「レイシスト」とは「人種差別的な言動をする人」を指す言葉です。語源は英語の「racist」です。本記事では歴史的なレイシストの具体例や近年の事件、法律などを分かりやすく解説しています。
「レイシスト」の意味は「人種差別的な発言や行動をする人」です。 「レーシスト」と言うこともあります。 「人種」とは「人間の生物学的な外的な身体特徴による区別単位」のことです。 肌や髪の色、骨格、頭や鼻の形などが分類の基準とされています。 「差別」とは「 偏見や先入観などを基に特定の個人や集団を不利益・不平等に取り扱うこと」という意味です。 つまり「人種差別」とは「肌の色や体の形の違いなどを理由に、人を政治的、経済的、社会的に差別すること」を言います。
「レイシスト」の語源は英語の「racist」が由来です。 「racist」は英語「race」の派生語です。 「race」には「人種」という意味があります。 「racist」は「人」を表す接尾辞「ist」がついたものです。 ちなみに「主義、特性」を表す接尾辞「ism」がつくと「racism(人種主義)」となります。
「レイシスト」と同義の言葉には
などがあります。
自らが属している民族を主体と考える思想や運動を行う人のことを「民族主義者」と言います。 国家主義者、民族至上主義と言うこともあります。 「民族主義者」は英語で「nationalist(ナショナリスト)」、「民族主義」は「nationalism(ナショナリズム)」といいます。
他民族・他国に対する排斥的・敵対的・攻撃的な態度や行動を「排外主義」と言います。 外国人や外国の思想や生活様式などを簡単に受け入れることなく、それらを嫌い排除する考え方や立場のことを指します。 つまり排外主義者であるということは、自分の国家に対して強い愛着や忠誠を抱く「愛国主義者」にもなります。 ちなみに「排外主義者」は英語では「chauvinist(ショービニスト)」、「排外主義」は「chauvinism(ショービニズム)」といいます。 「愛国主義者」は「patriot」といいます。
白人人種が他の人種よりも優れているという思想を持つ人を「白人至上主義者」と言います。 「白人人種」とは、肌の色が薄く白に近い人種の総称です。(ちなみに日本人は黄色人種に分類されます。) 「白人」は英語では「White」と言います。 白人至上主義のスローガンとして「White power(白人のパワー)」やWhite pride(白人の誇り)」という言葉が使われています。 「白人至上主義者」は英語で「White supremacist」といいます。
自国民以外の外国人を嫌う人のことを英語で「xenophobe」といいます。 日本語では「ゼノフォビア」と読まれています。 自分の国以外の人や集団に対して憎悪や嫌悪感を抱いたり、退けようとする思想や行動のことを指します。 例えば日本への移民や難民受け入れに反対するような人は「外国人恐怖症」ということができます。
「レイシスト」の反対語にあたる言葉です。 日本語訳は「人道主義者」となります。 意味は「人間性を尊重し、人類全体の幸せを図ろうとする思想や態度を持つ人」です。 「レイシスト」が特定の人種に対する差別をする人に対し、「ヒューマニスト」は人種で差別することなく、すべての人間を尊重し慈しみ優しく思いやり、育むことというニュアンスが含まれます。
上記でご紹介した「ヒューマニスト」の類語にもあたります。 「博愛」とは「すべての人を平等に愛すること」という意味があります。 人種や宗教などの違いを超え、また偏見や先入観を捨てて全人類が平等に愛し合い協力すべきであるという考え方を持つ人のことを指します。 「博愛主義者」「慈善家」は英語で「philanthropist」といいます。
差別なく全ての人類を社会的、経済的、政治的に平等に扱う考え方を持つ人を「平等主義者」といいます。 「平等主義者」は英語で「egalitarian」といいます。
一つの国や社会に存在する複数の人種や民族が持つ文化を積極的に認め、それぞれの集団が対等に扱われるべきという考え方を持つ人を「多文化主義者」といいます。 「多文化主義」を英語では「multiculturalism」といいます。 「多数の」を意味する「multi」と「文化主義」を意味する「culturalism」が合わさった単語です。 「多文化主義者」は「multiculturalist」となります。
「民主主義」とは政治形態のことを指します。 一人や少数の権力者のみで政治的判断がなされるのではなく、国家や社会を形づくっている一人ひとりが政治に参加できるシステムのことです。 政治の権力が一人や少数に集中している政治携形態を「独裁主義」や「君主制」といいます。 「民主主義者」は英語で「democrat」といいます。
「ユダヤ人」とはユダヤ教を信仰する人々のことを指します。 ユダヤ人に対する差別や偏見は古くから存在していて、その歴史は2,000年にも及びます。 元々はキリスト教信者による差別と宗教的な迫害が主でしたが、19世紀に入ると人種的な迫害がなされるようになりました。 ナチスドイツとは19世紀後半(1933年〜1945年)のドイツの呼称で、当時はヒトラーによって支配されていました。 ヒトラーによるユダヤ人迫害の理由は、人種主義的な考えにありました。 ヒトラー率いる「ナチ党」の考えとして、「白人人種は最も優れた人種であり、ユダヤ人によって汚されるべきではない」という理由から、ナチスによるユダヤ人の大量虐殺という悲惨な事件が起きたのです。
米国では黒人や「インディアン」と呼ばれるアメリカの先住民に対する差別や迫害が長年に渡り起きています。 上記で「白人至上主義者」という言葉をご紹介しましたが、白人至上主義を唱える団体の中で最も有名な団体が「KKK」です。 「KKK」とは「Ku Klux Klan(クー・クラックス・クラン)」の略語で、南北戦争終結後の1865年に米国南部地方の黒人や東洋人の迫害を目的として設立された秘密結社と言われています。 秘密結社とは「団体の存在活動などを隠している組織」という意味があります。 KKKの考え方として、「北方人種のみが神によって選ばれた民であり、他の人種よりも優先されるべき」という意見があります。 KKKに属する会員は、白衣と白覆面を身につけデモ活動や脅迫行為などを行います。
「アパルトヘイト」とはアフリカーンス語(オランダ語から派生した言語)で「隔離、分離」を意味する言葉です。 アパルトヘイトとは1948年に法制として確立された人種差別の政策方針です。 白人以外の非白人を差別し隔離するという狙いがありました。 17世紀半ばにオランダ人が南アフリカを植民地として以来、オランダ系白人による人種差別的な制度や政策が定着しました。 1948年に純正国民党政権が誕生してから新たな法が次々と制定され、人種隔離がより徹底されました。 アパルトヘイトの主な内容として
などがありました。 アパルトヘイト体制は、国民党政権に対する国際的非難や圧力、非白人による抵抗運動が激化したことから1991年に全廃されました。
人種差別は海外だけの話ではありません。日本人による人種差別も存在します。 島国である日本は外国人に対して強い憎悪や嫌悪感を抱く傾向があり、海外の血筋を引いている人に対して人種差別を行ってしまうのです。 現在の在日韓国人や朝鮮人数は約50万人ほどと言われています。 またアイヌ民族の数は約1.5万人ほどです。 例えば、国籍が日本である韓国人や朝鮮人、アイヌ人に対しても「自分の国に帰れ」「○○人のくせに」などという言葉や身体的暴力を与えるような差別が今でも起きています。
EU加盟国では近年、北アフリカや中東からのイスラム教徒の移民への人種差別が激化しています。 ドイツやハンガリーなどは移民や難民の受け入れに寛容で、移民や難民に対して衣食住や教育などを提供しています。 難民キャンプのキャパオーバーによる生活環境の悪化そして北アフリカや中東からの移動が容易という点、受け入れ体制が充実しているという点から、ヨーロッパへの移民や難民の数は増加しています。 ヨーロッパの人々はキリスト教を信仰していることが多い一方で、移民や難民はキリスト教以外の信仰者であることが多いです。 移民や難民に対する宗教的的差別が起きています。 また、人種の違いによる差別もあります。
2020年にアメリカで起きた事件です。 ミネソタ州のミネアポリス市警に勤めていた白人警官が、黒人男性の首を膝で押さえつけてそのまま死亡しました。 黒人男性ジョージ・フロイドさんは、偽札を使った疑いで白人警官によって取り押さえられました。 「動けない」「息ができない」などと叫んでいるにも関わらず、白人警官は8分以上も首を押さえ続けたのです。 フロイドさんはその場で息を引き取りました。 一部始終を録画した通行人がSNSに動画を投稿したところ、世界中から「黒人差別だ」という声が上がったのです。 そして世界中で反黒人差別を訴える人々がデモや暴動を起こしました。
2014年にスペインのバルセロナで起きた事件です。 サッカーのブラジル代表ダニエウ・アウベス選手に対し、敵サポーターがピッチにバナナを投げ込んだのです。 黒人であるアウベス選手に対する人種差別で、アウベス選手を「猿」とみなした行為にあたります。 アウベス選手を含む黒人選手に対する人種差別は度々行われており、試合中に「猿」と野次を飛ばしたり、猿の鳴き声をしたりして、黒人選手などを人種差別をするサポーターがいました。 なお、アウベス選手にバナナを投げ込んだサポーターはその場で逮捕され、施設とスタジアムの出入りを禁止しクラブの会員資格も取り消しとなりました。 そればかりではなく、このサポーターは自身の職までも失ったそうです。(その後アウベス選手は、彼を復職させてほしいと願い出たそうです。)
2017年にアメリカカリフォルニア州で起きた、アジア人に対する人種差別です。 アジア系アメリカ人の女性が民泊サービス「AirBnB」を通して宿を予約したのですが、到着直前になってホスト(受け入れ側)がその予約をキャンセルしました。 その理由は、「ゲストがアジア人だから」という理由でした。 アジア系アメリカ人の女性が事情を説明する動画をYouTubeに投稿したところ、世界中で話題となりました。 このホストはアジア系米国人の歴史の講習受講、罰金5000ドルが命じられました。
2019年に韓国・弘大入口駅の近く起きた事件です。 ソウルを観光していた日本人女性が韓国人男性に侮辱的な暴言を吐かれ、髪の毛を掴まれて殴られるなどの暴行を受けました。 韓国人男性には懲役1年が課されました。 この際に日本人である事を罵倒するヘイトスピーチがあったことや韓国への輸出規制の直後であったことなどから反日感情から生まれた事件だとも言われています。
ジム・クロウ法は1876年から1964年の間にアメリカ南部諸州で制定された黒人に対する差別を規定した法律や制度の総称です。 別名「黒人差別法」とも呼ばれます。 ジム・クロウ法の内容として
などがありました。 1964年に公民権法を制定が制定され、ジム・クロウ法は即時廃止となりました。
上記でご紹介したアパルトヘイト政策の一つです。 「隔離施設留保法」は1953年に制定されたもので、人種別に専用の施設を用意することが義務付けられました。 差別の対象となった黒人は約2500万人、インド系住民は約90万人だったのに対して、白人は約500万人程度であったといわれています。 公園や協会、レストランなどを含む公共施設や、バスや電車などの公共車両で「ヨーロッパ人専用(白人専用)」と「非ヨーロッパ人専用(非白人専用)」に分離されたのです。 その他、アパルトヘイト制定では
→白人と非白人の結婚を禁止した
→全南アフリカ人を4つの人種(白人、カラード、インド人、アフリカ人)に分類した
→黒人労働者のみ劣悪な労働条件を課した(給料は白人の1/6 や 1/21 など)
→白人の教育予算は黒人の10倍程度であった →白人生徒の教育は義務教育で合ったのに対し、黒人はそうではなかった
→白人と黒人の共学は禁止となった などの法律がありました。
1965年に国際連合総会で採択された人種の違いを理由にする差別を撤廃することを定めた国際条約です。 2018年時点で当事国数は179か国、調印国数は88か国でした。日本は1995年に加入しました。
いかがでしたか? 「レイシスト」について理解は深まりましたでしょうか? 「レイシスト」とは「人種差別的な発言や行動をする人」のことを指します。 類語には「人種差別主義者」や「民族主義者」などが、反対語には「博愛主義者」「平等主義者」などがあります。 人種差別はこれまでの歴史の中で、そして残念ながら現代でも世界の至る所で起きています。 「人種差別撤廃条約」などの法律や制度があるものの、差別が根本的に無くなっていないことは大変残念なことです。