敬語です。 「お忙しい中」の「お」は丁寧語と解釈しても間違いではありません。 「お忙しい中」はお客様や上司、取引先など敬意を示すべき目上の相手が、忙しい状況にあることを気遣う言葉です。 目上の人が忙しい状況下であるにも関わらず、こちらが何かを依頼する時や、相手が何かをしてくれてこちらが感謝を述べる時に使います。 しかし実際には相手が忙しいか否かは関係なく、形式的に使われます。相手が忙しいと想定し、謙虚な気持ちを表現しています。
「中」の原義は「空間的に仕切られたものの内部」です。 「お忙しい中」の「中」は、本来の物理的な「なか」の意味から転じて、「物事が起こっている、その状況下」という意味で使っています。 このように本来の意味から離れている場合は、平仮名表記で使用するのが正しいとされます。 例えば、他にも「文句を言う」の「言う」は漢字表記で問題ありませんが、「医者という職業」の「いう」は平仮名表記になります。 ただし、「お忙しい中」の場合は、この書き方が日本のビジネスシーンでは定着しているので、このまま書く方が自然です。
「お忙しい中」の例文
「お忙しい中」の例文
「お忙しい中」はメールの挨拶文で使用されることもあります。 面識のない人にいきなりメールをするときに、メールの冒頭で「お忙しい中失礼いたします」と書くことがあります。 その他にも「突然のご連絡、失礼したします」「はじめまして」などが使われる場合もあります。 過去形「お忙しい中、失礼いたしました」は電話や訪問の後でいう言葉になります。
「お忙しいところ」と「お忙しい中」に違いはなく、同じ意味です。 どちらも、相手が忙しいと想定し、依頼する時の気遣いや感謝の気持ちを表し、同じように使うことができます。 例えば、「お忙しいところ恐れ入ります」「お忙しい中恐れ入ります」のどちらも使うことができます。 ただし「お忙しい中にも関わらず」という表現だけは「お忙しいところにも関わらず」とは言い換えできません。
「お忙しい中」の同義表現に「お忙しいところ」があります。 「お忙しいところ」の「ところ」は、時間的な位置を指し、そのような場面・状況・事態という意味です。 「なか」と「ところ」が同義語なので、「お忙しい中」と「お忙しいところ」の意味は全く同じです。 上述した理由と同じで「お忙しい所」と書くのは正しくありません。「お忙しいところ」に関しては正しい表記が定着しているので、そのまま平仮名で使用しましょう。 「お忙しいところ」も依頼・感謝の文章で用いられ、使い方も同じです。 ただし、「お忙しい中にも関わらず」という言い回しは「お忙しいところ」にはありません。「お忙しいところにも関わらず」は不自然な日本語です。 しかし、代わりに「お忙しいところ」のみで「お忙しい中にも関わらず」という意味で使えますので、特に気にする必要はありません。
「お忙しいところ」の例文
「お忙しい中」を、よりフォーマル表現にすると「ご多忙の中」となります。 「多忙(たぼう)」の意味は、非常に忙しいことです。 「お忙しい」と「ご多忙」は敬意の度合いは同じですが、「多忙」の方が相手がより忙しいと想定しているので、謙虚な印象を与えます。 また、和語ではなく漢語であるため、かたい印象を与えます。 「ご多忙の中」「ご多忙のところ」を、「ご多忙の折」とするとよりフォーマットな表現になります。 「折」とは、時の流れの中で、他と区別して区切った、そのときという意味です。 少しややこしいですが「時」と同義です。他と区切ったという意味なので、「今まさに(他の時期よりも)忙しい時なのに」というニュアンスを含み、より謙虚な印象を相手に与えます。
「ご多忙」の例文
「多忙」の類語に「多用」があります。 「多用」の意味は、用事が多くて忙しいことです。 「多用」より「多忙」の方が忙しさの度合いが高いですが、特に使い分けは必要ではありません。
「ご多用」の例文
同じ言葉を繰り返したり、使い過ぎたりすると全体的にしつこいという印象を与えてしまい、逆に相手に対して失礼にあたってしまうことがあります。 そのようなことにならないためにも、「お忙しい中」と同意義の言葉をいくつか知っておき、表現を変えて使うことが良いでしょう。
「お忙しい中」は単に社交辞令になります。 「お忙しい中」は本来の意味と違い、相手が暇そうな場合でも使える言葉です。 この人は今、暇そうだから「お忙しい中」は使えない。あの人は今は忙しそうだから「お忙しい中」を絶対に使うべきとか、そういった使い分けは必要ありません。 相手が誰であろうと「お忙しい中」は使うことができます。
「お忙しい中」は実際には相手が忙しくても忙しくなくても使うことができる表現です。 しかし、どう見ても相手が時間に余裕があることが明らかな場合に、「お忙しい中」を使うとかえって嫌味に聞こえてしまいます。そのような場面ではなるべく使用するのは控えましょう。
「お忙しい中」は、時間的に余裕がない相手の状況を理解しているからこそ使える言葉になります。 ですので、その後に時間を要するようなお願いごとを要求をするのは失礼にあたるため、避けた方が無難です。
いくら相手を気遣って「お忙しい中」と言ったとしても、気遣いが反映されていなければただの決まり文句として言っていると相手は思います。 例えば、ビジネスメールで「お忙しい中恐縮ですが、お早めのご返信いただければ幸いです」と伝えたり、具体的な返信期日を伝えるのは失礼に当たります。自分の都合に合わせるように指図することは望ましくありません。なるべく相手に合わせるようにしましょう。 また「このメールへの返信は必要ありません」という書き方も、相手の行動を制限していることになるので避けた方が良いでしょう。
「お忙しい中」は、自分に対して使用することはできません。 あくまでも、相手が忙しいなかで時間を割いてくれることに対して申し訳なさを伝える言葉なので、自分に対して「お忙しい中」と使ってしまうことがないよう注意しましょう。
「お忙しい中」の「忙」は「心」を「亡くす」と書く漢字で、「亡くなる」という漢字が含まれていることから、忌み言葉とされている言葉です。 忌み言葉は、縁起の悪さを連想させるとして敬遠される言葉である為、「結婚式」「出産」「お見舞い」といった場面では使用することを避けるべきとされています。 ビジネスシーンでの使い分けは必要ないとされていますが、結婚式・年賀状などでは「お忙しい中」ではなく「ご多用の中」「ご多用の折」を使用しましょう。
「お忙しい中」は英語では、「忙しいのにかかわらず」を英訳すると考えると分かりやすいです。 「out of your busy schedule」「despite your busy schedule」などがよいでしょう。 また、「even though you are very busy」としてもOKです。
Thank you for taking time out of your busy schedule.
お忙しい中、お時間割いていただきありがとうございました。