「ご回答」は「質問・要求などに対して答えること」という意味で使用される敬語表現です。「ご回答」を自分に対して使用するのは間違いだという人も多いですが、「ご回答」の「ご」は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりえるということをご存知でしょうか。今回は「ご回答」の使い方を例文付きで解説します。また「ご回答」の類語表現や対義語も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「回答」の意味は「質問・要求などに対して答えること」です。 「回答」の「回」は「まわす」という意味の漢字なので、相手からの質問に対応して「答え」を「かえす」という意味合いになります。 同じ読みの「解答」という言葉もあります。 同じ読みでも、意味は異なるので文章で使用する場合は間違わないように気をつけましょう。
「ご」は敬語を表す接頭語です。 漢字にすると「御」です。 接頭語「ご」の敬語の種類は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりえます。 「ご回答」の「ご」も同様です。 目上の人が回答するならば「ご回答」の「ご」は尊敬語です。 自分が目上の人に回答するならば「ご」は謙譲語になります。 「回答」という言葉をただ丁寧にいうだけなら「ご」は丁寧語です。 したがって、自分が回答することを「ご回答」とするのは間違っていると主張されることが多くありますが、実際には正しい敬語表現にあたります。
接頭語「御」には「ご」以外にも「お」という読み方があります。 「ご」も「お」もどちらも敬語です。 ただし「お回答」という言い方はしません。 「ご」と「お」の使い分けは、つける言葉が漢語であるか和語であるかです。 ”和語”は訓読みをする熟語で、”漢語”は音読みをする熟語のことをいいます。 和語には「お」をつけて、漢語には「ご」をつけます。 「回答」も音読みをする漢語なので「ご」をつけて「ご回答」となります。 ただし、必ずしも和語だから「お」漢語だから「ご」というわけではありません。 例えば、漢語でも「食事」を「ご食事」といわないように、例外もあるので注意しましょう。 また、「お返事」「ご返事」のように「お」と「ご」どちらも使える場合もあります。
「ご回答ください」で上司など敬意を示すべき相手に「回答してほしい」と伝えることができます。 この場合の「ご回答」は、敬意を示す相手が質問をする立場にあるので、「回答」につく「ご」は尊敬語です。さらに「くれ」の尊敬語である「ください」をつけて「ご回答ください」になります。 「ご回答ください」は正しい敬語ですが、「くれ」の尊敬語である「ください」を使用した命令文なので、一方的に要望・要求するようなニュアンスになってしまいます。目上の人に使う場合はより丁寧な表現にした方がよいでしょう。 目上の人に伝えるのであれば、
といったほうが、丁寧な敬語表現になります。
例文
「ご回答の程」は、「回答してもらうよう」の敬語表現です。 「ご回答の程」で、相手に回答することをお願いする時に使用できる表現になります。 回答をするのは相手なので、接頭語の「ご」は尊敬語です。 「の程」は、「〜してもらうよう」「〜してくれるよう」という意味があります。 「ご回答ください」「ご回答願います」は上述したように、一方的に要望・要求するようなニュアンスになってしまいますが、「ご回答の程」とすることで断定を避け、表現を和らげることができます。
例文
「ご回答を頂戴する」は、「回答をもらう」の敬語表現です。 この場合の「ご」も、質問をするのは目上の人なので尊敬語になります。 「ご回答を頂戴する」は「ご回答」に「もらう」の謙譲語である「頂戴する」をつけています。 謙譲語である「頂戴する」を使用することによって、質問してもらう自分をへりくだり相手に敬意を示すことができるので、丁寧な敬語表現です。 「頂戴する」は平仮名で書いても問題ありませんが、漢字で書いたほうがよりかしこまった文章になります。
例文
「ご回答いただく」も「回答をもらう」の敬語表現です。 相手に回答をしてもらう場面で「ご回答いただく」と使用します。 「ご回答いただく」の「ご」も、相手が回答をするので尊敬語です。 「いただく」は、「もらう」の謙譲語です。 謙譲語を使用することで、自分をへりくだり相手に敬意を示す丁寧な敬語表現になります。
例文
「ご回答お持ちしております」は、「回答してもらうことを待っています」という意味の敬語表現です。 この場合の回答につく接頭語の「お」は尊敬語です。 「お待ちして」の「お」は、待っているのが自分なので謙譲語になります。 「おります」は、「いる」の丁重語の「おる」に、丁寧語の「ます」をつけています。 「お待ちしております」は単純に「待っている」というよりも、「待望している・願っている」という意味合いが強い言葉になります。 目上の人に「回答してほしい」とお願いをする場面で使用されます。 催促していると思われないためにも、「ご回答お待ちしております」などと柔らかい言葉で伝えたほうが失礼がありません。
例文
「ご回答ありがとうございます」は、回答してもらったときの返事として使用されます。 相手が回答してくれた時の返事なので「回答」につく「ご」は尊敬語です。 回答をしてもらったら、「相手が対応をしてくれた」ということに対してのお礼の気持ちを伝えることも大切です。 ビジネスシーンでも、取引先の人に何か質問をしたりする場面は非常に多いです。 相手が回答をしてくれたら、必ず「ご回答ありがとうございます」でお礼の気持ちを伝えましょう。
例文
「ご回答があります」はよく誤用だと勘違いされている代表的な敬語表現です。 『自分が回答しているのに、敬語「ご」を付けるのはおかしい!』という理論です。 しかし、この主張は間違っています。 「ご回答があります」の「ご」は謙譲語なので、正しい敬語表現になります。 「ご回答がございます」とするとより丁寧になります。 「ございます」は「ござる」と「ます」で成り立っています。 「ござる」は「ある」の丁重語です。 「ます」は丁寧語です。 「丁重語」とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用されます。 例えば「昨日から弟の家で勉強をしております」の「おります」は、弟へ敬意を示しているのではなく話を聞いている人に敬意を示している丁重語です。丁重語は「謙譲語Ⅱ」とも言われます。 したがって「ご回答がございます」は、謙譲語+丁重語+丁寧語なので、二重敬語ではないといえます。 ただ、「ご回答があります」より「ご回答がございます」の方が自然です。 「質問」を「ご回答」と謙譲語にするならば、文末も「ございます」と丁重語にした方がバランスがよいからです。 「あります」を使いたい場合は「回答があります」とした方がスッキリとした印象になります。
例文
「ご回答致します」は、「回答します」の敬語表現です。 「回答」に謙譲語の「ご」をつけて、「する」の丁重語である「致す」に、丁寧語の「ます」をつけています。 「ご回答致します」は正しい敬語表現ですが、相手に面と向かって「回答します」と伝えたい場合は、「お答え致します」のほうが自然です。
例文
「ご回答申し上げる」は、「回答を言います」の敬語表現です。 「申し上げる」は、「言う」の謙譲語です。 「ご回答申し上げる」で、「回答を言わせていただきます」という意味になります。 「ご回答申し上げる」は、謙譲語の「ご」をつけた「ご回答」に、言うの謙譲語である「申し上げる」をつけた丁寧な表現です。 「申し上げる」はとても丁寧な印象を与え、またかしこまった場面でも用いることのできるフレーズとなっています。 文章で使用する場合、「申し上げる」か「申しあげる」のどちらを使用するべきなのか迷う人も多いと思いますが、動詞として使用する場合は漢字表記にして、補助動詞として使用する場合は平仮名表記にするという決まりがあります。したがって、「ご回答申し上げる」の場合は漢字で表記するのが適切です。
例文
「ご回答させてください」「ご回答させていただく」は、上司や取引先の相手など目上の人に「回答させてほしい」とお願いする場面で使用される敬語表現です。 回答をするのは自分なので、「質問」につく「お」は謙譲語になります。 「ご回答させてください」は「ご回答」に、「させる」と「くれ」の尊敬語である「ください」をつけています。 正しい敬語ですが、命令文なので一方的に要望・要求するようなニュアンスになってしまいます。 「ご回答させていただく」は、「回答」に謙譲語の「ご」と、「させてもらう」も謙譲語である「させていただく」をつけているので、二重敬語になってしまいます。 ビジネスシーンなどではよく使用されていますが、本来は間違った敬語表現なので使用は避けたほうが良いでしょう。「質問させていただく」であれば問題ありません。 さらに、「させていただく」という表現は本来相手から許可を得てから使う文言になります。 文化庁は「基本的に他者の許可を得た上で、自分が行うことについて、その恩恵を受けることに対して敬意を払っている場合」に使うのが適切であるとしています。 したがって、「回答させていただきます」と相手の許可を得ずに一方的に宣言するのは、不適切なので注意しましょう。 相手からの許可を取り付けてから発言すれば問題はありません。
例文
「ご回答差し上げる」は、「回答を与える」という意味の敬語表現です。 「差し上げる」は、「与える」の謙譲語です。 「回答」につく接頭語の「ご」は謙譲語で、「差し上げる」も謙譲語なので、二重敬語だと判断してしまいがちですが、二重敬語は一つの語に対して同じ種類の敬語を使ってしまうことです。 「ご回答」の「ご」は「回答」についていて、「差し上げる」は「与える」を謙譲語にしたものなので二重敬語にはなりません。 ただ、「差し上げる」は元の言葉が「与える」なので、「回答してあげる」と上から目線に聞こえてしまって不快感を与える可能性があります。 「ご回答申し上げます」など丁寧な表現で伝えたほうが良いでしょう。
例文
「ご回答が遅くなり」は、相手からの質問に対して答えるのが遅っくなってしまったことをお詫びする場面で使用されます。 この場合の「ご」も、回答をするのは自分なので謙譲語です。 相手が「質問をする」というアクションをとってくれているのであれば、本来は迅速に対応するべきです。しかし、確認してからではないと答えることができないなどすぐに答えられない時もあります。 そういった場面では、必ず「ご回答が遅くなり大変申し訳ありません」というように、お詫びの言葉を述べましょう。
例文
「解答」の意味は「問題を解いて答えを出すこと。また、その答え」です。 「解答」の「解」は「とく」と意味の漢字なので、試験の設問や問題点を「解いて」「答え」を出す、という意味合いになります。 「解答」は「返事」という意味合いではなく、謎解きをして答えを導き出す、という意味なので、「回答」と混同しないようにしましょう。 英語で表すならば、「回答」は「レスポンス」で、「解答」は「アンサー」と覚えておくと分かりやすいです。
「ご返答」は、「返答」に接頭語の「ご」をつけた表現です。 「返答」は「問われたことに答えること」「呼ばれたときのうけこたえ」を意味します。 相手から何らかのアクションを受けて、それに返事をすることを表します。 例えば、「Aさんがどこにいるか知ってる?」「二階にいるよ」といったように、相手の問いかけに対してこたえることを”返答”と言います。「返答に窮する」「ノックしても返答がない」などと使います。 「返答」につく接頭語「ご」の敬語の種類も、文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりえます。 相手が答えを返すときは「尊敬語」、自分が相手に答えを返すときは「謙譲語」、ただ「回答」を丁寧に言うだけなら「丁寧語」です。
「ご応答」は、「応答」に接頭語の「ご」をつけた言葉です。 「応答」は「問いや話しかけに答えること」「うけこたえ」を意味します。 ビジネスシーンにおいては、プレゼンなどで発表者が聞き手からの質問に答えることを”応答”と言います。 相手が応答する場合の接頭語の「ご」は尊敬語、自分が応答する場合の接頭語の「お」は謙譲語、「応答」を丁寧に言うだけの「ご」は丁寧語になります。 「ご回答」は、質問や要求に対する返事ですが、「ご応答」は主に呼びかけに対する答えを意味します。
「ご質問」は、「質問」に接頭語の「ご」をつけた言葉です。 「質問」の意味は「わからないことや疑問点をたずねて説明を求めること」です。 この場合の「質」は「問いただす」という意味で使用されています。 「問」も、「といただす・たずねる」という意味で使用されています。 つまり、「質問」は同じ意味のある漢字を重ねることで意味を強調している熟語です。 自分がわからないことや、知りたいことを相手に述べるように求めることを「質問をする」といいます。 「質問」につく接頭語の「ご」も、尊敬語、謙譲語、丁寧語のどれにでもなりえます。 目上の人がする質問ならば「ご質問」の「ご」は尊敬語です。 自分が目上の人にする質問ならば「ご」は謙譲語になります。 「質問」という言葉をただ丁寧にいうだけなら「ご」は丁寧語です。 自分が質問をするときに「ご質問」と言い表しても間違いではありません。
「お問い合わせ」は、「問い合わせ」に接頭語の「お」がついたものです。 「問い合わせ」の意味は、「問い合わせること」です。 「問い合せ」は、「AはBということで間違いないですか?」というように、不明な点を相手に確かめることです。 「質問」は自分自身で全くわからないことを相手に聞き、相手に説明をしてもらうということなので、「問い合わせ」のほうがわからない事や、知りたい事が明瞭であると言えます。 「問い合わせ」につく接頭語「ご」の敬語の種類も、文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりえます。 目上の人がする問い合せるならば「お問い合わせ」の「お」は尊敬語です。 自分が目上の人に問い合わせるならば「お」は謙譲語になります。 「問い合わせ」という言葉をただ丁寧にいうだけなら「お」は丁寧語です。
「ご質疑」は、「質疑」に接頭語の「ご」がついたものです。 「質疑」の意味は「疑問の点を問いただすこと」です。 例えばビジネスシーンではプレゼンをした人に対して、内容に関する疑問点や・問題を明らかにするために説明や見解を求めることを「質疑」といいます。 「質疑」は、「議案」などの内容についての疑問のみを相手に問うときに使用される言葉なので、「ご質問」よりもっと限定的であると言えます。 「質疑」は、「質疑応答」といった表現で使用されることが多いです。 質疑をして回答をするという、やりとりを「質疑応答」と言います。 「ご質疑」という敬語表現で使用されることはあまりありませんが、「ご質疑をお待ちしています」「ご質疑・ご討論ありがとうございました」というように、尊敬語として使われ方をすることがあります。 「質疑」につける接頭語の「ご」も、自分が質疑をする立場なら謙譲語になります。 「ご質疑させてください」など、正しい敬語表現ではありますが、使われることはあまりありません。 ちなみに、「ご質議」は誤用です。「ご質疑」が正しい表記なので間違えないように注意しましょう。
「回答」は「レスポンス」で、「解答」は「アンサー」と上述しました。 しかしながら厳密には英語「answer」には「解答」と「回答」の両方の意味合いがあります。 「response」には「回答」の意味しかありません。 「回答」を意味する「answer」を堅い語に言い換えると「reply」です。 「response」の動詞は「respond」です。
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いかがでしたか? 「ご回答」について理解を深めていただけたでしょうか。 「ご回答」について最後にまとめます。