「お手を煩わせる」とは「相手に苦労や面倒をかける」という意味の敬語表現で、目上の人への謝罪や依頼表現で使います。「煩わす」は「人の世話になる」「面倒をかける」「厄介をかける」を意味します。「手」は「作業にかかる労力」を、助動詞「せる」は使役ではなく強調を意味します。
「お手を煩わせる」の意味は「(何か自分のことで)相手に苦労や面倒をかける」の敬語表現です。 「手を煩わす」は「人の世話になる」「面倒をかける」「厄介をかける」を意味し、「手」に尊敬語の「お」をつけた言葉です。 ここで言う「手」は身体の両肩から分かれている部分を指すのではなく、作業にかかる労力を示します。 「煩わせる」は、「煩わす」の未然形+助動詞「せる」です。 助動詞「せる」は使役が一般的です。 例えば「部下に行かせる」「子供に遊ばせる」などがあります。 しかし「煩わせる」の「せる」は 不本意な状態や迷惑を引き起こすという意味です。 例えば、「野菜を腐らせる」「息子に事故を起こさせた」などと使います。 よって、「煩わせる」は「煩わしてしまう」という強調表現であり、「煩わす」と意味は同じです。
接頭語「お」または「ご」は、尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれにでもなります。 基本的に「お」は和語につき、「ご」は漢語につきますが、例外もあります。 「お手を煩わせる」の場合は、相手の動作・作業を敬う表現なので「尊敬語」とも取れますし、単に「手」を丁寧にいっている「丁寧語」とも取れます。 どちらにせよ、目上の人に使うことが可能です。 ただ「お手を煩わせる」は堅い表現なので、親しい上司に対して使用するには少し堅苦しすぎるかもしれませんので注意しましょう。
「煩う」だと「どのようにしたら良いか、あれこれと思い悩む」という意味の動詞です。 同音異義語「患う」は「病気にかかる」を意味します。 「煩わしい」の意味は「面倒で気が重いことと」「入り組んでいて煩雑なこと」です。 気が重く心を悩ますことや厄介なことが多いことを表した形容詞です。 「めんどくさい」「かったるい」「億劫」などと近い意味を持ちます。 「煩う」「煩わしい」は「煩わせる」と語源は同じですが、意味と使い方が違うので注意しましょう。
ビジネスシーンでよく「お手を煩わせてすいません」と使います。 苦労や面倒をかけてしまった時に、相手に申し訳なく思う気持ちを伝えることが出来ます。 しかし、「お手を煩わせてすいません」は間違いです。 実は「お手を煩わせてすみません」が正しくなります。 「すいません」は話し言葉で軽い印象を与えます。 ビジネスシーンや文章では「すみません」を使いましょう。 そして「お手を煩わせて申し訳ありません」だとより丁寧となります。 「お手を煩わせて申し訳ございません」は、さらに丁寧な表現となります。 「お手を煩わせてしまい大変申し訳ございません」だともっと丁寧となります。 「お手を煩わせて恐縮です」だととすると、申し訳ない気持ちで感謝する気持ちが同居しているを表すこともできます。
例文
相手に何か依頼する時には「お手を煩わせることになるかもしれませんが」などをクッション言葉として使います。 他にも
などといった言い回しもあります。 相手に手伝ってもらう際に、労力をかけさせてしまうこともありますよね。 事前に申し訳ない気持ちを表すことで、丁寧さと謙遜している気持ちを伝えることが出来ます。 「お手を煩わせたい」だとクッション言葉ではなく、「手伝ってほしい」とストレートに伝える表現です。 願望の形になっており直接的な表現なので、敬語ですが目上の人に対して使うことはできません。
例文
相手からの支援を断る際には「お手を煩わせるには及びません」と使います。 これは「苦労や手間をかけてもらう必要はありません」ということです。 「大したことではないので大丈夫です」「1人で出来ます」といった意味を持ちます。 他にも、相手からの支援を断る際には、
などと使います。 これらの場合は「迷惑かけたくない」「大変な思いをさせたくない」といった意味を持ちます。
「お手を煩わせる」は、手を煩わせてしまう相手に直接言う場面だけではなく「他人の手を煩わせる」「人手を煩わせる」と第三者に対しても使うことが出来ます。 例えば部長に手を煩わせることを同僚などに話す際に「部長の手を煩わせる」と使います。 これは「部長に迷惑をかけてしまう」といった意味になります。 「人手を煩わせる」だと、特定の相手ではなく「誰か他の人」「手伝ってくれる人」といった意味になります。
「お手」を「心」にした「心を煩わせる」だと、「心配をかける」という意味になります。 「相手の心に苦労させる、手間をかけさせる」ということですので、「心配をかける」
「お手!」とした場合は、犬のしつけです。 「お手」と言いながら手を出し、犬に前足を乗せてもらうという「しつけ」の一種です。 「お手」をしたことで何のしつけになるんだ?と思う方もいるかもしれませんが、飼い主の言うことをちゃんと聞くクセをつけさせることが出来ます。 また、飼い主が犬のしつけをするにあたって教えやすい「お手」から始めることで、その他のトイレや散歩における「しつけ」もちゃんと出来るといった意味もあります。
「お手数をおかけします」の意味は「労力を使わせてしまいます」で、申し訳ない気持ちと有り難い気持ちを表すことが出来ます。 「お手数」は「おてすう」「おてかず」と読みます。 意味は「ある物事を達成するために必要な労力、動作、手段の数」の敬語表現です。 「ある物事」とは自分以外の第三者のために行う物事を指します。 「かける」には「時間・費用・労力などをそのために使うこと」「こちらの行動の結果として他に負担を生ずる、被らせる」といった意味があります。 「お手間を取らせる」の意味は「時間ら労力を費やせてしまう」で、「お手数をおかけする」と同様に申し訳ない気持ちと有り難い気持ち表すことが出来ます。 「お手間」は「おてま」と読みます。 意味は「そのことをするのに費やされる時間や労力」の敬語表現です。 相手が時間や労力を費やす場合に「手間を取らせる」と言います。 ちなみに自分が時間や労力を費やす場合は「手間をかける」となります。
「面倒をかける」の意味は「煩わしいことをしてもらうこと」です。 「面倒」の意味は「体裁の悪いこと、見苦しいこと」「物事をするのが煩わしいこと、手数のかかること」になります。 「かける」の意味は先程も説明したように「時間・費用・労力などをそのために使うこと」「こちらの行動の結果として他に負担を生ずる、被らせる」です。 相手にとって煩わしいこと、大変なことに時間や労力を使ってもらう際に用います。 敬語では「ご面倒をおかけしますが」「ご面倒をおかけしました」となりますが、親しい間柄の相手に使用する言葉なので、目上の人にはあまり使いません。 「ほねをおらせる」の意味は「相手に苦労をさせる、世話をしてもらう」です。 原形は「ほねをおる」となり、漢字では「骨を折る」となります。 意味は「頑張る、苦労する、力を尽くす」「厭わないで人の世話をする」です。 「尽力する」と似た意味を持ちます。 ただ「お骨を折らせる」「お骨を折っていただき」などとは使いません。 敬語で使う場合は「お骨折り(おほねおり)をいただきまして」となります。 一般的には「ご尽力いただき」「お力添えをいただき」の方が使われています。
「お手を煩わせる」の英語は、
です。 「trouble」は動詞でも名詞でも使います。
I'm sorry to bother you, but could you please send the document?
お手を煩わせてすみませんが、書類を送ってもらえませんか。
I've put her into a lot of troubles so far.
今まで彼女のお手をたくさん煩わせてきた。
「お手を煩わせる」とは「助けてもらう」というニュアンスもあるので、シンプルに「help」で表現することも可能です。
I really appreciate your help.
お手を煩わせて恐縮です。
I'd like to have your help in this.
この件で、お手を煩わせたい。
いかがだったでしょうか? 「お手を煩わせる」について理解出来たでしょうか? ✔「相手に苦労や面倒をかける」の敬語表現 ✔「お手を煩わせてすいません」などと謝罪で使う ✔「お手を煩わせることになるかもしれませんが」などと依頼でも使う ✔言い換えは「お手数をおかけする」「お手間を取らせる」など