1. TOP
  2. 日本語
  3. ことわざ・慣用句
  4. 「匹夫の勇」の意味と使い方、語源、類語「蛮勇」との違い、対義語、英語を例文つきで解説

「匹夫の勇」の意味と使い方、語源、類語「蛮勇」との違い、対義語、英語を例文つきで解説

「匹夫の勇」とは「ただ一時的な気持ちに任せるだけの、大した価値もない勇気」を意味することわざ。「ひっぷのゆう」と読む。「匹夫」は「つまらない人物」の意。「事の善悪を考えない、乱暴な勇気」は「蛮勇」という。

「匹夫の勇」の意味と使い方

「匹夫の勇」の読み方は「ひっぷのゆう」

「匹夫の勇」の読み方は「ひっぷのゆう」です。 「匹夫」を「ひきふ」、 「勇」を「いさみ」と読むのは誤りです。 また、「HIPのYOU」と表記するのは誤りです(当たり前) もしかしたらラップの歌詞で使われているかもしれませんね。

「匹夫の勇」の意味は「思慮も分別もない、腕力だけの勇気」

「匹夫の勇」の意味は「思慮も分別もない、腕力だけの勇気」「血気に逸るだけの勇気」です。 相手を軽蔑し卑下するニュアンスがあるため、使う際には注意しましょう。 「匹夫」を使った四字熟語には

  • 匹夫下郎(ひっぷげろう):身分の低い男
  • 匹夫匹婦(ひっぷひっぷ):平凡でつまらぬ男女

があります。 「匹婦」は、「匹夫」の対義語です。 身分の低い女性といった意味があります。

「匹夫の勇」の例文

  • 社長は後先のことを考えず、いつも匹夫の勇を振るう。
  • 立入禁止の看板を無視して立ち入り、美しい景色の撮影をするのは匹夫の勇であり、危険性を第一に考えるべきだ。
  • 何の準備もせず丸腰で挑むなんて、ただの匹夫の勇で無意味だよ。
  • 匹夫の勇を武勇伝として語る男は信頼できない。

「匹夫の勇」の語源

「匹夫の勇」の由来は孟子『梁恵王下』

「匹夫の勇」の由来は、中国の思想家である孟子(もうし)の『梁恵王下(りょうけいおうげ)』です。 その中に、 王曰、大哉言矣。寡人有疾、寡人好勇。 對曰、王、請無好小勇。 夫撫劍疾視曰、彼惡敢當我哉。 此匹夫之勇、敵一人者也。 王、請大之。 といった文章があります。 この「匹夫之勇」の部分がそのまま「匹夫の勇」となりました。 これは斉の宣王が隣国といい交流をするための方法を孟子に尋ねたときに、孟子が過去の名君と言われた人の話をする中で「まず自国を仁の徳で治めれば隣国ともうまくいく」ということを説いている時の話です。 先程の原文を訳すと 宣王は「素晴らしい言葉だ。しかし私には悪い癖が有り、勇敢を好む」と言いました。 それに対して孟子は「王よ、どうか小さな勇を好まないでください」 「例えば剣を握って相手を睨みつけて、かなうものならかかって来いと言ったとします」 「これは思慮が浅く腕力だけの勇気で有り、たった一人を相手にするだけです」 「追うよ、どうかこんな小さな勇気ではなく、大きな勇気をお持ちになってください」と答えました。 となります。 一人と剣を振るって戦う勇気ではなく、仁義や道徳を重んじる勇気を持つべきだということです。

「匹夫の勇、婦人の仁」は韓信の言葉

「匹夫の勇、婦人の仁」は、中国の武将である韓信(かんしん)が項羽(こうう)を評した時の言葉です。 韓信は項羽に仕えていましたが才能を認めてくれないため、項羽のライバルである劉邦(りゅうほう)に仕えることにしました。その後武力に勝る項羽が天下の盟主となり、劉邦は辺境の地が領地となり中央から遠ざけられてしまいました。 それによって将来を悲観した多くの兵が脱走する中、劉邦が最も信頼している大臣が逃げ出しましたが、戻ってきた大臣は「逃げたのではなく、逃げた韓信を追いかけ連れ戻した」と言いました。 劉邦はそれを信じて受け入れ、大臣が評価する韓信を『大将軍』に任命して兵隊の指揮を任せました。 そして劉邦は韓信に「ライバル項羽とあなたを比べて、あなたが勝っていることは?」と聞いた時に、韓信は「項羽にはとても及ばない」としながらも「彼の弱点は『匹夫の勇、婦人の仁』」だと挙げました。 韓信は「彼が激昂すれば千人が一度に倒れるほど強い男ですが、優秀な人材を登用し信頼して使うという勇気がありません。これは匹夫の勇(すなわち、腕力だけの勇気)です」と言いました。 そして「彼は優しく、誰かが病気になれば涙を流し自分の食べ物を分け与えますが、部下の功績を讃えて褒美を与えるとなるとそれを惜しみ、領地や地位を与えることができません。これは婦人の仁(すなわち、実態が伴わない優しさ)です」と言いました。 まさに、劉邦はその逆ですよね。 いくら戦闘が強く相手のために涙を流したとしても、相手を認め信頼し地位などを与えることこそ本当の強さと優しさであるということを表しています。

「匹夫も志を奪うべからず」は子罕『論語』

「匹夫も志を奪うべからず」という言葉もあります。 「ひっぷもこころざしをうばうべからず」と読みます。 これは『論語』の子罕(しかん)に出てきます。 意味は「どんな身分の低い人でも、志をしっかり持っていれば、その志を変えることは出来ない」です。 人の志は尊重すべきであるということを表しています。

「匹夫罪なし璧を懐いて罪あり」は桓公『春秋左伝』

「匹夫罪なし璧を懐いて罪あり」といった言葉もあります。 「ひっぷつみなしたまをいだいてつみあり」と読みます。 これは『春秋左伝』の桓公(かんこう)一○年に出てきます。 意味は「凡人は本来のまま過ごしていれば罪は犯さないが、身分不相応な財宝を手にすると罪悪を犯して災いを招くようになる」です。 身の丈に合わないものを持つと、罪を犯すことのたとえとして用いられています。

「匹夫の勇」の類語

血気の勇

「血気の勇」は「けっきのゆう」と読みます。 意味は「感情の赴くままに任せた、一時的な勇気」です。 向こう見ずで、血気に任せた粗暴な様子を表します。 「血気」の意味は「向こう見ずな意気、血の気」です。 「血気盛ん」と使えば「心身ともに活力がみなぎるさま」を表し、良い意味でも使われる言葉です。

小人の勇

「小人の勇」は「しょうじんのゆう」と読みます。 意味は「つまらない人間の軽はずみな勇気」「思慮の浅い勇気」です。 「小人の勇」の「小人」は「しょうじん」と読み、意味は「度量や品性に欠けている小人物」となります。 ちなみに「小人」は「こびと」とも読み「小型の人間、人間に近い容姿を持つ精霊や妖精」といった意味もあります。 「小人」を「しょうにん」と読んだ場合は「子供、少年」のことであり、入場料など料金の区別を示す場合は主に小学生以下を指して使われます。 「小人の勇」を略したわけではありませんが、似た二字熟語に「小勇」という言葉があります。 「小勇」は「しょうゆう」と読み、意味は「血気にはやったつまらない勇気」となります。

蛮勇

「蛮勇」は「ばんゆう」と読みます。 意味は「周りへの配慮をせず、乱暴な大胆さ」です。 「蛮勇」も向こう見ずな勇気のことを指しています。 主に「蛮勇をふるう」と使い、周囲や後先を考えず豪胆に物事を行う気力を奮い立たせることを指します。 「暴勇」も同じ意味を持ちます。 「蛮勇」と「匹夫の勇」の違いですが、どちらも「無計画」という意味合いでは共通していますが、「蛮勇」はより乱暴であり、善悪の区別がついていないという意味合いが強いです。 また、「匹夫の勇」は「取るに足らない」という意味があり、大義名分がない、ちゃんとした目的がない、というニュアンスがあります。この意味合いは「蛮勇」にはありません。

向こう見ずな、ドンキホーテ的、無鉄砲

その他にも「匹夫の勇」には類語があります。

  • 向こう見ずな
  • ドンキホーテ的
  • 無鉄砲
  • 無謀
  • 怖いもの知らず
  • 無遠慮
  • 見境がない
  • 闇雲に

などがあります。 「ドンキホーテ的」の意味は「よく考えずに大きな物事に挑むさま」です。 「ドンキホーテ」とはセルバンテスの小説のキャラクターのことで無謀で愚直な性格をしていることから、そういった人を「ドンキホーテ、ドンキホーテ的、ドンキホーテ型」などと言われています。 「無鉄砲」の意味は「是非や結果を考えずに行動すること、むやみに行動すること」です。 「無鉄砲」は当て字になっています。

「匹夫の勇」の対義語

大義の勇

「大義の勇」は「たいぎのゆう」と読みます。 意味は「最高の道義にかなった勇気」です。 「大義」とは、「人として守るべき最高の道義」「国家や君主への忠義」といった意味があります。 武士に必要なのは「匹夫の勇」ではなく「大義の勇」だ、とよく言われています。 「匹夫の勇」は思慮分別なく血気に逸る勇気を指しますが、「大義の勇」は感情に任せず道義を守ったうえでの勇気となります。

大勇

「大勇」は「たいゆう」と読みます。 意味は「本当の勇気、真の勇気」です。 主に必要な時にあらわす勇気を指します。 「大勇は勇ならず」といった言葉があります。 これは「本当に勇気のある人はむやみに人と争ったりせず、一見勇気がないように見えるということ」を表しています。 「大勇は怯なるが如し」とも言います。

外柔内剛

「外柔内剛」は「がいじゅうないごう」と読みます。 意味は「外見は穏やかで物柔らかであるが、芯が強く内心はしっかりとしていること」です。 優しそうな見た目だが、心は強いことを表した四字熟語です。 対義語は「内柔外剛」となり「外見はたくましく見えるが、実際には気が弱い性格」といった意味になります。 「外柔内剛」の対義語ではありますが、「匹夫の勇」の類語ではありません。

「匹夫の勇」の英語

reckless

「匹夫の勇」の直訳の英語はありませんが、一番近いのは「reckless」です。 「reckless」は形容詞で「無茶な, 向こう見ずな」という意味です。 「reckless driving」で「危険運転」という意味になります。 「recklessly」で副詞になります。

It's just reckless to make an investment in the company.

その会社に投資するのは匹夫の勇だ。

bad courage

「匹夫の勇」は「bad courage(悪い勇気)」と表現することもできます。 「bad courage」は一般的な表現ではありませんが、ネイティブにニュアンスは通じると思います。

まとめ

いかがだったでしょうか? 「匹夫の勇」について理解出来たでしょうか? ✔読み方は「ひっぷのゆう」 ✔意味は「思慮も分別もない、一時的な腕力だけの勇気」 ✔由来は孟子の『梁恵王下』 ✔類語は「血気の勇」「蛮勇」など

こちらの記事もチェック

「お手を煩わせる」の意味とビジネスメールでの使い方、敬語、類語を例文付きで解説

WURK

「馴れ初め」の意味と使い方、注意点、類語、英語表現を例文付きで解説

WURK

「白日の下に晒す」の意味と読み方、使い方、語源、類語を例文付きで解説

WURK

「強請る」の読み方別の意味と使い方、語源、類語、英語を例文付きで解説

WURK

「親和性」の意味と人への使い方、類語「融和性」との違い、対義語、英語を例文付きで解説

WURK

「座して待つ」の意味と語源、使い方、類語、対義語、英語を例文付きで解説

WURK

「恩着せがましい」の意味とは?使い方と類語、対義語、英語表現を例文付きで解説

WURK

「言外」の意味と使い方、読み方、誤用、類語、英語を例文付きで解説

WURK

「瑞々しい」の意味と使い方、類語、対義語、英語を例文付きで解説

WURK

「したり」の意味とビジネスでの使い方、類語・言い換え、英語を例文付いで解説

WURK

「無い袖は振れない」の意味と使い方、語源、類語、対義語、英語を例文付きで解説

WURK

「同じ穴の狢」の意味と使い方、語源、類語、英語を例文付きで解説

WURK

「それぞれ」の意味とビジネスでの使い方、漢字、品詞、類語、英語を例文付きで解説

WURK

「優に超える」の意味と使い方、類語、対義語、英語を例文付きで解説

WURK

「万難を排して」の意味と使い方、類語、「万全を期して」との違いを例文付きで解説

WURK

「お茶を濁す」の意味と語源、類語「言葉を濁す」との違いは?使い方を例文付きで解説

WURK

「帰社」の意味と使い方、挨拶の敬語、類語、「退社・帰宅」との違いを例文付きで解説

WURK

「独善的」の意味と使い方、類語、「偽善」との違い、対義語を例文付きで解説

WURK

「鳴り物入り」は誤用注意!悪い意味での使い方と類語、語源を例文付きで解説

WURK

「以降」はその日を含む?範囲は?類語「以後・以来・その後」との違い、対義語を例文付きで解説

WURK

トレンド

カテゴリーランキング

  1. TOP
  2. 日本語
  3. ことわざ・慣用句
  4. 「匹夫の勇」の意味と使い方、語源、類語「蛮勇」との違い、対義語、英語を例文つきで解説