「多謝」は「たしゃ」と読み、「深い感謝」「深いお詫び」という2つの意味があります。「多謝いたします」「多謝申し上げます」などの形で目上に使えます。「妄言多謝」で手紙を失礼を詫びる時に使う言い回しもあります。今回は「多謝」の詳しい意味と使い方、類語、中国語の意味、英語について解説していきます。
「多謝」は「たしゃ」と読みます。 「多」は訓読みで「おおい」、音読みで「タ」、 「謝」は訓読みで「あやまる」、音読みで「シャ」です。
「多謝」の1つ目の意味は「深く感謝すること。厚く礼を言うこと」です。 「多謝」の2つ目の意味は「深いお詫び」です。 「多」と「謝」それぞれの意味をみていきましょう。
「多」・・・おおい、ほめる、ありがたいと思う、まさっていると思う、まさに 「謝」・・・あやまる、礼を述べる、聞き入れる、おとろえる、すてる
「多」と「謝」には様々な意味がありますが、「多謝」は「おおく礼を述べる」という意味です。 「多謝」を「お詫び」の意味で使うのは稀で、「感謝」の意味で使います。 「多謝」自体は敬語ではありませんが、堅い語なのでビジネスメールやビジネス文書で使用されます。
「多謝」はビジネスメールなどで感謝の意を伝える際に使われる言葉ですが、「多謝」自体は敬語ではないので、敬語表現と一緒に使う必要があります。 「多謝」の敬語変換を紹介します。 基礎知識ですが、敬語は大別すると
の3種類あります。
「多謝」に丁寧語「です」を付けた「多謝です」は文法上は敬語ですが、丁寧さに欠けるので目上の人に使うのは避けた方がよいでしょう。 同僚や目下の人に対してなら「多謝です」を使っても問題ないですが、日常会話でも使う軽い響き「◯◯です」と「多謝」という堅い語を組み合わせることにも違和感を覚えます。 「多謝です」というならば「感謝です」「どうもです」などの方が自然です。
丁寧語を使った敬語表現には
もあります。 「多謝です」よりもマシですが、これらもあくまで丁寧語なので目上の人には使うことができません。
ビジネスシーンで目上の人に対して使えるのは、謙譲語と丁寧語を組み合わせた、
になります。 「いたします」は、「する」の謙譲語「いたす」と丁寧語「ます」から成り立っています。 「申し上げます」は、「言う」の謙譲語「申し上げる」と丁寧語「ます」から成り立っています。 「いたす」と「申し上げる」のどちらがより丁寧かといえば、「申し上げる」です。 「する」と「言う」のどちらが丁寧かを判断するのは難しいですが、単に「申し上げます」の方が使用頻度が低く丁寧さが増します。
上記でも触れましたが、「多謝」は堅い語なので口語ではほとんど使いません。 ビジネスメールやビジネス文章で使います。 「ご厚誼(ごこうぎ)」「ご厚情(ごこうじょう)」などの言葉を使い、相手の手厚いなさけに対して感謝する使い方します。 「多謝する」の形で使うこともできます。
例文
上述した通り「謝」には「感謝」と「謝罪」の2つ意味がありますが、元々「多謝」には「感謝」の意味しかありませんでした。 いま説明で使っている「感謝」という言葉も「謝」が使われていますが、「謝罪」の意味はありませんよね。 このように「謝」が含まれる二字熟語が必ずしも「感謝」と「謝罪」の両方の意味を持つとは限りません。 「多謝」が「謝罪」の意味を持つのは「妄言多謝」「乱筆多謝」などの形で使うときのみです。 これらの四字熟語は、手紙などの文末に単体で添え、それぞれ「意見を包み隠さずに伝えたこと」「乱雑な文章」を詫びる表現です。 実際には謝っているわけではなく、謙遜の意味合いで使っています。かなり古めかしい表現で、見たことがない人が大半だと思います。 「妄言多謝」「乱筆多謝」は、本来「妄言多罪」「乱筆多罪」と表記します。 「謝」に「わびる」という意味があったために、「多罪」の誤用で「多謝」が使われるようになったのが語源由来です。 元は誤用ですが、いまは正式な日本語として認められています。 「多罪」は「罪が多い」が原義で、そこから転じて自分の罪を謝る時にも使われるようになりました。 現在では「妄言多罪」より「妄言多謝」の方がよく使われていますが、元は誤用であるため「妄言多罪」を使った方が無難といえます。 「妄言多罪」以外にも「妄評多罪」「暴言多罪」などの表現もあります。 それぞれ「無遠慮な批評をしたこと」「乱暴な言葉を使ったこと」を詫びる表現だが、どれも自分の文章をへりくだるために使います。
「謝」の漢字を含む二字熟語に「多謝」の類語がたくさんあります。 お礼とお詫びで使えるもの、どちらか一方の意味のもの、そのどちらでもないものなど多数に渡ります。
お礼とお詫びの両方の意味で使える類語は、
などがあります。 「深謝」と「多謝」の違いに関してですが、これらの熟語に違いは全くありません。 「深謝」は「深く感謝する」で質を重視、「多謝」は「多く感謝する」で量を重視、と解釈するのは誤りです。 「多謝」の「多」は「厚」と同義で、「厚」は「他者への関わりの程度がはなはだしい」という意味で「深い」と同じ意味です。 「友情が厚い」などの「厚」です。この意味が「多」にもあります。
お礼の意味のみで使う類語には、
などがあります。
お詫びの意味のみを持つ類語には、
です。
丁寧に断ることを意味する言葉に、
があります。 「謝辞」は「お礼の言葉」という意味でしたが、文字が入れ替り「辞謝」となると意味が全く変わってしますので注意です。
中国語の「多謝」の意味は「本当にありがとう」です。 相手が好意的なことをしてくれた時にお礼を述べる言い回しです。 「ありがとう」を意味する中国語は「謝謝」が一般的ですよね? 「謝謝」の方がカジュアルで日常会話で頻繁に使うのはこちらです。 「多謝」は本当にお世話になった時に気持ちをこめて感謝する言い方です。 「多謝你(duōxiènǐ)」という表現もよく使われます。 「你」は「あなた」を意味し、「Thank you」の「you」に当たる部分です。 お礼を言う相手を強調した言い方で意味は同じですがより丁寧です。 「あなた」を意味する敬語である「您(nín)」を使うとより丁寧になります。 ちなみに中国語での「感謝」は「謝謝」と「多謝」よりも強い感謝を示します。 「ありがとう」という意味では使わず「感謝します」という堅い表現で使います。
「多謝」の普通話(北京語)での発音は「duōxiè(ドゥオシエ)」です。 香港で主に使用させる広東語での発音は「do1 ze6(ドーズエ)」です。 漢字に関してですが、香港と台湾では繁体字が使われます。 繁体字は日本語の漢字と完全に同じではないですが、画数が多い点では似ています。 一方、中国本土で使われる漢字は簡体字と言われ、 画数が省略された漢字を使います。 「多謝」も簡体字では「多谢」となり微妙に違うので注意してください。
「多謝」への返事は「どういたしまして」を意味する
などを使えばよいでしょう。
「ありがとう」「感謝」を意味する英語には、
などがありますが、 「多謝」に近い表現には
などがあります。 これらの表現は書き言葉で主に使います。
Many thanks for your kindness.
ご厚情多謝。
Thanks awfully for all your help these past few days.
この数日間におけるご支援、多謝申し上げます。
「妄言多謝」の英語表現は「許してください」という箇所と許す対象である「自分の出過ぎた言葉」の2つに分けて考える必要があります。 「許してください」の英語表現は、
などがあります。 「自分の出過ぎた文章」は、
などがあります。
「多謝」の意味と使い方は正しく理解できたでしょうか。 それでは最後に「多謝」についてまとめたいと思います。 ✔「多謝」の意味は「深い感謝」「深いお詫び」の2つ ✔「多謝いたします」「多謝申し上げます」で謙譲表現になり目上に使える ✔「多謝」の同義語には「深謝」がある ✔「多謝」は中国語でも「本当にありがとうございます」の意味 ✔「多謝」の英語は「many thanks」