「ご安心ください」は「心配しないでください」と伝えたいときに使用する敬語表現です。目上の人に使える敬語ですが、「する」の尊敬語「なさる」を用いて「ご安心なさってください」や、「もらう」の謙譲語「いただく」を用いて「ご安心いただけますと幸いです」などとするとより丁寧になります。
「ご安心ください」は「ごあんしんください」と読みます。 「安心」の意味は「気がかりなことなく、心が安らぐこと」です。 気がかりや不安を感じない様子を「安心」といいます。 したがって、「ご安心ください」は「不安になったり心配しないでください」と相手を気遣う気持ちを言い表す言葉になります。
「ご安心ください」は、品詞分解すると「ご」+「安心」+「ください」となります。 「安心」についている「ご」は接頭語です。 接頭語の「ご」の敬語の種類は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりえます。 この場合、安心するのは相手なので敬語の種類は尊敬語です。 「ください」は「くれ」の丁寧語です。 したがって、「ご安心ください」は尊敬語+丁寧語の敬語表現であり、目上の人に対して使用することができます。 ただし、「ご安心ください」は「くれ」を使用した命令文なので、一方的に要望・要求するようなニュアンスになってしまいます。目上の人に使う場合はより丁寧な表現にした方がよいでしょう。
「ご安心ください」は「下さい」と漢字表記にするのは誤用です。 「ください」は、補助動詞で使用する場合は平仮名で使用し、「物をもらう」など本動詞として使用する場合は「下さい」と漢字で表記するという決まりがあります。 「ご安心ください」の「ください」は補助動詞として使用されているので、平仮名が正しい表記です。
例文
メールで「ご安心ください」と言われた時の返信に関してですが、状況によってはわざわざ返信しなくてもよいでしょう。 あえて返信するならば、「承知いたしました。ご丁寧にありがとうございます」などとすると丁寧で大変よい印象になります。
「ご安心くださいませ」は「安心」に尊敬を表す接頭語の「お」と、命令形「くれ」の丁寧語「ください」に「ませ」をつけた敬語表現です。 したがって、「ご安心くだせいませ」は尊敬語+丁寧語の正しい敬語表現であるといえます。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」とすることで、「くれ」を丁寧にするだけでなく柔らかい印象を与えることができます。 「ご安心ください」というよりは、柔らかい印象にはなりますが「くれ」を使用した命令文であることにはかわりありません。やはり目上の人に使用する場合はより丁寧な敬語表現を使用するべきでしょう。
「ご安心なさってください」は、品詞分解すると「ご」+「安心」+「なさる」+「ください」となります。 「ご〜なさる」で、「〜をする」の尊敬語になります。 「ください」は「くれ」の丁寧語です。 したがって「ご安心なさってください」は尊敬語+丁寧語の敬語表現であるといえます。 「尊敬語」は、相手の動作を高めることで相手に敬意を示すことができる敬語表現であるため、目上の人に使用することができます。
「ご安心いただけますと幸いです」は、品詞分解すると「ご」+「安心」+「いただく」+「ます」+「幸い」+「です」となります。
したがって、「ご安心いただけますと幸いです」は尊敬語+謙譲語+丁寧語+丁寧語の敬語表現であるといえます。 丁寧語を二つ使用しているので、二重敬語なのでは?と思う人もいるかと思いますが、二重敬語とは一つの語に同じ種類の敬語を重ねて使用してしますことをいいます。 一つ目の「ます」は「いただく」についていて、二つ目の「ます」は「幸い」についている丁寧語なので二重敬語にはなりません。
「ご安心いただければと存じます」は、品詞分解すると「ご」+「安心」+「いただければと」+「存ずる」+「ます」となります。
丁重語とは、動作の対象ではなく話を聞いている相手に敬意を示すために使用されます。 例えば「昨日から弟の家で勉強をしております」の「おります」は、弟へ敬意を示しているのではなく話を聞いている人に敬意を示している「丁重語」です。 自分をへりくだることで相手に敬意を示す敬語なので、謙譲語に分類され「謙譲語Ⅱ」ともいわれます。 したがって、「ご安心いただければと存じます」は、尊敬語+謙譲語+丁重語+丁寧語の正しい敬語表現であるといえます。
「ご安心くださいますようお願い申し上げます」は、品詞分解すると「ご」+「安心」+「くださいますよう」+「お」+「願い」+「申し上げる」+「ます」となります。
したがって、「ご安心くださいますようお願い申し上げます」は正しい敬語表現であるといえます。 「申し上げます」は「言わせていただきます」という意味で、目上の人など敬意を払うべき相手に対して、”うやうやしく言う”というニュアンスがあり、目上の人に使用するのに最適な敬語表現です。 「ご安心賜りますようお願い申し上げます」ということもできます。 「賜りますよう〜」は、「もらう」の謙譲語です。 「賜りますよう〜」も「〜してくれるよう」という意味があり、断定を避けるやわらかい印象を与えるお願いの表現になります。
「安心いたしました」は、自分が安心した時に使います。 例えば、「ご安心下さい」など安心できるような気遣いの言葉をかけてもらったりしたときです。 「安心いたしました」は、「安心」に「する」の丁重語であり「いたす」に丁寧語の「ました」を使用した敬語表現です。
「ご安堵ください」は、「安堵」に接頭語の「ご」と「くれ」の丁寧語「ください」をつけた敬語表現です。 「安堵」の意味は、「不安や心配事が解消されて、緊張から解放されること」です。 「安堵」も「安心」もほぼ同じ意味ですが、使い方が少々異なります。 「ご安堵ください」は「ご安心ください」に言い換えることができますが、「ご安心」は「ご安堵」に言い換えられない場合があります。 これは、「安堵」には「心配がなくなる」という意味しかありませんが、「安心」には「心配がなくなる」という意味の他にも「心配がない状態が続く」という意味も含まれるからです。 2つとも「状態の変化」を表す表現ですが、「安心」には「状態の継続」という意味も含まれることを覚えておきましょう。
「心配」の意味は「これから先のことなどが気がかりで心を悩ませること」です。 「ご心配なさらないでください」は、「心配しないでください」を「お〜なさる」の尊敬語と「くれ」の丁寧語を使用した敬語表現です。 「ご心配なさらないでくさい」は「ご安心下さい」と言い換えることができます。
「お気になさらず」は「気にする」という言葉に、接頭語の「お」と敬語の「なさる」と打消しの言葉をつけた表現です。 「お気になさらず」は、「気にしないでください」という意味で使用される言葉です。 「問題ないです」「心配しないで大丈夫です」というようなニュアンスで使用されます。 「心配なさらないでください」という意味でも使用することができます。
「お気遣いなく」の意味は「心配しないでください」「気を配らないでください」です。 「お気遣いなく」は、「気遣い」という言葉に、接頭語の「お」に「ない」という言葉をつけて「気遣い」という言葉を打ち消しています。 「気遣い」とは、「あれこれと気をつかうこと」です。 「心配して気をつかう」という場合や、「お祝いごとにプレゼントを用意する」というような心配りを「気遣い」といい、相手が気遣ってくれたという場面で「お気遣いありがとうございます」というように使用します。 つまり、「お気遣いなく」は「なく」という打消しの言葉を伴っている為「心配しないでください」「気をくばらないでください」という意味であるということになります。
日本ではビジネスシーンで「ご安心ください」などとよく使いますが、英語圏ではこのようなニュアンスの文言は一般的に使いません。 ビジネスシーンで使ってしまうと、かえって相手に違和感を与えてしまう可能性があるので注意しましょう。 「危機が迫っているわけでないのに、なんで安心してくれって言ってるんだろう」と感じるネイティブが多いでしょう。
「ご安心ください」を直訳すると「Please rest assured that...」となります。 「Rest(休んで)」という命令文に「assured(安心・確信・保障されている)」という過去分詞を付け加えたものです。 他にも「You don't need to be concerned.(あなたは懸念する必要がない)」もあります。 この「need」は動詞ですが、助動詞として使うと、「You need not be concerned.」なり、より堅い響きがあります。 カジュアルな表明ならば「Don't worry.(心配しないで)」があります。