「諸事情」は「しょじじょう」と読み、「様々な事情や理由がある」という意味の婉曲表現です。具体的な理由に触れたくない時に「諸事情により」「諸事情を鑑み」などの形でビジネスシーンで使用します。今回はそんな「諸事情」について例文付きで使い方を詳しく解説していきます。類語や英語も紹介しますので是非参考にしてください。
「諸事情」の読み方は「しょじじょう」です。 「もろじじょう」ではないので、注意しましょう。
「諸事情」の意味は「様々な事情や理由がある」時の遠回しな表現です。 相手にその事情や理由を明かしたくない時や事情が入り組んでいて説明が難しい時、また物事を特定されたくないような時の婉曲表現として用いられます。 本当の事を言ってしまうと問題がある場合、言い難い内容の場合は「諸事情」を使います。 そうすることで、これという理由を説明しなくても、聞き手はこの一言で「いろいろな事情があるんだな」ということを察することができます。
「諸事」の意味は「多くのいろいろなこと」となります。 「諸々(もろもろ)」と使われるように「諸」自体に「もろもろ、多くの、たくさんの」といった意味があります。 他にも「諸」は「諸説」「諸問題」「諸先輩方」などと使われています。 「諸説」は「いろいろな説」、「諸問題」は「複数の問題事」、「諸先輩方」は「先輩の方々」といった意味となります。
主に「事情が込み入っていて説明が難しい時」「事情は説明できるが、言いたくない時」に使います。 会社の欠席などが体調不良ではなくプライベートなことだった場合に使うことが多いです。 例えば理由を相談をする際に詳細を明かしていたとしても、欠席届などには詳細を書かず「諸事情」が使われることが多くなっています。
「諸事情により」が定型句となります。 「諸事情により○○します」「諸事情により○○しました」と使うのが一般的です。 他にも「諸事情で」「諸事情のため」と使うこともあります。
例文
「鑑みる」の意味は「手本・先例に照らし合わせる、参考にして考える」です。 「勘案する」の意味は「あれこれを考え合わせる」です。 「考慮する」の意味は「判断・行動の前にいろいろの要素を含めて考える、思いをめぐらす」です。 「諸事情を鑑み」「諸事情を勘案し」「諸事情を考慮して」と使う場合は「諸事情のことを考えると、考えた結果」といった意味になります。 ただ事情があるというだけでなく、その事情について考えたり検討をした結果だということを伝える場合に用います。 この場合は自分や会社の事情、また相手の事情に対しても使うことが出来ます。
例文
「諸事情をご理解」「諸事情をご賢察」は相手に諸事情があることを理解してもらいたい時に使います。 「ご理解」と「ご賢察」は敬語表現となるため目上の人に使うことが出来ます。 どちらも、目上の人が「理解すること」と「推測すること、配慮すること」に対する敬語表現です。自分の行為に対して使うことはできません。 取引先や顧客などに対して、諸事情を理解して欲しいという依頼をする場合に用いられる表現となっています。
例文
「ご理解」と「ご賢察」を用いて、目上の相手への依頼が出来ると説明しました。 しかし、「諸事情」は相手に対して失礼となる場合があります。 というのも、「諸事情」を使うということは相手に事情を一切説明しないということになります。 そのため、何の説明もなしに変更や中止をしたり、相手からの提案や依頼を断ることになります。 企業秘密であったり、他社との関係だったりとどうしても説明出来ない場合もありますが、なるべく伝えられる範囲で理由を述べる必要もあります。 何度も「諸事情」を用いると、失礼になるだけではなく自分自身や会社の印象も悪くしかねないため注意しましょう。
自分たちが「諸事情」を使う場合、相手に事情を説明できませんよね。 それなのに「なぜでしょうか?」「この場合だったら大丈夫なのでしょうか?」などと聞かれると、疎ましく思ってしまいます。 そのため「諸事情」と相手から言われた場合は、詮索しないようにしましょう。 「諸事情」と言われてしまうと、どうしても気になってはしまうものです。 はっきりと理由が知りたい時もあります。 しかし「諸事情」と言われてしまった以上「何かしら事情があるんだな」と諦めるしかありません。 「諸事情って何ですか?」と聞くのは、大変失礼にあたります。
退職する際も「諸事情」ではなく「一身上の都合」を使うのが一般的です。 「一身上の都合」とは「自分自身に起こった個人的な都合」「家庭の事情」といった意味があります。 主に自己都合で退職する場合に「一身上の都合」が用いられます。 そのため自己都合の場合は、いかなる理由であった場合でもいくつかの事情があった場合でも「一身上の都合」が使われます。
例文
「諸事情」と同じように「私情」という言葉を使うのは誤用です。 「諸事情」と「私情」はどちらも「情」という漢字が使われていますが、意味が全く違います。 「私情」とは「個人的な感情、利己的な心」を意味します。 私情の情は「事情」ではなく「感情」を意味するため「私情のため休みます」「私情のため欠席します」と使うことは出来ません。 「諸事情」の類似表現で「自分の都合」を意味する言葉は「私用(しよう)」「私事(わたくしごと・しじ)」を使います。 意味は「個人や私生活のこと、公ではないこと」です。どちらも同じように使うことが出来ます。
例文
「諸事情」の類語で、よくビジネスシーンで用いられているのは「諸々の事情」「諸般の事情」「仔細」などです。 「諸々の事情」は「諸事情」と意味も使い方も同じです。 「もろもろ」の意味を持った「諸」と「事情」をくっつけて熟語にしているか否かの違いです。 「諸般の事情」も「いろいろな事情」となり、ほぼ同じ意味です。 ただ「諸般」には「あれこれと考え合わせて...」という意味合いが含まれます。 「諸々」に比べて「諸般」の方が曖昧度が高くなり、マイナスな事柄を表す場合に使うことが多いです。 「仔細(しさい)」の意味は「こみいったわけ、特別な理由」となります。 他にも「詳細」「詳しい事情、一部始終」といった意味もあります。
例文
日常会話だと、「諸事情」を表す言い回しはたくさんあります。
などと使われています。 「大人の事情」は子供には説明できないといって意味もありますが、「上層部による事情」として使ったり「テレビなどにおける現実を見せたくないといった制作側の事情」として使ったりします。
例文
「諸事情」の英語表現を3つ紹介します。
「for some reasons」は直訳すると「いくつかの理由で」で、「諸事情」の意味で使うことができます。 ちなみに「for some reason」と「reason」を単数形にすると「ある理由で」という意味になります。 「some」は複数形にかかり「いくつかの」、単数形にかかり「ある」と覚えておきましょう。
For some reasons, the meeting has been cancelled.
諸事情で会議は中止になりました。
「according to the situation」は「状況により」という意味です。 「according to...」で「...によると」という意味です。 ちなみに「accordingly」だと副詞で「臨機応変に」という意味になります。
「due to unforeseen circumstances」だと「予期せぬ事態により」という意味です。 これはかなり堅い表現です。
Due to unforeseen circumstances the cost has gone up by 10 percent.
諸事情により10%コストが上がりました。
いかがだったでしょうか? 「諸事情」について理解できたでしょうか? ✔読み方は「しょじじょう」 ✔「様々な事情や理由がある」という意味の遠回し表現 ✔定型句は「諸事情により」で、「諸事情を鑑みて」「諸事情をご理解」などとも使われる ✔類語は「諸々の事情」「込み入った事情」など 「諸事情」はビジネスシーンでも日常生活でもよく使われる言葉です。 しっかりと覚えておきましょう。