「前途多難(ぜんとたなん)」とは「これから先多くの困難が待っていること」です。「前途多難な人生」「前途多難な恋」などと使います。「前途」は「前の途(みち)」つまり「将来」を意味し、「多難」は文字通り「困難や災難の多いさま」を表します。「前途多難」の対義語には「前途洋々」「前途多望」などがあります。
「前途多難」の読み方は「ぜんとたなん」です。 アクセントは「ぜん」と「なん」に付きます。
「前途多難」の意味は「これから先多くの困難が待っていること」です。 「前途」は「これから行く先の道、将来」で「多難」は「多くの困難」を表します。
「前途多難」の漢字の成り立ちを解説します。 「前」は、止+舟+刂でできた会意文字です。会意文字とは、2つ以上の漢字を組み合わせて意味を合成した文字のことです。 止は足、舟は容器、刂は刀を表しており旅立ちの前の様子を表すことから、「前」は「すすむ」「まえ」の意味となりました。 「途」は、辶+余でできた形声文字です。形声文字とは、音を表す文字(音符)と意味を表す文字(意符)で構成された文字のことです。 辶は十字路と立ち止まる足、余は音符であり伸びるを表すことから、「どこまでも伸びるみち」の意味となりました。 この2つが組み合わさって「前途」は「これから進んでいく道」となります。 「多」は、夕+夕でできた会意文字です。 夕は肉を表し、それが重なって肉のおおいことから、「おおい」の意味となりました。 「難」は、隹+「カン」と読む左偏でできた会意文字です。 隹は鳥を表し、左の部分は「火を仕掛けた矢」で鳥を射る形であり、「鳥を驚かし、なやます」といった意味を表しています。 その「なやます、なやむ」の意味が「むずかしい、かたい」の意味となりました。 この2つが組み合わさって「多難」は「多くの難しいこと」となります。
「前途多難」は、これから様々な悩みや困難が待ち受けているであろうと思う場面であればどんなことに対しても使われます。 よく使われるのが
です。 これから起こる災難が予想できている、もしくは待ち受けていると分かっている場合に使います。 「漠然とした心配」や「すでに起きている困難」に対しては使いません。 例えば、就職をして一人暮らしを初めて新たな生活がスタートしたが、「入社してすぐに嫌なことを言ってきた先輩がいる」「初めて自炊をしたら全部丸焦げした」などと、これから人間関係がめんどくさい事になりそうなうえに、苦手な料理も勉強しなきゃいけないと大変なことがたくさん起こることを予測した歳に「前途多難なスタートだ」と使います。
例文
また「〜は前途多難だ」といった使い方もします。 先ほども上げた例で言えば
と使います。 他にも「A社の状況は前途多難だ」「今シーズンは前途多難だ」などと使います。
例文
「前途多難」はビジネスシーンでも使われることがあります。 そのため敬語表現もしっかりと覚えておきましょう。 「〜は前途多難だ」を「〜は前途多難です」とすることで敬語となり、先輩や上司などに対して使うことが出来ます。 「一回目の段階でつまずいたので、私は前途多難です」と使います。 他にも「完全再開は前途多難となっております」「未だ状況は前途多難でございます」などと使うことができます。
例文
「いばらの道」の意味は「困難な状況や苦難に満ちた人生」です。 いばらが生えている道が歩くのに困難であることから、それを人生行路をたとえて使われています。 「前途多難」は将来に対して使いますが、「いばらの道」は人生や生活そのものをたとえることが多くなっています。
例文
「前途遼遠」は「ぜんとりょうえん」と読みます。 意味は「目的の達成までの道のりが、まだ長く残っていること」です。 「遼遠」は「はるかに遠いさま」といった意味です。 「前途遼遠」ではゴールがはるか遠くにあるということを意味し、目的達成をするのに相当長い時間がかかることを表しています。
例文
「暗雲低迷」は「あんうんていめい」と読みます。 意味は「穏やかではなく何事かが起こりそうなようす」です。 「暗雲」は「今にも雨が降り出しそうな黒い雲」のことで、穏やかではない様子を表します。 「低迷」は「その雲が低く漂っている」ことで、何かが起こりそうな様子を表します。 主に先行きが不安な時に用いられることが多くなっています。
例文
「五里霧中」は「ごりむちゅう」と読みます。 意味は「現状や物事の様子がまったく分からず、今後の方針や見込みが立たないこと」です 「五里」の「里」は「道のりをはかる単位」のことであり、「一里」は「約3.9キロメートル」でした。 「五里」は「約20キロメートル」のことです。 「霧中」は「霧の中」のことです。 「四方20キロメートルが霧の中にいるみたいに何も見えない状態」を表しており、「見通しが悪く見当をつけられないたとえ」 として用いられています。
例文
「暗中模索」は「あんちゅうもさく」と読みます。 意味は「手掛かりのない物事を探し求めること」です。 手掛かりのないままあれこれと試してみること、色々とやってみて事態を打開しようとすることを表します。 「暗中」は「くらがり。やみのなか」を意味します。 「模索」は「手さぐりで探すこと。状況が不明の中で色々と試みること」を意味します。 元々「暗中模索」は「くらやみの中で、手さぐりであれこれと探すこと」を意味していましたが、転じて「手がかりがないまま、いろいろとやってみること」を表すようになりました。
例文
「前途洋々」は「ぜんとようよう」と読みます。 意味は「今後の人生が大きく開けており、希望に満ち溢れているさま」です。 「洋々」は「洋洋」と表すこともあります。 意味は「希望に満ちているさま」です。「水が満ち溢れているさま」といった意味もあり「洋洋たる大海」などとも使う言葉です。
例文
「前途有望」の読み方は「ぜんとゆうぼう」です。 意味は「将来に大いに見込みがあること」です。 「有望」は「望みを持つことができる状態」を表し「成功するだろう」と思えることです。 これからの人生に大きな希望を持てる場面で使われます。
例文
「前途多望」は「ぜんとたぼう」と読みます。 意味は「前途有望」と同じで「将来に大いに見込みがあること」「将来に成功する可能性があること」です。 「多望」は「将来に多くの希望が持てること」です。 「前途多難」と「前途多」まで同じ漢字なことから、対比で使われることも多くあります。
例文
「前途有為」は「ぜんとゆうい」と読みます。 意味は「将来、活躍できる才能があること」です。 「有為」の意味は「能力があること、役に立つこと」です。 「有為」だけでも「才能があって将来の見込みがあること」といった意味でも使われます。 「為すところが有る」から来ています。
例文
「新進気鋭」は「しんしんきえい」と読みます。 意味は「新たにその分野に現れ、意気込みが盛んで、将来有望なさま」です。 「新進」は「ある分野に新しく加わること」「新しくその場に出ること」を表します。 「気鋭」は「意気込みが鋭く盛んなこと」「意気込みが盛んで勢いがあること」を表します。 「新しく加わり意気込みが盛んなこと」から「将来有望だと期待されている」といった意味合いで使われます。
例文
「前途多難」は「将来に多くの問題がある」という日本語を英訳すればOKです。 「将来に」は、
などと表すことができます。 「多くの問題がある」は、
などと表すことができます。 「lie」は「嘘をつく」という意味ではなく、「横になる。ある」という意味の動詞です。 「問題がある」では「やるべきことがたくさんある」などと表現してもよいでしょう。
Many problems lie ahead of her.
彼女は前途多難だ。
The new CEO has a lot of things to get done in the future.
新CEOは前途多難だ。
「見通しが暗い」という日本語を英訳しても「前途多難」のニュアンスを表現することができます。 「見通し」の英語は、
などがあります。 「(見通しなどが)暗い」を意味する英語は「bleak」です。
The economic outlook of Japan is bleak.
日本経済は前途多難だ。
「前途を祝す」は「ぜんとをしゅくす」と読みます。 意味は「将来を祝福する」で、「これから訪れるであろう先の事柄を祝うこと」を表します。 主に乾杯の音頭で「前途を祝して」などと使われることが多いです。 結婚式のスピーチや電報などでも用いられています。 他にも「前途を〜する」といった言葉に
があります。 「前途を祈る」の意味は「これからの将来が幸せであることを祈る」です。 「前途を危惧する」の意味は「これからの将来を不安に思うこと」です。
例文
「前途無効」は電車の切符に書かれいている言葉です。 意味は「途中下車した場合、目的地に着いていなくても、そこから先は切符が無効になること」です。 A駅ーB駅ーC駅とあった場合、A駅でC駅までの切符を買ったとしても、一度B駅で下車して改札を通ったら切符が無効になり、C駅までその切符では行くことが出来ないということです。
いかがだったでしょうか? 「前途多難」について理解できたでしょうか? ✔読み方は「ぜんとたなん」 ✔意味は「これから先多くの困難が待っていること」 ✔「前途多難な○○」「〜は前途多難だ」などと使う ✔類語は「いばらの道」「暗雲低迷」など