「尽力」とは文字通り「力をつくす」ことを指します。よって「尽力を尽くす」は「力を尽くすことを尽くす」という意味になり二重表現です。「力を尽くす」または「尽力する」と言い換えるようにしましょう。また「尽力に努める」「尽力を注ぐ」なども意味が重複しており不適切な日本語です。
「尽力」は「力をつくす」という意味です。 特に、他人のために骨を折ることをいい、”あることのために、自分の持っている力をできる限り出す”というイメージです。 「尽力」は「じんりょく」と読みます。 「尽」は音読みで「ジン」、「力」は音読みで「リョク」と読みます。 「尽力を尽くす」は重言(じゅうげん)で誤用です。 「重言」とは「頭痛が痛い」「今現在」のように、同じ意味の言葉を重ねている表現のことを指します。二重表現と同義です。 「重言」は強調するためにあえて使用されることもあり、必ずしも誤用とは限りませんが、「尽力を尽くす」は間違いです。 「尽力を尽くす」ではなく「力を尽くす」もしくは「尽力する」と言い換えるのが正しいです。 「力を尽くす」を強調するために「全力を尽くす」としてもよいです。
「尽力に努める」という表現もよく見聞きしますが、これも重言(二重表現)です。 「努める」の意味が「力をつくす」なので、「尽力」と同義です。 「努める」=「尽力する」=「努力する」です。 「尽力を注ぐ」は完全な二重表現ではありませんが不自然です。 「注ぐ」は「目標からそれないように、何かを流しかける」という意味です。 「尽力を注ぐ」では、「力を尽くすことを注ぐ」ということになりますから、違和感があります。 「注ぐ」を使用するのであれば、「力を注ぐ」が正しい表現です。 「尽力を惜しまない」は正しい表現です。 「惜しまない」は「ためらわずに積極的に取り組む」という意味です。 「尽力を惜しまない」で、「力を尽くすことためらわずに取り組む」という気持ちを言い表すことができます。 「最善を尽くす」も正しい表現です。 「最善になるように力をつくす」という意味です。
例文
「尽力する」「力を尽くす」の類語には、「一生懸命○○する」「勤しむ」「精を出す」「奮励努力する」となどがあります。 「一生懸命」は、「ある限りの力を尽くして全力で取り組む」ことです。 「一生懸命○○する」で「力を尽くして○○をする」という意味になるので、「尽力する」「力を尽くす」と同義になります。 「勤しむ」は、「日々怠ることなくはげむ」という意味です。 「日々、熱心に努め励むこと」を「勤しむ」といいます。 なので、「○○するために力を入れる」という意味の「尽力する」「力を尽くす」と類語であるといえます。 「精を出す」は「一生懸命に根気よく取り組む」という意味で、何か成し遂げるために力を入れていく気持ちを言い表すことができます。 「尽力をする」「力を尽くす」とは異なり、「精を出す」には「コツコツと物事を行う」というニュアンスも含みます。 「精励する」「精進する」「精勤する」も、「一つのことに精神を集中して、一生懸命努力します」という意味で、自分の決心や決意を表明するときに使用される類語です。 「奮励努力する」は「気を奮い立たせて一生懸命に頑張ること」を意味します。 「励む」は「ある目的に向かって心を奮い立たせること」です。 「奮励努力する」と「励む」には「気持ちを奮い立たせる」という意味が含まれる点で「尽力する」「力を尽くす」とは異なります。
「寄与(きよ)」の意味は「世のため、人のために力を尽くすこと」です。 人の生活向上や社会、国家の発展のために役立つことを「寄与する」といいます。 「献身(けんしん)」の意味は「一身をささげて尽くすこと」です。 自分の利害損失を考えないで人や物事に力を尽くすことを「献身的」などと言い表します。 「貢献(こうけん)」の意味は「ある物事や社会の役立つように力を尽くすこと」です。 「寄与」「献身」「貢献」は、共通して「ある事や人のために、自分の持っている力を出来る限り出して力になること」という意味がありますが、「献身」にはさらに「自分の利害損失を考えない」という自己犠牲の意味合いが含まれます。 「尽力」は「力を注ぐ」という行為そのものを指し、「寄与」「献身」「貢献」は「他人のために力を尽くすこと」を指す言葉です。
「尽力」は目上の人が自分のために協力してくれたり、労力をかけて助けてくれたことに対するお礼の気持ちを伝えるときに使用します。 目上の人が力を貸してくれたことに対して「尽力」を使用する場合は、尊敬を表す接頭語の「ご」をつけて「ご尽力」にして、「ご尽力いただき〜」「ご尽力賜り〜」というように使用します。 「ご尽力いただき」は、「ご尽力」に「もらう」の謙譲語である「いただく」を使用した敬語表現です。謙譲語を使用することで自分をへりくだり、相手に敬意を示しています。 「ご尽力賜り」も、「ご尽力」に「もらう」の謙譲語である「賜る」をつけた敬語表現です。 さらに後ろに「ありがとうございます」「感謝申し上げます」とお礼の言葉を続けることで、丁寧に感謝の気持ちを伝えることができます。
例文
また、「尽力」は感謝を述べるときだけでなく、お詫び・謝罪をするときにも使います。 例えば相手が労力をかけて、助けてくれたにも関わらず、成果や結果が出なかった時に用います。 この場合も労力をかけてくれたのは「相手」なので、「尽力」に尊敬を表す接頭語の「ご」をつけて、「ご尽力」として、その後に「申し訳ございません」「お詫び申し上げます」など謝罪の言葉を続けて、お詫びの気持ちを伝えます。
例文
「尽力」は、面接の志望動機など「力をつくします」という自分の意思表明をする場面で使用することもできます。 自分の意思表明をするときは、
という使われ方をします。 「尽力いたします」は、「尽力」に「する」の丁重語である「いたす」と丁寧語の「ます」をつけた丁寧な敬語表現です。 丁重語とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用される敬語表現のことをいいます。 「尽力する所存です」は「尽力する」に「思う」の謙譲語である「所存」と丁寧語の「です」をつけた敬語表現で、「力をつくそうと思います」という意味です。 「所存です」は、「思いを常に持ち続けている」「思いを常に持ち続けたい」といったニュアンスを持つため、自分の考えや思いを伝えるのに適した表現です。 「尽力してまいります」は、「尽力」に丁重語の「まいる」と丁寧語の「ます」をつけた敬語表現で、「力をつくしていきます」意味です。 「尽力させていただきます」は、「尽力」に「させてもらう」の謙譲語の「させていただく」と、丁寧語の「ます」をつけた敬語表現で、「力をつくさせてもらいます」という意味です。 ただ、「させていただく」という表現は本来相手から許可を得てから使う文言になります。 文化庁は「基本的に他者の許可を得た上で、自分が行うことについて、その恩恵を受けることに対して敬意を払っている場合」に使うのが適切であるとしています。 したがって「せていただきます」と相手の許可を得ずに一方的に宣言するのは、不適切なので注意しましょう。
例文
「尽力」を意味する英語は、
などがあります。 動詞「尽力する」は英語で、
She has devoted herself to restoration support following the Great East Japan earthquake.
東日本大震災後の復興支援に彼女は尽力してきた。
目上の人の「尽力」つまり「お力添え」「ご助力」というニュアンスならば、
などが当てはまります。
Thanks to everyone's support, proposals have been submitted on the major problems in the Diet of Japan.
皆様の尽力のおかげで、日本の国会で主要な問題に関する議案が提出することができた。