「臨機応変」とは「事前の計画に囚われず、その場その場の状況に応じて、適切な手段を講じる」という意味の四字熟語です。漢文訓読は「機に臨み、変に応ず」で、「臨機」はその場・その時に事に向かうこと、「応変」は事態の変化に応じて対応していくの意です。「臨機応変」は「りんきおうへん」と読みます。「臨気応変」と書くのは誤りなので注意です。
「臨機応変」の読み方は「りんきおうへん」です。 「臨機」を「臨気」と書くのは誤用です。 「臨機応変」を漢文訓読すると、「機に臨み変に応ず」となり「きにのぞみへんにおうず」と読みます。
「臨機応変」は、「その場その時に応じて、適当に処理すること」という意味があります。 「臨機応変」の品詞は名詞です。 「臨機」には、「その場その時に応じること」、「応変」には「変化に対して適切に対応すること」という意味があります。
「臨機応変」の語源は、ことわざの「機に臨み変に応ず」が由来です。 出典には諸説があります。 一つ目は、中国の歴史書「南史」です。 「南史」とは、南北朝時代の南朝にあたる国家、宋・斉・梁・陳の歴史を記したものです。 梁(りょう)という国家の王家の一員であった蕭明(しょうめい)が、「臨機応変」と発したことが由来とされています。 蕭明が軍隊を率いて敵を取り囲んだのにも関わらず、蕭明はその後何の動きも見せなかったそうです。 それを見かねた部下たちが、攻略法を提案するのですが、そこで蕭明は「吾自ら機に臨みて変を制す。」と言ったそうです。 「私は自分でしっかり状況把握し、その時その時の変化に対応するんだ。」という意味があります。 これが、「臨機応変」の語源だとされているのです。 二つ目は、中国の歴史書「旧唐書」です。 「旧唐書」とは、中国の唐の成立(618年)から滅亡まで(907年)を記した歴史書です。 旧唐書の仲の「郭孝恪伝」の中に、唐の軍人である郭孝恪が唐の皇帝太宗に進言した言葉の中に、「臨機応変」という言葉が含まれていたそうです。 「世充日踧月迫、力盡計窮、懸首麵縛、翹足可待、建德遠來助虐、糧運阻絕、此是天喪之時。請固武牢、屯軍汜水、隨機應變、則易為克殄」 三つ目は、中国の歴史書「宋史」です。 「宋史」とは、中国の「宋」という時代を記した歴史書です。 宋史の中の「蕭資伝」という書物に、下記の言葉が記されています。 「資、性和厚にして、機に臨み変に応じ、将士を輯睦し、細務を総摂す。」 このように、「臨機応変」の出典には諸説がありますが、共通して言えることは中国の歴史書に記されている言葉ということです。
「臨機応変」は良い意味で使い、悪い意味で使うのは誤用となります。 例えば、人を褒める言葉として使われたりします。
などの言葉と一緒に使われることが多いです。 「臨機応変」自体は敬語ではないので、他の敬語表現と一緒に使います。 「臨機応変の○○」「臨機応変な△△」の形で使ったり、「臨機応変に」と副詞的に使うこともできます。
例文
「臨機応変」は自己PRでも使える言葉です。 履歴書や面接などで、自分の長所をアピールする際に、「私の強みはいかなる時でも臨機応変な対応ができることです」などという形で使います。 特に接客業などでは臨機応変な対応が求められます。 マニュアル通りに動くことが必ずしも正解ではなく、顧客のニーズを読み取りいかに寄り添ってあげられるかが重要になります。 また、「臨機応変」は座右の銘としても人気な言葉です。 「臨機応変」は基本的にはポジティブな意味で使いますが、時に「臨機応変」なことが短所になりうることもあります。 「臨機応変」を別角度で考えると「計画性に欠ける」といった見方をすることができるためです。 臨機応変な対応ができるためには、しっかりと備えておくことが大切なのです。
例文
「臨機応変」の類語に「柔軟」があります。「じゅうなん」と読みます。 「柔軟」は、「考え方に融通性があり、その場に応じて素直に対処できること」です。 「柔軟」には「やわらかい」「しなやか」という意味もあり、人の動作だけでなく心の動きや考え方にも使う言葉です。 基本的には「臨機応変」と同じ意味ですが、「柔軟」の方が広義です。 「柔軟」はただその場の対応だけではなく、考え方、立場、習慣などにとらわれない行為者の素直な性格まで含まれています。 「柔軟」は性格や態度、考え方に対しても使える言葉です。「臨機応変」は性格などに対して使うことはありません。 つまり、柔軟な人が臨機応変に対応できるということです。
「臨機応変」に最も意味が近い言葉に「即応」があります。 「そくおう」と読み、「その場の条件や状況、目的などにうまく合うこと」という意味があります。 「即」には「直ちに」、「応」には「こたえる」という意味があります。 何かが起きたら直ちに対応するというニュアンスで使われます。
「臨機応変」の類語に「当意即妙」という四字熟語があります。 「とういそくみょう」と読みます。 意味は「その場の状況や変化に適応してすばやく機転をきかせること」です。 ほぼ同義で使われる言葉ですが、「当意即妙」と「臨機応変」には2つの違いがあります。 まず一つ目は、「当意即妙」は心の動きに対して、「臨機応変」は行動そのものを表す言葉です。 よって、「当意即妙な行動」や、「彼女の主張は臨機応変で、全員が納得した」のような使い方は誤用になります。 また、「当意即妙」は「即座に」と瞬間的な心の動きを表現するのに対し、「臨機応変」には瞬発性な意味は含まれていません。 二つ目の違いは、場面や対象の数です。 「当意即妙」は特定の場面に対しての心の動きに対して、「臨機応変」は複数の状況に応じた行動を表します。
「ゆうずうむげ」と読みます。 「融通無碍」の意味は、「考え方や行動が何ものにもとらわれることなく、自由に対応できること」です。 「柔軟で融通無碍な態度」「融通無碍に対処する」などと使います。 「融通」は「その場その場で適切な処置をすること」という意味があり、「融通が利く」などと使います。 「無碍」は「何の障害や妨げがなく、自由自在であること」という意味があります。
「自由に変化できる」といった意味での類語は「変幻自在」です。 「へんけんじざい」と読みます。 意味は「自由に現れたり消えたり,形を変えたり変化することができること」です。 「変幻」は「素早く現れたり消えること、変化が速いこと」という意味があります。 「自在」は「思うままになること」という意味があります。
「適切な判断を下す」といった意味での類語です。 「てきざいてきしょ」と読みます。 意味は「人の能力や適性などを考慮し、ふさわしい地位や仕事につけること」です。 「適材」は「ある仕事に適した才能や能力を持つ人」、「適所」は「ふさわしい場所」という意味です。 例えば「適材適所に人員を配置する」などの形で、主にビジネスの人事や採用などで使われることが多いです。
「臨機応変」はよい意味で使う四字熟語ですが、悪く言えば無計画・無責任とする見方もあります。 「臨機応変」と同じ意味だがネガティブな意味合いで使う類語に「朝令暮改」があります。 読み方は「ちょうれいぼかい」です。 意味は「法令や命令などが次々と変わり、定まらずあてにならないこと」です。 「朝令」は「朝に命令を出すこと」、「暮改」は「その日の夕方に訂正、変更すること」という意味があります。 「ちょうれい」を「朝礼」と書くのは誤用です。
「臨機応変」と同じ意味だが、ネガティブなニュアンスで使う類語に「行き当たりばったり」があります。 読み方は「いきあたりばったり」です。「ゆきあたりばったり」とも読みます。 「行き当たりばったり」の意味は、「今後のことをあまり深く考えず、その場その場のなりゆきに任せること」です。 「行き当たりばったり」という言葉は、「行き当たり」+「ばったり」の組み合わせで出来ています。 「行き当たり」は「進んでいった先でさらに先に進みにくい場面につきあたる」という意味です。 「ばったり」は「物事が急に途絶えるさま」という意味です。 これらの言葉を組み合わせると「物事が行きづまり途絶えてしまう」という意味になります。 この意が転じて、「事前の準備なしに、なりゆきに任せること」という意味となります。
「行き当たりばったり」と同様ネガティブな意味合いで使う慣用句に「その場しのぎ」があります。 意味は「なんとかその場をごまかす、うまく取り繕う」です。 「しのぐ」には「満足のいかない方法で耐え忍んで何とか困難な局面を切り抜ける」という意味があります。 また、同義で「その場逃れ」と言う表現もあります。
「用意周到」は「事前にしっかりと準備する」といった意味で「臨機応変」の反対語になります。 「よういしゅうとう」と読みます。 「用意周到」は「準備が十分に整っていて手抜かりのないこと」という意味があります。 「用意」には「物事を行う前に、予め準備すること」という意味があり、「周到」は「細かい所まで注意が行き届いていて抜けや漏れがないこと」という意味があります。 「しゅうとう」を「周倒」と書くのは誤りです。
「すぐに決断できない」といった意味での対義語です。 「ゆうじゅうふだん」と読みます。 意味は「ぐずぐずして物事の決断が鈍いこと」です。 「優柔」は「ぐずぐずしてはっきりしないこと」、「不断」は「決断力がないこと」という意味があります。 「ふだん」を「普段」と書くのは誤りです。
「融通や応用が利かない」といった意味での対義語に「杓子定規」という四字熟語があります。 読み方は「しゃくしじょうぎ」です。 「杓子定規」の意味は「何でも一つの形式に当てはめて融通や応用が効かないこと」です。 主に人の性格を表す際に使います。 基本的には「柔軟性に欠ける」といったニュアンスでネガティブな表現で使うことが多いです。
「臨機応変」の英語として「Case by case」を使う人がいます。 意味は「個々の状況に応じて、適切な対応をすること」です。 「case by case」は和製英語でネイティブは使わない表現です。
直訳すると「状況に応じて行動する」となります。 「Act」は動詞で「」という意味があります。 「according to...」で「...に応じて」という意味です。 circumstanceは「状況」という意味があり、「様々な状況でも」と複数形で使います。 「occasion」や「situation」などにも「状況」という意味があるので、
などの形で使うことも可能です。
「play it by ear」を直訳すると「耳で聞いて演奏する」となります。 元々は「楽譜を見ないで即興で演奏する」という意味があり、その意が転じて「臨機応変にやる」という意味で使われるようになりました。
「ad hoc」はラテン語で「その場限りに、その場しのぎに」といった意味があります。 英語に訳すと「for this」となります。 日本ではITや医療用語で使われることがあります。
「柔軟性や順応性がある」という意味合いのある英語に「flexible」があります。 「フレックスタイム制」のフレックスは「flexible」が由来です。 ちなみにフレックスタイム制は和製英語で、英語ではflexible working hourと言います。 「flexible」は形容詞で、人や物に対して使います。
「新しい環境に順応する、慣れる」というニュアンスでは「accomodate」を使います。
という形で使います。 また、「accommodate」には他にも「収容する、宿泊させる」といった意味もあります。
ビジネスでは臨機応変な対応が求められることが多々あります。 場面や状況に応じてテキパキ動くことができれば、周囲からの信頼が増します。
多くの企業にマニュアルが用意されていると思います。 新入社員はまず最初にマニュアルを覚えることが仕事です。 マニュアルが「基本」だとすると、マニュアルに書かれていない臨機応変な対応は「応用」となります。 基本なしに応用を効かせることは出来ませんので、マニュアルのインプットは欠かせません。 どんな仕事であれ、仕事の手順はしっかりと覚えるべきです。 「自分は発生ベースに対応するからマニュアルは見なくていいや」という考えは間違いです。 そういう人ほど、臨機応変な対応が求められる時に焦って冷静に対応することができなくなります。
臨機応変な対応ができるためには、経験の数がものを言います。 たくさん経験を積んでおけば、どんな状況になっても冷静に物事を判断し対応することができるからです。 経験を積むためには、自らが積極的になって色々なことに挑戦することが大切です。 例え失敗しても、何が原因で失敗したのか、今後同じことで失敗しないためには何ができるかなどを考えることで経験値が高まります。
臨機応変に動くためには、しっかりと目的を把握することが大切です。 なぜその仕事を行うのか、何のために必要なのかを理解していないと、適切に対応できないことがあります。 例えば、上司から「資料のコピー100枚お願い」と頼まれたとします。 ここでただ言われれた通りに100枚コピーをするのでは「臨機応変な対応をした」とは言い切れません。この際に「この資料は何に使うのか」という目的を把握することが大切です。 会議用の資料ということが把握できれば、ホチキス留めをしておくことができ、それこそが「臨機応変な対応」と言えます。
臨機応変な対応ができるためには、時間の余裕と心の余裕が大切です。 まず、時間に余裕がなければ目の前の仕事をこなすだけで精一杯になってしまいます。 時間に追われてばかりで気持ちが焦ってしまい、柔軟に対応することが難しくなります。 時間に余裕を持つためには、
ことが大切になります。 時間に余裕を持つことができれば、心の余裕も生まれるはずです。 心の余裕ができれば、視野が広がり他人のことも考慮することができるでしょう。
いかがでしたか? 「臨機応変」について理解は深まりましたか? 最後に「臨機応変」の意味と使い方に関してまとめたいと思います。 「臨機応変」は「りんきおうへん」と読みます。 「臨機応変」とは文字通り、「機に臨み、変に応じる」という意味です。 つまり、「その場・その時に直面し、状況の変化に対応していく」ということを指します。 「臨機応変の対応」「臨機応変に動く」などとよい意味で使います。