「敵に塩を送る」という言葉はご存知ですか?武将が由来とされていますが、その逸話は嘘とも言われています。なぜ敵に塩を送ったのでしょうか?そこで今回は「敵に塩を送る」の意味や使い方を詳しく解説いたします。さらに、類語・対義語・英語も紹介しますので是非参考にしてみてください。
「敵に塩を送る」の意味は「苦境にある敵を助けること」です。 争っている敵に対して弱みに漬け込むのではなく、相手が困っているところを助けることでお互いが100%の力で戦い合うということになります。 「味方になる」「弱い部分を知って同情する」といった意味合いはありません。
「敵に塩を送る」の語源由来は、武田信玄と上杉謙信とされています。 武田信玄は当時、駿河湾で採れた塩を今川氏真から買っていましたが、関係が悪化したことにより塩の供給を止められてしまいました。武田信玄のいた甲斐は内陸の国であったため塩が採れず、困り果てていました。 塩は食料の長期保存や体調管理としても使われており、戦において体力を消耗する武士たちにとって塩は生命維持には必要不可欠なものでした。 そこで塩不足に困り果てている武田信玄に対して、敵対していた越後の上杉謙信は同じように困らせるのではなく今川氏真を卑怯者として武田信玄に塩を送り続けました。 その際に上杉謙信は手紙で「今川氏真から死をとめるように頼まれたが、それでは甲斐の人たちが苦しむ。人道に背くことはできない。信玄とは弓矢で戦うのであり、米や塩で戦うわけではない」と言ったと言われています。 ただ、これは嘘か史実かは、はっきりとした裏付けはありません。 商売のために塩を売り続けただけとも言われていますし、実際に塩を渡したという証拠の文書もありません。 しかし、武田信玄がお礼として上杉謙信に送ったとされる「塩留めの太刀」は重要文化財にもなっていることから、史実なのではないかとも言われています。
▶︎「送る」・・・相手に物や情報を届けること、去る人を見届けることを表す ▶︎「贈る」・・・相手にお礼や祝福といった気持ちを込めて金品を届けることを表す
「送る」は「自分のすぐ近くにある物を離れた場所にいる人のもとに移すこと」といった意味なのに対して、「贈る」は「お礼・祝福・敬意といった気持ちを示すために、金品や称号を与えること」といった意味になります。 「送る」は、ただ物を運ぶだけなど物を届ける行為そのものを指して使うのが適します。 それに対して「贈る」には「気持ちを示す」といった意味合いが強く、「プレゼントを贈る」「お祝いを贈る」などと気持ちがこもったものを相手に直接渡す場合は「贈る」を使うのが適します。
「塩」というワードが使われていることから「傷口に塩を塗る」と混同しやすいですが、意味は全く異なりますので注意しましょう。 「傷口に塩を塗る」の意味は「悪いことに、さらに悪いことが重なる」のたとえです。 傷ってただでさえ痛いのに、そこに塩を塗ることでさらに痛みますよね。 それを言い表した言葉です。
「敵に塩を送る」はなんとなく敵に悪いことをするといった意味合いを持っていて「敵の弱みに付け込む」と同義なのではないかと思われがちですが、真逆の意味です。 「敵に塩を送る」は「敵を助ける」とった意味合いです。 「弱みに付け込む」の意味は「相手の欠点や弱っている部分を利用すること、つけ入ること」です。 「弱みを握られる」と近い意味合いがあります。
「相手を利する」の意味は「競争相手を有利にさせる」です。 「相手」だけでなく「○○を利する」と言った形でよく使われています。
例文
「ハンデを与える」の意味は「勝負の相手に有利な状態を作ること」です。 「ハンデ」は「ハンディキャップ」の略です。 「不利な条件」といった意味になります。 ですが、「ハンデを与える」は「有利な条件を与える」といった意味でも用いられています。 実力の差が明確な場合に強い方に不利な条件をつけたり、弱い方に有利な条件をつけたりすることを指します。 例えば「10点先取で勝利の競技で弱い方は5点で勝利とする」としたり「強い方に利き腕じゃない方の手で行う」としたりすることです。
例文
「フェアプレー」の意味は「勝負などでルールをしっかり守ったプレー」です。 相手を負かすようにズルをしたり不公平なことをしない戦い方です。 正々堂々と試合をする行動や態度を表します。
例文
「正々堂々勝負」の意味は「卑怯なことをせず、正しく堂々と勝負すること」です。 フェアプレーとほぼ同義で使われています。 自分のことを隠さず、卑劣な手も使わず、正面から立ち向かって勝負をすることです。
例文
上述した「敵の弱みに付け込む」は対義語となります。 敵が苦境の際に援助するの反対で、相手が弱っている時に攻撃をするといった意味合いの言葉を紹介します。
「痛いところを突く」の意味は「相手の弱点を指摘して攻めること」「指摘されると困ることを指摘すること」です。 ただ、多くは「痛いところを突かれる」と受け身で用いられることが多くなっています。 指摘されたくなかったところを指摘された場合に使います。
例文
「不意打ち」の意味は「予告をなしに急に物事を行うこと」です。 出し抜けに相手に攻撃をするといった意味もあります。 相手が準備していない状態や油断させておいた状態で攻める時にも使います。 「不意を打つ」「不意を突く」といった使い方もします。
例文
「敵に塩を送る」の英語は「help an enemy in difficulty」です。 直訳すると「苦境の敵を助ける」になります。 「塩」はあくまでも例えなので、「salt」は使いません。
It's noble to help your enemy in hard times.
敵に塩を送るのは気高いことだ。
その他にも「好きではないが正しいことなので彼を助ける」と解釈すれば、
Even though I don't like him, I will help him, because it's the right thing to do.
などとすることもできます。
「敵に塩を送る」を「人間性を見せる」と解釈すれば、
などと表現することも可能です。
「手塩にかける」の意味は「いろいろと世話をして大切に育てる」です。 子供や部下など人に対しても使いますし、野菜や花など植物などにも使えます。 自分の手で大切に時間や労力をかけて面倒を見る時に「手塩にかける」と言います。
例文
「塩を踏む」の意味は「世に出て苦労をする」です。 元々、塩田で塩を作る業務が過酷な労働であったことから、世間に出て苦労することを喩えた表現として使われています。
例文
「青菜に塩」の意味は「元気をなくしてしょげている様子」です。 青菜に塩をふりかけると、しおれてしまうところから転じて人がしょげていることを表します。 普段から元気のない人に対しては使いません。 いつもは元気のある人が、何かがあってしょげてしまっている場合に使います。
例文
「矧ぐ」は「はぐ」と読みます。 「敵を見て矢を矧ぐ」の意味は「必要が迫って慌てて準備をする」です。 手遅れの処置のたとえとして使われています。 「敵を見て矢を矧ぐ」をそのまま解説すると「敵を目前にして、やっと矢竹に羽根を付けて矢を作る」となります。 そこから、「事が起き目の前にして、ようやく準備にとりかかる様子」を表しています。
「敵もさるもの引っ掻くもの」の意味は「敵が優れていること」「相手も相当に抜け目のない人物であること」を表します。 競り合っている相手や、見くびっていた相手の実力を認めるときに使います。 「さるもの」は「然る者」と表記し、「さすがな人」といった意味になります。 その「さる」を「引っ掻く猿」とかけた言葉です。
「敵は本能寺にあり」は「本当の目的・目標は別にある」ことを表した言葉です。 これは明智光秀が備中の毛利勢を攻めると見せかけて出陣し、本能寺の織田信長を襲ったことから、そういった意味で使われています。 明智光秀の名言として、書籍などのタイトルにもなっています。
いかがだったでしょうか? 「敵を見て矢を矧ぐ」について理解できていれば幸いです。 ✔意味は「苦境にある敵を助けること」 ✔語源由来は、武田信玄と上杉謙信とされている ✔「敵の弱みに付け込む」は対義語 敵に塩を送れるくらい、余裕を持って生きていきたいものですね。 最後まで読んでいただきありがとうございました。