「浮き足立つ」とは「期待や不安でソワソワと落ち着かない」「恐怖のあまり逃げ腰になる」という意味です。「浮き足」とは「つま先立ち」のことで、身体のバランスが不安定になる様子から「落ち着かない」という意味が生まれました。ちなみに、楽しみのあまり落ち着かない場合は「浮き足立つ」ではなく「浮き立つ」を使います。
「浮き足立つ」の読み方は「うきあしだつ」です。 「立つ」を「たつ」と読むのは誤用ですので注意しましょう。
「浮き足立つ」の意味は「そわそわして落ち着かなくなる」です。 期待や不安など先が気になって、今のことに気分が集中できなくなる状態を指します。 その状況から逃げ出したいと思うほどの不安感や緊張を指し、ネガティブなニュアンスで使います。
「浮き足立つ」の語源はつま先立ちです。 「浮き足」は「つま先立ち」の状態を意味する言葉で、室町時代から見られています。 かかとが地についていないことから「浮き足」と呼ばれていました。 「浮き足」つまり「つま先立ち」だと安定性に欠けるため、身体のバランスを維持するのが難しいですよね。 その様子から「落ち着かない様子」を表すようになりました。 この用法は江戸時代後期からです。
「浮き足立つ」は「浮足立つ」とも表記されます。 読み方も意味も変わりません。
「浮き足立つ」の意味を「ウキウキして落ち着かない様子」だと誤解している人がとても多くいます。 かく言う私も、昔は嬉しくて、楽しみで落ち着かないことを表すと思っていました。 実際には不安な気持ちから落ち着かないことを表しています。 ウキウキして落ち着かない様子を表す言葉は「浮き立つ」「浮かれる」「浮つく」です。 「浮き立つ」の意味は「うれしくて落ち着かなくなること」 「浮かれる」の意味は「楽しくてじっとしていられない気持ちになること」 「浮つく」の意味は「気分が良く落ち着かなくなること」 です。3つとも「ウキウキした気持ち」を表しています。 特に、恋愛に対して使われている場合は「浮き足立つ」の誤用が多くなっています。 「好きな人とデートの約束をして浮き足立つ」などと使われていますが、この場合は嬉しいではなく不安があるといった意味になってしまうので注意しましょう。 正しくは「好きな人とデートの約束をして浮き立つ/浮かれる/浮つく」となります。 そのため「春は浮き足立つ季節だ」も誤用です。 春は不安になるのではなく、新しい出会いがあったりや新しい年度がはじまる季節なので「浮き立つ季節」が正しくなります。 また「ウキウキして落ち着かない様子」を表すことわざには「瓢箪(ひょうたん)の川流れ」があります。 ちなみに「ウキウキ」の漢字は、「浮き浮き」です。
「浮き足立つ」は、主に「心が浮き足立つ」「気持ちが浮き足立つ」など使われています。 「浮き足立つ」は状態や様子が落ち着かないことを表します。 そのため気持ちが落ち着かないことを強調する際に「心が浮き足立つ」「気持ちが浮き足立つ」となります。 気持ちが落ち着かないから浮き足立つ状態にはなっているのですが、何か心配なことや不安なことがあるという表現として「心が」や「気持ちが」を付けて使います。
例文
「浮足になる」という言葉もありますが、「浮き足立つ」と同義となります。 「戦いなどで負けそうになって今にも逃げ出そうとする」 「不安や期待などで落ち着かない状態になる」 といった意味です。
「地に足がつかない」の意味は「喜びや緊張で気持ちが落ち着かない」です。 「浮き足立つ」と同様に「不安な気持ちから落ち着かない」といった意味もありますが、「地に足がつかない」は「喜びで気持ちが落ち着かない」といったポジティブな気持ちに対しても使います。 ちなみに「地に足がつかない」と使われることが多いですが、厳密には「足が地に着かない」が正しい表現となります。
「浮腰」の意味は「逃げ出そうとして落ち着かないこと」です。 主に「逃げ腰」のことを表します。 元々「浮腰」は力が入っていない不安定な腰のことです。 そのような姿勢やへっぴり腰から、「逃げ出そうとする様子」を表すようになりました。
「そわそわ」の意味は「態度や気持ちが落ち着かない様子」です。 緊張している様子を表しています。 「浮き足立つ」の類語は「うきうき」だと思ってしまいがちですが、「そわそわ」が正しい類語です。 「そわそわする」「そわそわした様子」などと使います。
「気もそぞろ」の意味は「ある事柄が気がかりになり、そわそわして気持ちが落ち着かないさま」です。 「そぞろ」は漢字で「漫ろ」と書きます。 「漫ろ」の意味は「そわそわして気持ちが落ち着かない様子」です。 「気もそぞろである」「気もそぞろに」などと使います。
「浮き沈み」の意味は「浮いたり沈んだりすること」です。 「気持ちの浮き沈み」「気分の浮き沈み」とすることで、心が不安定な状態を表すのに使います。 話の流れでは「浮き沈みがある」とするだけでも「気分が良い時と良くない時がある」といった意味が通じます。 主に「浮き沈みがある」「浮き沈みが激しい」「浮き沈みがないように」と使います。
「安定」の意味は「激しい変化がないこと」です。 物事が落ち着いており、状態が一定していることを指して使います。 気分や気持ちのことであれば「気持ちの安定」「気分が安定」と使います。
例文
「落ち着き」の意味は「態度や言動が穏やかで安定していること」です。 また安定している人のことを「落ち着いている」「落ち着き払った」とも言います。 主に「落ち着き」は「落ち着きがある」「落ち着きがない」などと使います。
例文
「冷静」の意味は「落ち着いていること」です。 慌てふためいたり、感情に左右されないことを表します。 本来緊張してしまうような場面だったり、不安で焦ったりしてしまうような場面でも、落ち着いて人のことを「冷静な人」「冷静である」と言います。 「冷静」のつく四字熟語には「冷静沈着」があり「落ち着いていて動揺しないこと」です。
例文
「浮き足立つ」の英語は「get restless」です。 「restless」は「心配や退屈さから落ち着かない」を意味の形容詞です。
She got restless and couldn't focus on her work.
彼女は浮き足立って、仕事に集中できなかった。
「逃げ腰になる」ならば「be ready to run away」です。
The enemy was ready to run away.
敵は浮き足立っていた。
「浮身」の読み方は「うきみ」です。 意味は「物の事態や重さを少なくすること」です。 漢字のまま「水中で仰向けになり力を抜いて、手足を動かさず静かに水面に浮いていること」といった意味もあります。 また同じ読み方の「うきみ」には「憂き身」という言葉があります。 「憂き身」の意味は「つらいことが多い身の上」です。
「浮き耳」の意味は「ダイバーが浮上時に体内の空気が膨張して耳などが痛くなること」です。 「リバースブロック」とも言われ、ダイバー用語です。 水に深く潜ると気圧が変わることからなる症状です。 主に体調不良などでダイビングを行うとなってしまいます。
「浮き指」の意味は「立ったり歩いたりする際に、足の指が浮いてしっかりと踏ん張っていない状態」です。 「指上げ足」とも言われ、足の生活習慣病と呼ばれています。 指が浮いていることで重心がかかとに偏り、腰痛や肩こりを引き起こしたり猫背の原因になるとも言われています。
「浮世」の読み方は「うきよ」です。 意味は「つらい世の中」「定めがない、はかない世の中」「この世の中、現実世界」となります。 元々は「苦しい、つらい」の意味を持つ「憂き」が使われて「憂き世」としていました。 段々と仏教的思想が定着して、この世を「無常のもの」「仮の世」と考えるようになり、「うき世=はかない世の中」といった意味になりました。 そのため漢語では「浮世(ふせい)」をあてた方がふさわしいとなって「浮世」と表記されるようになりました。 どちらの意味も「浮世」には残っていますが、主に「つらい世の中」「(死後の世界に対して)現実世界」といった意味で使われています。
「浮き彫り」は「うきぼり」と読みます。 意味は「平面に絵、模様、文字などが浮き上がるように彫ること、その彫刻のこと」です。 そこから比喩的に「物事の様子や状態をはっきりとさせること」「事柄や事件などの本質や特徴を明らかにすること」といった意味で使われています。 「課題が浮き彫りになる」「浮き彫りになる課題」などと使います。
「浮き名を流す」の意味は「恋愛に関するうわさが世間に広まる」です。 主に良くない意味で使われます。 恋人と揉めていることや、女癖が悪いことなどが噂されることを表します。 「浮き名」も元々は「憂き名」であり「いやな名前、いやな噂」という意味で、恋愛に関する噂が広まったことで辛い思いをしている状況を表していました。 「週刊誌で浮名を流す」「若い頃は浮名を流していた」などと使います。
いかがだったでしょうか? 「浮き足立つ」について理解できたでしょうか? ✔意味は「そわそわして落ち着かなくなる」 ✔語源は「つま先立ち」 ✔「ウキウキする様子」といった意味で使うのは誤用