「ジレンマ」という言葉の意味と使い方を解説していきます。「ジレンマ」は「ジレンマを抱える」「ジレンマに陥る」「ジレンマを感じる」などの言い回しで使いますよね。もともとは論理学や哲学で使われる言葉なので少し難しく感じてしまいます。しかし基本的な意味がしっかり理解できれば簡単に使うことができます。 「ジレンマ」は心理学や医療、経営学など様々な分野で使われる専門用語でもあります。それぞれの業界でどのように用いられているのか分かりやすく解説したいと思います。 また「ジレンマ」には意味が似ている言葉も複数存在します。「葛藤」「コンフリクト」「矛盾」などなど。これらの単語との違いも説明したいと思います。
「ジレンマ」の一般的な意味な意味をまず最初に解説していきます。 「ジレンマ」は英語の「dilemma」からきています。 カタカナでは「ディレンマ」と書くこともありますが、「ジレンマ」と書くのが一般的です。 語源はギリシャ語、ラテン語からきていて、「2つの仮定」という意味になります。 一般的に「ジレンマ」とは、「2つの選択肢があり、どちらを選んでも不利益が発生するため、悩んでいる状態」を指します。 日本語では「板挟み」「進退両難」などということが多いです。 言い回しは、
などがあります。 具体例を1つあげてみます。 最近恋に落ちた相手があと数ヶ月で海外転勤してしまうことが決定したとします。あなたはその人に興味がありますから、一緒に時間を過ごしてもっと相手のことを知りたいです。しかし、遠距離になってしまうので知れば知るほどお別れするのが辛い。もっとその人との時間を増やすべきか、今の気持ちに蓋をすべきか。。。 こんな状態はまさに「ジレンマ」ということができます。 「ジレンマ」の使い方を例文で確認してみましょう。
例文
「ジレンマ」という言葉は、上記で紹介した基本的な意味をベースにして、様々な業界・学問分野で転用されています。 分野別に1つずつ「ジレンマ」の意味を解説していきたいと思います。
論理学・哲学における「ジレンマ」について解説します。 論理学・哲学における「ジレンマ」は日本語では「両刀論法」と言われます。 論理学・哲学における「ジレンマ」は「三段論法」の一種です。 「三段論法」とは、大前提、小前提、結論の順番に組み立てる推論のことを指します。 「三段論法」はギリシャの哲学者アリストテレスによって体系化されました。 例えば、こんな三段論法があります。 大前提「人間には無限の可能性がある」 小前提「私は人間である」 結論「ゆえに、私には無限の可能性がある」 話を「ジレンマ」に戻しますと、「ジレンマ」はこの三段論法の1つで、こんな感じになります。 大前提「営業部に配属されても、企画部に配属されても、残業は免れない」 小前提「私は文系なので配属されるのは営業部か企画部だ」 結論「ゆえに、いずれにしても残業は免れない」 このように論理学における「ジレンマ」とは物事の推論で使われる考え方になります。 基本的な意味は、冒頭で説明した2つの選択肢がありどちらを選んでもネガティブな結果が待っていることとあまり違いがありませんよね。
経営学における「ジレンマ」は「イノベーションのジレンマ」のことを指します。 「イノベーションのジレンマ」はハーバード・ビジネス・スクールの「クレイトン・クリステンセン」によって提唱されました。 「イノベーションのジレンマ」とは、大企業が陥るジレンマを指します。 大企業は既存の商品の改善に努めることに重きを置いてしまうがため、新しい市場やビジネスアイデアを見逃してしまうことを指します。 大企業にとっては、全く新しいことをやることよりも、既存商品の改良した方が収益をあげるには効率がよいように見えます。しかし、飛躍的なイノベーションを起こすには小さい市場や新しい技術に注目する必要があるわけです。 大企業がイノベーションのジレンマに陥らないためには、どんなに小さく魅力的ではない市場でも見逃さず、商品を投下したり、新興企業の買収をしっかり進めていくことが求められます。
心理学における「ジレンマ」は「社会的ジレンマ」と言われます。 「社会的ジレンマ」とは「個人にとってベストな選択が、社会全体にとっては最善とは言えない状態」を指します。 例えば、 税金を払わずに済むならば支払わない方が個人にとっては有益である。しかし、税金の支払いを行わなかったら、社会福祉が政府によって実行することが不可能になり、高齢者などは困ってしまう。 こんな状況を「社会的ジレンマ」と呼びます。
ゲーム理論における「ジレンマ」は「囚人のジレンマ」と言われます。 ゲームにおいて、プレイヤーが他のプレイヤーと協力した方がよい結果になるが、協力しないプレイヤーにも利益が生じてしまう状況を指します。 「囚人のジレンマ」は上記で解説した「社会的ジレンマ」の1つと見ることができます。
医療の現場では「倫理のジレンマ」という言葉が使われます。 「倫理ジレンマ」とは、倫理基準によって患者に対して医師が施すべき治療が変化することを指します。 例えば、「長く生きること(もしくは金稼ぎを)」を善とするならば、植物人間状態になるリスクをおかしてでも延命治療をすべきだが、「生活の質」を重要視するならば延命治療はしない方がよい。 このような状況が「倫理のジレンマ」と言われます。
音楽における「ジレンマ」とは、専門用語ではなく曲のタイトルになります。 「ジレンマ」という言葉のもつ哲学的ニュアンスにより、様々な音楽家が人生におけるジレンマや恋愛におけるジレンマを曲にしています。
などの曲で「ジレンマ」というタイトルが存在します。
「ジレンマ」は選択肢が2の中で板挟みな状況を指しましたが、3つの選択肢の板挟みの場合は「トリレンマ」といいます。 英語で「trilemma」と書きます。 接頭語「tri」は「3」を意味します。三ヶ国語話せる人を「trilingual(トライリンガル)」と言ったりしますよね。 実は「dilemma」の接頭語「di」は「2」を意味します。
「葛藤」という言葉は「ジレンマ」にとてもよく似ています。 「葛藤」の意味には2つの意味があります。 1つ目は、「もつれ、人と人とが譲らないさま」です。この意味では「ジレンマ」との違いは明確です。 2つ目は、「心に相反する欲求が同時に起こり、どちらを選ぶべきか悩むこと」です。 2つ目の意味は「ジレンマ」と非常に似ていますが、微妙に違います。 「ジレンマ」は「どちらを選んでも不利益が生じる」という意味がありますが、「葛藤」にはその意味はありません。ただ相反する感情が共存する、という意味です。なので、「葛藤」の方が意味的には広いと言えるでしょう。「ジレンマ」は「葛藤」に内包されます。 例えば、「私はA子さんのことが好きであり嫌いだ」という状況は「葛藤」ではありますが、「ジレンマ」ではありません。 「好き」と「嫌い」という相反する感情が同時に起こっていますが、どちらも不利益があるか否かは不明確だからです。
実は、2つ目の意味の「葛藤」は英語「conflict」の訳語であり、「葛藤」と「コンフリクト」は同義です。 つまり、「ジレンマ」と「コンフリクト」の違いは、「ジレンマ」と「葛藤」の違いと同じになります。
論理学・認知学の専門用語に「二律背反(にりつはいはん)」という言葉があります。 ドイツ語の「アンチノミー」の訳語です。 「ジレンマ」とは全く違う言葉なのですが、同じ論理学の言葉であるため、勘違いしてしまう方がたまにいるので解説します。 「二律背反」とは、2つの矛盾する内容がどちらも妥当性を持つ状況を指します。 有名な例に「私は常に嘘を言う」というものがあります。 もしこの発言内容が本当ならば、この発言者は嘘をついてることになるので、この発言内容も嘘になり、この発言はいつも本当のことを言っているはずである。しかし「私は常に嘘を言う」と言っているので矛盾する。 また、もしこの発言内容が嘘ならば、この発言者はいつも本当のことを言うはずである。しかしこの発言者は「私は常に嘘を言う」という嘘をついていることになるので矛盾する。 このように、ある命題とその否定命題が食い違うことを指します。 この説明からも「ジレンマ」とは全く違う言葉であることがわかったと思います。
「矛盾」または「パラドックス」という言葉が生まれた背景に「二律背反(アンチノミー)」があります。 「二律背反」のことを一般的には「矛盾」といいます。 「矛盾」は「ジレンマ」とは全く違う論議です。
英語「dilemma」の意味は日本語「ジレンマ」ともちろん同じです。 使い方ですが、
の形で使います。
Prim Minister is obviously in dilemma about how to tackle the Japan's tax issues.
首相は日本の税制の問題をどのように解説するかジレンマに陥っている。
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