「飼い殺し」には「家畜を死ぬまで飼い続ける」「役に立たない人を養う」「能力を発揮させる仕事を与えずに雇い続ける」の3つの意味があります。「飼い殺し」は「かいごろし」と読み、「飼殺し」と表記することもあります。ビジネスシーンだけでなく恋愛や家族、スポーツの世界でも使用される言葉です。
「飼い殺し」の意味は「従業員に、能力を発揮できる仕事や地位を与えず、雇用し続けること」です。 主に大企業などのビジネスシーンで使われる表現です。 「飼い殺し」には「実力があるのにも関わらず、活躍の場を意図的に与えない」というネガティブなニュアンスがあります。 能力がなく仕事を与えてもらえない人に対しては使えません。 「飼い殺し」は会社に何の得もないわけですが、上司が意地悪で部下の活躍をおもしろく思わない場合などに発生します。度を越すとパワハラにあたります。 そんなことするならリストラすればいいじゃないか!と思いますが、日本は欧米と違い簡単に正社員を解雇することができない背景があります。 また、ネームバリューのある人などをPRのために採用し、入社後は特に何の仕事も与えないというパターンもあります。
「飼い殺し」の読み方は「かいごろし」です。「かいころし」ではないので注意してください。 「飼い殺し」の送り仮名は「飼殺し」とする場合もあります。稀に「飼殺」とする場合もあります。 「買い殺し」と誤字する場合が多いので注意しましょう。
「飼い殺し」の元の意味は「役に立たなくなった家畜を死ぬまで飼っておくこと」です。 老化や怪我が原因で生産性が著しく低くなってしまった家畜を、費用がかかるが慈悲の念や愛着から飼い続けることをいいます。 この原義には、ネガティブな意味はなく、むしろ愛情が感じられますね。 ただし、動物の「飼い殺し」が常に正しい選択とは限りません。 骨折した競走馬は安楽死させることで有名です。 馬は体が重いため、一本足を失うと他の足に大きな負担がかかり、さらなる怪我や病気にかかってしまうことがあるからです。 そのため、馬など一部の動物には「飼い殺し」はむしろ苦痛を与えてしまうことになります。 また、「役に立たなくなった家畜を死ぬまで飼っておくこと」から転じて「役に立たなくなった人を一生養っておくこと」という意味で、人に対して使うこともあります。 これもポジティブな意味で使います。 現代においてビジネスシーンで使われる「飼い殺し」は基本的に、馬の例のように苦痛を与えるものです。
上述した通り、「飼い殺し」はビジネスシーンにおいて実力がある会社員や部下に対して使います。
などの言い回しで使います。 さっそく例文で使い方を確認してみましょう。
例文
野球やサッカーなどのスポーツ界でも「飼い殺し」という言葉は使用されます。 獲得した選手を他の選手との兼ね合いで活躍の場を与えない球団や、出場の機会を与えないくせに他のチームへの移籍も認めないチームを批判する時に使用されます。 ネームバリューがあり宣伝のために入団させたかった、スタメンとしては使えないが他のチームに取得されては困るなどが原因と考えられます。
「ペットを飼い殺しにする」という文脈でも「飼い殺し」という言葉を見受けすることがあります。 ペットは動物なので(家畜ではないが)、元の意味である「死ぬまで飼う」という意味かと思う方もいるかもしれませんが、違います。 ペットの「飼い殺し」とは、「餌や水をろくに与えず、散歩などもさせないまま、飼い続ける」という意味です。 虐待をしたり道端に捨てるなどの完全な飼育放棄ではなく、飼い続けるものの関心を全く寄せることのない飼育方法を指します。 これは別の言い方では「ネグレクト」と言われます。
恋愛における「飼い殺し」とは「愛情を示してくれないのに、関係を断つことは許さない」という行為・態度を指します。 彼氏彼女として愛情や優しさがないのにも関わらず、別れ話を切り出すとちゃんと話を聞いてくれない状態を指します。 夫婦間であれば、夫の浮気が原因で嫁が離婚話をするとすぐに話をはぐらかされ、いつまでも話し合いが進展しない状態を「飼い殺し状態」といいます。 本来は「謝罪をするか」「別れるか」の二者択一なのですが、どちらでもない中途半端な状態を継続させることが「飼い殺し」です。
家族における「飼い殺し」とは「家族に縛られて、自分の自由な時間が奪われる」というニュアンスで使います。 例えば、家事の手伝い、弟や妹の面倒、家業の手伝い、親の介護、過保護の親の束縛などにより、自分自身の意思で好きなことをできないことを「飼い殺し」といいます。
「飼い殺し」は舞台・演劇用語としても使われます。 舞台用語の「飼い殺し」は上記で紹介した意味とは違います。 舞台用語の「飼い殺し」とは、「スタッフがお客様にばれないために舞台の裏などで音を立てずに待機すること」を指します。 また、「予定した待機ではなくアクシデントで役者が舞台上に取り残され、次の展開まで待機しなくてはいけないこと」を「飼い殺し」という場合もあります。
「飼い殺し」の類語には、
などがあります。 「蛇の生殺し」または「生殺し」とは「物事の決着を付けずに相手が困るような中途半端な状態にしておく」という意味です。 「宙ぶらりん」とは「空中にぶら下がった状態」を指します。転じて、「どっちつかずで中途半端な状態」という意味もあります。 「生き地獄」とは「生きながら地獄にあるようなひどい苦しみにあう」という意味です。
例文
「宝の持ち腐れ」とは「役に立つ物や才能があるのにも関わらず、それを発揮しないでいること」を意味する慣用句です。 「実力を発揮できない」というニュアンスでは共通していますが、「宝の持ち腐れ」は自分自身の意識や働き方に問題をいいます。
「飼い殺し」と似た言葉に、
などがあります。 「窓際族」とは「組織で仕事のない部署に追いやられた人たち」を指します。 「窓際族」は「能力がないがクビにはできないので」という文脈で使うことが多い言葉です。(窓際の人たちが必ずしも能力が低いわけではないのでしが) よって、「能力があるのに活躍させない」という意味の「飼い殺し」とはニュアンスが違います。
「飼い殺し」の反対を「社員が自らの意思で活躍できる」と定義すると、
などの言葉が対義語に当たります。 「自由闊達」とは「小さなことにこだわらず広い心でのびのび振る舞うこと」という意味です。 「自由闊達な社風」「自由闊達な組織」などと使うことができます。 「自己裁量」とは「自分で判断し処理すること」を指します。 「自己裁量の大きいベンチャー企業」などと使います。
「家畜を最後まで活かす」という意味の「飼い殺し」の対義語は、
などになります。
「飼い殺し」の英語の直訳はありませんが、下記のように表現することは可能です。
I've been kept in a position that involves no responsibility.
私は責任のない立場に留められている。
My boss underestimates me and won't give me a challenging job.
上司は私を過小評価し、やりがいのある仕事をくれない。
It seems like my boss doesn't want me to succeed.
上司は私に成功してほしくないようだ。
They don't give me any work to do, but jsut keep me on the payroll.
会社は仕事はくれず、ただ給料を支払うのみだ。
恋愛や家族における「自由がない」というニュアンスならば、「奴隷」を意味する、
などを使い表現することが可能です。
I'm tired of being treated like a slave by my family.
家族に奴隷のように扱われるのはもう疲れたよ。
いかがでしたか? 「飼い殺し」の意味と使い方はご理解いただけたでしょうか? 「飼い殺し」は「能力を発揮できる機会を与えず雇い続ける」という意味です。 会社で飼い殺しにされている人は、自分の意見をちゃんと発言することが大切です。 それでも埒が明かない場合は転職も視野に入れて、動いてみましょう。