「拝見いたしました」は、「見ました」と相手に伝える敬語表現です。今回は「拝見いたしました」の意味と正しい使い方を例文付きで解説します。「拝見いたしました」の別の言い方や、類語表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「拝見」は「見る」の謙譲語です。 謙譲語とは、自分の行為をへりくだることで相手に敬意を示す敬語表現です。 「拝見いたしました」の「いたす」は「する」の丁重語(謙譲語の一種)です。 丁重語とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用されます。 例えば「昨日から弟の家で勉強をしております」の「おります」は、弟へ敬意を示しているのではなく話を聞いている人に敬意を示している「丁重語」です。 「拝見いたしました」の「ます」は丁寧語で、さらに過去形にすると「ました」となります。 「丁寧語」は、「です」「ます」をつけて丁寧な言葉遣いにすることによって相手に敬意を示しますが、敬意を示す存在の有無を問いません。 なので、部下など目下の人が上司など目上の人に使用するだけではなく、目上の人が目下の人に使用することもできます。 したがって、「拝見いたしました」は謙譲語+丁重語+丁寧語の敬語表現であり、二重敬語ではなく正しい敬語表現であるといえます。 敬語には、その他に尊敬語と美化語があります。 「尊敬語」とは、相手側の動作や物事の状態を高めて表現することで相手に敬意を示すことができる敬語表現です。 「美化語」は、「お菓子」「や「お天気」の「お」のように主に名詞につき、敬意を示す存在の有無は問わずものごとを美しく上品に言う語です。
「拝見いたしました」の例文
「拝見いたしました」は、「拝見」が謙譲語であるため目上の人の動作には使用することができません。 目上の動作に対して使用することができる敬語は「尊敬語」です。 「見る」の尊敬語は「ご覧になる」「見られる」です。 目上の人が何かを見た場合には、「ご覧になりました」や「見られました」というのが正しい言い方です。 ただ、「ご覧になられる」は「ご覧」と「なられる」の二つの尊敬語を使用している二重敬語で誤用なので注意してください。 目上の人に見てもらうよう依頼する場合の言い回しは、
などがあります。 例えば、資料などを「見てください」とお願いするときに使用することができます。 ただ、「ください」は「くれ」の尊敬語であるため命令形になってしまいます。 特に目上の人にお願いをするときには「〜くださいますようお願い申し上げます」などより丁寧な敬語表現にしましょう。
例文
「拝見しました」は、「見る」の謙譲語の「拝見」に、丁寧語の「ます」の過去形「ました」をつけた正しい敬語表現です。 「拝見しました」も目上の人に使用することができます。 ただ、「拝見しました」は謙譲語+丁寧語なので、謙譲語+丁重語+丁寧語の「拝見いたしました」のほうが敬意の度合いが高いといえます。 社外の人などより丁寧な表現をする必要がある場面では「拝見いたしました」を使用しましょう。
「拝見させていただきました」は、「見る」の謙譲語の「拝見」に「させてもらう」の謙譲語である「させていただく」と、丁寧語の「ます」を使用した敬語表現です。 「拝見させていただきました」は謙譲語+謙譲語+丁寧語なので二重敬語で誤用ですが、使用する人は多く、許容されている表現であるといえます。 ただ、「させていただく」という表現は本来相手から許可を得てから使う文言になります。 文化庁は「基本的に他者の許可を得た上で、自分が行うことについて、その恩恵を受けることに対して敬意を払っている場合」に使うのが適切であるとしています。 したがって、「拝見させていただきました」と相手の許可を得ずに一方的に宣言するのは、不適切なので注意しましょう。 相手からの許可を取り付けてからの発言であれば問題はありません。 「拝見させてください」も同じく相手に許可を得る表現です。 間違った使い方で相手に違和感を覚させないためにも「拝見しました」「拝見いたしました」を使用するようにしましょう。
「拝見なさいました」は「見る」の謙譲語である「拝見」に「する」の尊敬語の「なさる」と丁寧語の「ます」を使用しています。 「なさる」は、尊敬語で相手側を高めていう敬語表現です。 「拝見」という「見る」の謙譲語を使用しているということは、見ているのは自分です。 そのため、自分のしたことに「なさる」という尊敬語を使用することはできません。 自分が「見た」というのであれば謙譲語を使用して「拝見する」「拝見いたします」、相手が「見た」というのであれば「ご覧になる」「見られる」という尊敬語を使用しましょう。
「拝観」は「はいかん」と読みます。 「拝観」の意味は「謹んで観覧すること」です。 「神社・仏閣・宮殿、その宝物の類を謹んで観覧すること」を「拝観」といいます。
例文
「拝覧」は、「はいらん」と読みます。 「拝覧」は、「見るということをへりくだっていう語」です。 「謹んで見ること」を、「拝覧」といいます。 元々、神仏や仏像など高貴な人やものに対して使用される言葉で、主に建物や美術品といったものを見る場合に使用される言葉です。
例文
「拝聴」は「はいちょう」と読みます。 「聞く」の謙譲語で、「つつしんで聴く」という意味です。 「今日もテレビを拝聴しています」などと口頭ではあまり使わない表現です。 「拝聴」は基本的にメールや手紙など、文面上で使う言葉になります。 よく似た表現に「清聴」という言葉があります。 「ご清聴ありがとうございます」などと聞いたことがある方も多いと思います。 「拝聴」は自分が相手の話を聞くときに使う言葉なのに対して、「清聴」は相手が自分の話を聞いてくれたことに敬意を表す言葉です。
例文
「拝読」は「はいどく」と読みます。 「読む」の謙譲語で、「つつしんで読む」と言う意味です。 「拝見」と同じ自分のことをへりくだった言葉なので、相手の動作には使えません。 「この間送ったメール拝読いただけましたか?」といった表現は間違いになります。
例文
「拝受」は「はいじゅ」と読みます。 「受ける」の謙譲語で、「つつしんで受ける」という意味です。 謙譲語ですので日常生活ではあまり使われませんが、ビジネスシーンでは使われることがあります。 例えばクライアントや取引先から「あの資料、届きましたか」という連絡に対して「はい、拝受しました」などと返事をします。
例文
「take a look at」はイディオムで「〜をちらっと見る」「〜を一瞥(いちべつ)する」という意味があります。 lookを名詞として用いることで「1回だけ見る」と回数を強調します。 「take a look at」は「1回だけ」という意味があるので押しつけがましさが和らぎ、依頼文でよく使われます。 「じっくり見ないで、ちょこっと見てくれるだけでいいですよ」という謙虚なニュアンスがあります。 類語に「take a glance at」があります。
Could you please take a look at the file that was given to you yesterday?
昨日渡されたファイルを見ていただけますか?
「拝見しました」を「受け取りました」の意味合いで使う場合は「receive」を使います。