「ましてや」の意味は「言うまでもなく」です。「Aはできない、ましてやBなんて出来るわけがない」などと否定的な文脈で使います。また「ましてや〜をや」と使う方もいるのですが、これは誤用です。今回はそんな「ましてや」について例文付きで詳しく解説していきます。「いわんや」「なおさら」などの類語や英語も紹介しますので是非参考にしてください。
「ましてや」の意味は「言うまでもなく」「さらに」「なおのこと」です。 「○○でさえ出来ない。ましてや△△など出来るわけがない」と使った場合「○○でさえ出来ないんだから、言うまでもなく△△なんて出来ない」いった意味になります。 「言うまでもなく」といった意味になるほどなので、極端な内容でも使うことが出来ます。 例えば「彼女は目玉焼きさえ作れない。ましてや卵を使った創作フレンチなど作れるわけがない」など、言わなくても当たり前に分かるような内容やあまりに極端な内容に対しても用いられます。 この場合も意味は「彼女は目玉焼きさえ作れないんだから、言うまでもなく卵を使った創作フレンチなんて作れるわけがない」という意味になります。
「ましてや」は「まして」を強調した表現です。 よって、「ましてや」と「まして」は全く同じ意味です。 「や」は強調を表す係助詞です。 「や」以外にも「ぞ」「なむ」「か」「こそ」があります。
「まして」の語源は「増して」です。 「増す」の連用形「増し」に助詞「て」を組み合わせて副詞にしたのが「増して」です。 「増す」は「数や量、そして程度が大きくなる」といった意味合いです。 ○○でさえ出来ない。ましてや△△など出来るわけがない」とした場合、ましてやに続く△△が○○よりも出来ない程度が大きいことを表しています。 「ましてや」には「さらに」といった意味は、「増す」の意味である「程度が大きくなる」であることが分かりますね。
「ましてや」の漢字は語源である「増してや」と表記しても誤りではなりませんが、一般的には「況してや」と表記します。 語源は「増して」なのに?と思った方がたくさんいらっしゃると思いますので、詳しく説明していきます。
「ましてや」は語源が「増してや」にも関わらず、なぜ「況」という漢字が使われているのでしょうか? 上記でも触れましたが「ましてや」は「増してや」を語源とした大和言葉です。 つまり「況」という漢字は当て字です。 「況」を使った同じ意味の言葉があるため、「ましてや」も「況」という漢字が当てられているわけです。 「況」を使った同じ意味の表現とは「況や(いわんや)」です。 「いわんや」という日本語は、漢文で「況」を訓読みするために生まれた語です。 「言う」の未然形「言わ」に推量の助動詞「む」の連体形「む(ん)」及び助詞「や」を接続したものです。 ちなみに「や」は反語を意味します。「いわんや」は「言うだろうか、いや言わない」という意味です。 よって、「いわんや」で「ましてや」と同じく「言うまでもなく」「言うに及ばず」という意味になります。 例えば、「優秀な君でも失敗したのだから、いわんや私には絶対無理だ」などと使います。 「いわんや」を「ましてや」と置き換えても問題ありません。
「ましてや」は副詞です。 「ましてや」の前の文と後に来る文を繋いでいるかのように思いますが、「ましてや」は後に来る文章を修飾しています。 そのため「しかし」「だから」「つまり」などの接続詞とは異なりますので注意しましょう。
「ましてや」は否定的な文脈で使います。 なので「Aが簡単に出来る。ましてやBも出来る」などと肯定文で使うことはありません。 「Aはできない、ましてやBなんて出来るわけがない」となります。 「ましてや」よりも前述されている内容が出来ないんだから、「ましてや」より後述されている内容が出来るわけないことが当たり前な文章構成になります。 要するに後述されている内容をより否定しており、難題なことであることが分かります。
例文
「私は自分の生活もままならないのに、ましてや子供なんて―」などのように、「ましてや」を口語で使う場合は文末を省略する場合があります。 「ましてや」を使う文章は否定的・消極的な内容になるので、あえて説明しなくても分かるということです。 あえて文末を省略することで、後述される文章を強調しています。
例文
「ましてや」は副詞なので敬語はありません。 よって、「ましてや」を目上の人に使う場合は併用する言葉を敬語にするしかありません。 基本的には丁寧語の「です」「ます」を使います。 「ましてや」は強調された表現でありかつ否定的な文章で使うため、目上に対して使う際は注意が必要です。 他の言葉を敬語にする以外にも「ましてや」の強調「や」を外し「まして」で使うようにするのもいいでしょう。 「や」は強調=自分の感情を相手に押し付けるということになってしまいます。
例文
「いわんや〜をや」という表現を知っていますか? 実は、この「いわんや」は漢字だと「況んや」となります。 「ましてや」と同じ漢字で、意味も同じになるため混同する方もいるのですが、正しくは「いわんや〜をや」となります。 使い方は「Aは○○、況んやBをや」で、意味は「Aは○○です、ましてやBはなおさら○○です」といった意味になります。 「Aくんが出来た。いわんや俺をや」と使った場合「Aくんですらできたんだ、ましてや俺ならなおさらできる」となります。
上述したように「まして」と「いわんや」は同じ意味合いになります。 そのため「ましていわんや」と使った場合、厳密に言うと二重表現となります。 しかし、強調表現として許容されており、小説などでもたびたび用いられています。 「俺がAくんになんて勝てなかったんだ、ましていわんやBくんに勝てるわけがない」となると、Bくんに勝てないことを強調しています。
説明してきた意味での「ましてや」を「ましては」とするのは誤用です。 「○○につきましては」や「○○におかれましては」の「ましては」は全く別の言葉になります。 「○○につきましては」は「○○については」の敬語表現であり、「○○におかれましては」は「○○においては」の敬語表現となります。
上記でもすでに解説しましたが、「いわんや」は「ましてや」と完全な同義になります。 漢字も同じなので、どちらを使っても問題がありません。 ただ、現代では「ましてや」が使われることの方が多く、相手にも伝わりやすいでしょう。
例文
「なおさら」の漢字は「尚更」です。 意味は「物事の程度が前より進むさま、ますます、それにも増して」になります。 「なおさら」は副詞的にも使うことが出来ますし、文末で「なおさらだ」という形でも使うことが出来ます。
例文
副詞の「なお(尚)」に「の」と「こと」をつけて程度を強調しているのが「なおのこと」です。 例えば「故意であるのなら、なお悪い」を「故意であるのなら、なおのこと悪い」とすることで、「より悪い」ということを強調しています。 また「君でも失敗したのだから、僕が失敗するのはなおのことだ」と文末で「なおのことだ」と用いることが出来ます。
例文
「当然」の意味は「述べる事柄、誰がどう考えてもそうであること、あたりまえであること」です。 「当然の結果」と言えば「あたりまえの結果」となります。 名詞や形容動詞としても使えますが、副詞としても使うことが出来ます。
例文
「もってのほか」の意味は「予想以上に程度がはなはだしいこと、そのさま」です。 ちなみに漢字は「以ての外」となります。 「もってのほか大きかった」と言えば、「想像していた以上に大きかった」という意味になります。
「ましてや」の英語表現は、
などになります。 「much less」の「much」は比較級を修飾しています。 直訳すると「はるかに少ない」です。 「not to mention」「to say nothing of」は文字通り「言うまでもなく」という意味になります。 「let alone」は見慣れない人が多いと思います。 「let alone...」は直訳すると「...を一人にする」です。 「一人にする」ということは「放置する」ことで、「わざわざ言及する必要がない」というニュアンスになります。
He can't speak English, much less French.
彼女は英語が話せないので、ましてや仏語は話せない。
I can't fix a bike, let alone a car.
自転車も修理できないので、ましてや車は無理です。
I struggle to do my own homework every day, to say nothing of helping others.
毎日自分自身の宿題をやるのに苦労しているのに、ましてや人の宿題を手伝うのはもっと大変です。
「さえ」を意味する「even」を付け加えることで、強調した文章を作ることができます。
I can't speak even English properly, much less Chinese.
英語でさえ正しく話せないのに、ましてや中国語なんて全然です。
いかがでしょうか? 「ましてや」について理解できたでしょうか? ✔意味は「言うまでもなく」 ✔漢字は「況してや」 ✔接続詞ではなく副詞で、否定的な文脈で使う ✔「ましてや〜をや」ではなく「いわんや〜をや」 日常会話でよく使われている言葉ですね。 しっかりと意味と使い方を覚えておきましょう。