「嘘も方便」の読み方は「うそもほうべん」で、意味は「目的を遂げるためには、時には嘘も必要」です。仕事や恋愛でも、誰も傷付かないように嘘をつかなければいけない場面ってありますよね。今回はそんな「嘘も方便」の使い方を例文付きで詳しく解説していきます。類語や英語も紹介しますので是非参考にしてください。
「嘘も方便」は「うそもほうべん」と読みます。 「方便」を「ほうびん」「かたべん」などと読むのは誤用です。
「嘘も方便」の意味は「嘘は本来悪いことだが、時と場合によっては必要なときもある」です。 これは、目的を遂げるためや相手の利益のためなのであれば、嘘をつくのは致し方ないということです。 目的を遂行するためには嘘をつくのはやむを得ない場合があるという意味なので、自分の利益のためや言い訳として嘘をいう場合は「嘘も方便」には当たりません。
「嘘も方便」を「嘘の方言」と勘違いしている方が多いのですが、これは誤用です。 「嘘も方言を使えば誤魔化せる」「方言の意味が分からなくて嘘のようだ」「嘘をつくのは方言を使うようなものだ」といった意味ではありません。
「嘘も方便」の例文
「方便」の意味は「目的達成のための便宜的な手段」です。 「方便」自体に「嘘」の意味が含まれているわけではないので、注意しましょう。 詳しくは後述しますが、元々は仏教において「衆生(しゅじょう)を真の教えに導くための、仮に設けた教えや巧みな手段」を意味する言葉です。
また「方便」は「たずき」とも読みます。 意味は「生活の手段、生計」と「事をなすための手がかり、手段」の2つあります。 「たずき」だけでなく「たつき」「たづき」とも読みます。
「方便」の語源はサンスクリット語「upāya」です。 「upāya」は「近づく」という意味です。 日本語の仏教用語はインドの古語にあたるサンスクリット語を語源に持つ語がたくさんあります。 日常的に使う日本語の中にもサンスクリット語を語源に持つ語がいくつもあります。 例えば「旦那」「くしゃみ」「月」「空」「瓦」「かさぶた」などがあります。
「詭弁」は「きべん」と読みます。 「詭弁」の意味は「誤っていることを、正しいことだと思わせるように働きかける議論」で「こじつけ」「でたらめ」といった意味合いを含みます。 「方便」は「目的達成のための手段」なのでこじつけやでたらめといった意味合いは含みません。 「詭弁」は相手を騙そうという意図が含まれているため、意味は全く異なります。
尊敬を表す敬語の接頭語「御」を付けて「御方便」とすると、たいてい嫌味として使います。 「御方便なものじゃねえか」などと他人の都合のよいさまに文句を言うときに使います。 「ほんとあなたは都合がよいね!」を皮肉って、あえて敬語を用いた「御方便」を使い「御方便なものだ」と言います。
「嘘も方便」の由来は、『法華経‐譬喩品(ひゆぼん)』の「三車火宅」のたとえ話であると言われています。 要するに、元々は仏教用語となります。 三車火宅のたとえ話を簡潔にまとめると 大金持ちの老人と子供30人が一緒に暮らしていましたが、家の老朽化によりボロボロです。 その時に家が火事になってしまい、老人はすぐに逃げ出しましたが子どもたちは火事を知らずに家の中で遊んでいました。 そこで老人が「家が燃えている!早く逃げないと死んじゃうぞ!」と叫びますが、子どもたちは遊びに夢中で言うことを聞きません。 そこで老人は子どもたちを外に出すために「外に珍しいものがある!羊の車と鹿の車と牛の車だぞ!この車をあげるぞ!」と嘘を付きました。そうすると子どもたちは珍しいものがあることに惹かれ、あっという間に家から出てきました。 となります。 「三車火宅」は「羊と鹿と牛の三つの車=三車」と「家の火事=火宅」という意味です。 本当は三車はありませんでしたが、火事から子供たちを守るために老人のついた嘘は「巧みな方便」だったんです。 このたとえから「嘘の方便」ということわざが出来たと言われています。
「有相方便」という言葉があります。これは「うそうほうべん」と読みます。 これが聞き間違われて「嘘も方便」になったのではないか、という説もあります。 本来、真実とは「無相(むそう)」なものだと言われており、それは姿かたちを超えているという意味です。 ただ、真実は人々に真実に気付いてほしいと姿かたちをとってくるようで、それを「有相方便」と言います。 要するに、真実の方から姿かたちで表れて、近づいて来るということです。 先程、「方便」はサンスクリット語で「近づく」といった意味だとありましたよね。 そのため「嘘も方便」は「有相方便」の聞き間違いであり、「近づく=真実から現れてくれる」が本来の言葉なのではないかと言われています。
・嘘も誠も話の手管 ・嘘も重宝 ・嘘は世の宝 ・嘘も追従も世渡り ・嘘つき世渡り上手 上記はすべて「嘘もときには必要である」といった同じ意味を持つことわざです。 「手管」は「人を騙してあやつる手際」という意味です。 「重宝」は「便利で役に立つ」という意味です。 「世の宝」は「代々の宝物」という意味です。 古くは「世渡り上手になるためには、あえて本当のことを言わない」ということも大切だと教えることわざが多く存在しています。戦国時代は実名を言えば呪われる、と言われていた位ですから身を守るためにも嘘は必要とされていたのでしょう。 ・嘘をつかねば仏になれぬ 意味は「仏様でさえ人を救うためには嘘をつく、良い結果を得るためであれば嘘をついても救われる」となります。 直訳すると「嘘をつかないと、仏にはなれない」です。 何でもかんでも全て正直に話すのは、人を傷付けたり自分を陥れることになる可能性があるために、「嘘の全てが悪いわけではない」ことを表しています。 ・正直者が馬鹿を見る 意味は「ずる賢い人が上手に立ち回って得をして、正直者がかえって損をすること」です。 正しいことがなかなか通らない世の中を皮肉った言い方です。 嘘やヨイショを上手に使える人が得をしてしまうことってありますよね。
・嘘つきは泥棒の始まり 意味は「嘘を平気でつき悪いと思わない人は、盗みをすることも平気になる」です。 「嘘をつく」という行為は、どんどん悪い道へ進んでしまうことを表しています。 ・嘘を言えば地獄へ行く 意味はそのまま「嘘を言うと地獄行きだよ」ということです。 子供に嘘は良くないことを教えるために使われる言葉です。 ・嘘をつくと腹に竹が生える こちらも意味はそのまま「嘘を言うとお腹に竹が生えてくる」という意味です。 お腹に竹が生えてきたら大変ですね。嘘は良くないということを表すことわざです。 ・正直は一生の宝 意味は「正直は人生の間ずっと守るべき宝である」という意味です。 正直でいれば、成功や幸福を手にすることが出来ることを表しています。 正直者でいれば味方も増えますし、信頼されて成功や幸福になる確率がぐんと上がります。 ・正直の頭に神宿る 意味は「正直で誠実な人には、神様からの加護がある」ということ。 正直な人のところに神様はやってくるということわざです。
「嘘も方便」の英語は、
などになります。 「stretch the truth」は「真実を誇張する」という意味です。
「嘘から出たまこと」ということわざを聞いた事がある人は多いでしょう。 この意味は「嘘として言ったことが結果として真実になること」「冗談がはからずも真実になること」です。 ここでの「まこと」の漢字は「実」となります。「真実」の「実」ですね。 「嘘を言い続けてみんなが真実だと思い込む」といった意味ではなく、「たまたまでたらめ言ったら、その後本当になっちゃった!」といった意味合いです。 例えば「俺そのうち絶世の美女から告白されるぜ!」とふざけた人が、「お前みたいなポンコツにそもそも告白するやつなんかいねーよ!」なんて周りから言われていたのに、実際にたまたま再会した旧友がめちゃくちゃ美女になってて「実はあの頃から好きだった、地味だった私にも明るく話しかけてくれたのは○○くんだった」なんて言われちゃった時に「これこそ嘘から出たまことだ…」となるわけです。
「嘘八百」はそのまま「うそはっぴゃく」と読みます。 意味は「何もかもが嘘、多くの嘘、まったくのでたらめ」といった意味です。 元々「八百」には「多数」と数が多いという意味が含まれています。 八百屋も、野菜や果物などたくさんの種類が置いてあることから「八百」が使われています。
「嘘の皮」の意味は「上辺をとりつくろった全くの嘘」です。 また「嘘であることを強める表現」としても使われています。 「嘘の皮」は動物の「川獺(かわうそ)」をもじった言葉で、「かわ」と「うそ」を入れ替えて「うそのかわ」となりました。 「皮」は「化けの皮」と言った言葉があるように、「薄っぺらい」「中身(=本来の姿や真実)を覆い隠す」といった意味があるため、「嘘の皮」で「上辺を取り繕った嘘」といった意味として使われるようになりました。
「嘘で固める」の意味は「すべてが嘘で出来上がってるいる」「嘘で話などをまとめる」です。 「固める」には「一ヶ所に集める」「形を成すものにする」といった意味があるので、嘘によって一つのものを作り上げるといったニュアンスです。 「この話は嘘で固められている」「あの自伝は嘘で固められているらしい」などと使います。 昨今ではSNSの流行により、嘘で固められたことが多い世の中ですよね。
面白いことわざですよね。 「嘘と坊主の頭はゆったことがない」の意味は「これまで嘘をついたことがない」です。 「ゆったことがない」は、「嘘を言う(ゆう)」と「頭を結う」を掛けています。 坊主は髪の毛を剃った頭なので、髪を結うことは出来ないですよね。 坊主の頭を結ったことがないくらい、嘘を言ったこともないことを表現したことわざです。
「嘘を言え」の意味は「嘘を言っている相手を咎める時に使う言葉」です。 「嘘を言いなさい!」といった意味ではありません。 「嘘を言うなら勝手に言え、こっちは分かっているからな!」といったニュアンスです。 「馬鹿言え」などとも使いますよね。 他にも
などがあります。 これらはすべて同義となります。
いかがだったでしょうか? 「嘘も方便」について理解できたでしょうか? ✔読み方は「うそもほうべん」 ✔意味は「目的を遂げるためには、時には嘘も必要」 ✔類語は「嘘も誠も話の手管」「正直者が馬鹿を見る」 ✔対義語は「嘘つきは泥棒の始まり」「正直は一生の宝」 相手を騙したりする嘘はだめですが、時に相手を安心させたり穏便にやり過ごすためには嘘が必要なこともあります。 「嘘も方便」を頭の片隅に置いておくと、少し生きやすくなるかもしれません。