「拝聴」という言葉をご存知でしょうか?「拝聴」は「聞く」の謙譲語ですが、間違った敬語表現で使っている方も少なくありません。しかしビジネスシーンでは間違った敬語表現での使用が認められれいるケースがあります。そこで今回は「拝聴」の意味や正しい敬語表現、または間違った使い方について解説していきます。
「拝聴」は、「はいちょう」と読みます。
「拝聴」は「聞く」の謙譲語で、「つつしんで聞く」という意味です。 「拝」は音読みだと「ハイ」、訓読みだと「おがむ」と読みます。 「拝」には「頭を下げて礼をする」「あがめる」「ありがたく受ける」という意味があります。 「聴」は音読みだと「チョウ」、訓読みだと「きく」と読みます。 「聴」には「耳をすまして聞く」「聞き入れる」という意味があります。 また「拝」は「拝む(おがむ)」ことを表す言葉なので、謙遜の気持ちを表すときによく使います。 「拝む」は感謝を示す行為のことなので、「拝」が含まれる言葉には「ありがたく◯◯する」という気持ちが込められます。 つまり「拝聴する」は、「ありがたく聞くこと」を表しています。
「拝聴」は日常会話ではあまり使いませんが、ビジネスシーンではよく使われる言葉です。 ビジネスシーンでの「拝聴」は主に、目上の相手のプレゼンテーションや講演・取引先の話を聞くときに使われます。 「拝聴」は主に書き言葉として使うので、口語ではあまり使いません。
「拝聴」はビジネスシーン以外でも、音楽や講義を聞いた際にも使うことができます。
「拝聴します」は「聞く」の謙譲語「拝聴する」+丁寧語「ます」が組み合わさっています。 敬語としても正しい表現であり、相手に丁寧な印象を与えることになります。
「拝聴しています」は「聞いている」「聞いています」という意味になります。 例としては、「いつもラジオを拝聴しています」などと使うことができます。 「拝聴しています」は「今聞いている」とかではなく、「前々から聞き続けていること」を表すときに使用します。 また「テレビを拝聴しています」という使い方は不適切になります。 テレビは「聞く」と言うよりも、「見る」ものと認識されています。そのため「テレビを拝聴しています」よりかは「テレビを拝見しています」の方が適切な表現になります。 「拝聴しております」の「〜しております」は、行動が継続・進行している様子を表します。 「拝聴しています」より「拝聴しております」の方が丁寧な表現になります。
「拝聴」は「聞く」ことの謙譲語です。謙譲語は「自分を低くしながらも相手に敬意を示す敬語」です。謙譲語は自分を低くするため、自分のことを表す時に用います。 謙譲語からわかるように「拝聴」は「自分が聞くこと」を伝えたいときに使用するので、他人が「聞くこと」を表すときは使用しません。 例えば「この案件について拝聴しましたか」と相手に聞くことは間違いになります。目上の相手には下記で紹介する尊敬語を用います。
「聞く」の尊敬語は、「お聞きになる」「聞かれる」になります。 「尊敬語」とは、相手を立てるときに使う敬語になります。目上の相手に敬意を示す時に使用します。 「お聞きになられる」は、尊敬語「〜れる・られる」と受身・可能の「〜れる・られる」と間違えられやすいのであまり使用しません。
○「お聞きになる」「聞かれる」を用いた例文
例えば「ぜひお話をご拝聴したいです」、この使い方は間違いになります。 なぜなら「拝聴」にはすでに謙譲の意味が含まれているため、「ご~する」という謙譲表現を足す必要があないからです。「ご拝聴」だと二重敬語になってしまいます。 この場合であったら、「ぜひお話を拝聴したいです」が適切になります。 丁寧な表現にしようとして、過剰に敬語を付け加えてしまうと、かえって相手に失礼な印象を与えてしまいます。「拝聴」は「ご」をつけずにそのまま使って問題ないので気をつけましょう。
「拝聴いたします」はよく使われる言葉ですが、文法的に正しい使い方ではありません。 「拝聴いたします」は「聞く」の謙譲語「拝聴する」+「する」の謙譲語「いたす」になるため、二重敬語になってしまいます。 二重敬語は回りくどい印象を与えてしまうため良くないとされていますが、ビジネスシーンで「拝聴いたします」「拝聴いたしました」は頻繁に使用されています。 文法的には正しくありませんが慣習的によく使う表現なので、違和感のある表現ではありません。 しかし、しかし、慇懃無礼だと相手にくどい印象を与えてしまう場合もありますので注意しましょう。
「拝聴させていただきます」は、「聞く」の謙譲語「拝聴する」+「〜してもらう」の謙譲語「いただく」なので、二重敬語になります。 「〜させていただく」は、相手から許可をもらい何かをして、それを敬語で報告する表現です。 「拝聴いたします」と同様で文法的には正しくありませんが、ビジネスシーンでは「拝聴させていただきます」や「拝聴させていただきました」がよく使われています。 しかし「拝見いたします」と同様に、慇懃無礼だと相手にくどい印象を与えてしまう場合もありますので注意しましょう。
「拝見」は<はいけん>と読みます。 「見る」の謙譲語で、自分が見る動作をへりくだって言うときに使う言葉です。 「拝見する」はメールや書類を「見る」「読む」「目を通す」という意味になります。 「内容や目的を理解した」というニュアンスも含まれています。 「拝見」は「拝見します」という形でよく使われます。 例えば、目上の相手に「見せていただいてもよろしいでしょうか」だとくどい言い方になりますが、 「拝見してもよろしいでしょうか」と言い換えることでスマートな印象を与えられます。 「拝見いたします」「拝見させていただきます」は二重敬語になりますが、ビジネスシーンでは慣習的によく使う表現なので、ほとんどの人にとってそこまで違和感のある表現ではありません。
例文
「拝読」は<はいどく>と読みます。 「読む」の謙譲語で、自分が読む動作をへりくだって言うときに使う言葉です。 「拝読する」は「メールや書類を読んだ」という意味になります。 例えば目上の相手に「こちらの資料は拝読されましたか?」と聞くと、逆に相手を下げて自分を高めているという表現になってしまいます。 「拝読」はその読み物を書いた本人に対してへりくだる意味があります。 例えば上司からのメールは「拝読しました」と言いますが、 上司から借りた本を上司に「拝読しました」と伝えるのは、上司に敬意を払っていないことになります。 「拝読」はメールや手紙、資料を読んだことを、相手に伝えるときに使うのが一般的です。 「拝読しました」「拝読します」といったように使うことができます。
例文
「拝借」は<はいしゃく>と読みます。 「借りる」の謙譲語で、自分が借りる動作をへりくだって言うときに使う言葉です。 「お手を拝借!」と聞いたことがある方もいると思います。「拝借」は基本的には「御本を拝借してもよろしいでしょうか」といったように物を借りる時に使うことが多いですが、他にも「◯◯様のご意見を拝借したいです」といったように使うこともできます。 また「借りる」の謙譲表現には「恩借(おんしゃく)」という言葉もあります。 「恩借」の意味は「人の好意によって金銭や品物を借り受けること。また、その金品」になります。 「恩借」は「経営難や借金などで知人や親族などに金を借りる」という意味で使われることが多いです。 「拝借」と「恩借」では意味が全く違うので間違わないように注意しましょう。
例文
「拝覧」は<はいらん>と読みます。 「拝覧」は、「見る」の謙譲語で、自分が見る動作をへりくだって言うときに使う言葉です。 「拝覧」は「拝見」と同義語になります。 「拝見」は見ること全般に使うことができる言葉です。 一方「拝覧」は主として宗教関係の建物や美術品などを観覧・鑑賞する場合に使用します。 「拝覧」は基本的にはあまり使わない表現で、「拝覧」と「拝見」では「拝見」の方が多く使われます。
例文
「拝聞」は、「聞く」の謙譲語で、「謹んで聞く」という意味です。 「拝聴」と同じ意味ですが、「拝聴」よりも使用頻度が少ない言葉になります。
例文
「清聴(せいちょう)」は、「聞く」ことを敬っていう表現です。 「清聴」は講演などで、相手が自分の発表・演説を聴いてくれたことや自分の話を聞いてくれることに対して用いることが多いです。 講演やスピーチの最後に「私の話を聞いてくれてありがとうございます」という意味を込めて「ご清聴ありがとうございました」と言うことができます。
例文
「謹聴」は、「謹んで聞くこと」を意味しています。 「謹聴」は「拝聴」と「拝聞」と同じ意味になります。 ただ「謹聴」は 演説会などで、「静かに聞く」の意で聴衆が発する語でもあります。 相手に「謹聴」と言うことによって「静かに聞いてください」ということを伝えられます。
例文
「伺う」は「聞く」の謙譲語になります。 「伺う」は「拝聴」と同じ意味になります。 「伺う」は「聞く」という意味の他に「誰かから伝え聞く」という意味で「伺っております」と使うこともできます。例えば、「今日の会議のことについて聞いた?」と言われた場合に、「◯◯さんから伺っております」と言うことができます。
例文
「承る」は「聞く」の他にも、「受ける」「伝え聞く」「引き受ける」の謙譲語で、「謹んで聞く」「謹んで受ける」という意味になります。 「承」漢字一字には、「前のものを引き継ぐ」「相手の意向・意図を受け入れる」といった意味があります。 つまり「承る」は、相手の話を「しっかり聞いた」「引き受けた」「対応した」という意味になります。 「承る」は「伺う」よりも敬意が強い表現になります。
例文
「傾聴」は「耳を傾けて、熱心に聞くこと」を意味しています。 元々「傾聴」はカウンセリングにおける技法で、相手の気持ちに寄り添って、注意深く共感的に「聞く」ことを意味しています。ちなみに「傾聴」は敬語ではありません。
例文
「拝聴」の英語表現を考えていきましょう。 英語には謙譲語という概念がありませんので、「拝聴」は「聞く」を意味する英語を考えればOKです。 「拝聴」は、 ・listen to ...:(意識的に)聞く を使うとよいでしょう。 「hear」は「(意識せずに)聞こえる」という意味なので、「拝聴」には適しません。
It was such an honor to listen to your honor.
お話拝聴できて、ともて光栄でした。
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「拝聴」について理解できたでしょうか? ✔︎「拝聴」は「聞く」の謙譲語 ✔︎ 謙譲語なので自分の動作に使い、相手の動作には使えない ✔︎「聞く」の謙譲語「拝聴する」+丁寧語「ます」の「拝聴します」が正しい表現 ✔︎「拝聴いたします」「拝聴させていただきます」は二重敬語だが、慣習的によく使われる表現 ✔︎「拝聴」に似た言葉には「拝見」や「拝読」などがある