ビジネスシーンなどかしこまった場面でよく用いられている「賜る」という言葉を上手く使えていますか? 「賜ります」などの表現は堅苦しく抵抗を感じる方もいるのではないでしょうか。 そこで今回は、「賜る」「賜ります」の意味や語源、正しい送り仮名を解説します。また明日から実践できるビジネスシーンでの使い方や類語を含めた類似表現を例文付きでわかりやすく紹介します。また、混同されやすい「承る」との違いも解説します。
「賜る」は「たまわ・る」と読みます。 「賜る」には大きくわけて、「もらう」の謙譲語 と 「与える」の尊敬語 の2つの意味があります。 「もらう」の謙譲語としての「賜る」は、「目上の人からものをいただく・ちょうだいする」という意味を持ちます。 「与える」の尊敬語としての「賜る」は、「目上の人が物などをくださる」という意味を持ちます。目上の人が、目下の人になにかをくれる(与える)という状態を表します。 目上の相手の厚意からくる、物品や意見などの言葉を受け取る際に使います。 また、辞書には「神の許可を得て、通行を許してもらう」という意味も記されています。“神”という言葉が使われていることからも、かなりの目上の人からという事が分かります。「もらうには恐れ多いものを受け取った時」に使用します。
「賜」という字は、「貝」偏に「易」と書きます。 送り仮名は、原則「賜る」です。 常用漢字表や辞書などに記載されているのは「賜る」なので、「賜る」を使っていきましょう。 しかし内閣告示・内閣訓令の「送り仮名の付け方」においても「賜る」という送り仮名が本則として定められました。ですが、「送り仮名の付け方」で「賜わる」も許容すると言われています。 すなわち、原則「賜わる」とされていますが「賜わる」と書いていても誤用ではありません。 パソコンの変換でも「賜わる」と出てきますので、「賜わる」が見慣れている人も多くいるかと思います。 ただ、原則「賜る」であるということは念頭に置いておきましょう。
「賜る」や「賜ります」はビジネスシーンで使うことが多いです。とても丁寧な表現になるたかしこまった印象が大きくなります。 上司などから受けた厚意であっても親しい間柄や何度もあるようなことなど日頃から使うことは、相手に違和感や不快感を与えかねません。 そのため使い方や使い過ぎには注意が必要です。過剰な敬語使用として慇懃無礼(いんぎんぶれい)な印象を与える場合があります。 謙譲語としての「賜る」は、<目上の人からものをいただく・ちょうだいする>という意味を持ちます。目上の相手を立てながら自分がいただく様子を表します。
謙譲語としての「賜る」の例文
一方、尊敬語としての「賜る」は、<目上の人が物などをくださる>という意味を持ちます。目上の人が、目下の人になにかをくれる(与える)という状態を表します。
尊敬語としての「賜る」の例文
「賜る」と似た言葉として、「承る(うけたまわ・る)」という言葉があります。 ビジネスシーンでもどちらを使えばいいか、どのようなシーンで使えばいいか迷うこともあると思います。 先程も説明したように、「賜る」には目上の人から物や言葉をもらうときや、目上の人にお願いして何かをしてもらうときに使います。 そのため相手も主語になることがあります。 また、相手がとても位の高い方から「身に余るような恩恵を受けた」という場合や厳粛な場面での挨拶やスピーチなどに「賜る」を使うことができるでしょう。 「承る」には何か仕事や注文を受けた時など目上の人からの指示を了承した時に使います。そのため主語は自分自身のみになります。 「承る」は、「引き受ける」や「聞く」の謙譲語になるので物には使用されずに、事柄のやりとりに使用されます。 「承ります」には「了解しました」や「承知しました」の意味があるので、一般的なことを引き受けた時や何度もあるようなことに対して使用しやすくなっています。
謙譲語としての「賜る」は、「もらう」や「受け取る」という意味を持つので、言い換えるならば「頂く」や「拝受」になります。 「取引先より記念品を頂いた」とすることにより「取引先への感謝の気持ち」を含ませることができます。また「拝受」という言葉には目上の人より「受け取る」意味があるので、「社長賞を拝受いたしました」など「拝み受け取る」姿勢を表します。そのため、謙譲語として使用できます。 尊敬語としての「賜る」は「くれる」「与える」という意味ですので、言い換えるのであれば「下さる」となります。 「取引先が下さった記念品」とすることにより「取引先は目上の人であり、記念品をもらうこと自体が名誉なこと」であることを相手に伝えることができます。
「賜る」「賜ります」について理解できたでしょうか?
社会人として、言葉の意味などをしっかりと理解し正しく使うよう心がけましょう!
元NHKアナウンサーの著者が教科書通りの敬語ではなく、様々なシーンで使うことができる生きた敬語表現を紹介しています。文法的に正しい敬語でも、言い回しや場面によっては相手に不快感を与えてしまう場合があります。こちらの本では ”気の利いた敬語” の使い方を、言葉のプロがコンパクトに解説しています。
ビジネスシーンでの正しい敬語の使い方から身だしなみ、電話対応などビジネスマナーについて幅広く書かれている書籍です。新入社員からベテラン社員まで使える大変便利な一冊です。イラスト付きで分かりやすくまとめられているので、スキマ時間でスラスラと読むことができます。