「風上にも置けない」という言葉をご存知ですか?「風上にも置けない」は人を罵るときに使用する言葉です。良い意味の言葉ではないので誤用は避けたいですよね。今回は、「風上にも置けない」の意味と使い方を、よくある誤用と合わせて紹介します。間違った使い方をしてしまわないためにも是非参考にしてください。
「風上にも置けない」は、「かざかみにもおけない」と読みます。
「風上にも置けない」は、卑劣な人を罵る言葉です。 そういった人の道に外れるようなことを平気でしたり、品性下劣だと感じるような人を蔑む気持ちを相手にぶつけるときに「風上にも置けない」という表現を使用します。 また、相手の性格や行動が卑劣であるから、仲間としては扱えないというニュアンスで使用されることもあります。
「風上にも置けない」の語源を知る上で大切な2つのポイントがあります。 1つ目は「風上」の意味です。 「風上」とは、風が吹いて来る方向を指す言葉です。 つまり、「風上にも置けない」は「風が吹いてくる方向には置けない」という意味になります。 これだけでは、「何を風が吹いてくる方向に置けないの?」と疑問に思いますよね。 ここで2つ目の「臭いの比喩であること」が大きなポイントになります。 悪臭を放つものを風上におくと、風下にその悪臭がどんどん流れて行くという科学的原理があります。 離れていても風にのって匂いがやってきてしまうなんて困ってしまいますよね。 つまり、「風上にも置けない」は「悪臭が風の吹く方に有ると耐え難い」「風上には悪臭がするものを置けない」ということなのです。 これが語源となって、人を罵ったり批判する言葉として「風上にも置けない」という表現が使用されるようになりました。
「風上にも置けない」の正式な言い方は「風上に置けぬ」です。 辞書によっては「風上に置けぬ」しか表記がない場合もありますが、現代では「風上にも置けない」という言い方が一般的です。 「風上に置けない」という言い方でも問題ありません。 否定を意味する「ぬ」を「ない」と言い換えるのは理解できますが、「も」はなんでしょうか? ちなみに「に」は場所を意味する格助詞です。 「も」は色々な意味がある係助詞で解釈が難しいですが、この場合は「強調」とするのが最もしっくりきます。 「人を人とも思わない」「君と話す気にもなれない」などの「も」も「強調」を意味します。
「風下にも置けない」はよくある誤用なので注意しましょう。 「風上」「風下」の意味を理解していないことが誤用の原因だと思われます。 確かに「上」「下」という漢字に注目してしまうと、「下の方にさえ置くことができないほど価値がない」という意味合いで誤用してしまいがちです。 しかし、「風上」「風下」は物理的に上下をいってるわけではない! 「風上」「風下」が風が吹いてくる方向、風が吹く方向を指す言葉であることを考えると「風下にも置けない」が誤用であることがよくわかります。
「風下にも置けない」と同様に「風上に立つ」「風下に立つ」という誤用も目立ちますが、 風上に立つ 風下に立つ という言葉は存在しません。
「端くれ」は、元々「木などの端を切り落としたもの」を指す言葉です。 そこから、「取るにたらない存在であるものの、一応その類に所属している」という意味で使用されるようになりました。 「端くれ」は、まだまだ取るにたらないけれど一応所属をしているということをへりくだって使用する言葉なので、「風上にも置けない」のように人を罵る言葉ではありません。 おそらく、「風上にも置けない」と「端くれ」が混じってしまった誤用であるということが考えられますが「端くれにも置けない」という言葉もありませんので注意してください。
「片隅にも置けない」を「風上にも置けない」という意味で誤用している人がたまにいます。 しかし、「片隅に置けない」という言葉はそもそも存在しません。 ちなみに「隅に置けない」という慣用句ならば存在します。 「隅に置けない」は、「油断できない・侮れない」という意味で使用される言葉です。 「隅に置けない」には相手を侮辱するような意味はないので誤用に注意してください。
「風上にも置けない」と似た表現に「気が置けない」という言葉があります。 「気の置けない」は、「気を使わなくて済む」という意味で使用される慣用句です。 「置けない」という言葉から「気を許せない・油断ならない」と解釈してしまう人が多いですが、悪い意味で使用する言葉でありません。 「気が置けない」と「風上にも置けない」を混同してしまわないように注意しましょう。
「風上にも置けない」は、「◯◯の風上にも置けない奴」という使い方をします。 「◯◯の風上にも置けない奴」で、「同じ仲間として考えられない」というニュアンスになります。 例えば、 「武士の風上にも置けない奴」・・・「同じ武士であるとは到底考えられない」 「男の風上にも置けない人」・・・「同じ男であるとは到底考えることができない」 といった使い方をすることができます。 また、「人の風上に置けるものではない」などの使い方もあります。 何か考えられないようなことをして、相手の怒りをかわないかぎり口にする言葉ではありません。
例文
何か卑劣なことをしているのを見てから「風上にも置けないやつだと思うような存在に変わった」という意味で「風上に置けなくなった」と過去形にしたり、「風上にも置けなくなるだろう」という推定の意味で使用している人も見かけます。 しかし、「風上にも置けない」は慣用句なので動詞にして「風上に置けなくなった」「風上に置けなくなるだろう」などと使うのは厳密には誤用です。 過去形にする場合は「風上にも置けない奴だと思った」 推定の意味で使用するのであれば「風上にも置けない奴と思うだろう」といったほうが自然であると言えるでしょう。
「非道徳的」とは、「道徳に反している様子」です。 人を傷つけるような言葉を平気で口にしたりなど、道徳性のないことを「非道徳的」と言います。 「風上にも置けない」と感じる人が、「人としてありえないと感じる行為をする人」だと考えると道徳心のない人を指す「非道徳的」は類語にあたると言えるでしょう。
例文
「人も道に反する」は、「人としての道を外れていると思うような言動や行動をする人」を指して使用する言葉です。 「人の道に反している」なので、「同じ人とは思えない」という意味で使用される「風上にも置けない」の類語であると言えるでしょう。
例文
「倫理」とは、「人として守るべき道」を意味する言葉です。 「倫理にする」のが「反倫理的」なので、「人としてそれってどうなの?」軽蔑してしまうような人を指して「反倫理的だ」と言います。 一般的な善悪の判断がつかず人としてありえないと感じる人を指す言葉なので、「風上にも置けない」の類語になります。
例文
「道徳的」は、「善意をきちんとわきまえて正しいことをすること」です。 人の気持ちをきちんと考え、善悪の判断がきちんとつけられる人を「道徳的」と言います。 人として間違えていない、正しいことをすることを意味しているので「風上にもおけない」の対義語にあたると言えるでしょう。
例文
「倫理的」の意味は、「人として守るべき道」です。 「倫理」は、善悪の判断をする場面で普遍的な基準になります。 「風上に置けない」は、人として守るべき道を守れていないような人に対して使用する言葉なので、「倫理的」は対義語になります。
例文
「人道的」の意味は、「人として守るべき道にかなっている様子」です。 人として間違っているような考え方や、行動をしない人を「人道的」と言います。 なので、人として間違っている人に対して使用する「風上に置けない」は対義語になります。
例文
「風上にも置けない」は「no」「not」などを使った否定文で表すことができます。
He is no teacher.
彼は教師の風上にも置けない奴だ。
He cannot be treated as a gentleman.
彼は風上にも置けない男だ。
「不名誉」を意味する「disgrace」を使って表現することもできます。 「disgrace to...」で「...にとって不名誉」となります。
He is a disgrace to the tech world.
彼はIT産業の風上にも置けないやつだ。
いかがでしたか? 「風上にも置けない」の意味を理解することができたでしょうか。 ✓「風上にも置けない」の読み方は「かざかみにもおけない」 ✓「風上にも置けない」は卑劣な人を罵る言葉 ✓「風上にも置けない」の語源は、「悪臭が風の吹く方にあると耐え難い」の比喩 ✓「◯◯の風上にも置けない奴」と使う