「ごますり」の意味は「自分の利益のために、他人にお世辞を言ったり機嫌をとったりすること」です。語源はすり鉢でごまをすった時に四方にごまが付く様子が「人にくっついて機嫌取りをしている様子」と似ているためです。「ごますり野郎」などと人を非難する時に使う語なので、使う際は注意が必要です。今回はそんな「ごますり」の意味と詳しい使い方、類語を例文付きで解説していきます。
「ごますり」の意味は「自分の利益のために、他人を褒めへつらうこと」です。 「へつらう」とは「人の気に入るように、媚びたりお世辞を言ったりすること」です。 他人に取り入って気に入られ、利益を得ようとする態度や様子を「ごますり」と言います。
「ごますり」の語源は、諸説あると言われています。 一つ目は、煎った胡麻をすり鉢ですり潰すとすり鉢のあちこちに胡麻がつく様子が、人にべったりとくっつくご機嫌取りの場面とそっくりであったことと言われています。 二つ目は、昔食卓に出す胡麻をするのは小坊主の役目であり、上手にすれれば和尚さんの機嫌がよくなり上手にすれないと和尚さんの機嫌が悪くなったそうです。 和尚さんが機嫌の悪い際に、胡麻上手にすって機嫌を取る小坊主がいたことから、「ごますりが上手な小坊主は、ご機嫌取りも上手」ということから機嫌を取ることが「ごますり」と言われるようになったそうです。 三つ目は商人が相手にへつらって物を売る際に手を揉む仕草が胡麻をする姿に似ていることから生まれたと言われていますが、あまり有力とされていません。
「ごますり」の漢字は「胡麻擂り」です。 「胡」は中国の西城の諸国を表しています。 漢字「胡」が付く他の植物には「胡瓜(きゅうり)」「胡桃(くるみ)」「胡椒(こしょう)」などがあります。 胡から持ち帰ったものには冠されることで同じ漢字が使われています。 ちなみに胡麻は、麻の実に似ていることから「胡麻」と名付けられました。 「擂」は手偏に雷で出来ています。 「する」「すりつぶす」といった意味を持ちます。 「する」という漢字には「擦る」「摺る」などがありますが「ごますり」は「擂る」が正しい漢字となります。
「ごますり」は人が媚びている様子を批判的に表した言葉です。 そのため、ごまをすっている人に対して「ごますり野郎」「ごますり上手」などと嫌味で使うことが多くなっています。 職場などにも必ず一人はいますよね。 上司やお偉いさんに気に入られようと、仕事もせずお世辞を言ったりしている人… そういった人に対して「ごますり野郎」と使います。 ちなみに「野郎」は男性に対して使う言葉です。 実際に、ゴマすり男は出世するかどうかというと、することが多いんですよね。 やっぱり自分を褒めて懐いてくれる人は可愛いもんですし、表面上は良い関係を築きやすいので、認められやすくなっています。 ただ実力が伴っていないと、後に人間関係や仕事をするうえで崩れていくことも多くなっているため、「ごますり上手」なのかどうかはしっかりと判断しなくてはなりません。
例文
「ごますり」を動詞として使う場合は「ごまをする」が正しくなります。 「ごますりをする」「ごまする」といった表現ではなく「ごまをする」を用いるようにしましょう。 「Aさんは部長にいつもごまをする」「ごまをすってばかりいる」などと使います。
「ごますり器」「ごますり棒」「ごますり鉢」は料理道具のことです。 ごまをすっている人を表す言葉ではありません。 元々ごまをするために使われていたのが「ごますり棒」と「ごますり鉢」です。 鉢にごまをいれ、棒ですりつぶして作っていました。 昨今では、ボタンひとつでごまをすってくれる「ごますり器」たるものがあります。
「ごますり」を反対にした「すりごま」は「調味料」のことです。 すられた胡麻のことです。 ちなみに、煎ったごまが「いりごま」です。 外皮の色の違いから「白ごま」「黒ごま」「金ごま」があります。
「忖度」の意味は「他人の気持ちや考えを推しはかること」です。 「忖」は訓読みで「はかる」です。 「心に手を当てて人の気持ちを推し量る」の意味を持ちます。 「度」は訓読みで「たび」です。 「長さや量や大きさを表す単位」「ほどあい」「人柄や様子」を表す意味があります。 その二つが合わさって「忖度」となり、「相手との距離などほどあいをはかりながら相手の気持ちを推し量る」といった意味となりました。 「忖度」は2017年の流行語大賞になり、その元となった事件により「忖度」という言葉に悪い印象が強くついてしまいましたが、上記でも説明したとおり本来の意味は悪いことを指す言葉ではありません。 「ごますり」は自分の利益のために相手にへつらう様子であり、「忖度」は相手の気持ちを推し量ることですので、本来の意味は全く異なります。 「忖度」が悪い意味で用いられている場合も「相手の都合のいいようにする」といったニュアンスであるため、自分の評価のために行う「ごますり」とは意味が異なります。
例文
「おべっか」の意味は「ご機嫌を取ること」「ご機嫌を取る時に使う巧みな言葉」です。 また「おべんちゃら」とも言い、意味は同じです。 やや古い言葉で、現代ではあまり使われていませんが「ごますり」とほぼ同義で用いられます。 「おべっかを使う」「おべっかを言う」「おべっか上手」などと使います。
例文
「機嫌とり」の意味は「人の気に入るような言動をすること、そういったことをする人のこと」です。 「ごますり」とほぼ同義で使われます。 「ご機嫌取り」と使われることもあります。 上司に気に入られようと必死に褒めたりお世辞を言う場合にも使いますし、恋人を不機嫌にしてしまった後に機嫌を直してもらおうとアイスなどを買ってくる行為にも使われます。
例文
「媚びを売る」の意味は「相手の機嫌を取るためにへつらうこと、上の人に気に入られようとすること」です。 媚を売っている人を「媚び売り」と言います。 単に「媚びる」とも使います。意味は「媚びを売る」と同じになります。 主に、目下の人が目上の人に対して気に入られようとすることに使います。 ただ「媚びる」には「女性が男性の気を引くためになまめかしい態度をする」といった意味もあるので、女性に対して使われることも多くなっています。
例文
「よいしょ」の意味は「相手をおだてて持ち上げるさま」です。 「よいしょ」は「ごますり」や「媚び売り」ほど「気に入られようとする」といった意味合いは弱く、「相手をおだてて気持ちよくさせる」といった意味合いが強くなっています。 主に「よいしょする」と使われています。
例文
「尻尾を振る」の意味は「こびへつらって、相手に取り入る」といった意味です。 目上の人や力の有るものに気に入られようと振る舞う様子を表しています。 これは、犬がえさをくれた人に対して尾を振ることから、そういった様子をたとえて使われている言葉です。
例文
「太鼓を持つ」の意味は「相手の言うことに調子を合わせて機嫌をとる」です。 「太鼓を打つ」「太鼓をたたく」という場合もあります。 太鼓を持つ人のことを「太鼓持ち」とも言います。 語源は、江戸時代に遊郭において、誘客の機嫌をとり酒席の盛り上げ役の男が、いつも太鼓を持ち歩いてそれをたたいてサービスをしていたことです。
例文
「阿る」の意味は「媚を売って人に気に入られようとすること、支持を得ようとすること」です。 相手に気に入ってもらおうとして機嫌をとること、高い評価を得られるような振る舞いをすることを表します。 「諂う」の意味は「上の立場の人に気に入られるために、お世辞を言うなど機嫌をとること」です。 自分を必要以上に下げて、相手に気に入ってもらおうと世辞を言うことを表します。 「阿る」は「上司に阿る」「権力に阿る」といったように人に対しても見えないものに対しても使いますが、「諂う」は「権力に諂う」といったように見えないものに対しては使いません。 「上役に諂う」「リーダーに諂う」と人に対して使います。 「諂う」は「人に気に入られるように、自分を必要以上に卑下して振る舞う」と、マイナスな意味が含まれます。 「阿る」よりも「諂う」の方が、自尊心の低さや偏屈さが感じられます。
例文
「ごまをする」の英語は、
です。
He is just flattering me because he wants to borrow some money.
彼はお金を借りたくて、おれにごますってるだけだ。
「ごまする人」を意味する英語には、
です。 「apple polisher」は直訳すると「りんごを磨く人」です。 ピカピカにしたりんごを人にプレゼントすることが、人にへつらっているということでこの意味になりました。 「ass-kisser」は直訳すると「おしりにキスする人」です。 日本語ではあまり馴染みがないですが、英語圏ではおしりにキスすることがごますり行為にあたります。 お尻にキスすることで、鼻にウンチが付くことから、「brown nose」で「ごますりをする」という動詞で、「brown noser」で「ごますり野郎」という意味になります。
余談ですが、中国語では「ごますり」は「拍马屁(馬の尻をたたく)」と表現します。 かつて中国北部では馬が大変な財産でありました。 馬を連れた人とすれ違う際に、相手に馬のお尻を軽く叩くことが習慣でした。 そして「いい馬ですね」と褒めるのが定番でした。 例え、いい馬じゃなくてもそのように言っていたそうです。 その習慣から転じて、「馬の尻をたたく」で「ごますりをする」という意味になりました。
「ごまかし」の意味は「でまかせを言って、真実を隠すこと」です。 その動詞が「ごまかす」となります。 「ごまかし」の漢字は「誤魔化し」が使われていますよね。 実は、「誤魔化し」は当て字なんです。 本来の「ごまかし」の漢字は「胡麻菓子」です。 これは江戸時代の「胡麻胴乱(ごまどうらん)」というお菓子のことを指しています。 「胡麻胴乱」は中が空洞になっており、見掛け倒しのたとえとして用いられたことが由来となっています。
「胡麻塩頭」は「ごましおあたま」と読みます。 意味は「黒い髪に白髪が入り混じった頭」のことです。 胡麻と塩は白と黒の対比から白と黒が混じったものの比喩に用いられることがあり、「胡麻塩頭」もそれに由来しています。 他にも「胡麻塩の口髭」などと言われることもあります。 「ごま」を含む 四字熟語には「胡麻豆腐」「胡麻味噌」「荏胡麻油」「胡麻斑蝶」があります。
「ごまをまいたように」という言葉があります。 これは『羅生門』で出てくる表現です。 前後の文脈から読み解くと「点々と散らばっている様子が一羽一羽はっきりと見えたこと」を表していると言われています。 そしてカラスが飛び回っている様子を言っているため、カラスがごまの大きさに見えるほど離れたところから見ていたということを表しています。
「開けゴマ」は「アリババと40人の盗賊」という物語に出てくる呪文のひとつです。 「アリババと40人の盗賊」はイスラムやアラビアの伝説や民話を集めた「アラビアンナイト」のうちの一つです。 日本では「千夜一夜物語」と呼ばれ、ほかにも「アラジンと魔法のランプ」や「シンドバッドの冒険」などもそのうちの物語です。 「アリババと40人の盗賊」に出てくる盗賊が、財宝のある洞窟の入り口を開ける際に「開けゴマ」といって開けていました。 ちなみに英語でもフランス語でも「ごま」が使われています。 英語では「Opne Sesame」と言うんです。 なぜ「ゴマ」なのか、という説はいくつかあるようです。 「ゴマが貴重なものだったから」…イスラムやアラビアでは貴重な食材だったため、財宝や宝物に見立てていた 「ゴマを収穫するときの様子」…ゴマを収穫するには感想をさせて実を包む房を開かないといけないから 「ゴマに神秘性があるから」…魔術にごま油が使われるなど、ゴマに神秘的な力が宿っていると信仰されているから ちなみに洞窟の入り口の扉代わりの岩を閉める時は「閉じろゴマ」「閉じよゴマ」と使われています。
いかがだったでしょうか? 「ごますり」について理解できたでしょうか? ✔意味は「自分の利益のために、他人を褒めへつらうこと」 ✔漢字は「胡麻擂り」 ✔人に対して嫌味で「ごますり野郎」「ごますり上手」などと使う ✔類語は「おべっか」「媚び売り」「よいしょ」など