「掌握」という言葉をご存知でしょうか。なかなか聞き慣れない言葉ですよね。今回は「掌握」という言葉の意味や使い方を例文付きで詳しく解説します。「掌握」を使用する場合の注意点や、「掌握」の類語との違い、英語表現も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「掌握」は、「しょうあく」と読みます。 「掌」は、音読みで「しょう」訓読みで「てのひら・たなごころ」と読みます。 「握」は、音読みで「あく」訓読みで「にぎる」と読みます。
「掌握」の基本的な意味は「手のひらの中で握ること」です。 しかし、「掌握」を「手のひらの中で握ること」という意味で使うことはほとんどなく、その意味から転じて 1. 手に入れる。支配する 2. 物事を自分の意のままに動かせるようにする という意味で使います。 1つ目の意味は、ビジネスシーンで使用されます。 例えば、「子会社化」「吸収合併」という意味合いで「A社を掌握する」といったり、「プロジェクト全体を掌握する」「社長になり実権を一手に掌握する」などといいます。 2つ目の意味では、人の心を対象として使います。 恋愛などで「男心を掌握する」と使ったり、「意中の相手を掌握した」「心を完全に掌握された」といった使い方です。 この場合、文脈によっては「悪意にコントロールする」「洗脳する」という悪意を含んだ意味合いを持つことがあるので注意が必要です。
「掌握」という熟語の由来は漢字を見ると一目瞭然です。 「掌」は、「てのひら」「握」は「にぎる」という意味のある漢字なので、「掌握」は「掌を握る」という意味で作られた熟語であるということがわかります。 元々は、何かを握るときのように「手のひらに掴んで収める」という意味をもつ言葉です。 実際に「掌握運動」「掌握動作」は医療・看護用語として、手をグーパーグーパと握ったり開いたりするリハビリを指す言葉として使用されています。
意味の箇所でも説明した通り「掌握」には、2つの意味があります。 ビジネスで使用される場合の「掌握する」は、「手にいれる」「支配する」といった意味で、「部署全体を掌握する」というような使い方をします。 恋愛面で使用される場合は、「自分の思いのままにコントロールする」「洗脳する」という意味で使用され、「彼女を掌握する」といった使い方になります。 詳しい使い方については例文を参考にしてください。
1つ目の意味の例文
2つ目の意味の例文
1つ目の「手にいれる」「支配する」という意味で、「人心掌握」という四字熟語が使用されることもあります。 「人心掌握」は、「じんしんしょうあく」と読みます。 「人心掌握」の場合、「支配下に入る」と同義になります。 例えば、言葉巧み心を惹きつけさせて相手を洗脳して思い通りに操ってしまうような話術などを「人心掌握術」と言います。 「人身掌握」と非常によく似ている「人心収攬(じんしんしゅうらん)」という四字熟語もありますが、「人心収攬」の場合は「人の心を上手くまとめて信頼を得ること」という意味になります。
例文
「掌握力」という言葉として使用されることもあります。 「掌握力」の読み方は「しょうあくりょく」と読みます。 「掌握力」の場合は、1つ目の意味でも2つ目の意味でも使われるため、前後の文脈でどちらの意味合いかを判断する必要があります。 「掌握力」は、「掌握」という言葉に接尾辞の「力」をつけた言葉なので、 1. 手に入れる。支配する力 2. 物事を自分の意のままに動かせるようにする力 となり、その人の持っている「力・能力」を言い表す言葉になります。
例文
「わざ・すべ」という意味のある「術」を後ろにつけて「掌握術」といった言葉でも使用されます。 「洗脳したり、自分の思い通りになるようにする術」を「掌握術」と言い、恋愛面で相手を支配したり洗脳してコントロールするような術を「掌握術」と言ったり、「人心掌握術」と言うこともあります。
例文
ビジネスシーンや目上の人相手に「知っておいてください」という意味で「ご掌握ください」という敬語表現を使う場合があります。 この場合の「ご」は、尊敬を表す接頭語で相手の行為に対して使っているため尊敬語になります。 敬語表現としては間違いではありませんが、意味の箇所でも触れたように「掌握」には「コントロールする」「洗脳する」というニュアンスがあるので、相手に誤解されないためにも「ご掌握ください」という表現は使用しない方が無難です。 言い換え表現には、
などがありますので、「掌握」よりも言い換え表現を使用しましょう。
「掌握下に入る」は2つ目の「物事を自分の意のままに動かせるようにする」の意味で使用されます。
といった言い回しでも使用されます。 例えば大きな組織や支配者に指導を受ける立場になる場合に「傘下に入る」と表現することがありますが、「掌握に入る」の「入る」も、この「傘下に入る」と同じニュアンスで使用されています。
例文
「入試数学の掌握」は数学の参考書です。 京大医学部、大阪大医学部レベルの数学力を身につけるための指南書です。
の3種類あります。
「オセロニア掌握の吸血鬼」は、「オセロニア」というオセロを進化させた青瓜ゲーム内で召喚されるキャラクターの一つです。 掌握の吸血鬼というキャラクターを使うと、相手のキャラ駒×250の吸収をするスキル効果があります。
「ご掌握ください」の箇所でも説明しましたが、「掌握する」には「悪意をもって操作する」というニュアンスがあるため、自分に対しても目上の人に対しても使用する場合は注意が必要です。 例えば、「人の上に立つ立場の人間として、みなさんの心を掌握することができるよう努力したい」といった場合「みんなの心を掴みたい・心を開いてもらいたい」といったニュアンスであっても、「洗脳したいです」という意味でとらえてしまう人もいます。 「心を掴む」というニュアンスで使用したいのであれば、先程紹介した「人心掌握」という言葉を使用しましょう。 「人心掌握」であれば、「相手の心を開かせ上手に誘導し、良い方向へ導く」という意味合いになるので誤解されずに済みます。
「掌握」は、「掌握される」という受動態の形では使用することができません。 「掌握」という言葉には「心を掴む」という一方的なニュアンスが強いので、心を掴まれた側が自分の状態を伝えるのに「掌握される」「掌握された」と使用することはできないのです。 自分の状態であったり、掴まれた側が表現する場合は「掌握」という言葉を使わずに「心を掴まれました」と表現するの自然です。 「◯◯さんの言葉に心を掴まれました」というニュアンスで「掌握されました」と使用してしまいがちですが、これは間違った使い方なので注意してください。
「把握」は「はあく」と読みます。 「把握」の1つ目の意味は「手中におさめること」で、「実権を把握する」などと使い「掌握」と同じ意味になります。 しかし、「把握」の2つ目の意味である「しっかり理解すること」という意味は「掌握」にはありません。 ビジネスシーンでは2つ目の意味で使用されることがほとんどです。 「掌握」と「把握」はよく似ているので、度々混合してしまう人がいます。 よくある間違いが、「掌握反射」です。これは、完全に「掌握」と「把握」を混合してしまっている例で、「掌握反射」ではなく、正しくは「把握反射」といいます。 「把握反射」とは「赤ちゃんの手の平に指などを入れたときにギュッと握る」握り反射のことで、「原始反射」とも言われます。
例文
「牛耳る」は、「ぎゅうじる」と読みます。 「牛耳る」の意味は、「集団などを自分の意のままに操ること」です。 中国の春秋戦国時代、同盟を組む際に牛の耳を割いてその血を吸うことで組織への忠誠を誓ったといったことが由来となっています。 「組織を思いのままに動かす」という意味で「牛耳を執る」「牛耳る」と使用されるようになったと言われています。 「牛耳る」は、「操る」というニュアンスが強く「心を掴む」といった意味はありません。
例文
「操る」は、「あやつる」と読みます。 「操る」の意味は、「上手く物や人を動かして使うこと」です。 例えば何か道具を上手に扱ったり、物を操縦して意のままに動かすことも「操る」と言いますし、言葉などを上手く使って他人を動かすのも「操る」といいます。 「操作する」「取り扱う」といった言葉と同義になります。 「掌握」のように「心を掴む」という意味ではなく、「洗脳してコントロールする」「自分の思いのままに操る」という意味で使用されます。
例文
「傘下に収める」は、「さんかにおさめる」と読みます。 「傘下に収める」の意味は、「ある人や粗組織を、自分の組織の一部に加えること」です。 例えば、大手企業がある企業を買収したといった場合に、「A社を傘下に収める」と言い表すことができます。
例文
「支配下に置く」の意味は、「全体を取り仕切ること」です。 「支配」とは、「ある地域や組織を自分の勢力下の置き、おさめること」です。 「人や組織の心を操り、自分の思うように動かす」といった意味では「掌握」と同義語であると言えますが、「支配下に置く」も「操る」というニュアンスが強い表現です。
「手中に収める」は、「しゅちゅうにおさめる」と読みます。 「てちゅう」とは読まないので、読み間違いに注意しましょう。 「手中に収める」の意味は、「手に入れること・自分のものにすること」です。 「手の中に握って収める」ということから転じて「自分のものにする」という意味で使用されるようになりました。 「掌握」も「手のひらに握る」という意味なので、同義語になります。
例文
「掌握」を意味する最も一般的な英語表現は「control」です。 日本語でも「コントロールする」と使われますが、同じニュアンスです。
の形で「...を掌握する」という意味になります。
He has his men completely under control.
彼は部下を完全に掌握している。
「操る」という意味の英語は「manipulate」があります。 「manipulate」は「control」の類語ですが、「自分のアドバンテージを利用し、不公平に何かを操作する」というネガティブな意味合いがあります。 「control」は使い方に寄りますが、単語自体にはネガティブな意味合いはありません。
Prime Minister has successfully manipulated the media throughout his tenure.
総理は任期中、メディアを掌握するのに成功した。
She was good at manipulating people's minds.
彼女は人々の心を掌握するのが得意だった。
「come to power」で「政権につく」「天下を取る」という意味です。 「政権を掌握する」という限定的な意味で、「掌握」の英訳として使用可能です。
Liberal Democratic Party came to party again.
自由民主党が再度政権を掌握することになった。
「seize control of」で「(敵地などを)占拠する」「〔権力などを〕掌握する」という意味です。 「seize」は「〜をつかむ」という意味です。
Political corruption helped the army seize control.
政治的腐敗によって軍隊が権力を掌握した。
「buy up」「acquire」は「(企業を)買収する」という意味になります。
Facebook has bought up a lot of competitors.
フェイスブックは競合他社を買収し掌握していった。
いかがでしたか? 「掌握」について理解していただけましたでしょうか。 ✓「掌握」の読み方は「しょうあく」 ✓「掌握」の意味は「人を支配し自分の意のままに動かすこと」 ✓「掌握」の語源は「拳で握る」 ✓「掌握する」といった形で使用されることが多い ✓「掌握される」という受動態では使用できないので注意 など