「揚げ足取り(あげあしとり)」とは「人の言い間違いや言い損ないを取り上げて、大げさに非難すること。また、その人」を意味します。語源は相撲や柔道で相手の宙に浮き上がった足をひっかけて倒すことです。「揚げ足取り」は相手の発言に対してのみ使い、行動には使えません。漢字は「上げ足」「挙げ足」としても間違いではないですが、「揚げ足」とするのが一般的です。
「揚げ足取り」の読み方は「あげあしとり」です。 「あげあしどり」ではないので注意しましょう。 意味は「相手の言い間違いや言葉尻などを取り上げて皮肉ったり非難したりすること」です。 また、「揚げ足取り」は行為だけではなく、「揚げ足取りをする人」も指します。
「揚げ足取り」の語源は、相撲や柔道の技が由来です。 相手に技をかけようとして宙に浮いた足のことを「揚げ足」と言います。 「揚げ足」を取って逆に相手を倒すことが転じて、相手の発言につけこむことを表すようになりました。 競技で使う「揚げ足」は「浮き足」ともいいます。 「浮き足立つ」とすると全く意味が変わるので注意です。
「揚げ足」を、
と書くこともありますが、基本的には「揚げ足」を使うことが多いです。 「揚」には「高く上に上げる」という意味が、「上」と「挙」には「上へあげる」という意味があります。 意味的には「上げ足」や「挙げ足」でも正しいのですが、「揚」の方がより意味が近いことから「揚げ足を取る」と書くのが一般的です。
「揚げ足取り」は相手の発言に対して使う表現です。 特に取り上げる必要のない些細な相手の発言ミスに対し、相手をからかったり責めたりする時に使います。 他人の失敗行動に対して使うのは誤用となります。 また、「揚げ足取り」は些細な言い間違いなどにいちいち引っかかる、というニュアンスです。 惨事に繋がりかねない言い間違いや失言を批判することは「揚げ足取り」にはあたりません。 ちなみに、目下の者が目上の者に注意することを「諌める(いさめる)」といいます。
「揚げ足取り」は、
の形で使うのが一般的です。 その他の言い回しには、
などがあります。
例文
人の発言をからかうと言った意味で「揚げ足を取る」を「揚げ足をすくう」という形で使うのは誤用になります。 「すくう」には「下からさっと持ち上げる」という意味があります。 なお、柔道などの技の意味では「揚げ足をすくう」と使うことはあります。 「すくう」を使うのは「足をすくう」で、意味は「相手のすきをついて、失敗させる」です。 「足下をすくう」もよく使われますが、これも正しい日本語ではありませんので注意してください。
「揚げ足取り」または「揚げ足」は、経済用語でもあります。 「揚げ足取り」「揚げ足」は「相場が上昇傾向にある」という意味もあります。 その場合は「上げ足」と表記するのが一般的です。 「上げ足が速い」というとチャートなどで相場が急カーブで上がることを指します。 反対語は「下げ足取り」「下げ足」です。
「揚げ足取り」の類語に「重箱の隅を楊枝でほじくる」があります。「重箱の隅を楊枝でつつく」とも言います。 「重箱の隅をつつく」は誤用で、「隅」を「角」とするのも「楊枝」を「爪楊枝」とするのも誤用となります。 「重箱の隅を楊枝でほじくる」は「細かいことにまで口うるさく言うこと」という意味があります。 「重箱」とは料理を詰める四角い容器のことです。 重箱の四隅には食べ物がこびりつきやすいという意が転じて、「細かい所まで干渉する」というニュアンスで使われています。 また「重箱の隅」を使った他のことわざに「重箱の隅は杓子で払え」があります。 「些細なことまでうるさく言わず、大目に見たほうが良い」という意味があります。 「杓子」とは、調理器具の一種で、汁や飯などをすくいとる道具のことです。
「人の発言に対して口出しをする」といった意味での類語に「物言い」があります。 「ものいい」と読みます。 意味は「決定について反対が出ること」です。 また「物言い」には、「言葉遣い」「言い争い」といった意味もあります。
「人のミスなどを探すこと」といった意味での類語に「落ち度を見つける」があります。 「おちどをみつける」と読みます。 意味は「失敗や過失などを見つけること」です。 「落ち度」を使った言い回しには、「落ち度を認める」「落ち度がある」「落ち度による...」などがあります。
「人が言われていやなことをあえて言う」といった意味での類語に「欠点を論う」があります。 「けってんをあげつらう」と読みます。 意味は「短所などを取り上げて言い立てること」です。 物事の善悪や可否などをあれこれと議論するというニュアンスが含まれます。
上記でご紹介した「欠点を論う」と同様、「人が言われて嫌なことをあえて言う」といった意味での類語に「難癖をつける」があります。 「なんくせをつける」と読みます。 「難癖」とは「非難すべき点、悪い所」という意味があります。 難癖をつけることを「言い掛かりをつける」とも言います。 また「難癖をつける」と同義の言葉に、
があります。
「相手の細かい発言も見逃さない」といった意味での類語に「片言隻句をとらえる」があります。「片言隻語」とも書きます。 「へんげんせっくをとらえる」と読みます。 「片言隻句をとらえる」の意味は「些細な言葉を取り上げること」です。 「片言隻句」とは「ほんのちょっとした言葉」という意味があります。 なお「片言隻句をとらえる」に非難するなどネガティブなニュアンスは含みません。 似た意味を持つ言葉に「言葉尻りを捕らえる」があります。 「言葉尻り」とは「言い間違いの部分」のことで、本来捕らえる必要のない部分をわざわざ取り上げるといったニュアンスがあります。
「nitpick」は「粗探しをする」という意味があります。 「nit」には「シラミの卵や幼虫」という意味があり、「細かいことをわざわざ取り上げる」というニュアンスがあります。 「揚げ足を取る人」は「nitpicker」と言います。
He is always nitpick and that's so annoying.
彼はいつも揚げ足取りなので、かなりウザい。
He is such a nitpicker.
彼は揚げ足取りの名人だ。
「trip up」は「(人を)つまづかせる」という意味があります。 「trip」は「旅行」ではなく、サッカーやバスケットボールの足をすくう反則行為「トリッピング(tripping)」のことです。 また「間違いを見つける」といったニュアンスで、「find fault / mistake」と表すこともできます。
She is always tripping people up.
彼女はいつも人の揚げ足取りばかりしている。
All she does is finding other people's faults (mistakes).
彼女は他の人の揚げ足取りしかしない。
いかがでしたか? 「揚げ足取り」について理解は深まりましたか? ✔読み方は「あげあしとり」 ✔意味は「相手の言い間違いなどを責めること」 ✔人の発言をからかったり非難したりするときに使う。行為に対しては使わない。 ✔類語は「重箱の隅を楊枝でほじくる」「難癖をつける」など ✔英語表現は「nitpick」「trip up」など