「リリック」という言葉をご存知ですか?「リリックビデオ」など何かとよく耳にしているのではないでしょうか。しかし、実際に意味を問われると説明が難しいですよね。今回は「リリック」の正しい意味と使い方を例文付きで解説します。また、「リリック」以外のラップ用語や、「リリック」と「ポエム」の違いなども合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「リリック」の本来の意味は「抒情詩(叙情詩)」です。 「抒情詩」と「叙情詩」はどちらも意味は同じです。 「抒情詩(じじょうし)」とは、個人の主観的な感情や思想を表現している詩のことです。 自分の内面的な世界を読者に伝えている詩を「抒情詩」と言います。 「抒情詩」「叙情詩」どちらの表記でも同じ意味ですが、心の中にある思いを表現するという意味のある「抒」を使った「抒情詩」と書くのが一般的です。 「抒情詩」は詩の三大部門と言われてる中の一種で、その他には「叙事詩」「劇詩」があります。
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現代では「リリック」を「抒情詩」ではなく「歌の歌詞」を指す言葉として使用することが多くなっています。 「リリック」の語源である英語「lyric」は、あらゆる曲の歌詞に対して使うことができます。 この「lyric」が、カタカナ語として日本でも使用されるようになりました。 カタカナ語「リリック」は特にラップの歌詞について使うことが多いです。 最近ではラップ以外のジャンルでも歌詞を「リリック」と表現することが多くなっています。 ただ、J-POPに対して「このリリックいいねえ」などと言うと意識高い系のIT勢だと思われる可能性が大なので注意してください。
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「リリック」は、「リリカル」という形にすると「抒情詩的な」という形容詞になります。 例えば、「リリカルな曲」は「抒情詩的な曲」という意味になります。 「リリカル」に変えずとも、「リリックな」でも形容詞的に使うことが可能です。 例えば、「リリックな歌詞」などということができます。 しかし「リリック」には名詞で「歌詞」という意味があるため、「リリックな歌詞」だと二重表現的なので、「リリカルな歌詞」とした方がベターです。
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「リリック」の語源は、語源は古代ギリシアの竪琴「リラ」にあると言われています。 「竪琴(たてごと)」とは「ハープ」のことです。 古代ギリシア人が、「リラ(Lyre)」という竪琴の旋律に合わせて自分の気持ちを表現していたことがきっかけで、「抒情時」を「リリック」と言うようになったと考えられています。
「リリックス」は、「リリック」の複数形です。 例えば、洋楽の歌詞を聞き取ることでリスニング力を鍛える方法を「リリックストレーニング」と言います。 日本では、リリックを複数形にした形で使うことはめったにありません。
「リリックビデオ」とは、「歌詞を軸にしているミュージックビデオ」のことを言います。 リリックビデオは、カラオケのように音楽と共に映像の中に歌詞が次々と表示されていきます。 上手く歌詞と映像をリンクさせることで、歌詞を飽きずに伝えることができるミュージックビデオとなっています。 リリックビデオの先駆けと言われているのは、ボブ・ディランです。 最近では、日本でも多くのアーティストがリリックビデオを出しているので是非チェックしてみてください。
「リリックスピーカー」は、「歌詞表示されるスピーカー」のことです。 2014年に世界公開された「リリックスピーカー」は音楽を耳で楽しむだけではなく、目でも楽しむことができるスピーカーとして注目されています。 スピーカー本体がスクリーンになっていて、そこに歌詞が映し出されます。 なんと、曲調によって文字のフォントや動きも変わるのだそう。 2018年には壁掛けタイプのリリックスピーカーも発売されています。
「リリックノート」は、ラップ用語で「韻を書きためておくノート」を指します。 わかりやすく言えば、お笑い芸人で言う「ネタ帳」のようなものです。 フリースタイルでラップをする人も、大抵は普段からリリックノートに思いついた言葉を書き溜めておき、つなぎ言葉で韻を踏めるようにしているのだそうです。
ラップ用語の「ライム」は「韻を踏む」です。 「韻を踏む」とは、単語の母音を重ね合わせることを言います。 例えば「逆上がりで里帰り」のように、ゴロが同じ言葉を並べることを「韻を踏む」と言います。 「ラップ」はライムを多用している歌詞が特徴的な音楽であると言えるでしょう。
「フロウ」は、「歌詞をメロディに乗せること」です。 上述した「ライム」をメロディーに乗せて感情的に歌うことを「フロウ」と言います。 韻を踏んでいなくても、歌詞をリズムカルなメロディに乗せることで「ラップ」になります。 フロウがなければ、歌詞を歌にすることはできないと言えるでしょう。
「バイブス」は若者用語としても使用されていますが、ラップ用語では「情熱や気合、雰囲気」という意味で使用されます。 例えば、フリースタイルのラップを聞ていて「勢いがあるな〜」「この人のラップには情熱を感じる!」と思ったときに「バイブスが高いね」と言ったりします。 基本的には、
といった使い方をします。
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ラップ用語の「パンチライン」は「印象的な言い回しやフレーズ」という意味です。 「ライン」は、歌詞の一行を指します。 歌詞の中で1番伝えたいフレーズを「パンチライン」と言うこともあります。 パンチラインの善し悪しで曲のできが決まると言っても良いでしょう。
ラップ用語の「レペゼン」の意味は「代表する・象徴する」という意味で使用されます。 レペゼンの語源は「Represent」です。 英語の発音とは異なりますが、ラップではリズムが大切であるため言いやすさ重視で「レペゼン」と言うカタカナ語になったのではないかと言われています。 最近では「レペゼン地球」という名前の人気DJ集団がいますよね。 「レペゼン地球」は「地球の代表」「地球の象徴」という意味です。 このように、「レペゼン◯◯」と後ろに地名や名詞をつけて「◯◯の代表」という意味になります。
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ラップ用語の「フリースタイル」は、「即興でラップを行うこと」です。 特定のテーマや構想を決めずに、即席でラップをすることを「フリースタイル」と言います。 フリースタイルのラップで言えば「フリースタイルラップバトル」といって、即興で作ったラップで相手を攻撃し合って勝敗を決めるものが人気です。 ただ悪口を言うのではなく速攻で韻を踏み、さらにリズムに乗らなければいけないのでかなりの上級者じゃないと上手くできないでしょう。
「リリック」に似た言葉に「ポエム」があります。 「ポエム」とは「詩」そのものを指します。 「リリック」は上述したように、「詩の三大部門の一種である抒情詩」のことです。 したがって、「リリック」と「ポエム」の違いは 「ポエム」・・・詩全体を指す言葉 「リリック」・・・詩の3種類の中の一つ となります。 ちなみに英語では、詩の総称を指す単語は「poetry(ポエトリー)」です。 「poem(ポエム)」は一編の詩、一作品を指します。 「ポエマー」は和製英語で、「poet(ポエット)」で「詩人」の意味になります。
ラップ用語の「パンチライン」でも出てきましたが、「ライン」は「線」の意味の他にも「詩の一行」という意味があります。 ラインは「詩行(しぎょう)とも言われます。
「韻文」は「一定の韻律で書き表された文章」のことを言います。 「韻律」とは、言葉のリズムのことです。 例えば、短歌は「五・七・五・七・七」俳句は「五・七・五」という一定のリズムで書かれていますよね。 このように、一定韻律で書かれている文章が「韻文」です。 「韻文」は英語だと「verse」となります。
「短詩/超絶短詩」は「短い詩」は、漢字の通り「短い詩」のことです。 大体は一行で作られている非常に短い詩を指しています。 「超絶短詩」は、篠原資明により提唱された史上最短の詩のことで、 「ふ 海」(風味) 「つー 勤」(通勤) というように、ひとつの語句を分解するという規則があります。
「リリック」の反対は「エピック(叙事詩・英雄詩)」です。 「エピック(叙事詩・英雄詩)」は、文学用語で歴史的な英雄や神が登場し、様々な事件が起きながら展開される物語のことを言います。 国の誕生などがよく語られます。民族の歴史として価値があるを信じられ、長きに渡り語り継がれているものです。 例えば「叙事詩的映画(epic film)」は、映画のジャンルの一つで、歴史的事件や、英雄伝など実際にあったことを描いていく作品を指します。 つまり、「エピック」は「事実をありのままに表現する詩」のことなので、「自分の心情を表現する詩」の「リリック」とは反対の言葉になるということがわかります。
前述しているように、「リリック」は、詩の三大部門の一つです。 そして「リリック」の反対語である「エピック」も「叙事詩・英雄詩」という詩の種類です。 残るあともう一つの種類が「劇詩」と言われるものになります。 「劇詩(げきし)」は「演劇の脚本や台本のような形式で書かれた詩」のことをいいます。 特に舞台の上映を意図しないものを「劇詩」し、舞台を意識している作品は「詩劇」と言います。 中世から近世までは、韻文で劇の脚本が書かれていたため、「劇詩」と「戯曲」が同義だった時代もありました。
いかがでしたか? 「リリック」について理解していただけたでしょうか。 ✓「リリック」の本来の意味は「抒情詩(叙情詩)」 ✓「リリック」は現代では「歌詞」の意味で使う ✓「リリカル」は「抒情詩的な」という形容詞 ✓「リリックス」は「リリック」の複数形 など