「全身全霊」とは「後先を考えずにがむしゃらに取り組む」という意味です。「全身」は「体力の全て」、「全霊」は「精神力の全て」を表し、二つ合わせて「身も心も全部」という意味です。「全身全霊をささげる」などと使います。「全身全霊で」の形で副詞的にも使います。
「全身全霊」の読み方は「ぜんしんぜんれい」です。 「全身全霊」の意味は「身も心も全部」という意味で、細かいことを考えずにがむしゃらに何かに取り組む時に使う言葉です。 「全身」は「体力のすべて」、「全霊」は「精神力のすべて」という意味です。
「全身全霊」は中国古典にはありません。 よって、故事成語が由来にするものではなく、和製四字熟語にあたります。 「全身全霊」を理解する上で大切なのは「霊」の解釈です。 「身」が「からだ」を意味するのは簡単にわかると思います。 「霊」と聞くと「幽霊(ゆうれい)」がまず思い浮かびますよね。 つまり、「霊」は死を表す言葉で、死を意識するくらい頑張ることが「全身全霊」なんだと解釈したくなりますが、これは誤りです。 「霊」は「たましい」を表す言葉です。「霊魂」「精霊」などの熟語で使われています。英語なら「sprit」「soul」ですね。 身体のない「死者のたましい」も表すことから死のイメージが強いですが、生きている人の中にも「霊」はあると考えられています。 よって、「全身全霊」の「霊」は「ゆうれい」を表しているのではなく、「たましい」つまり「心。精神」を表しています。 「全身全霊」が使われている著名な作品に有島武郎の『或る女』があります。 「木部の全身全霊を爪の先き想ひの果てまで自分のものにしなければ」という一文がありますが、これはただの出典であり語源ではありません。
「全身全霊」は、
などの言い回しで使われます。 「全身全霊をささげる」が最も多く見聞きする表現で、迷ったらこれを使いましょう。 「全身全霊をささげる」では「ささげる」を「捧げる」と漢字表記しないのが正しいです。 なぜなら「捧げる」とは「物を高く持つ」という意味で、「全身全霊」を物理的にささげることは不可能なので、ひらがな表記になっています。
例文
の形で副詞的にも使います。 「もって」は漢字では「持って」ではなく「以て」です。 「以て」は堅い言葉で、日常的にはあまり使いません。 上皇陛下がご退位する際に「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなる」というお言葉がありました。 この「全身全霊をもって」は「全身全霊」を副詞的に使う例です。 「全身全霊で」の言い回しには、
などがあります。
など動詞と助詞「て」を組み合わせて表すこともできます。
例文
「全身全霊を尽くす」という表現をたまに見聞きしますが、これは誤用です。 正しくは「全力を尽くす」です。 「尽くす」は「ありったけのものを出す切る」という意味です。 「全力を出し尽くす」という言い方もあります。 「力を尽くす」で「尽力する」という言葉もあります。 「最善を尽くす」は「よいと思われることを全力でやる」です。 どの言葉も「全身全霊をささげる」と同じ意味で、言い換えが可能です。
例文
「全身全霊」と同じ意味の四字熟語に
があります。 「全心全力」「全霊全力」は辞書には記載がなく正式な日本語ではないですが、口語で使われることがあります。
「全身全力」という言葉をたまにみかけますが、これは間違った日本語です。 「全心全力」の「心」を、「全身全霊」の「身」と書き換えてしまった表現です。
「全身全霊」の類語には、「全力投球」があります。 「全心全力」「全霊全力」でも使われていますが、「全力」単体でも言い換え可能です。 「全力投球」の由来は野球だ。
「粉骨砕身」の意味は「骨を粉にして身を砕くほど、一生懸命努力すること」です。 自分の能力や技術を最大限に発揮することによって、力の限り働くこと・勉学に打ち込むことを表します。 「粉骨」は「骨を粉にするほど力を尽くすこと」、「砕身」は「身が砕けるほど奮闘すること」を意味します。
「心血を注ぐ」は「心身のありったけの力を使って事をする」という意味です。 「心」は「精神力」を、「血」は「肉体」を表しており、「全身全霊」と完全に同義です。
「全身全霊」の対義語は「手抜き」です。 「手抜き」は「しなくてはいけない手数を故意に省く」という意味です。 「手抜き工事」などと使います。
「手心を加える」とは「事情に応じて物事を程よくあんぱいにする」という意味です。 また、「寛大に扱う」というニュアンスでも使います。この意味では「手加減」と同義です。 「採点に手心を加える」などと使います。
「冷厳」も「全身全霊」の対義語ですが、「手抜き」「手心を加える」とはニュアンスが違います。 「冷厳」は「落ち着いている様子」という意味です。 「全身全霊」と同じく何かに取り組む時に使いますが、「全身全霊」のように情熱的ではなく淡々と事にあたるというニュアンスです。 「冷厳な態度で臨む」などと使います。
「...に全身全霊をささげる」の英語は「devote myself to...」です。
She devoted her life to raising her only son.
彼女は一人息子を育てるのに全身全霊をささげた。
「全身全霊」の意味と使い方はご理解いただけましたか? 「全身全霊」は「身も心も全部」という意味です。 後先のことは考えずに全力で何かに臨む時に使うこと言葉です。 「霊」が人の精神を表す言葉である点がポイントです。