「安かろう悪かろう」とは「価格が低い商品は品質も低い。安い商品に良いものがあるわけがない」という意味する慣用句です。大量に安売りされている商品の質を非難したり、コスト削減による劣悪な労働環境を問題提起する時に使います。「高かろう良かろう、安かろう悪かろう」とも。
「安かろう悪かろう」の意味は「値段が安い物は品質も劣る」です。 価格が低いものには安い理由があり、品が高いわけはないというニュアンスです。 安い物にいい物はないと解釈することもできます。 「安かろう」は「安い」の未然形「安かろ」に仮想・可能性を表す助動詞「う」がついたものです。 「悪かろう」は「悪い」の未然形「悪かろ」に推量を表す助動詞「う」がついたものです。 つまり「安かろう悪かろう」とは「もし値段が安いならば、品質は悪いだろう」という意味になります。
「高かろう良かろう」は、「値段が高いものは品質も高いだろう」という意味で使われる言葉です。 「安かろう悪かろう」は「値段が低いものは品質も低い」という考えですが、「高かろう良かろう」はその逆の意味で使われます。 つまり、高い物に悪いものはないという意味があります。
「安かろう悪かろう」を
などと表現する人がたまに見受けられますが、これらは誤用なので注意してください。
例文
「安かろう悪かろう」は日本の高度経済成長期に使われるようになった言葉です。 高度経済成長期は戦後の1955年〜1973年までの約20年間を指します。 経済の成長に伴い、この時期の日本では大量生産・消費が行われていました。 消費者のニーズに応じるため、品質よりも価格が重視された商品が多く広まったのです。 しかし日本の経済が成長し消費者が豊かになってくると、価格だけでなく品質も重視するという変化が見られました。 その結果、安いというだけでは商品が売れなくなってしまったのです。 そして消費者の低価格で低品質な物に対する批判の声として「安かろう悪かろう」という言葉が使われるようになったのです。
技術の発展で、質の高いものを安価で作ることが可能になってきました。 また、SPA(自社ブランドの衣料品を売る直営店)や製造小売というビジネスモデルの登場で、質の高いものをコストを抑えて販売することも可能になりました。 よって、現代では「安い=悪い」というわけではなくなりました。 安くても質の高い商品はたくさんあります。例えばニトリやユニクロなどの商品は安いのに質が高いと評判が良いです。 ニトリの宣伝文句「お、ねだん以上」はまさしく「安い=悪い」の考えを覆すものとなりました。 また、現代ではフリマアプリなども一般化し、値段の高いものを購入してもいつでも気軽に売却することができるようになりました。 広告モデルをとるインターネットサービスは無料であることも多いですよね。 テクノロジーの恩恵で、様々な物やサービスを安く手に入れる時代になってきています。
「安かろう悪かろう」は元々、商品に対して使われる言葉でした。 しかし現代では、商品だけでなくサービスや人材などを批判する言葉としても使われます。 良いものを安く提供することができている背景には、人件費の削減などがあります。 「安くて質はいいけど労働環境や顧客対応が悪い」といったニュアンスで使うことも多々あります。 いくら値段が安くてもサービスが悪いと満足度は下がってしまいますよね。 ホテルやレストランなどのサービス業で、値段は安いがサービスの質が低い時などに使われます。
ミレニアム世代やZ世代と言われる平成生まれの若者たちは、親の世代のように価格が高いこと、つまりブランドにあまり興味がありません。 そして購買の意思決定の軸が「値段」ではなく、それよりも、健康や動物愛護、環境保護、お金では買えない体験などに重きを置きます。 例えば、牛皮を使った高級ブランドよりも新興企業が製造・販売するヴィーガン(植物性)の商品を身に着ける傾向などになります。 自身の健康や環境に良かったり、自己表現に繋がるものであれば値段を問わず購入するのが現代の若者の消費の傾向です。
「安かろう悪かろう」の類語は「安物買いの銭失い」です。 「やすものかいのぜにうしない」と読みます。 意味は「価格の安い物は品質も悪いので、結局は損をすること」です。 「安かろう悪かろう」との違いは、「安かろう悪かろう」は物そのものに対して、「安物買いの銭失い」は消費者の行動に対して使う言葉です。 その他にも
などもありますが、「安物買いの銭失い」ということわざが最も頻繁に使用されます。
「高かろう良かろう」というフレーズは上記でも紹介しました。 「高かろう良かろう」を「安かろう悪かろう」の対義語とすることがありますが、それは誤りです。 「安いものは悪い」と「高いものは良い」はよく考えると同じことを言っていますよね? よって、「高かろう良かろう」は「安かろう悪かろう」の類語にあたります。
「安いのに質が高い」を意味する「コスパが良い」「コスパが高い」が対義語になります。 「コスパ」とは「コストパフォーマンス(Cost performance)」の略語です。「CP」と略されることもあります。 「コストパフォーマンス」の意味は、「費用に対して得られた満足度や成果の対比」です。 安いのに質が高い商品を買うと満足しますよね。そういう時は「コスパが良い」や「コスパが高い」と言います。 ちなみに「cost performance」は和製英語です。 日本語の「コスパ」の意味を英語で表す際は、「good value for money / price 」が適切です。
「価格が高いのに品質が著しく低い」は「コスパが悪い」「コスパが低い」と言うことができます。 言い換えると、このようなビジネスは「ぼったくり」「悪徳商法」ということができます。 「ぼったくり」の意味は、「商品やサービスの提供者が、客に高額な料金を請求すること」です。 例えば、100円ほどで販売されている飲料水を1,000円など法外な値段で顧客に販売するなどの行為に対して使われます。 「あの値段はぼったくりだ」「あんなに高い値段で売りつけるなんてあの人はぼったくりに違いない」などの形で使います。 「悪徳商法」は、販売者が不当な利益を得るようなビジネスの通称です。 「悪徳」の意味は「道徳に反する行為や精神」です。
「安かろう悪かろう」の英語表現の一つに「cheap is cheap.」があります。 直訳すると「安いのは質が悪い」という意味になります。 「cheap」には「安い」という意味の他に「質の悪い、安っぽい」という意味もあります。 そのため「安いものは安い」よりも「安いものは質が悪い」と訳す方が良いでしょう。
「一番安いものは結局一番高い」というニュアンスで使われる英語です。 「cheapest」と「dearest」はどちらも最上級です。 形容詞の最上級は「the +○○est」の形で使うのが一般的ですが、ここでは「the」が省略されています。つまり文法的には誤った表現になります。 「dearest」は「最愛の」という意味で使うのが主ですが、「とても高価な」という意味もあります。
直訳すると「お金を払った分だけ手に入れることができます」となります。 安いものは安いだけの理由があり、逆に高いものには高いだけの理由があるという意味合いです。 ここでの「what」は「何」という疑問代名詞ではなく「〜な事」という関係代名詞の役割があります。
いかがでしたか? 「安かろう悪かろう」について理解は深まりましたか? ✔意味は「値段が安い物は品質も悪い」 ✔商品の価格が低いだろうが、それだけ品質も悪いだろうという意で使われる言葉 ✔類語は「安物買いの銭失い」「高かろう良かろう」など ✔反対語は「コスパが良い」など ✔英語表現は「Cheap is cheap.」「You get what you pay for.」など