「椿事」は「ちんじ」と読み、「思いがけない重大な出来事」という意味です。「珍事」は単に「めずらしい出来事」を指すのに対して、「珍事」は「重大な」という意味が強調されます。「椿事」の語源は、似た漢字の「樁事」の誤用が由来と言われています。それでは「椿事」の意味と詳しい使い方、類語、英語表現を徹底解説していきます。
「椿事」の読み方は「ちんじ」です。 「椿」を「つばき」と訓読みすることを知っている人は多いと思いますが、音読みでは「ちん」となります。
「珍事」・・・思いがけない出来事 「椿事」・・・思いがけない重大な出来事
「珍事」と「椿事」にはどちらも「思いがけない、予想していなかった」という意味があります。 「珍事」は単にめずらしいことを指すのに対して、「椿事」はめずらしくてかつ重大な出来事を指します。 「珍事」の方が意味が広く「椿事」を内包するため、「珍事」を「思いがけなくて重大な出来事」という意味合いで使っても誤用ではありません。 実際、新聞などでは「思いがけない重大な出来事」という意味で「珍事」を使うこともあります。
「椿事」の語源を解説していきます。 「椿」の音は「珍」と同じですが、「めずらしい」という意味はありません。 ちなみに「椿」には「長く生きる」という意味があります。 この意味で使う熟語には「椿寿(ちんじゅ)」があります。 「椿事」を「珍事」という意味で使うようになったのは誤用と言われています。 「椿事」に「珍事」という意味は元々なく、「樁事(とうじ)」(「椿」の「日」が「臼」)にその意味がありました。 「樁事」には「出来事」という意味があり、「珍事」の類語にあたります。 「椿」と「樁」は似ていますが別字です。 「樁」という漢字が一般的でないことから、「椿」と間違って書き記され、それが一般化したのが由来です。
「椿事」は「椿事が起こる」「椿事がある」「〜は椿事だ」などの形で使います。 正式な文書などでは「珍事」を使うことの方が多いです。 「椿事」は良いことにも悪いことにも使えますが、ネガティブな意味合いで使うことが多いです。
例文
「珍事中夭」または「珍事中庸」という四字熟語があります。 「ちんじちゅうよう」と読みます。 「椿事中夭」「椿事中庸」と表記することはしません。 「珍事中夭」とは「思いがけない大変な困難、災難」という意味です。 古めかしい表現で現在では使う場面がほとんどありません。
「珍事件」は「めずらしい事件」ではなく、「まぬけな事件」という意味になります。 例えば、パン屋さんが卵を100箱購入しようと思ったら誤って100ダース購入してしまう、などが珍事件にあたります。 一方、「椿事件」は「つばきじけん」と読み、1993年に実際に起きたテレビ局の放送法違反が疑われる事件を指します。
「珍事の中に小さな矢あり」はことわざではなく、なぞなぞクイズです。 「チンジ」の中に「ャ」を入れると、「チャンジャ」という韓国料理になります。
「椿事」の同義語には「一大事(いちだいじ)」があります。 「一大事」も「重大な出来事」という意味ですが、「容易ならぬできごと」というネガティブなニュアンスで使うのが普通で、「大事件」に言い換えが可能です。 「お家の一大事」などと使います。 「一大事」は元は仏教用語で、「仏が衆生救済のためこの世に出現する」という意味でした。
「変事(へんじ)」にも「変わった出来事。思いがけない事件」という意味があります。 「突然の変事」「変事が起こる」などと使います。
「異変」の1つ目の意味は「(正常ではない)変化」です。 「暖冬異変」「異変はない」などと言います。 「異変」はこの意味だけで知っている人が多いと思いますが、 2つ目の意味は「非常の事件」があります。
「椿事」の類語のカタカナ語には「ハプニング」があります。 この「ハプニング」の使い方は和製英語です。 英語の「ハプニング」には「起こること」という意味しかありません。 英語の意味を知っていると、「ハプニングが起きる」と日本語が不自然なことがわかります。
「珍事」の英語表現で使える英単語には
などの単語が使えます。
Something unusual happened in the meeting.
会議中に珍事が起きた。
「重大な」というニュアンスを強調したい場合は、
などの形容詞が使えます。
That was a pivotal event in the Japanese history.
あれは日本の歴史を揺るがす椿事だった。
「椿事」の意味と使い方はご理解いただけましたか? 最後に「椿事」についてまとめたいと思います。 ✔「椿事」の読み方は「ちんじ」 ✔「椿事」の意味は「思いがけなく起こった重大な出来事」 ✔「椿事」の語源は「樁事」の誤用が由来 ✔「椿事」の類語は「一大事」 ✔「椿事」の英語は「unusual」「pivotal」