「お伺いさせてただきます」という敬語表現は誤用です。ビジネスシーンでもよく耳にする表現だと思いますが、正しい敬語を使用するように注意しましょう。今回は「お伺いさせてただきます」がなぜ誤用なのか詳しく解説します。また、「お伺いさせてただきます」の正しい敬語表現や打ち合わせ依頼メールのポイントなども紹介しますのでぜひ参考にしてください。
結論から言うと「お伺いさせていただきます」は正しい敬語ではありません。 何が問題なのでしょうか?
まず「伺う」単体で、「行く」の謙譲語です。 謙譲語とは、自分をへりくだり、動作の対象を高める敬語です。 「お伺いする」は、謙譲語「伺う」にさらに、謙譲を表す接頭語「お」を付けたもので、一般化されていますが厳密には二重敬語で誤用です。 二重敬語とは一つの語に対して同じ種類の敬語を二つ以上用いることを指します。
また「させていただきます」は「させていただく」に丁寧語「ます」が付いたものです。 「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語です。 よって「お伺いさせていただきます」には謙譲語が三つも使用されており、三重敬語にあたります。 さらに「させていただく」という表現は本来相手から許可を得てから使う文言になります。 文化庁は「基本的に他者の許可を得た上で、自分が行うことについて、その恩恵を受けることに対して敬意を払っている場合」に使うのが適切であるとしています。 したがって、「お伺いさせていただきます」と相手の許可を得ずに一方的に宣言するのは、不適切なので注意しましょう。 相手からの許可を取り付けてから発言すれば問題はありません。
敬語とは関係ありませんが、「伺う」を「窺う」「窺える」の意で使うのは誤りです。 「窺う」は「うかがう」と読みます。 「窺」のもつ意味は、「うかがう・のぞく・ねらう」です。 様子を密かにさぐったり、そっと様子をのぞき見る様子を「窺う」「窺える」といいます。 また「窺う」「窺える」は、「様子を見る」という意味もあります。 「伺う」は、「行く」という自分の行動をへりくだることで相手に敬意を示す言葉なので、「窺う」「窺える」とは意味の異なる言葉です。 どちらも読み方は同じですが、混合してしまわないように注意しましょう。
「お伺いさせてください」も正しい敬語表現ではありません。 「お伺いさせてください」は、謙譲語「伺う」にさらに、謙譲を表す接頭語「お」を付けて、「ください」をつけています。 したがって、「お伺いさせてください」も二重敬語なので誤用です。 また、「ください」は「あたえる・くれる」の尊敬語「くださる」の命令形です。 そのため「お伺いさせてください」では、「伺わせてくれ」という一方的に要望する意が強いため、ビジネスシーンでの使用はNGです。
「伺わせていただきます」も正しい敬語表現ではありません。 「伺わせていただきます」は、「伺う」という謙譲語に、「させてもらう」の謙譲語を重ねているため二重敬語で誤用となります。 さらに、「させていただきます」は「させていただく」に丁寧語「ます」が付いたものです。 「させていただく」という表現は、本来相手から許可を得てから使う文言になります。 相手からの許可を得ている場合、問題ありませんが一方的に宣言するような使い方は誤用です。
「お伺い申し上げる」は、謙譲を表す接頭語「お」に、謙譲語の「伺う」と「申し上げる」を使用している三重敬語です。 「お伺いいたす」なども同じく三重敬語または二重敬語にあたります。 「お」「伺う」「いたす」は、すべて謙譲語です。 「いたす」は厳密には丁重語なので、謙譲語の一種ですが種類が違うので二重敬語とみることも可能です。 「丁重語」とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用されます。 例えば「昨日から弟の家で勉強をしております」の「おります」は、弟へ敬意を示しているのではなく話を聞いている人に敬意を示している丁重語です。丁重語は「謙譲語Ⅱ」とも言われます。
シンプルに「伺います」が正しい敬語です。 謙譲語「伺う」に、丁寧語「ます」が付いた形です。 この表現は敬語の種類が違うので二重敬語にはなりません。 ただし「伺います」は、行く先に敬意を払う相手がいない場合には使うことができません。 「休みを利用して、旅行で沖縄に伺います」といった使い方は、誤用なので注意しましょう。 「伺ってもよろしいでしょうか」「伺いたいのですが、〜」「伺うことができません」「伺いました」などの使い方をします。
「伺います」の例文
「参ります」は「行く」の丁重語+丁寧語の「ます」です。 丁重語は、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用されます。 例えば「明日から弟は、海外に参ります」は、弟に対して敬意を示しているわけではなく、聞いている相手に敬意を示すために「参る」という丁重語を使用しているので適切です。 しかし、「社長の自宅へ行く」のように目上の人の元へ行く場合、目上の人に対して敬意を示さなければならないため丁重語である「参ります」は使用できません。「社長の自宅へ伺う」が正しい敬語表現となります。
「参ります」の例文
ビジネスシーンでメールを送信する際に大切なことは、ひと目で何の内容のメールであるのかわかる・判断できることです。 そのためにも打ち合わせ依頼の件名は、 【件名】お打ち合わせ日時のご相談 といったように、何を依頼したメールであるのか題名をみてひと目でわかることが理想的です。
株式会社○○○○ 広報部 ○○ ○○様 といったように、先方の会社名・部署名・氏名をはじめに入れるのもビジネスメールを書くときの常識です。 部署がわからないときは省略し、名前がわからないときは「担当者様」と書きましょう。 そして、挨拶の言葉を入れます。 「いつもお世話になっております」が定番。はじめてメールする場合は「突然のご連絡失礼いたします」「はじめまして」と書き、「株式会社○○の斎藤と申します」と名乗ります。
打ち合わせ依頼メールは、相手と日程を調整するために送っています。 「○月○日(月)14時に伺ってもよろしいでしょうか?」などと、自分の都合を押し付けるのは失礼です。 かといって、「いつがよろしいですか?」と丸投げにされても相手が困ってしまいます。 候補日をいくつかあげて相手の都合を優先するようにしましょう。 【お打ち合わせ候補日】 ・12月11日(金)14時〜 ・12月14日(月)15時〜 ・12月17日(木)14時〜 といったように、候補日は3日以上あげておくのが基本です。 すべて都合が悪いという場合もあるので、「いずれの日程もご都合の悪い時は、ご遠慮なくご都合をお知らせくださいませ」と一言添えておきましょう。 それから、「30分程度を予定しています」といったように所要時間も伝えておくと相手もスケジュールを立てやすいです。
「お伺いさせてただきます」がなぜ誤用なのか理解していただけましたか?