「したり」は同類のものを等しい関係で複数並べる時に使う「並列助詞」です。「〜したり、・・・したり」というふうに使い、「遊んだり、歌ったり」のように、「し」の部分は動詞によって変化します。今回はそんな「したり」の使い方を例文付きで詳しく解説します。敬語や類語、英語も紹介します。ちなみに「したり」は敬語にしても履歴書などには使用不可ですので注意しましょう。その場合の言い換え表現も紹介しています。
「したり」は同類のものを等しい関係で複数並べる時に使う「並列助詞」です。 「並立助詞」とも言います。 「〜したり、・・・したり」というふうに使います。 「遊んだり、歌ったり」のように、「し」の部分は動詞によって変化します。 どのように変化するかは活用次第となっています。 また「遊んだり」のように「たり」が「だり」になることもあります。 並列助詞には他にも「東京も大阪も」の「も」や、「フランスかイギリスか」の「か」などがあります。
「したり」は、サ変動詞「す」の連用形「し」+完了を意味する助動詞「たり」で出来ている言葉です。 サ変動詞「す」の意味は「する」となります。 「したり」を漢字表記すると「為たり」となります。
「したり」は基本的に2回繰り返して使います。 例えば「勉強したり遊んだり」や「笑ったり泣いたり」などです。 同じカテゴリーの言葉を並べ、2つのことをとある期間の中で行っていることを表します。 また「泣いたり笑ったり」と対照的な言葉を並べることで、短い間で泣くこと笑うことを繰り返し行っていることを表しています。 違うカテゴリーの意味の言葉を用いて「勉強したり転んだり」や「笑ったり海に行ったり」とするのは違和感があります。
例文
「したり」は1回だけ用いる場合は、例を示しています。 「このオイルはサラダのドレッシングにしたり出来ます」などと使います。 これはオイルの使用例としてサラダのドレッシングを挙げています。 「ドレッシングに出来ます」だと、オイルはドレッシングにするのが通常であることになります。 しかし「ドレッシングにしたり」とすることで、ひとつの例として挙げていることがわかります。
例文
「したり」は3回繰り返して使うことも出来ます。 「食べたり飲んだり話したり」や「ゲームをしたり本を読んだりお菓子作りをしたり」などと使います。 あまりに多く「したり」を続けるとくどいですが、3回ほどならよく使われます。 たくさんのことを挙げたい場合は「したり」を使わず「ゲームや読書、お菓子作りやアクセサリー作り、絵を描くこともあります」などとするといいでしょう。
例文
「したり」を使って同類を並列する場合、2回目のしたりだけを省略した文章はおかしな日本語となります。 「映画観賞をしたりゲームをしたりする」を「映画観賞をしたりゲームをする」とするのはNGです。 必ず2回目も「したり」を入れて作りましょう。 省略する場合は1回目の「したり」にして、「映画観賞やゲームをしたりする」が正しい文章となります。
「したり」の後に「など」といった余計な単語を付けるのは不自然な日本語となります。 「映画観賞をしたりゲームをしたりなどする」とした場合、冗長な文章となってしまいます。 映画観賞やゲーム以外のことをすることもあることを表したいのでしょうが、「など」は使わない方がきれいな文章となります。 「映画観賞をしたりゲームをしたりする」としましょう。 もし他のことをしていることも表したいのであれば、「映画観賞やゲームなどをしている」と「したり」を使わない文章にしましょう。
「したり」をしっかり2回使ってはいるものの、使う位置を間違えてしまう場合があります。 例えば「映画観賞をしたりゲームをしたりして、休日を過ごした」という文章を 「映画観賞をしたりゲームをして、休日を過ごしたりした」としてしまうと間違った文章になります。 これは2回目の「したり」を「ゲームをして」のところで使わなければいけないのに、「休日を過ごした」の部分に間違って使ってしまっています。 「したり」は並列の関係にあるものに使うことをしっかりと覚えておきましょう。
「したり」は感嘆詞でもあります。 感嘆詞として使う場合は
の3つの意味があります。 ただ、現代において感嘆詞「したり」はほぼ死語です。 古文でも使われている言葉で、今は使っている人はほとんどいないでしょう。 成功したときと失敗したときの両方で使うのがポイント 現代で使われている言葉で例とした場合、「やったね」ならポジティブな意味ですが「やったな」だとネガティブな意味になりますよね。それに近い言葉になっています。 ちなみに「これはしたり」の形だと失敗した時に「やらかした」「しまった」という意味で使います。
「したり顔」の意味は「してやったという得意そうな顔つき」です。 「したり顔」の「したり」は感嘆詞が由来となっています。 類語には、
などがあります。 「したり顔」は現代でも使われています。
「〜したり、しなかったり」は不規則性を示します。 例えば「勉強したり、しなかったり」とすれば「勉強する時もあればしない時もある」となります。 「勉強をする」と決まっているわけでも、「する時としない時」が規則的ではないことを表します。 気分によってだったり、その時々の都合で決めているといった意味合いが強くなります。 「〜したり、しなかったり」の他にも「行ったり、行かなかったり」といった使い方もします。
例文
「したりして」は可能性の暗示をする表現です。 「もしかしたら○○かもしれない」といった、可能性は高くはないけど、なくもないことを表します。 「本当は知ってたりして」「彼がやらかしてたりして」などと使います。 「本当は知ってたりして」は、知っているかどうかは分からないけど「知っているかもしれないよ?」と可能性を暗示しています。
「したりない」は漢字で表すと「し足りない」となります。 これまで説明してきた「したり」とは異なる言葉です。 「し足りない」は、何かを行いたい欲求が満たされないことを表します。 例えば「休憩し足りない」とした場合は、「もっと休憩したい」という意味です。 動詞で使う場合は「食べ足りない」「歌い足りない」などとなります。
「したりしなかったりしろ」はネット用語です。 意味は「することも、しないことも、どっちもしなさい」となります。 専門用語などに使われることが多いですが、一般的なことで使った場合は「連絡したりしなかったりしろ」となります。 これは「連絡をすることも、しないことも、どっちもしなさい」ということです。 例えば片思いしている相手に連絡をした方がいいか、しない方がいいかで悩んでいる人に使うことが出来ます。 連絡をしたりしなかったりして駆け引きをした方がいいということを伝えられます。 アドバイスをする時や意見をする時に使います。
「したり」の尊敬語は「なさったり」「されたり」となります。 「し」はサ変動詞「す」の連用形で、「す」の意味は「する」となります。 動詞「する」の尊敬語が「なさる」「される」であるため、それが変化して「なさったり」「されたり」となります。 「映画観賞をなさったり」「乗馬をされたり」などと使います。 動詞の場合は、敬語に変化したものに「たり」を付けます。 例えば「食べる」なら、「食べられたり」「召し上がられたり」「お食べになられたり」となります。
例文
「したり」の謙譲語は「させていただいたり」となります。 自分自身のことを話す場合に使います。 例えば「参加させていただいたり」「勉強させていただいたり」となります。 「させていただいたり」が謙譲語であるため「拝見させていただたり」と謙譲語に合わせると二重敬語となります。 この場合は「拝見したり」としましょう。 また「させていただく」は何度も使うとくどい印象もあり、慇懃無礼になる可能性もあります。 そのため、例えば「資料作りをさせていただいたり、進行をさせていただいたり」と並列で使う場合は「資料作りや進行をさせていただいている」と「させていただく」を一つにして使いましょう。
例文
「したり」の丁寧語はないため、文章の語尾に「ます」や「です」を付けることで丁寧語にできます。 例えば「食べたり飲んだりする」であれば「食べたり飲んだりします」にして丁寧語にします。
例文
「したり」は主に口語で使い、書き言葉だと稚拙な印章を与えてしまいます。 そのため履歴書やビジネスメールなどでは使わないようにしましょう。 例えば履歴書で「休日も山を登ったりプールで泳いだりして体を動かしています」などとは書きません。 この場合は「休日も登山や水泳をして体を動かしています」と書き換えましょう。
「したり」はかしこまった場面では、口語でも稚拙な印象を与えてしまうことがあります。 そのため、言い換えとして「こと」「など」を使うようにしましょう。 また文章では「等」などを使うといいでしょう。 例えば「映画を観ることや本を読むこと」や「映画を観るなど」とします。 「等」はかしこまった印象も与えるため、ビジネスメールなどでも用いることが出来ます。 例えば何か説明をする際に「この商品は○○等が出来ます。詳しくは資料に記載しております」などと使います。
何度か少し説明していますが、「したり」を言い換える場合は動詞を名詞にするといいでしょう。 例えば「映画を観たり、本を読んだりする」であれば「映画観賞や読書をする」と言い換えることが出来ます。 他にも「料理をしたり掃除をしたりする」なら、そのまま「料理と掃除をする」と言い換えられます。 このように「したり」が続いてくどいな、と思ったり、ビジネスシーンなどで稚拙な印象になりそうだなという時は名詞に変えて文章を作りましょう。
それから、文章を2つに分けてしまうのもいいでしょう。 例えば「映画を観ています。また、本を読む時もあります」と言い換えられます。 また「晴れていたら山に登ったり、雨の日なら家でゲームをしたりしています」といった文章であれば、「晴れていたら山に登ります。雨の日であれば家でゲームをしています」と変換できます。 「したり」の文章は様々な方法で言い換えられることが出来ますので、覚えておきましょう。 より多くの日本語を覚えておくと、表現方法が豊かになり相手にも伝わりやすくなります。
「〜したり〜したり」の英語表現は「and」で表現できます。
I ate snacks and took a nap on Sunday.
日曜日はお菓子を食べたり、昼寝をしたりした。
It's raining on and off.
雨が降ったり止んだりしている。
「したり顔」つまり「ドヤ顔」の英語は「smug face」です。 「smug look」ということもできます。 ( ͡° ͜ʖ ͡°). こんな顔です。
She had a smug look when she won the lottery.
宝くじに当たった時、彼女はしたり顔をした。
いかがだったでしょうか? 「したり」について理解出来たでしょうか? ✔同類のものを複数並べる時に使う ✔2回繰り返すのが基本だが、3回使ってもOK ✔1回だけ使い、例を示す場合も ✔敬語は「なさったり」「されたり」