「紆余曲折」という言葉をご存知ですか?「紆余曲折した人生だった」などよく耳にする表現なのではないでしょうか。今回は、「紆余曲折」の正しい意味と使い方を例文付きで紹介します。また、「試行錯誤」など「紆余曲折」と似た表現との違いや、類語・同義語なども合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「紆余曲折」は、「うよきょくせつ」と読みます。 「紆」は音読みで「ウ」、訓読みで「曲がる・まげる・めぐる・まとう・まつわる・むすぼれる」 「余」は音読みで「ヨ」、訓読みで「あまる・あます」 「曲」は音読みで、「キョク」訓読みで「まがる・まげる」 「折」は音読みで、「セツ」訓読みで「おる・おり・おれる」 と読む漢字です。
「紆余曲折」には、「事情が込み入っていること」という意味もあります。 色々な事情が重なってしまうなど、複雑な事情で結果に辿るまでに手間取ったことを「紆余曲折」という言葉を使用して表現することができます。 例えば、自分の夢を叶えたり目標を叶えたりするまでの道のりを「紆余曲折」という言葉を使って表現することで「これまで色々あって大変だったんだな」ということが伝わります。
「紆余曲折」には、「曲りくねること」という意味もあります。 道や川など移動できるものが、幾重にも屈曲している様子を「紆余曲折」と言います。 例えばドライブをしている時に曲がりくねった道を走る場合に「紆余曲折した道を通る」と表現することで、真っ直ぐではないくねくねした道を走る様子を想像することができます。
「紆余曲折」は、「紆余」と「曲折」の2つの熟語からできている言葉です。 「紆余」には、「うねり曲がること」「ゆとりがあること」という意味があり、 「曲折」には、「曲がりくねっていること」「折れ曲がること」という意味があります。 つまり、「紆余曲折」は同じ「曲がる」という意味のある言葉を重ねて使用することで意味を強調している熟語であることがわかります。 よって、「紆余曲折」の原義は「(道が)曲がっている」になります。 そこから転じて、「事情が込み入っている」という意味でも使われるようになりました。
何かを終えた場面で「紆余曲折」という言葉を使用することで、「色々なことがあったけれど乗り越える事ができたこと」を表現できます。 例えば「目標や夢を叶えたとき」「結婚に至るまでの二人の道のり」などに使用されます。 主な言い回しとしては、
などがあり、「紆余曲折」という言葉を使用することでよい結末を示すことができます。
例文
「紆余曲折がある」「紆余曲折する」という形でも使うことができます。 さらに、「紆余曲折」に
をつけて使用することでビジネス敬語になり、ビジネスシーンなどかしこまった場面で使用することも可能です。
ビジネスシーンなどかしこまった場面では、「色々ありましたが、皆様のお陰で乗り越えることができました」といった感謝の気持ちを表現するのに使用されることが多いです。
例文
「紆余曲折」は、よく人生に対して使用されます。 人生を振り返ってみたときに「色々なことがあった人生だった」と感じる人がほとんどだと思います。 誰もが色々なアクシデントや壁を乗り越えて今があると思いますが、そういった自分の人生を表現するときの決り文句として「紆余曲折」という言葉を使用することが多いです。
「紆余曲折」は、真っ直ぐではない道に対して使うこともできます。
などと道に対して使うと2つ目の意味である「曲がりくねった」という意味になります。 「紆余曲折」は、上述したように「人生」や「物事の良い結末」を表現するために使用されることがほとんどで、道に対して使用するのはあまり耳にしない表現かもしれません
例文
「試行錯誤」は「色々な試みと失敗を繰り返しながら、ある目的に近づくこと」を意味します。 新しい物事を行う際に、何かに取り組みながら解決策を見出すことを表します。 色々と試すだけではなく、失敗を繰り返しながら解決を目指すというのがポイントです。 つまり、「試行錯誤」は「色々な解決策を考えながら適切な方法を見出した」というニュアンスが強い言葉です。 「紆余曲折」は、「色々な事情が込み入って大変だった」という意味で使用される言葉なので微妙なニュアンスの違いがあることがおわかりいただけるかと思います。
例文
「二転三転」は「内容や状況・状態などが何度も変わること」を意味します。 昨日の答えは「YES」だったのに今日になって「NO」に変わるなど何度も言っていることが変わるなど、コロコロと言っていることや状況が変わることを「二転三転する」と言います。 「紆余曲折」も、色々な状況になって複雑な様子を表すので類語に当たります。 ただし、「紆余曲折」の場合はあくまでも「過程」の話であり、複雑な状況になっても最終的な目標や目的がコロコロ変わることはありません。 「二転三転」の場合「やる」と決まってたことを「やらない」という決断を下したり目的としていること事態が変わってしまうことを指す言葉であるとう点で違いがあります。
例文
「五里霧中(ごりむちゅう)」は、「物事の状態が分からず、方針や見通しが全く立たないこと」を指す四字熟語です。 「五里霧中」は、「五里先まで霧で見えない」というのが本来の意味です。 「里」とは距離を指す単位で、「五里」はおよそ「20キロメートル」となります。 つまり「五里霧中」は霧の中に閉じ込められて周りが見えない状態にいることを指していて「目指すべき場所がどこかわからず迷ってしまっている状態」を表しています。 したがって、「五里霧中」は「迷っている」というニュアンスが強い言葉であるということがわかります。 「紆余曲折」は「困難にぶつかっても乗り越えてきた」というニュアンスであり、目的としているものを見失ったり迷ってしまっているという意味では使用されません。
例文
「悪戦苦闘」の意味は、「困難に打ち勝つために懸命に努力をすること」です。 「悪戦」は「不利な苦しい戦い」、「苦闘」は「相手が手強くて苦しい戦いをすること」を意味してる言葉です。 本来は、強敵に対して苦しい状況になりながらも必死に戦うことを意味する四字熟語です。 転じて、トラブルなど色々な状況を乗り越えるために努力をすることを表現する場面でも使用されるようになりました。 「悪戦苦闘」は困難な状況に立たされながらも努力をしている意味で、どちらかと言えば上述した「試行錯誤」に近い表現であると言えるでしょう。
例文
「右往左往」の意味は、「行ったり来たりすること」です。 何か非常事態が起きてパニックになり、右へ左へ行ったり来たりウロウロしてしまっている様子を「右往左往」という言葉を使って表現することができます。 つまり「右往左往」は、「慌てて混乱している」というニュアンスで使用される言葉です。 「紆余曲折」は、「色々な状況や状態になる」という意味で言えば類語になりますが「慌てふためく」「混乱している」というニュアンスでは使用されません。
例文
「前途多難(ぜんとたなん)」の意味は、「これから先に多くの困難があること」です。 「前途」は「ゆくてや、行き先」を意味する言葉で、「多難」は「困難や災難が多い様子」を表す言葉です。 つまり「前途多難」は、「これから先に起きること」に対して使用する言葉です。 反対に「紆余曲折」は、何かを終えたときに使用される言葉です。 したがって「前途多難」も「紆余曲折」も人生を表す言葉として使用されますが、 「前途多難な人生」は「これからの人生に多くの困難や苦労が待ち構えていること」 「紆余曲折な人生」は「多くの困難や苦労があった人生」 といった意味の違いがあります。
例文
「多事多難(たじたなん)」とは「多くの困難や問題があること」です。 「多事多難」と「紆余曲折」も意味が似ていますが微妙に違います。 「多事多難」は困難なことオンリーで、災難や問題が起きてしまうことを指します。 「紆余曲折」は「たくさん変化がある」という意味で、必ずしも事件が次々と起こるという意味ではありません。 「多事多難でした」と言うと「困難ばかりで本当に大変でした」という意味になります。 「紆余曲折でした」は、「困難なことも含め色々なことがありました」というニュアンスになります。
例文
「曲折浮沈」は、「道や川などが折れ曲がっている様子」を言い表す四字熟語で、「色々なことが込み入って手間取ること」という意味でも使用されます。 「曲折」は「曲がりくねっていること」 「浮沈」は「浮いたり沈んだりすること」「栄えたり衰えたりすること」という意味があります。 「紆余曲折」と同じで、「これまでの道のり」として「大変だったけれど、乗り越えることがでいました」というニュアンスで使用されることが多い言葉です。 「紆余曲折」と同義になりますが、一般的に「紆余曲折」を使用されることのほうが圧倒的に多いでと終えるでしょう。
例文
「盤根錯節」は「事情が複雑で解決することが難しいこと」という意味の四字熟語です。 「盤根」は「曲がりくねった根」「錯節」は「入り組んだ木の節」という意味があります。 根っこがはびこって取り除くことが困難になってしまっているように「物事が複雑になってしまっていること」を言い表してします。
例文
「複雑多岐」は、「事情が入り組んでいて、さらに多方面に分かれてしまっている様子」を言い表している四字熟語です。 「複雑」は「物事の事情や関係が入り組んで込み入っていること」という意味があります。 「多岐」は「物事が多方面に分かれていること」という意味です。 物事が複雑に入り組んでしまっている上に多方面に分かれてしまっていて、全体を把握するのが困難な様子を表す場合に使用されます。
例文
「紆余曲折」を意味することわざには「山あり谷あり」があります。 「山あり谷あり」は「山」は「上り調子であること」「谷」は「下り調子」でることを表現していて、「良いこともあれば悪いこともある」という意味で使用されることわざです。 「紆余曲折」も、結果にたどり着くまで「良いことも困難もあったけれど...」という意味なので「山あり 谷あり」と同義になります。
例文
「順風満帆」は、「物事が順調に進むこと」を言い表した四字熟語です。 「順風」の意味は「進む方向に吹く風」です。 「満帆」の意味は「帆をいっぱいに張ること」です。 それらが組み合わさり「順風満帆」は、帆を張った船が追い風を受けぐんぐんと進んでいくことを表現しています。 船が順調に問題なく目的地に向かって進んでいく様子から、「順調に進んでいること」を意味する四字熟語として使用されるようになりました。 「紆余曲折」は「困難など様々なことを乗り越える」という意味であり、決して順調であることを意味している言葉ではないので「順風満帆」は対義語になります。
例文
「猪突猛進」の意味は、「目的に対してがむしゃらに進むこと」です。 「猪突」とは、「猪が向こう見ずに突っ走ること」という意味があります。 「猛進」は「激しい勢いで進むこと」です。 周りを見たり後先を考えることなく、ただひたすらに目標に向かって突き進む様子を言い表した四字熟語です。 例え困難が待ち構えていたとしても、勢いで突き進むというイメージです。
例文
「一路邁進」の意味は、「目的を達成するために進み続けること」です。 「一路」は「一筋に続く道」という意味があり、「ひたすらまっすぐに進む」というニュアンスでも使用することができます。 「邁進」の意味は、「何事をも恐れることなく前進すること」です。 「一路邁進」は、とにかくまっすぐに目的や目標に向かって突き進んでいくことを言い表しているので、色々なことが入り組んでしまっているという意味の「紆余曲折」とは反対の意味になります。
例文
「直往邁進」の意味は、「ためらうことなくまっすぐに突き進むこと」です。 「直往」も「邁進」も「ためらわずにまっすぐに進むこと」を意味する言葉です。 したがって、「直往邁進」は「とにかくまっすぐに突き進むこと」を強調した四字熟語であるということがわかります。 「わきめもふらずに、突き進むこと」というニュアンスで使用されます。
例文
「迂曲曲折」は、よくある誤用です。 単純に「紆余曲折」を間違えて覚えてしまっているパターンでしょう。 「迂曲(うきょく)」は、「うねりまがること」「周り遠いこと」という意味があるので、「迂曲曲折」でも「紆余曲折」と同義になりそうな気がしてしまいます。 しかし、「迂曲」と「曲折」を組み合わせる四字熟語はありません。 「迂曲曲折」は造語なので誤って使用してしまわないよう注意しましょう。
「紆余曲折」の読み方を「うようきょくせつ」と誤って覚えてしまい、無理矢理漢字変換してしまった結果「羽陽曲折」としてしまう人がいます。 「羽陽曲折」という四字熟語も、この世には存在しません。 そもそも、「羽陽」は「地名」や「人名」「酒名」などで使用されていることがありますが、熟語として使用される言葉ではありません。 非常に勘違いされやすいですが、「うようきょくせつ」ではなく「うよきょくせつ」です。
「(道などが)曲がった」の英語は、
などがあります。
There is a winding road ahead of us.
私たちの前にある紆余曲折の道。
「twits and turns」は「紆余曲折」に大変似ている英語表現です。 「twits and turns」は物理的に曲がりくねっている場合も使えますが、事情が込み入っているという意味でも使えます。
This was finally settled after many twits and turns.
紆余曲折を経て、これは一件落着した。
The journey of life has so many twits and turns that you always need to stay calm.
人生の旅に紆余曲折は付き物なので、常に冷静である必要がある。
いかがでしたか? 「紆余曲折」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「紆余曲折」の読み方は「うよきょくせつ」 ✓「紆余曲折」の意味は「事情が込み入っていること」 ✓「紆余曲折」には「曲りくねること」という意味もある ✓「紆余曲折の末」「紆余曲折を経て」でよい結末を示す ✓「紆余曲折ありましたが」「紆余曲折しましたが」でビジネスでも使用可能など