「凛とした」は「凛とした立ち振る舞い」「凛とした立ち姿」「凛とした対応」「凛とした強さ」「凛とした人」「凛とした美しさ」「凛とした声」などと使いますが、正しい意味を知っていますか?「凛とした」には実は3つもの意味があるんです!今回は意外と分かりづらい「凛とした」の意味と使い方を徹底解説します。
「凛とした」の意味は「ひきしまっていて威厳がある」「きりっとしていて頼もしい」です。 同じ漢字「凛」を使った言葉に「凛々しい(りりしい)」がありますが、意味は同じです。 容姿や態度などに対して使います。 シャキッとしていて聡明で、程よく緊張感が漂うような張り詰めた人や見た目、態度、振る舞いを指します。 「張り詰めている」と聞くとネガティブな印象を受ける人もいるかもしれませんが、「凛とした」はポジティブな意味で使います。 「空気感が張り詰めるほどしっかりしていて勇(いさま)ましい」という意味合いです。 主な言い回しは、
となります。 よく使う「凛とした女性」とは、「洗練されたしっかりとしている女性」のことを言います。 具体的には、
などの条件を兼ね備えた女性といえます。 「凛としてるよね」と言われた場合、意味的には「頼もしい」なのでポジティブな意味ですが、話者によっては
などのネガティブな意味合いで使っている可能性もありますので注意です。。。 それでは「凛とした」を使った例文を紹介していきます。
例文
「凛とした」は、「容姿や態度」に対して使用すると上述しましたが、「声・音」に対しても使用することができます。 「凛とした声」は「威厳のある声」という意味合いで解釈するのが普通です。 しかし、「声・音」に対して「凛とした」という表現を使用する場合は、「声や音がよく響く様子」を言い表す場合もあります。 よって、「凛とした声」は「よく響き渡る声」という意味の場合もあります。
例文
「凛とした」には、「寒気の厳しい」という意味もあります。 ただ「寒い」と表現するよりも「凛とした」と表現するほうが、寒さに顔をしかめるような、寒さにこたえているような厳しさを伝えることができます。 小説など読み手に情景を想像させたいような場面で使用されることが多い表現です。
例文
「凛」を含む四字熟語には、
があります。 座右の銘としても人気です。 意味はどれも「威厳があってりりしい」となります。
ちなみに「凛とした美しさ」を花言葉にもつ花は「カラー」です。 「カラー」は草丈15cm~1mになる多年草で、花の色は赤、オレンジ、黄、ピンク、白、紫などです。
「凛とした」という言葉を分解すると、形容動詞「凛たり」の連用形「凛と」+「する」の連用形「し」+状態を表す助動詞「た」です。 したがって「凛とした」を副詞「凛と」に過去形「した」が組み合わさったと捉えるのは誤りです。 「する」の連用形「し」に状態を表す助動詞「た」が組み合わさったとするのが正しい解釈です。 意味をなしているのは「凛」という漢字です。 「凛」の原義は「身震いするほど寒い」です。つまり上記で紹介した3つ目の意味が「凛とした」の基本義ということになります。 そこから転じて「寒気が漂うほどきりっとしている」という意味が生まれました。
形容動詞「凛たり」の連用形である「凛と」は、「凛とした」の形で使うことが多いですが、
というように、単体でも副詞として使うことがあります。 例えば、「凛と張った涼しい目をした少女」「凛と張り詰めた冬の空気」などと使います。
例文
古語「りんと」には「きちんと」という「計量が正確であるさま」を指す意味もありました。 その場合の正しい漢字は「厘と」です。 「厘」は、小さい数量を表す段位や、紙幣の単位で使用されますが、読み方が同じであったことから「凛と」でもこの意味で使うことがありました。
例文
漢字表記する場合の「凛」と「凜」の違いはありません。 「凛」と「凜」は、非常に良く似ていますが、「稟」の下半分が「禾」であり、「凛」という漢字のつくりは「禀」であるということがわかります。 「凛」と「凜」もまったく同じ意味の言葉として使用され、違いと言えば「凛」は旧字で「凜」は正字であるということでしょう。 「正字」とは、1716年に中国で完成した「康煕字典」という漢字辞典に乗っている字体です。 「凜」が本体の正しい漢字表記であり、「凜」を書きやすいように変化させた字体が「凜」になります。 どちらで表記しても意味は同じなので、どちらを使っても間違いではありませんし、どちらをどのように使うという定義もありません。 ちなみに、人の名前に使用されるのは「凛」のほうが多いです。 名前のように固有名詞として使用されている場合は、「凛」でも「凜」でもどちらでも良いとは言えませんので、書き間違ってしまうことがないように「凛/凜」がつく名前は、どちらを使用しているのがよく確認をしましょう。
「潔い」は、「いさぎよい」と読みます。 「潔い」の意味は、
です。 「凜とした」と同じように「潔い人」といった使われ方をしますが、「潔い人」は、さっぱりとしていて未練がましくないような人、決断力があって、優柔不断さや後ろめたさなどを感じさせない人を指します。
例文
「凛然」は、「りんぜん」と読みます。 「凛然」は、
を言いあらわす言葉です。 「〜たる」は、文語の断定の助動詞「たり」の連体形です。 「〜であるところの」という意味や、物事を強調して説明する場合に使用されます。
例文
「きりりとした」は、外見などが緊張してキリっとしているような、しっかりとした印象を言い表す場合に使用される言葉です。
というように「キリっ」としていること表現するのに「きりりとした」という表現を使うことが多いです。
例文
「精悍な」の意味は「鋭い顔つき」「力強い様子」です。 例えば、「精悍な顔つき」は、「目鼻立ちがシャープで引き締まっている凛々しい顔立ち」を指します。 このように、たくましさや頼もしい印象を受けるような様子を言い表す言葉が「精悍」です。
例文
「おどおどしている」は、「なかなか決心することができず、物事を行うことができない様子」です。 優柔不断だったり、決断する勇気がなく、挙動不審になってしまっている様子を「おどおどする」と良い表すことができます。 「凛とした」という表現は、ぴしっとした威厳のある様子を言い表す言葉なので、挙動不審のような威厳のない様子を言い表す「おどおどしている」という表現は、対義語であると言えるでしょう。
例文
「ビクビクする」は、「何かに恐れてためらったり、落ち着かない様子」を言い表す言葉です。 「凛とした」という表現は、何にも恐れを感じずピシっとしている様子を言い表す言葉なので、何かに怯えていたり落ち着かなくなってしまっている様子を表現する「ビクビクする」は、対義語であると言えるでしょう。
例文
「締りがない」は、「表情や態度がたるんでいる様子・緊張感のない様子」です。 「凛とした」という表現は、「ピシとした締りのある表情や態度」「威厳を感じる様子」なので、「締りのない」は対義語になります。
例文
「たじろぐ」は、「相手に威圧されてひるんだり、しりごみする様子」です。 例えば、何かを意見したときに周りから反対の声が出て、びびって「やっぱり今のナシ・・・」となかったことにしてしまったりすることを、「たじろぐ」と言います。 「凛とした」と表現されるような人は、きちんと芯があって間違っていないと思えば簡単に人に意見を合わせたり折れることがないので、「たじろぐ」は対義語であると言えるでしょう。
例文
「怖気づく」は、「恐ろしという感情を抱いて怯むこと」です。 例えば、「大きな声に怖気づいた」は「大きな声に驚いて恐怖心を抱いた」というようなニュアンスになります。 「怖がる」「びびる」といった意味合いで使用される言葉です。
例文
「凛とした」に最もニュアンスが近い英語表情は「dignified」です。 「dignified」の「威厳のある」と和訳されることが多いです。 「dignified」とは、「自制されており、真面目で、落ちているがゆえに尊敬に値する」という意味です。 まさに「凛とした」という日本語の英訳にピッタリな単語ですよね。 「maintain a dignified silence about...」の形で「...について威厳を持って沈黙を守り続ける」という意味で使われることがあります。 「dignified」の類語には「majestic」があります。 「majestic」は「dignified」より強意的で「荘厳な」という日本語に近く、日常会話でもあまり使用されません。
She is a tall, dignified woman.
彼女は背が高く凛とした女性だ。
He looked dignified in a suit.
彼は凛としたスーツ姿だった。
She had a job interview in a dignified manner.
彼女は凛とした態度で就活面接に挑んだ。
She whispered something in a dignified voice in my ear.
彼女は凛とした声で私の耳元で何かを囁いた。
「dignified」の類語として「commanding」「imperious」などが紹介されることがありますが、これらは「凛とした」というニュアンスとはかなりかけ離れているので注意です。 「commanding」も「威厳のある」という和訳があてらることがあるのですが、「command」の元の意味は「命令する」なので、「commanding」は「威圧的な」という意味も含みます。 また「imperious」は「威厳」というより「傲慢」「横柄」という意味合いなのでだいぶ「凛とした」とは違います。
He was a very imperious, arrogant man.
彼はとても傲慢で横柄な男だった。
「凛とした」の意味にもある「(声などが)響く」という英語は「echoing」です。
いかがでしたか? 「凛とした」という言葉の意味と使い方はご理解いただけたでしょうか? 「凛とした」という言葉は抽象度が高く、なんどなく釈然としない人も多かったのではないでしょうか? 「凛とした」は古語としても使われていた言葉ですし、現代でもポジティブとネガティブ両方のニュアンスを持つ言葉ですから、正しく使用しましょう。