今回は、よく使われる接続詞「または」について例文付きで詳しく解説していきます。「または」の類語「か」「ないしは」などとの使い分け、さらに対義語「かつ」「および」などの解説もしていきます。「または」の英語も紹介しますので、是非参考にしてください。
「または」の意味は「どちらを選択してもよい条件で2つ以上を提示する」です。 ただ「または」は厳密には2つの意味があります。 ①複数のうち少なくとも1つで成り立つ意 ②複数のうち1つだけ成り立つ意 です。 「A、B、CまたはD」とした場合、 ①の意味だと、A〜Dの4つのうち少なくとも1つということです。 AでもBでもCでもDでもどれでもいいが、「どれでもない」とはならないということです。 またA〜Dのうち少なくとも1つであるため、2つでも3つでも全部でも成り立ちます。 ②の意味だと、A〜Dの4つのうちのどれか1つだけということです。 AかBかCかDのどれかであり、2つ・3つ・全部というわけにはなりません。
「または」の漢字は「又は」となります。 公用文においては法令で漢字で書くこととされています。 漢字で書くこと以外にも「またはの後に読点は付けない」ともされています。 「または」は文法において「接続詞」となっています。
「または」の句読点は「AまたはB」「A、BまたはC」が主流となっています。 「A、またはB」も可能ですが、選択肢が2つの場合は句読点がなくていいとされています。 さらに、上述しましたが公用文における法令では「または」の後に読点は付けないと定められているため「Aまたは、B」「A、Bまたは、C」は誤用にあたります。
例文
「または」は数学でも使われます。 この場合「∪」という記号が用いられます。 「A∪B」とした場合「AまたはB」もしくは「AカップB」と読みます。 これはAとBの少なくとも一方に属する要素全体の集合という意味になり「AとBの和集合」といいます。 下の画像の水色部分の「AとBの集合の要素すべて」となります。
「または」の類語に「か」があります。 「か」は口語として日常会話でよく用いられています。 「か」は、
の形で用いられています。 「○○か△△」の場合は可能性のあるものを並べたり、選択を求める際に用いられます。 例えば「父か母が来る」とした場合はどちらも来る可能性があるが、来るのはどちらか一方といった意味になります。 また、「○か△△か」と2つ以上の複数を並べることが出来ます。 「父か母か祖母」「父か母か姉か兄」などと使います。 また2つのものを並べて「買い物に行ったか、友達に会いに行ったか」と使うこともあります。
例文
「もしくは」の意味は「前後の事柄のいずれかを表す語」です。 「AもしくはB」は「AとBのどちらか一つを選ぶ」という意味になります。 口語では区分はありませんが、 「または」は大きい方の段階での接続となり 「もしくは」は小さい方の段階での接続となります。 要するに大きな選択には「または」を使い、小さな選択には「もしくは」を使うということです。 「AもしくはB、またはCもしくはD」とした場合「AとB」が同じジャンル・カテゴリー(同等のもの)、「CとD」が同じジャンル・カテゴリー(同等のもの)であるということになります。 聞き馴染みがあり分かりやすい例では、 「三年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金又はその両方を科せられる」があります。 この場合「または」がなければ「もしくは」は使えません。
例文
「あるいは」は2つ意味があります。 ①同様の事柄のうちどちらか一方 ②同様の事柄を列挙して多様性を示す 1つ目の意味は「または」と完全に同義で、「AあるいはB」の形で使い「AかBのどちらか」となります。 「AあるいはBあるいはC」と3つ以上を列挙することもできます。 2つ目の意味は「または」にはありません。 「あるいはAあるいはB(あるいはC)」の形で使い「AをしたりBをしたり」となります。 「あるときには」「一方では」などと言い換えることができます。
①の意味の例文
②の意味の例文
「ないしは」は「ないし」の強調表現で主に話し言葉で使われています。 「は」は強調の助詞です。 「ないし」には2つの意味があります。 ①似通った複数の事柄のうち、一つを選択するときに用いる語 ②数量や位置の上下前後の限界範囲を示して、その中間を略す法律用語 1つ目の意味は「または」と同義で、「AないしはB」ならば「どちらか一方を選択する」といった意味になります。 「ないしは」は単語と単語を接続する場合も、文と文を接続する場合にも使うことができます。 2つ目の意味は「または」にはありません。 「AないしB」は「AからBに至るまで、AからBまで」という意味になります。 例えば「第1条ないし第12条の規定を適用」といったように使われます。 これは「第1条か第12条を適用」ということではなく「第1条から第12条を適用」という意味になります。
①の意味の例文
②の意味の例文
「さもなければ」の意味は「そうでなければ」となります。 「AさもなければB」とした場合、「Aを行わなければBという結果になる」という仮定を言い表す言葉です。 仮定を表すため「もしそうしないと」といった意味合いが強くなります。 「急いで!さもなければ、飛行機に乗り遅れるよ」などと使います。 また「さもなければ」は、
と言い換えることもできます。
例文
「それとも」の意味は「物事や事柄を並べてどれかを選ぶ語」です。 「あるいは」「または」「もしくは」と同義です。 ただ、「それとも」は疑問文でのみ使います。 「ご飯にしますか?それともお風呂にしますか?」と使います。 「父それとも母が来る」と使うことは出来ません。 「それとも」を用いるのであれば「父か、それとも母が来ますか?」といった使い方になります。
「または」の対義語としての「と」は「いくつかの事柄を列挙することを表す語」となります。 この場合並列助詞となり「AとB」「AとBとC」などと使います。 「と」には「または」のような選択の意味は含まれず、ただ列挙するために用いられます。 「君と僕の仲」「赤と黄色と青があったよ」などと使います。
例文
「または」の対義語としての「や」は「名詞や名詞に準じる語に付き、物事を列挙することを表す語」です。 この場合「や」も並列助詞で「AやB」「AやBやC」と使います。 さらに「と」と同様に、「や」も「または」のような選択の意味は含まれず、ただ列挙するために用いられます。 例えば「家族や友達も喜んだ」「野菜や花や日用品が売っている」などと使います。
例文
「または」の対義語として用いられる「かつ」は「二つの動作や状態が、並行して行われることを表す語」です。 「AかつB」とした場合、どちらも同時に成り立っていることを表します。 また「かつ」には相反する事柄が同時に行われいてる様子を表すことができます。 この場合、同じ瞬間にしているわけではなく、ある一定の期間内で同時に相反することが行われていることを表します。 例えば「よく遊び、且つよく働く」などと使います。 さらに「かつ」は「別の事柄を付け加える語」として用いられることがあります。 この場合は「さらに」「その上」と同義になります。 これは並行させるのではなく「付け加える」意味合いが強くなります。 例えば「イケメンであり、かつ優しい」と使います。 「イケメンであり、その上優しくもある」といった意味になります。
例文
「ならびに」は「2つ以上の事柄を並べて述べる語」です。 2つの事柄を述べる場合は「AならびにB」となり、3つ以上の事柄を述べる場合は「A、BならびにC」「A、B、C、DならびにE」と読点を入れます。 「A、BならびにC」とした場合、AとB,Cで分かれているように見えますが、A,B,Cの3つとも同列となります。 「AならびにB、C」と「ならびに」を最初の位置に入れて使うことはできません。 「ならびに」は異なるジャンルのものを列挙する場合に用います。 そのため大きい段階での区分をすることができます。 例えば「犬ならびにフリスビー」「お箸ならびに携帯電話」などと使うことができます。
例文
「および」は「2つ以上の事柄を並べて挙げたり、別の事柄を付け加えて言及する場合に用いる語」です。 「ならびに」と同様、2つの事柄を述べる場合は「AおよびB」となり、3つ以上の事柄を述べる場合は「A、BおよびC」「A、B、C、D及びE」と読点を入れます。 「A、B及びC」とした場合、AとB,Cで分かれているように見えますが、A,B,Cの3つとも同列となります。 「AおよびB、C」と「および」を最初の位置に入れて使うことはできません。 「および」を使う際、「AおよびB」のAとBのジャンルもしくは程度・地位が同じ場合にのみ使うことができます。 そのため「犬およびフリスビー」や「お箸および携帯電話」などと、別ジャンルを並べて使うことは出来ません。 「ならびに」と比べて小さい範囲内で使うこととなります。 同列のものを挙げるときは「および」、異なるジャンルや程度のものを挙げるときは「ならびに」を使うと覚えておきましょう。 また「AおよびBならびにC」といった使い方もします。 この場合「AとBは同等・同ジャンル」であり「Cだけ異なる程度・ジャンル」ということになります。
例文
意味 | 役割 | 特徴 | |
---|---|---|---|
または | どちらを選択してもよい条件で2つ以上を提示 | 大きい方の段階での接続、大きい選択(別ジャンルの接続・選択が可能) | (法律用語の場合)単独で使うことが出来る |
もしくは | どちらを選択してもよい条件で2つ以上提示 | 小さい方の段階での接続、小さい選択(同ジャンルのみの接続・選択が可能) | (法律用語の場合)「または」がある場合のみ使うことが出来る |
ならびに | 2つ以上の事柄を並べて述べる | 大きい方の段階での列挙(別ジャンルの列挙が可能) | (法律用語の場合)単独で使うことが出来る |
および | 2つ以上の事柄を並べて述べる | 小さい方の段階での列挙(同ジャンルのみの列挙が可能) | (法律用語の場合)「ならびに」がある場合にのみ使うことが出来る |
「または」の英語は「or」です。 「or」を英英辞典で調べると「used to connect different possibilities」と出てきます。 つまり「違う可能性を接続するために使われる」です。 よって、「or」は日本語の「または」と同じく、 ①複数のうち少なくとも1つで成り立つ意 ②複数のうち1つだけ成り立つ意 の2つの意味があることになります。
Let's meet up on Monday or Wednesday.
月曜日または水曜日に会いましょう。
ちなみに「or」には「さもなければ」という意味もあります。
Get out of here right now or I'll shoot you.
今すぐここから出ていけ、さもなければ撃つぞ。
「or」だけでも「または」の意になりますが、「either A or B」としても同義です。 「either or」の方が堅い表現なので、日本語の「または」により近いと思います。 「or」は日常会話でも使うカジュアルな表現なので、日本語ならば「か」の方が近いでしょう。
This building was constructed in either 1920 or 1921. I'm not sure which.
この建物は1920年または1921年に竣工された。どちらかは定かではありません。
いかがだったでしょうか? 「または」について理解できたでしょうか? ✔ 意味は「どちらを選択してもよい条件で2つ以上を提示する」 ✔漢字は「又は」 ✔類語は「もしくは」「あるいは」など ✔対義語は「かつ」「ならびに」など たくさんの接続詞があり、しっかりと調べてみるとそれぞれ使い方が細かく設定されています。 特に、法令文では明確に設定されていますので覚えておきましょう!