会社で新商品の企画などをするときに使う「コンセプト」ですが、正しい意味は何か?「コンセプト」に似ている言葉「テーマ」との違いは何か?英語「concept」は同じように使うのか?など皆さんの疑問を一挙に解決したいと思います!
「コンセプト」の意味は「特定の物事に対する統一的かつ基本的な考え方や視点」 もっと簡単にいってしまえば、「コンセプト」=「一貫した考え」です。 「コンセプト」という言葉は主に、広告・企画・新商品・マーケティングなどに対して使われます。 例えば、「ロサンゼルスがコンセプトのバー」ならば、看板や建物の外装からインテリア、メニュー、食材、店名、スタッフのユニフォーム、バーテンダーの髪型まですべてがロサンゼルスにこだわってカリフォルニア風に施されている、ということになります。具体的にはサーフィンやハリウッド映画からインスピレーションを受けていると考えられます。 つまり「ロサンゼルスがコンセプトのバー」とは、「バーに対する一貫した考え方がロサンゼルスである」ということです。 新商品やデザイン、広告などを企画するときに、「コンセプト」が具体的なアクションの軸、指針となります。 むしろ「コンセプト」がなければ、そもそも企画することができません。何から手を付ければよいのか分からなくなってしまうからです。 「コンセプト」を決める上で最も重要なのは、「誰に向けて制作するのか」を決めること、つまりターゲティング(ターゲットを絞る)ことです。 また、ターゲットを絞り「コンセプト」を決定することは、制作者だけではなく消費者にとっても重要です。 なぜなら、「コンセプト」が明確ならば、消費者はその商品を消費する前に自分に適しているか否か判断がつくからです。 「コンセプト」を明瞭にすれば、お客様に届きやすくなる(マーケティングの効率が上がる)ということになります。 この世のありとあらゆる創造物には「コンセプト」が存在する、ということです。
「コンセプト」の語源は英語で、スペルは「concept」となります。 「ナイーブ」や「スマート」のようにカタカナ語の中には、語源である英語と意味が違うものもありますが、 「コンセプト」の場合は、英語「concept」とも意味が同じです。 英語「concept」の詳しい使い方と例文は記事の最後で解説します。
「concept」という言葉は、ドイツやフランスから入ってきた外来語です。 「concept」の日本語訳として西周(にしあまね)によって造られた言葉が「概念」です。 皆さんが日常的に何となく使っている「概念」という言葉は、和語ではなく訳語です。 「concept」つまり「概念」という言葉は、元々哲学用語です。 哲学用語「概念」の意味は「人々が認知する個々の物事から共通する性質を抜き出し、それらを統合、普遍化、抽象化し、思考の基礎となるように意味づけたもの」という意味です。(難しい・・・) これは哲学、論理学でのみ使われる意味合いで、日常生活では「ある物事についての大まかな意味内容」という意味で使われています。 「意味内容」という日本語は聞き慣れない方が多いと思いますが、「意味内容」とは文字通り「意味する内容」です。 「●●についての意味内容」とは「●●が意味する内容」のことで「●●が表現または象徴していること」を指します。 ちなみに「意味内容」は英語でいうと「meaning」です。 英語「concept」と日本語「概念」は、上記の2つの意味を持ちます。 しかし、カタカナ語「コンセプト」は上記2つの意味で使うことはあまりなく、「ある物事についての大まかな意味内容」から転じた「企画における統一的かつ基本的な考え方や視点」という意味で使われています。
「コンセプト」は「コンセプトを考える」などの形で使うのが一般的です。 「考える」以外にも以下の表現がよく使われます。
それでは例文を見ていきましょう。
例文
「コンセプト」は下記のような言い回しもあります。
例文
「コンセプト」は、「名詞+コンセプト」の形でも使います。 この場合、『「名詞」に対する基本的な考え方、思想、原理原則』という意味になります。
「エンティティコンセプト」「ハイコンセプト」は日本語ではほとんど使われない言葉ですが、英語圏ではそれぞれ「entity concept」「high concept」と表記され使われています。 「entity concept」とは会計用語で「企業実体概念」と和訳されます。 「エンティティコンセプト」とは、法人とその経営者は別物として扱われるべきで、経営者は自分が作った会社であっても私物化してはならないという考えを示したものです。 「high concept」は和訳がなく、そのまま「ハイコンセプト」と書きます。 「ハイコンセプト」とは、元々映画用語で「簡単な表現で宣伝ができる芸術作品の一種」を指していました。 「ハイコンセプト」という言葉は大前研一が訳した書籍で少し広まりました。が、一般的にはビジネスシーンでも使われていません。
「コンセプト」は、「コンセプト+名詞」という形でも使用します。 「コンセプト+名詞」は、「製造者の基本的な方針や販売法人の企業理念などが表れた●●」という意味になります。
「コンセプト」・・・概念。商品企画などの基本的かつ統一的な考え方や視点。 「テーマ」・・・主題。芸術作品などの中心となる思想内容 「モチーフ」・・・創作における動機の題材。芸術作品におけるコンセプトはモチーフといわれる
「コンセプト」と「テーマ」はどちらも語源が英語で、和訳はそれぞれ「概念」と「主題」です 「概念」と「主題」・・・日本語で見ても、すぐに違いがわかりませんよね。 それもそのはずで、「コンセプト」と「テーマ」というのはそもそも全く違う場面で使う言葉です。 どちらか一方が抽象度が高くもう一方を意味的に内包する、といった性質の言葉ではありません。 どちらも別々の意味をもつ熟語です。 「コンセプト」は主に商品企画などで使うマーケティング用語です。 「コンセプト」をより簡単にいってしまうと「企画の枠組み」です。 例えば、「ハワイがコンセプトのレストラン」ならば、「外装からインテリア、メニュー、店員の服装まで南国やサーフィンと関連付けられているレストラン」のことを指します。 この際、「ハワイがテーマのレストラン」とは本来言いません。 もちろん意味は通じますが、「テーマ」は「企画に対する統一的な考え方」という意味では使いませんので厳密には誤用です。 「テーマ」は、映画や絵画など芸術作品に対して使う言葉です。 「テーマ」は、芸術作品において作者が主に伝えようとしていること、つまり「主題」を指します。 例えば、「映画『タイタニック』のテーマは『叶わぬ恋』だ」ということができます。 タイタニックの作者が主に伝えたいことは、身分不相応の男女の恋愛が叶わぬ悲しい現実です。 では、「タイタニック」のコンセプトは何なのか?といえば、それはたくさんあると思います。 「男女の儚い恋愛模様」「実話を題材にする」「船が海上で沈没してしまう」「主演はレオナルド・ディカプリオにしよう」などなど、企画において色々な基本的視点があったはずです。 ちなみに、芸術作品における「コンセプト」つまり「創作の動機となる主要な題材」は「モチーフ」といいます。 「テーマ」という言葉が付き、皆さんに大変馴染みのなる言葉に「テーマパーク」があります。 「テーマパーク」とは、「特定のテーマ(主題)に基づいて、施設・イベント・景観などが総合的に構成され演出されたレジャーランド」のことをいいます。 「テーマパーク」といえば、「東京ディズニーランド」ですよね。 「東京ディズニーランド」は、「ファンタジー、夢、そして魔法を盛り込んだディズニー映画」がコンセプトになっています。 つまり、ディズニーランドの企画の基礎になっているのは、ディズニー映画ということです。 そして、そのコンセプトを元に作られたディズニーランドの中に7つのテーマ(ランド)があります。 「コンセプト」と「テーマ」はなんとなく似ていて混同しがちですが、実は全く意味の違う言葉であり、どちらかが上位概念というわけではありません。 混乱しないように注意しましょう。
哲学用語では、
▶concept = 概念(がいねん)・・・物事の本質を捉える思考の形式 ▶idea = 観念(かんねん)・・・思考の対象となる意識の内容
という枠組みになっています。 哲学用語における「concept」の日本語訳が「概念」で、「idea」の日本語訳が「観念」です。 「concept」と「idea」は類語なので、「概念」と「観念」も類語にあたり、「観念」は「コンセプト」の類語ということになります。 日常生活では「観念」は「ある物事に対して人が抱く考え」という意味で使います。 「固定観念」「責任観念」「経済観念」などと使います。 また「観念」は「あきらめる」という意味でも使います。 企画などで使う「コンセプト」という意味では、「観念」を置き換えて使うことはできません。
例文
「理念(りねん)」は「事業の根底にある基本的な考え方」という意味で、「企業理念」「経営理念」「創業理念」などとビジネスシーンでよく使う言葉です。 「コンセプト」は商品企画に対して使うのに対して、「理念」は会社や組織全体に対して使う言葉ですが、類語にあたります。 「基本理念」とすると、「コンセプト」のニュアンスにぐっと近くなります。
例文
「方針」は「進むべき道、目指す方向」という意味です。 語源は、方位を示す磁石(コンパス)の針です。 企画をする上での「コンセプト」と非常に似た意味をもつ日本語です。 「方針を決める」「方針を立てる」「施政(しせい)方針演説」「基本方針」「教育方針」などと使います。
例文
「概要」は「かいつまんでまとめた要点、あらまし」を意味します。 哲学用語ではなく日常的に使う「概念」の類語が「概要」にあたります。 「会社の概要を説明する」「計画の概要を示す」「事件の概要を述べる」などと使います。
例文
「試作」は「本格的に作る前にためしで作ること」です。 「試作する」「試作品」の形で使います。 「コンセプトモデル」「コンセプトカー」などの「コンセプト」は「試作」と置き換えることができます。
「コンセプト」の英語は「concept」です。 上記でも触れましたが、それもそのはずで「コンセプト」の語源が英語「concept」だからです。 「concept」は日本語の「概念」と同じで、哲学用語として使うこともあります。 日常生活では、「基本概念、着想、考え」などの意味合いで使います。
It's impossible for most people to grasp the concept of "inner-space."
ほとんど人にとって、「内宇宙」という概念を理解するのは不可能だ。
He had a revolutionary concept of reinventing the phone.
彼には電話を再発明する革新的な着想があった。
She has no concept of fun.
彼女には面白さがわからない。
「concept」の同義語には「idea」「conception」などがあります。 idea < conception < concept の順でより抽象度が高くなります。
It seems like a perfect idea to me.
それは完璧な考えのように私は思う。
Do you have any idea what that stands for?
それが意味することを君はわかるかい?
いかがでしたか? 「コンセプト」の意味と使い方、語源、類語、「テーマ」との違いは理解できましたか? 最後に「コンセプト」についてまとめたいと思います。 ✔「コンセプト」の意味は「特定の物事に対する基本的な考え」 ✔「コンセプト」の語源は英語「concept」 ✔「テーマ」は「芸術作品における主題」 ✔「コンセプト」の類語は「観念」「基本理念」「方針」など