「差し上げる」という言葉をご存知でしょうか。「お電話差し上げる」など目上の人に対して使うのは失礼であると言われています。そこで今回は「差し上げる」の意味や使い方、ビジネスで使う際の注意点について解説します。言い換え表現や類語、英語も紹介するのでぜひ参考にしてみてください。
「差し上げる」の読み方は「さしあげる」です。 「差し上げる」の「差し」は”動詞に付いて、語調を整えたり意味を強めたりする接頭語”です。
「差し上げる」の意味は、「やる」「与える」の謙譲語となります。 「差し上げる」は「奉仕の気持ちをもって捧げる」というニュアンスが含まれます。 「花を差し上げる」といったように「与える」という意味としてだけでなく、「ご説明して差し上げます」といったように「やる」という行為をするといった意味でも使うことができます。
「差し上げる」は謙譲語です。自分を謙って相手を立てる言葉なので、相手の動作に「差し上げる」を使うと失礼に当たります。 例えば目上の相手に「◯◯さんにもお花を差し上げましたか?」と聞くと、目上の相手を下げているという表現になってしまいます。
「差し上げる」という表現は、相手に恩恵を与える場合にのみ使います。 例えば「参加者全員に記念品を差し上げます」といったように使います。 しかし、謝礼やお給料など相手にとって対価となるものに対しては使えません。 相手がもらって当たり前のものに対しては「お渡しします」
「差し上げる」は「与える」の謙譲語なので、自分を謙り相手を立てていることには間違いないのですが、そもそもの「与える」というニュアンスが相手に上から目線に聞こえてしまい不快感を与えてしまう可能性があります。 相手にとって利益やメリットがある内容でないと偉そうで厚かましい響きになってしまうので注意してください。 例えば、頼んでもいないのに「教えて差し上げる」と言われたらどう思うでしょうか。 「教えてやる」と上から目線のように感じ、不快感を持ってしまいます。 こういった場合は「教えて差し上げる」ではなく、「必要であればご説明します」「良ければご案内します」と言い換えた方が適切になります。
「お電話差し上げます」や「メールを差し上げる」は相手がこちらからの電話やメールを望んでいる場合にのみ使うことができます。 例えば、取引先や顧客様から電話があった際に担当者が不在で、戻り次第こちらから電話をすることを伝える場合に「担当者が戻り次第、折返しお電話差し上げます」と使います。 ただ何度も説明しているように目上の相手に対して、いくら相手が電話を望んでいるとはいえ「電話をしてあげる」といったニュアンスが含まれる表現です。 そのためなるべく「お電話差し上げる」「メールを差し上げる」といった表現は避け「折返しお電話いたします」「ご連絡します」と言い換える方が良いでしょう。
物を渡したい相手に会えずに、他の誰かに代わりに渡してもらうときに「○○さんに差し上げてください」とお願いをする場合は同等以下の相手に使いましょう。 例えば、AさんにBさんへ物を渡すようにお願いしたとすると、Bさんへ直接差し上げることになるのはAさんです。 要するに、Aさんの行為に謙譲語である「差し上げる」という言葉を使うことになり、Aさんを謙らせてしまう表現となります。 いくらBさんよりAさんの身分が低かったとしても、自分より低くない場合は失礼に当たります。 同僚や部下以外の人に物の受け渡しをお願いする際は「○○さんへお手渡しください」「○○さんにお渡しいただけますでしょうか」などと使いましょう。
「させていただく」は使役の助動詞「させて」+「もらう」の謙譲語「いただく」で成り立っています。 「させていただく」は、「相手に許可を得て、ある行為を遠慮しながらすること」を意味します。 要するに「させていただく」は、「図々しくて申し訳ないが、相手が許可してくれたから〜する」という意味合いになります。
「ご案内して差し上げます」→「ご案内させていただきます」 「ご説明して差し上げます」→「ご説明させていただきます」 「ご連絡差し上げます」→「ご連絡させていただきます」
ビジネスシーンでよく使われている「いたす」は、「する」の謙譲語です。 「いたします」は、さらに丁寧語の「ます」が付いた言葉であり、「〜します」「〜させてもらいます」「〜させていただきます」と自ら率先して相手のために何かをする、という意味合いが含まれています。 そのため目上の人や取引先などビジネスシーンなど、相手に敬意を払う場面で使います。
「ご案内して差し上げます」→「ご案内いたします」 「ご説明して差し上げます」→「ご説明いたします」 「ご連絡差し上げます」→「ご連絡いたします」
「進呈(しんてい)」は「人にものを差し上げること」を意味します。 「進呈」は、人に気軽に物をあげるとき、親しい人に個人的な贈り物を渡すときに使います。 「進呈」には「感謝を込めて贈る」という意味合いが含まれるので、目上の人に贈り物をする場合にも使うことができます。
例文
「贈呈(ぞうてい)」は「人に物を贈ること」「物を差し上げること」を意味します。 「贈呈」は正式な場で贈り物をするという意味合いが強いため、形式ばった場面で使います。 「贈呈」は、主に目上の人から目下の人に何かを物を贈る場合に使う表現です。
例文
「寄贈」は「物を送り与えること」を意味しています。 「寄贈」は、学校や図書館といった公共機関に物を贈るときに使うため、日常会話においてはあまり使うことがないです。 「寄贈」に似た言葉に「寄付」がありますが、「寄付」は「公共事業に金品を贈ること」を意味します。 少し意味が異なるので間違えないように気をつけましょう。
例文
<他の表現>
英語には謙譲語という概念はありませんので、「差し上げる」の英語はシンプルに「give」 で問題ありません。 「電話を差し上げる」は「call」「give a call」「give a phone call」などなど。
Then, I will give a call to you at that time tomorrow.
それでは、明日のその時間にお電話差し上げます。
Let me give you some apples that I've harvested at home if you like.
よろしければ、家で取れたリンゴをいくつか差し上げますよ。
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「差し上げる」について理解できたでしょうか? ✔︎「差し上げる」は「与える」「やる」の謙譲語 ✔︎「差し上げる」は物を贈ることによって、相手に対して何らかの恩恵を与える場合に使う ✔︎「差し上げてもよろしいでしょうか」といったように疑問文にすることで、丁寧な表現になる ✔︎「差し上げる」の類語には、「進呈する」「贈呈する」などがある
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