「祈念」という言葉の意味は「祈り念ずること」で、「ご活躍を祈念申し上げます」などとビジネスシーンでも用いられています。乾杯の挨拶などでも用いられるため、社会人の方はぜひ覚えておきたいワードです。今回は「祈念」について詳しく解説していきます。例文や類語も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「祈念」の読み方は「きねん」です。 イントネーションは「き」にアクセントを付けて読みます。 「理念」「二円」「期限」などと同じ発音です。 「ねん」にアクセントを付けると「記念」のイントネーションになってしまうため、注意しましょう。
「祈念」の意味は「神仏に願いごとが叶うよう祈ること」「祈り念ずること、いのり、祈願」です。 ビジネスシーンで手紙や年賀状で結びの言葉として相手の健康や他社の繁栄を祈る際に使う堅い語です。 本気で神仏に願っているわけではありませんが結びの言葉の決り文句として用いられています。 そのためビジネスシーンでも普段の連絡では使用しません。手紙などの文書や、公の場におけるスピーチ・挨拶で用いられます。 日常会話ではほとんど使用しません。
「祈念」はそもそも「お祈りします」をより改まった表現にしたものです。 そのため「祈念します」でもとても丁寧な表現となります。 「祈念」は”心から祈っている”というニュアンスのため、基本的に相手の成功や活躍・発展・回復を祈るときに用います。
「祈念します」よりも丁寧となる丁寧語は「祈念しております」です。 「おります」は、「いる」の丁重語の「おる」に丁寧語の「ます」をつけた言葉です。 「祈念しています」をより丁寧な表現にしたのが「祈念しております」です。 「~している」とは、何か行動が継続・進行しているという意味のある言葉です。 継続して「祈念」をしていることを伝えられる表現となり、より丁寧さが増します。
「祈念いたします」になると、さらに丁寧になります。 「いたす」は謙譲語になるため、丁寧語・丁重語よりも敬意が強くなります。 謙譲語は自分がへりくだる表現で相手を立てることが出来る言葉です。 そこに丁寧語の「ます」を付け、より相手への敬意を表しているのが「祈念いたします」です。
「いたす」と「申し上げる」はどちらも謙譲語なので、文法的な丁寧さは同等です。 ただ「する(いたす)」と「言う(申し上げる)」だと、「いう」方が意味的に控えめな響きがあります。 「祈念する」は相手に直接働きかけるニュアンスがありますが、「祈念を言う」のはただ自発的に発言しているだけなのでそのようなニュアンスはありません。 話者の感覚にも寄りますが、「祈念いたします」より「祈念申し上げます」の方がより謙遜した意味合いが強くなります。
「ご」は尊敬語なので「自分の行動に対して使うのは誤りだ」という認識は誤りです。 敬語の接頭語「ご」「お」は、文脈により謙譲語にもなります。 「ご祈念いたします」「ご祈念申し上げます」の「ご」は自分の行為を修飾している敬語なので謙譲語です。 ちなみに、基本的に漢語に「ご」を使い、和語に「お」を使います。 「ご」「お」の漢字は「御」です。 「ご祈念いたします」「ご祈念申し上げます」は同じ動詞を二つの敬語で修飾しているので、厳密には二重敬語です。 しかし、「ご(お)〜いたします」「ご(お)〜申し上げます」は慣習的によくある表現で、セットで謙遜表現とするのが現代では一般的です。 よって、「ご祈念いたします」「ご祈念申し上げます」と言っても間違いではありませんが、「祈念いたします」「祈念申し上げます」ですでに丁寧な敬語なので、わざわざ「ご」を付ける必要はないでしょう。 また「ご健康をご祈念〜」などと「ご」が二回続くとクドいので、「祈念」には「ご」を付けずに使うのが自然です。
「陰ながら」は「よそながら」「ひそかに」「人知れず」を意味する副詞です。 「陰ながら◯◯する」といった場合は、「人知れずこっそりと◯◯する」「人の目から隠れてこっそりと◯◯する」という意味合いになります。 「陰ながら祈念・・・」とした場合は、「相手が安全・安心していられるかは、自分の力でどうにかなることではありませんが、無事を祈ります」ということを表します。「ひそかに」というニュアンスを込めることで、相手への気遣いと謙虚さを示すことができます。
祈念を用いる場合、
などが定型句となります。 ビジネスシーンにおける手紙や文書、さらにはスピーチなどの締めの挨拶で用いられます。
例文
「祈念する」はビジネスシーンで主に使われる言葉ですが、本来の意味は「神仏にある願いごとが叶えられるように祈ること」です。 そのため、単に「祈る」といった意味でも使います。 例えば「事態の収束を祈念する」「安全を祈念する」などがよく使われています。
例文
相手が入院をした時のお見舞いや、災害に遭った際のお見舞いの文章でも「祈念」は用いられます。 主に「ご無事を祈念〜」「ご回復を祈念〜」と使います。 相手の無事や回復を、心より願っていることを相手に伝えることの出来る表現です。 震災の際は「余震が続いておりますが、皆様のご無事を心より祈念いたしております」といった文章が、様々なメッセージで用いられていました。
例文
「祈念」は、結婚式のスピーチや乾杯の挨拶でも用いられることが多くなっています。 この際も先ほど説明したように「ご多幸を祈念して」「ご健勝を祈念して」と定型句が使われることが多くなっています。
例文
「祈念」は集会の締めの挨拶でも使います。 集会といっても、友人同士で集まったりする場合には用いると不自然です。 例えば地域でお祭りを開催する際に集会を開いた際に「それではお祭りの成功を祈念して、一本締めさせていただきます」などと用います。 またビジネスでも新プロジェクトに向けて決起集会が行われることがありますよね。 そういった際にも「プロジェクトの成功と皆様のご活躍を祈念して」などと用いられます。
例文
「吉報を祈念申し上げます」は、受験生に対する応援メッセージとしてよく使われています。 「吉報」とは「喜ばしい知らせ」のことです。 要するに「吉報を祈念」は「合格を祈る」ということになります。 「合格しますように!」では直接すぎるため、「吉報を祈念〜」と用います。
例文
「祈必勝」「祈念必勝」は選挙運動で用いられています。 これは選挙における「必勝=当選」を願っているという意味です。 選挙に出馬している人への激励の意味を込めて陣中見舞いを贈る際ののし書きなどにも用いられています。
「平和祈念の黙とう」は原子爆弾投下の式典です。 広島市は8月6日、長崎市は8月9日に、原爆死没者の御霊を慰めることと世界恒久平和の実現を祈るための式典です。 これは毎年行われています。 8月15日の終戦日は「戦没者を追悼し平和を祈念する日」とされています。
「祈念」の同音異義語「記念」との違いを解説します。
「祈念」と同じ読み方をし、さらに「念」の字まで同じなため混同しやすいのですが、意味は全く異なります。 「記念」の意味は「思い出となるように残しておくこと」です。 例えば「記念写真」「記念品」などと使われることが多いです。 また「記念に写真を撮ろう」「これ記念に持って帰ろう」などと日常会話でも使われます。 さらに「過去の出来事や人物を何かを行うことで思い起こし、気持ちを新たにすること」といった意味もあります。 「創立100周年記念式典」「開港記念祭」などと使われます。
例文
「祈念」の類語に「祈願」「祈祷」がありますが、それらとの違いを説明します。
「祈願」の意味は「望みが叶うように神仏に祈り願うこと」です。 「祈念」ととても近い意味を持ちますが、「祈願」の方がより神仏に願うことが強くなります。 「合格祈願」などとお守りや絵馬にも書かれるように、必死に神頼みをする意味合いが強いです。 「絶対に叶えたい!そのためにも神仏に祈り願う!」といった様子です。 「祈念」はビジネスなどの締めの挨拶でも使われるように、必死に神頼みをする様子はありません。 「心より祈っています」といったニュアンスが強いです。
例文
「祈祷」の意味は「神仏に加護や恵みを求めて祈ること」「神仏に祈りを捧げる儀式」です。 例えば、神社で行う七五三やお宮参りなども祈祷のひとつです。 それらは「御祈祷」とも言われることが多いです。 他にも「合格祈願」「家内安全」「商売繁盛」「結婚式」などもあります。これらは神社で行う代表的なものです。 こういった神社にて行われる儀式などが「祈祷」となります。 ビジネスシーンなどでは「祈念」のように「祈祷いたします」と使うことはありません。
例文
ビジネスシーンで一般的に使われるのが「お祈り」です。 「祈念」と同様に結びの挨拶としてメールや手紙の文末や改まった場での締めの挨拶として用いられます。 そのため「祈念いたします」は「お祈り申し上げます」などと言い換えられることが出来ます。 「お祈り申し上げます」は正しい敬語表現なので、目上の人に対して使うことができます。 相手によって「お祈り申し上げます」だと少々堅いなと思うときは、代わりに「お祈りいたします」を使用できます。
例文
「願いまして」は「祈念」や「お祈り」よりもややフランクな言い回しです。 そのため、手紙などで用いられることはありませんが、社内でのスピーチや乾杯の挨拶などで用いられています。 「〜を願いまして、乾杯!」「〜を願いまして、挨拶とさせていただく」の形で使われることが多いです。
例文
「切に願う」の意味は「心より強く思うさま」です。 「切に願う」もビジネスシーンで用いられることがあります。 「切に願っております」の形が定型句です。 ちなみに「お祈り」組み合わせて「切にお祈り申し上げます」と使われることもあります。
例文
「念願」の意味は「心にかけて望み願うこと、その願い」です。 主な言い回しは
となります。 日常会話でもよく用いられています。
例文
「祈る」というニュアンスならば「pay」になります。 「pray for...」で「...を祈る」という意味になります。 宗教での「祈り」も「pray」が使われます。
I pray for everlasting peace across the globe.
世界における恒久の平和を祈念いたします。
「願う」というニュアンスならば「wish」が適切です。 例えば「wish her a happy birthday」で「彼女の誕生日を祝う」という意味になります。
I wish you every success in the future.
今後のご健勝を祈念いたします。
いかがだったでしょうか? 今回は「祈念」について解説してきました。 ✔意味は「神仏に願いごとが叶うよう祈ること」 ✔「祈念いたします」などと結びの挨拶文で使う ✔「ご活躍を祈念いたしております」などが定型句 ✔類語は「お祈り」「願いまして」 社内でのスピーチや結婚式の挨拶でも使われる言葉ですので、しっかりと覚えておきましょう。