「モチーフ」という言葉をご存知ですか?「◯◯をモチーフにしています」といった表現でよく耳にする言葉ですよね。しかし、実際に意味を問われると答えるのはなかなか難しいのではないでしょうか。今回は、「モチーフ」という言葉の意味と使い方を例文付きで紹介します。また「コンセプト」や「テーマ」といった類語との違いなども合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「モチーフ」は「動機」「主題」「理由」などを意味するフランス語「motif」からきています。 フランス語の「モチーフ」は、
という意味で使用されます。 英語にも「motive(モチーフ)」という単語があって、英単語の「motive」は「動機」という意味で使用されます。 あえてフランス語の「motif」を使用している場合、上述したように美術や小説などの動機や思想を意味しています。 また、「モチーフ」は「モティーフ」と表記する場合もあります。 「モティーフ」でも同じ意味となりますので、覚えておくと良いでしょう。
カタカナ語「モチーフ」も語源のフランス語と同じ意味で使います。 「装飾模様を構成する単位」という意味でも使用されますが、最もしっくりくる和訳は「題材」「主題」です。 「この作品は◯◯をモチーフにしました」なんてよく聞く表現ですよね。 また、「楽曲を作る最小単位」という意味で使用されることもあります。 「モチーフ」は芸術など様々な分野で使用される言葉です。 使用する場面によって、使い方や意味が変わってくるので、そちらも細かく本記事で紹介していきますのでぜひ参考にしてください。
「芸術」や「美術」といった分野で使用する場合は、「芸術の元になった動機や思想」といった意味で使用されます。 「◯◯モチーフ」という表現をよく耳にすると思いますが、この意味で使う場合が最も一般的であると言えるでしょう。 わかりやすく言うと、作品の中心となっているテーマ・主題です。 例えば、「子供」を描くなど、子供を中心にした作品だと「子供をモチーフに...」という言い方をすることができます。
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「モチーフ」は、ビジネスシーンで使用することも可能です。 ビジネスシーンで使用する場合も上記と同じ意味で、「何からビジネスアイデアを着想したか」を議論するときに「モチーフ」を使うことがあります。 ビジネスシーンで使用される場合の「モチーフ」は、商品開発においてヒントになったものや、事業展開などにおける大きな動機になったものを表現するときに使用されます。 「動機」「題材」といった意味なので、芸術の分野で使用される意味とあまり変わりはありません。
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音楽の分野で使用される「モチーフ」は、芸術やビジネスシーンで使用する「モチーフ」とはちょっと違った意味合いで使用されることがあるので注意が必要です。 音楽での「モチーフ」は、「楽曲を作る最小単位」という意味で使用されています。 「楽曲を作る最小単位」ってなんなんだ...と思うかもしれませんので、簡単に説明します。 楽譜を思いだしてもらうとわかりやすいかと思いますが、音楽って、1小節、2小節、と小さな小節をいくつか組み合わせて1つの曲にしていますよね。 基本的には1小節では拍子の確定ができないため、2小節を楽曲を作る「最小単位」といいます。 独立した楽想を持った最小単位のいくつかの音符、または休符の特徴的な重なりが音楽の「モチーフ」となります。
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ファッションの分野で使用される「モチーフ」は、「デザインの中心になっているものや、模様」を指します。 例えば、動物のデザインであれば、動物がデザインの中心であり、象徴になっているので「アニマルモチーフ」といったように言い表すことができます。 また、柄物であれば、そのパターンの単位が「モチーフ」という言葉で表現されます。
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「手芸」の分野での「モチーフ」は、「編み物」をするときに使用されます。 編み物では、個々に小さく編んだものを繋げて一つの作品するという手法があります。 そういった、作品を作るときの模様の最小単位を「モチーフ」と言い、「モチーフ編み」「モチーフ繋ぎ」ということがあります。 例えば、お花の柄で編んだものを、いくつかつなげてひとつのバックにする...といった場合、「お花のモチーフ編みのバック」と言い表すとができるでしょう。
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「文学」における「モチーフ」は、「作品の主題」「作品の題材」という意味で使用されている事が多く、実際に「主題」「題材」と「モチーフ」を混合して使用してしまっている人は多いです。 文学においての「モチーフ」は特に定義がありません。 文学における「モチーフは、主題であり、観念であり、題材である」という他に幅広い意味を持っています。
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「数学」における「モチーフ」は、「代数多様体の本質的な部分」を表す言葉です。 「代数多様体」とは、多変数の連立多項式系の解集合として定義される図形のことです。 とっても難しいですよね...。 日常生活ではなかなか耳にすることはないと言えるでしょう。
「生物学」における「モチーフ」は、「数個の二次構造が特定の幾何学的配置をとった簡単な組み合わせ」のことです。 規則正しく繰り返される幾何学的な装飾模様の単位を「生物学」では「モチーフ」と言います。
「コンセプト」の意味は「特定の物事に対する統一的かつ基本的な考え方や視点」 もっと簡単にいってしまえば、「コンセプト」=「一貫した考え」です。 「コンセプト」という言葉は主に、広告・企画・新商品・マーケティングなどに対して使われます。 例えば、「ロサンゼルスがコンセプトのバー」ならば、看板や建物の外装からインテリア、メニュー、食材、店名、スタッフのユニフォーム、バーテンダーの髪型まですべてがロサンゼルスにこだわってカリフォルニア風に施されている、ということになります。具体的にはサーフィンやハリウッド映画からインスピレーションを受けていると考えられます。 つまり「ロサンゼルスがコンセプトのバー」とは、「バーに対する一貫した考え方がロサンゼルスである」ということです。 新商品やデザイン、広告などを企画するときに、具体的なアクションの軸、指針となるものが「コンセプト」です。 「コンセプト」と「モチーフ」の違いは、「コンセプト」が「こういう方向性にしましょう」という抽象的な表現であるのに対して、「モチーフ」は「そのものを形成する元になるもの」を表す言葉であるため、コンセプトより具体性があるという点にあると言えるでしょう。
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「テーマ」とは、「主題・芸術作品などの中心となる思想内容」を言います。 「テーマ」は、映画や絵画など芸術作品に対して使う言葉です。 例えば、「映画『タイタニック』のテーマは『叶わぬ恋』だ」と言われていますし、実際にストーリを見ていても、「叶わぬ恋」がテーマになっていることはわかるストーリーになっています。 タイタニックの作者が主に伝えたいことは、身分不相応の男女の恋愛が叶わぬ悲しい現実です。 つまり、「テーマ」とは、「全体的な主題」を指す言葉であるということがわかります。 一方の、「モチーフ」は、「全体」ではなく作品を形成する個々の単位を指す言葉です。 もっと分かりやすく言うと、「テーマ」はあくまでも全体像なので幅広いですが、「モチーフ」は形として捉えることができます。 例えば、「愛をテーマに」というと、幅広いですが「ハートをモチーフに」というと、「ハートの形」ということがわかりますよね。 「テーマ」と「モチーフ」にはそういった違いがあります。
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「オマージュ」は「尊敬、敬意」という意味を持つフランス語です。 最近では、パロディ的な意味で「オマージュ」が使われていますよね。 「尊敬し手本としていたために、似たような作風になった作品」という意味で「オマージュ」と言われていました。 それが尊敬していなくても、元ネタがわかる作品で改変されたものや似通わせたものを「オマージュ」と呼ばれるようになりました。 主に、芸術作品や映画などに対して使われています。 「オマージュ」も、元になっている作品があるので、それを元にしているという点で言えば「題材」という意味になりますが、「モチーフ」は何か別の作品を元にしているというわけではありません。
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「リスペクト」は、芸術分野では尊敬の意味だけではなく「尊敬しているから影響を受ける、受けた」といった意味で使用されます。 これは「価値を認める」といった部分に通ずることですが「価値を認め尊敬し、影響を受ける」ということです。 尊敬する作家や、作品に影響を受けて似たような作品をつくったものを「リスペクト作品」と行ったりします。 なにかに影響を受けて似たような作品を作る場合は、「モチーフ」とは言いません。
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「二次創作」は、「なにかの作品を元にして、創作をすること」です。 例えば、好きになアニメなどのキャラクターを使って、別の作品を作ったりというような、元になるものの派生作品を「二次創作」と言います。 「二次創作」も、元になるものがすでにあるもので、原作品の市場における収益に大きな影響を与えないことや、原作の宣伝になることなどを条件に、許されています。 「モチーフ」は、作品において・芸術作品などの中心となる思想や動機を意味しますが、「二次創作」の場合、中心となる思想や動機は元の作者にあります。 なので、こういった場合「◯◯の二次創作」と言えても「◯◯をモチーフにしています」とは言いません。
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「モチーフ」の類語としての「カバー」は、「ある演奏者・歌手のものとして一度発表されているものを、他人が歌ったり演奏をすること」です。 「カバー」は、元々あるものを、そのまま歌ったり、演奏したり、ちょっとアレンジを加えて変えたりすることです。
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「リメイク」は、「過去に制作されたものを作り直す」という意味です。 例えば、料理などでも「ポトフをリメイクしてカレーを作りました」というように使用しますが、「リメイク」は、知恵や手間をかけて、元のものをもう一度作り直すことを言います。 「モチーフ」には、「作り直す」といったニュアンスはありませんので、そこが「モチーフ」と「リメイク」の大きな違いであると言えるでしょう。
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「リバイバル」の意味は、「一度廃れたものが再評価されること」です。 「リバイバル」の語源は英語の「revival」です。 一度廃れてしまったものが再評価されたり、現在発売されていないものを、再び再販するときに使用する言葉です。 「リバイバル」は、「元になるもの」「思想」「動機」という意味はなく、「再び」というニュアンスが強いという点で「モチーフ」と違いがあります。
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「パロディ」は、「既存の作品や、他人の文体の特色を元ネタが誰のものであるかわかるように残したまま、別の作品に入れること」です。 例えば、まったく違う別の物語に出てくるキャラクターに似せたキャラクターを一瞬出して笑いをとったり、「替え歌」といった元の歌詞をおもしろおかしく変えて歌うのも「パロディ」になるでしょう。 「パロディ」は、元々あるものを、おもしろおかしく部分的に使うという意味があるので「モチーフ」とはまた違う意味であるということがおわかりいただけると思います。
例文
・「盗作/パクる」は、「他人の作品の一部または全部をそのまま自分のものとして無断で使ってしまうこと」です。 「盗作」は、漢字からもわかるように「作品を盗むこと」です。 「パクリ」も、「盗む」という意味から来ているので、「盗作」と同義です。 「モチーフ」は「題材」といった意味で使用される言葉であって「盗む」といったマイナスな意味は含みません。
例文
英語で「motif」といった場合、「柄・デザイン」という意味で使うのが一般です。
I chose a carpet with polka dots motif.
水玉柄のカーペットを選びました。
「作品の動機」は「motive」を使います。
What is the motive behind this work?
この作品の背後にはるモチーフはなんだろう?
「主題」という意味の英語は「theme」です。 「theme」はカタカナ語では「テーマ」ですが、英語の発音は「シィーム」です。
いかがでしたか? 「モチーフ」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「モチーフ」の語源はフランス語「motif」 ✓「モチーフ」の意味は「作品を作る上での動機」「題材」 ✓芸術や美術、音楽やファッションなど様々な分野で使用される ✓「モチーフ」はビジネスシーンでも「動機」「題材」という意味で使われる など