「にて」は「場所」「時間」「手段・方法」「材料」「原因・理由」「状態・資格」を表すことが出来る言葉です。それぞれの「にて」の使い方を例文付きで詳しく解説していきます。その他、類語「で」「より」「おいて」との違いや英語も紹介します。「にて」から始まる慣用句も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
「にて」は場所や位置を指します。「〜で」「〜において」といった意味です。 ある物事が行われている場所を示すことができます。 「〜の場所で」という意味で、「〜にて」という形で用います。 例えば「横浜にてイベントが開催される」といったように使います。これは「横浜でイベントが行われる」という意味です。 さらに、土地的な場所だけでなく、サイトやテレビ番組なども「〜にて」で表されます。 「紅白歌合戦にて初披露した」などです。 場所を示す「にて」は正式な文書でも用いられます。 ニュースなどでも「本日○○にて優勝パレードが行われる予定です」などと使われています。
例文
「にて」は時間を指します。「〜の時に」「〜の際に」という意味です。 ある物事が行われている時間を表すことができます。 「〜の時に」という意味で、「〜にて」という形で用います。 例えば、「過去にて、そういうこともあった」といったように使います。 「過去の時点では、そういうこともあった」という意味になります。 細かい日時を指定して「13時にて」「3月26日にて」といったように使えますし、日時だけでなく「30歳にて」など年齢にも用いられます。「大正時代にて」「バブル時代にて」などと出来事に対しても使うことができます。 また「これにて終了」というように「只今の時間をもって終了」といった意味でも用いられます。
例文
「にて」は手段・方法を指します。「〜によって」「〜の方法で」という意味です。 ある物事が行われる手段・方法を表すことができます。 手段や方法として使う乗り物や道具などに対して用います。 例えば「明日は飛行機にて大阪へ向かいます」などと言います。 また、ビジネスシーンでは「私にて」「当方にて」などと使うことがあります。 「私にて承ります」などとよく使っている方も多いでしょう。 しかし厳密に言うと不自然な表現となります。 この場合は「私が承ります」と「〜が」にしましょう。
例文
「にて」は材料を指します。「〜で」「〜を用いて」という意味です。 ある物事を作る材料を表すことができます。 例えば「塩にて味付け」「絵の具にて色塗り」などと使います。 これは「塩を用いて味付け」「絵の具を使って色塗り」といった意味になります。 手段・方法と似た使い方になります。 物事をするうえで、用いた何かを「〜にて」と表現します。
例文
「にて」は原因・理由を指しまます。「〜によって」「〜のため」という意味です。 ある物事が起きた原因・理由を表すことができます。 例えば「台風にて延期」「海外出張にて日程変更」などと使います。 これは「台風が原因で延期」「海外出張が理由で日程変更」といった意味になります。
例文
状態・資格を表す「にて」は現代ではほとんど使われません。 使うことはできるが、かなり時代がかった響きになります。 現代では「〜で」「〜のまま」「〜として」などが用いられています。
例文
「〜で」はよく使う言葉ですよね。 中世以降「〜にて」の代用としてよく使われています。 要するに意味は同じです。 ただ「にて」は文語であり、「で」は口語とされています。 文章では「にて」を用いるといいでしょう。 上述で用いてきた文章を使うと、「横浜で開催」「これで終了」「塩で味付けする」「台風で延期」などとなりますね。 物事の動作が行われる「場所、時間、場合」、物事が行われる「手段、方法、道具、材料」、物事が起きた「原因、理由」 物事の「資格、状態」を示すことができます。
例文
「〜より」もよく使われる表現ですよね。 「〜より」は4つの意味があります。 まず一つ目は動作の起点・経路を示します。 例えば「13時よりスタート」「横浜より出発」などです。 これは「13時からスタート」「横浜から出発」という意味です。 二つ目は比較の基準となるものを示します。 例えば「アメリカより早い」「Aさんより強い」などです。 これは「アメリカと比べて早い」「Aさんと比較して強い」という意味です。 三つ目は打ち消しを伴って限定を示します。 例えば「諦めるよりなかった」「行くよりなかった」です。 これは「諦めるしかなかった」「行くしかなかった」という意味です。 四つ目は、「動作をしてすぐ」を示します 例えば「知るより、彼は彼女に電話をした」です。 これは「知るやいなや、彼は彼女に電話をした」という意味です。 また、よりは「より多く」など副詞としても使われております。
例文
「〜おいて」は「〜にて」と同じ意味として使う場面もあります。 主に時間と場所を表す部分では置き換えて使うことが出来ます。 「横浜にてイベントが開催される」は「横浜においてイベントが開催される」と置き換えられます。 さらに「5月16日にて」は「5月16日において」と置き換えられます。 その他、「おいて」には3つの意味があります。 まず一つ目は、人物・事柄との関係を示します。 例えば「Aさんは生物に於いて新しい研究を発表した」「彼女においては重要である」です。 これは「Aさんは生物に関する新しい研究を発表した」「彼女に関しては重要である」という意味です。 二つ目は、立場のある人物の強調を示します。 例えば「内閣総理大臣に於いてそれを決す」です。 特定の立場の人を強調する使い方であり、「〜において」を「〜が」と置き換えられます。 三つ目は、仮条件を示します。 例えば「雨が降った場合においては」です。 これは「もしも雨が降った場合には」という意味になります。
例文
「にて」を品詞分解すると、格助詞の「に」に接続助詞である「て」がついた文語の格助詞です。 先ほども説明しましたが、口語の「で」と同じ意味を持ちます。 格助詞とは助詞のひとつであり、体言や体言に準ずるものに付き文章の中で他の言葉とどんな関係があるかを示します。 他にも格助詞には「〜が」「〜の」「〜を」「〜に」「〜から」などとたくさんあります。
「にて」を細かく成り立ちを説明するのは難しいのですが、格助詞の「に」は、断定の助動詞である「なり」の連用形と言われています。 「ころすけなり」の「なり」ですね。これは「ころすけだ!」と断定しているという意味になります。 ただ「なり」の成り立ちを調べていくと、なんと格助詞の「に」にラ変動詞「あり」がついた「にあり」から生じたとされているんですよね。 「にて」の成り立ちを調べるのはかなり難しいと判断しました。
「にても」は「〜であっても」「〜においても」といった意味になります。 これまで説明してきた格助詞「にて」に係助詞の「も」が付いたものです。 ただ、現代ではほとんど使われていない表現となります。
「にて」は古語です。 そのため、成り立ちを調べるのも難しいんですよね。 現代語であれば変化する以前の古語が成り立ちとなるのですが、「にて」自体は古語です。 古語の場合は上述してきた以外にも「〜であって」と状態を表したり、「〜である」と断定を表す言葉としても使われています。 全訳古語辞典から引用すると「月の都の人にて、父母あり」と使った場合「(私は)月の都の人であって、父母がある」となります。
場所を意味する「にて」の英語には、
があります。 「at」は狭い場所、一点を指します。 「in」は広い場所、その中を意味します。 話者の感覚によっては「at」と「in」のどちらでも使えることがあります。 国や地域の場合は「in」しか使えません。
Let's meet up at the park.
公園にて会いましょう。
時間を表す「にて」は「at」です。 日時を表す「にて」は「on」を使います。
We will close up at 11 tonight.
今夜は11時にて閉店です。
On July 11th, we are going to hold a concert, so please come.
7月11日にてコンサートを開催しますので、ぜひいらしてください。
手段を表す「にて」の英語は「by」「via」「with」になります。
You can pay with the credit card.
クレジットカードにてお支払いいただけます。
「にも」は「にて」と似ていますが、意味は異なります。 まず「にも」は格助詞「に」に係助詞「も」がついた言葉です。 「並列・列強、強調」の意味と、「〜にも〜ない」の形で「動作がどうしてもできない」という意味を示します。 「並列・列挙、強調」の場合は「そんなこと私にも出来る」「支援総額は50億円にものぼった」と使います。 「動作がどうしても出来ない」ことを表す場合は「動くにも動けない」と使います。 さらに、接続助詞「に」に係助詞「も」がついた場合の「にも」の場合は逆説の仮定条件を示します。 例えば「明日行くにも飛行機の空席がない」「遊ぼうにも金がない」と使います。
「とて」は「にて」と音が似ているだけで意味は全く違います。 「私にて」はあまり使わない表現でしたが、「私とて」は問題なく使えます。 「とて」にもいくつかの意味があります。 まず格助詞の「とて」は「引用」を表します。「〜といって」「〜と思って」という意味です。 例えば「海に行くとて出かけた」とした場合「海に行くといって出かけた」となります。 次に接続助詞の「とて」は、打ち消し・反語の表現を伴って「〜としても」「〜からといって」という意味になります。 例えば「今更何か言ったとて、事実は変わらない」とした場合「今更何か言ったからといって、事実は変わらない」となります。 最後に係助詞の「とて」は「ある物事が例外ではなく他の中に含まれること」を表します。 これは先ほども言った「私とて」がよく使われますよね。 「私とてやりたいわけじゃない」とした場合は「私だって周りの人と同じようにやりたいわけじゃない」といった意味になります。
「二手」は「ふたて」と読みます。 意味は「両手」と「二つの組」です。 よく使われる表現に「二手に分かれよう」があります。 これは「二組に分かれよう」ということになります。
「以て」は「以て」と読みます。 意味は「物事の手段や方法、物事が生じた原因を表す言葉」です。 「〜により」「〜で」と言い換えることができます。 また「以って」は、意を強める語としても用いることができます。 「まことにもって残念です」「前もって準備しておきます」などと使います。「以って」を付けることで、それぞれ「まことに」「前に」ということを強められます。 さらに「以って」は「一区切り。切れ目」という意味で使うこともできます。 例えば、「3月を以って今通っている塾を辞める」と言えます。これは「3月末日で塾を辞める」という意味になります。
「nite」は「ナイト」と読みます。 意味は「製品評価技術基盤機構」です。 「nite」はスラングでは「night」の別表記
「似て非なり」の意味は「見た限り似ているが、実際は異なっていること、正しくないこと」です。 例えば「教育と支配は似て非なり」などと使います。 親による子への叱責や制限は一見教育のように思えますが、時にそれは子供の自由な思考を奪う支配の場合がありますよね。 このように「似て非なり」は物事だけでなく、目に見えないものにも用いられます。
例文
「似ても似つかぬ」の意味は「全く似ていない」です。 似てると言われても、そのようには一切見えないという意味を込めた表現です。 「似ても」という言葉を使っていることから「似たとしても、似ていない部分がある」といった意味合いに思ってしまうこともあるのですが、「全然似てない」といった意味の言葉になります。
例文
「煮ても焼いても食えぬ」の意味は「どのような手段を使っても、手に負えないこと」です。 「食用じゃないものは、煮ようが焼こうが食べれない」ことから、転じて「どうやっても思うように扱えない」といった意味になります。 したたかだったり、強情だったりする相手に対して使うことが多くなっています。
例文
「二転三転」の意味は「状況や物事の内容が何度も変わること」です。 主に、短期間の間で何度も変わる場合に使います。 ちゃんと話し合いを経て方向性が変わっていく場合には使えません。 判断力や決定力がなかったり、何かミスがあり内容が変わってしまう場合に使います。
例文
いかがだったでしょうか? 「にて」について理解できたでしょうか? ✔意味は6つある「場所」「時間」「手段・方法」「材料」「原因・理由」「状態・資格」 ✔類語は「で」「より」「おいて」 ✔品詞は「格助詞」 ✔似ている言葉「にも」「とて」とは意味は全く異なる 当たり前に使っている日本語ですが、様々な意味を持つのでしっかり覚えておきましょう。