「見識」の読み方は「けんしき」で、意味は「物事の本質を見抜くことができる、立派な判断力」です。また「気位、みえ」といった意味も持つ言葉です。「見識を得る」「見識が狭い」などと使い、敬語表現は「ご見識を賜る」となります。今回はそんな「見識」の使い方を例文付きで詳しく解説します。類語「認識」「知識」などとの違いや英語も紹介しますので、是非参考にしてみてください。
「見識」の読み方は「けんしき」です。 「見」は音読みで「ケン・ゲン」、訓読みで「みる・みえる・みせる・まみえる」を読みます。 「識」は音読みで「シキ・シ」、訓読みで「しる・しるす」と読みます。
「見識」の意味は「物事の本質を見抜くことができる、立派な判断力」です。 ある物事に関して、その本質を見破る確かな考えを表します。 周りの人たちを納得させる結論を下すためには、見識が必要です。
また、「見識」には「気位、みえ」という意味もあります。 「プライド」のことで、身分や位には関わらず自分の品位を誇ってそれを保とうとする心の持ち方を表します。 主に「見識が高い」という形でも用いられています。
「一見識(いちけんしき)」「識見(しきけん)」という言葉があります。 これらは「見識」と同じ意味の言葉です。
「物事の本質を見抜くことができる、立派な判断力」という意味の「見識」の一般的な使い方を紹介していきます。 主な言い回しは、
となります。 物事を正しく見通し、すぐれた判断力のある人を「見識がある」「見識を備えた」と言います。 そして見識の程度は「広い・狭い」「深い・浅い」と表現します。 より多くの物事や様々な分野で見識がある場合は「見識が広い」、その反対を「見識が狭い」と用います。 一つの物事に対しより詳しく細部まで見識がある場合は「見識が深い」、その反対を「見識が浅い」と用います。
例文
また、物事を見通す力や判断力を経験や体験をすることで身につけることを表す場合は
例えば、他部署の人の話を聞いたり、異業種の人と交流をすることで「見識を広げる」ことが出来ます。 また担当している業務の前年度の資料を読んだり、関連する講義を聞きに行くことで「見識を深める」ことが出来ます。 さらに「見識」があることを相手に分かるようにすることを「見識を示す」と使います。
例文
「見識を疑う」と使うこともあります。 これは、相手の物事へ見方や判断、考えに対して疑念を抱いた場合に用います。 この場合、相手の意見が自分と違って疑問に思うような場合には用いません。 「見識」そのものを疑うわけなので、相手が下した判断や主張する意見に対して非常識に感じたり利己主義であった場合に用います。
例文
これまでは「見識」が「物事を見通す力や立派な判断力」といった意味での使い方を説明してきましたが、「気位」の意味の「見識」の使い方を紹介します。 主な言い回しは「見識が高い」となります。 これは「気品がある」といった意味になります。上品で気高いことを褒める表現です。 ただ「見識」には「プライド」といった意味合いも含まれますので「見識が高い=プライドが高い」となり、批判的なニュアンスを含むこともあります。 相手の気品を褒めようと使うと、相手が批判されたと捉えてしまう場合があるため注意が必要です。
例文
「見識張る」は「けんしきばる」と読みます。 意味は「見識があるように見せる」です。 また「気位の高い態度をとる」といった意味もあります。 実際には見識も気位もないのに、いかにも見識があるかのように振る舞ったり、品のある人かのような態度をしたりする人を批判する場合に用います。 「見識ぶる」と言うこともあります。
例文
「見識」を敬語表現する場合は「ご見識を賜る」と使います。 これは目上の相手の見識=判断力や意見を借りるといった意味合いです。 豊富な知識や経験から物事を見てもらったり、意見をもらったりする場合に使います。 「ご見識を賜りたい」とすれば「力を貸してほしい」となります。 「見識がある」ということを敬語表現する場合は「見識がおあり」「見識をお持ち」と言います。 ただ目上の人に対して「見識がある」と目下から言うこと自体が失礼にあたることもありますので、注意しましょう。
「見識」がある人のことを「見識者」と誤用してしまいがちですが、これは誤用です。 学問があり見識が高い人のことは「有識者」といいます。 「高い見識を有する者」といった意味です。 「有識者会議」といったものもあります。 これは各界を代表する学識経験者や実務経験者などによる会議のことです。 主に諮問機関として設置されます。
「見識にあふれた」は誤用とは言えませんが、あまり一般的な言い回しではありません。 主な言い回しは「知性にあふれた」となります。 これは人の言動や考え、判断に知性が感じられるさまを表します。 「あふれる」といった表現を使っていることから、本人は見識ぶったり知識を見せびらかしたりしておらず自然と溢れてしまっている様子を表しています。
「見識に富む」も誤用とは言い切れませんが、こちらもあんまり一般的な表現ではありません。 主な言い回しは「機知に富む」となります。 「機知」は「きち」と読み、「場所や状況に応じて適切な発言や対応ができる力のこと」といった意味です。 「機知に富む」で「言動が場所や状況に適していること」「当意即妙なさま」といった意味になります。
「優れた見識」とすると、二重表現となってしまいます。 「見識」という言葉に「優れた知識、優れた判断力」といった意味がありますので、「見識」の前に「優れた」を付けることが出来ません。 他にも「立派な見識」「素晴らしい見識」なども不適となります。
「見識」には「物事の本質を見通す優れた判断力。また、物事について確かな意見」という意味があるため、「見識のある意見」は二重表現なのではないか?と思う人が多いと思います。 しかし、「見識のある意見」の「見識」は「本質を見通す優れた判断力」という意味で使っているので、「見識のある意見」は二重表現にあたりません。 「優れた判断力による意見」「その意見は物事へ鋭い判断をしている」といった意味合いになります。
「認識」の意味は「物事を見分けて、本質や意識を理解すること」です。 対象となるものを、どんな物であるかを知り理解するということを「認識する」というように言い表します。 より理解することは「認識を深める」と表します。 また、「コンピューターが外部からのデータを判別してその性質を理解すること」という意味もあります。 例えば「メールでパソコンに送った画像を認識を認識することができなかったので送り直した」というように使用します。 物事を見分けたり正しく理解するといった点で「見識」と類語になりますが、「素晴らしい判断力」といった意味は「認識」には含まれません。
例文
「胆識」の読み方は「たんしき」です。 意味は「胆力と見識」となります。 「胆力」は「たんりょく」と読み、「物事を恐れず臆しない気力」「度胸」といった意味があります。 尻込みしない精神力、動じない気力を指します。要するに「心の強さ」です。 「胆識」には「見識」が含まれます。 見識と、さらに強い精神力を持っている人を「胆識のある人」と言います。
「知識」の意味は「ある事柄について理解していること。また、その内容」です。 経験や学びによって、得ることができた事柄を表します。誰でも学ぶことによって知識を得ることができます。 主な言い回しには、
などがあります。 「知識」「見識」「胆識」の3つを合わせて「三識」と言います。 この3つの「識」で人々は学びを深めていきます。 まず1段階目の学びと出発点となるのが「知識」です。 誰かから話を聞いたり、本や新聞を読んだり、テレビやインターネットで情報を得て知る段階です。 そして2段階目はその知識を体験や知恵によって正しく見分けたり判断したりするのが「見識」です。 人格や体験を通じて、知識が自分の考えとなっていく段階です。 最後の3段階目はその見識に決断力や実行力、そして物事に対して迷わず恐れず動じない精神力、すなわち胆力が備わったのが「胆識」です。 本質を捉えて自分に落とし込み、信念を持って迷わず行動することが出来て、はじめて「知識」が役立ちます。 外から得て「知識」となり、自分を通して「見識」となり、行動をして「胆識」となります。
「知見」は「ちけん」と読みます。 意味は「実際に知っていることと見ていること」「見て知ること」です。 実際に調査や実験をすることで、見聞きして得ることができた内容や物事を表します。 見抜く力や判断力などといった、個人に備わる力の意味は一切含まれません。 主な言い回しとしては、
などとなります。
例文
「知恵」は「ちえ」と読みます。 意味は「物事の道理を知って、適切に判断する力」です。 生活をする上で必要となる方法を表します。知恵がないと物事を適切に処理したり、対応することができません。 知識とは違い、学問や技術というよりも、経験に裏打ちされた「アイディア」「コツ」「裏ワザ」的なニュアンスが強い言葉です。 主な言い回しは
などとなります。
例文
「知性」は「ちせい」と読みます。 意味は「物事を知り、考えたり判断したりする力」です。 様々な知識を持って、深い思考ができる能力を表します。 はっきりとした答えがない物事も諦めずに考えて、その答えを粘り強く考え続けることも「知性」と言います。 「知性がある人」ならば「理解力や判断力がある、知識が豊富な人」などを表します。 「見識」と近い意味を持つ言葉です。 言い回しとしては、
などとなります。
例文
「一家言」の読み方は「いっかげん」です。 意味は「その人の独特の主張、論説」です。 ”こだわりがあり、ひとクセある人”といったような意味合いを持ちます。 また「ひとかどの見識のある意見」といった意味もあります。 「ひとかど」は「際立っていること、ひときわ優れていること」です。 主な言い回しは
です。 例えば、「私は毎日新聞をチェックしているので、社会問題については一家言を持っている」と使うことができます。これは「私は毎日新聞を読んでいるので、社会問題について自分の主張や意見を持っている」という意味になります。
例文
「卓見」は「たっけん」と読みます。 意味は「優れた考えや意見」「見識」です。 「卓」には「他を抜いて優れている」といった意味があります。 「卓越」「卓抜」などと使われていますよね。 人よりもすごく優れていることを表します。 主な言い回しは
となります。
例文
「見識」という日本語は「洞察力」と「判断力」が組み合わさった言葉です。 前者の「洞察する能力」を意味する英語は「insight」です。
This book is full of great insights into humanity at large.
この本は人類全体への広い見識がある。
後者の「判断力」を意味する英語は「judgment」です。
I question her judgment as a teacher.
教師としての彼女の見識を問いたい。
いかがだったでしょうか? 「見識」について理解できたでしょうか? ✔意味は「物事の本質を見抜くことができる、立派な判断力」 ✔もう一つの意味は「気位」「みえ」 ✔主に「見識がある/広い/深い/を備えた」「見識がない/狭い/浅い」と使う ✔敬語表現は「ご見識を賜る」 ✔類語は「認識」「知性」「卓見」など