「選んでください」は「相手に二つ以上のものの中から「これ」と思うものを選択してほしい」という場面で使用する表現です。今回は「選んでください」の意味と、目上に使える敬語への言い換えを紹介します。
「選んでください」は、「相手に二つ以上のものの中から「これ」と思うものを選択してほしい」という意味です。 「選んでください」は「選ぶ」と「ください」を組み合わせた言葉です。 「選ぶ」は「基準や好みにあったものを取り出す」という意味です。 「ください」は「くれ」の丁寧な表現で、相手に要求・依頼する意を表します。
「選んでください」は「選ぶ」に、命令形「くれ」の丁寧語「ください」をつけた敬語表現です。 したがって、「選んでください」は丁寧語であるといえます。 「丁寧語」は「です」「ます」のように物事を丁寧にいうことで相手に敬意を示す敬語表現ですが、敬意を示す相手の有無を問わず幅広く使用することができます。 ただし「選んでください」は「くれ」を使用している命令文なので、一方的に要望・要求するようなニュアンスになってしまいます。目上の人に使う場合はより丁寧な表現にした方がよいでしょう。
「選びなさい」は「選ぶ」に尊敬語「なさる」の命令形「なさい」をつけています。 したがって、「選びなさい」も実は敬語表現であるといえます。 「なさる」は、「しろ」「せよ」「なせ」の尊敬語です。 ただし、「なさい」の形で自分を同等以下の人に対するやわらかな命令を表します。 目上の人に対して使用することはありません。
後半にいくにつれて丁寧な度合いが増していきます。
「お選びください」は「選ぶ」に接頭語の「お」と、命令形「くれ」の丁寧語「ください」をつけた敬語表現です。 接頭語「お」の敬語の種類は、文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなりえます。 「お選びください」の場合、選ぶのは相手なので接頭語の「お」は尊敬語です。 「お選びください」は尊敬語+丁寧語の正しい敬語表現です。 「お選びくださいませ」も丁寧な敬語表現です。 「ませ」は「丁寧な気持ちを込めて、相手にある動作を要求する意」を表します。 「くださいませ」とすることで、「くれ」を丁寧にするだけでなく柔らかい印象を与えることができます。
「お選びいただけますか」と疑問文にすることも可能です。 ただし口語で使用することが主であるということを覚えておきましょう。 「お選びいただけますか」を品詞分解すると「お」+「選ぶ」+「いただく」+「ますか」となります。 「お」は尊敬語です。 「いただく」は「もらう」の謙譲語です。 「ますか」は丁寧語です。 したがって、「お選びいただけますか」は尊敬語+謙譲語+丁寧語の正しい敬語表現であるといえます。 ただし「お選びくださいますか」「お選びいただけますでしょうか」は二重敬語で誤用です。 「二重敬語」とは、一つの語に同じ種類の敬語を二つ以上使用してしまうことをいいます。 「お選びくださいますか」は、「選ぶ」に尊敬語の「お」と丁寧語の「ください」さらに丁寧語の「ます」をつけています。 「お選びいただけますでしょうか」は、「選ぶ」に尊敬語の「お」と、謙譲語の「いただく」、丁寧語の「ます」さらに丁寧語の「でしょうか」をつけています。 したがって、「お選びくださいますか」「お選びいただけますでしょうか」は丁寧語を二つ使用している二重敬語であるといえます。
「お選びいただきたく存じます」は、「選ぶ」に尊敬を表す接頭語の「お」と「もらう」の謙譲語の「いただく」と「思う」の丁重語の「存じる」に丁寧語の「ます」をつけています。 したがって、尊敬語+謙譲語+丁重語+丁寧語の丁寧な敬語表現であるといえます。 「お選びいただきたく願います」は、「選ぶ」に尊敬を表す接頭語の「お」と「もらう」の謙譲語の「いただく」と「願う」に丁寧語の「ます」をつけた敬語表現です。 「お選びいただきたく、お願いします」という表現は不自然な日本語です。 「いただきたく」の「たく」は希望を表す助動詞「たい」の連用形です。 連用形とは文字通り、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)に連なる」という意味です。 よって、「お選びいただきたく」とした場合は「願います」と動詞を続けるのが自然です。
「お選びいただきますと存じます」を品詞分解すると「お」+「選ぶ」+「いただきますと」+「幸い」+「です」です。 接頭語の「お」は尊敬語です。 「いただけますと」は、「してもらう」の謙譲語の「いただく」と丁寧語の「ます」です。 「いただけますと」は「してもらうと〜」という意味で、仮定のニュアンスがあります。 「いただけますと〜」を使用することで「○○してもらえると嬉しいです」というように、やわらかくお願いをすることができる表現になります。 「幸いです」は「幸い」に丁寧語の「です」をつけています。 「幸い」は、「こうしてくれると嬉しい・ありがたいこと」を表す言葉です。 したがって、「お選びいただけますと幸いです」は「選んでもらえたら嬉しい」の丁寧な敬語表現です。
「お選びいただきますと〜」の仮定のニュアンスを鮮明にさせ、より丁寧な表現が「お選びいただければと〜」です。 お選びいただければと存じます お選びいただければ幸いです というように使用します。 「お選びいただければと存じます」は、「選ぶ」に尊敬語の「お」と「してもらう」の謙譲語「いただく」と「思う」の丁重語「存ずる」と丁寧語の「ます」をつけた敬語表現です。 「〜いただければと存じます」は「〜してもらえたらと思う」と願望を表す丁寧な言い回しです。 「〜いただければ幸いです」も「〜してもらえたら嬉しい」という願望を言い表わします。 「存じます」と「幸いです」を組み合わせて「幸甚に存じます」とするとより丁寧な日本語になります。「幸甚に存じます」で「とてもありがたく思います」「何よりの幸せであると思います」という意味です。 同じく仮定を意味する「お選びいただけましたら〜」も丁寧な敬語表現です。
「お選びくださいますようお願い申し上げます」は、「選んでくれるようお願いします」という意味です。 「お選び」の「お」は尊敬を表す接頭語です。 「くださいますよう」は、断定する意味を避け柔らかいニュアンスでお願いをするために使用されています。 「お願い申し上げます」は、「願い」に尊敬語を表す接頭語の「お」と「言う」の謙譲語の「申し上げる」と丁寧語の「ます」で、相手に依頼をするときに使用する丁寧な敬語表現です。 「お選びくださいますようお願いいたします」でも使用可能です。 「いたすします」は「する」の丁重語の「いたす」に丁寧語の「ます」をつけた表現です。 「お願いいたします」よりも「お願い申し上げます」のほうがフォーマルな響きがあります。 目上の人に対してや、厳粛な場面では「お願い申し上げます」と言う方が適切でしょう。
「恐縮」は「相手に迷惑をかけたり、厚意を受けたりして申し訳なく思う」という意味です。 「恐縮です」といった場合は「ありがとうございます」と感謝を表す言葉として使いますが、「恐縮ですが」といった場合は「申し訳ありませんが」と謝罪を表す言葉として使います。 依頼をするときに「恐縮ですが」を前につけることによって、申し訳なく思っている気持ちを伝えることができます。
「恐れ入る」の意味は、「自分の悪かったことについて申し訳なく思う」「相手の厚意にたいして恐縮する」で、そこから転じて「心が苦しいほど、ありがたく思う」という意味合いもあります。 「恐れ入りますが」で、相手に依頼をするときやお願いをするとき、何かを質問をするときなどに使用できるクッション用語になります。
「お手数をおかけしますが」も依頼するときのクッション言葉として使うことができます。 「お手数をおかけしますが」の意味は「時間を割いていただき申し訳ありませんが」です。 略して「お手数ですが」とすることもできます。
「僭越ながら」の意味は「身の程をわきまえず、失礼ながら」です。 「僭越ながら」は目上の人に意見するときや全体の前で発言するときなどに、謙虚さを示すために使います。
などの言い回しもあります。 「僭越ながら乾杯の音頭を取らせていただきます」などと使ったりします。
「選んでください」の英語は「Please choose...」です。 「choose」は「〜を選ぶ」という他動詞なので、その後に名詞を続けます。 ちなみに日本人がよく「選ぶ」という意味で使う英語「pick up」には、「選ぶ」という意味はないので注意してください。 「選ぶ」を意味する英語は正しくは「pick out」となります。 「pick up」の正しい意味が気になる方は下記の記事を参考にしてみてください。 「You can choose...」とするともう少しカジュアルで「選んでいいよ」という意味合いになります。
Please choose anything you like.
お好きなものをお選びください。
You can pick out whatever you want.
好きなもの何でも選んでいいよ。