「います」「おります」という表現をご存知でしょうか。「私には子供が二人います」「日頃からお世話になっております」などと使います。日常会話でもビジネスシーンでも使われることが多いです。「います」と「おります」はどちらも同じ意味ですが、どのように使い分けるのでしょうか。そもそも区別する必要があるのでしょうか。また、「しております」という表現もありますが、どういった意味なのでしょうか。よく使う表現でも、意外と分からない点が多いですよね。そこで今回は「います」「おります」の使い方、敬語の種類、「しております」「〜せていただいております」について解説していきます。「います」「おります」を正しく知って、上手く使い分けましょう!
「います」は、動詞「いる」に丁寧語「ます」が付いた形です。 「おります」は、「いる」謙譲語「おる」に丁寧語の「ます」が付いた言葉で、「〜(動詞)て(で)おります」の形で聞き手に対して丁重さを表現することができます。一種の謙譲語であり、「謙譲語Ⅱ」や「丁重語」とも言われています。動作の主体に対してへりくだるのではなく、ただ単に聞き手に丁重を示すだけの表現なので、物や事に大して幅広く使うことができます。 「いる」も「おる」も漢字で「居る」と表します。ですので、「いる」と「おる」はどちらも「動くものが存在する」という意味です。「子供は保育園にいます」「課長は会議室におります」などと言います。 敬語の5種類をおさらいします。
尊敬語・・・相手の動作や事物などを高めて言い表すことによって、敬意を表現する語 謙譲語・・・自分や身内の動作や事物などをへりくだって言い表すことにより、相手を立てる語 丁重語(謙譲語の一種、「謙譲語Ⅱ」とも)・・・高める相手がいなくても、自分の動作をへりくだることで丁重な表現をする語 丁寧語・・・話し手が高める相手の有無に関わらず敬意を直接表したり、ものごとを丁寧に表現する語 美化語(丁寧語の一種、「丁寧語Ⅱ」とも)・・・表現をより上品にするための配慮を表す働きを持つ語
よって、「います」は丁寧に表現したいときに使う敬語であるのに対し、「おります」は自分をへりくだるときに使います。 「います」よりも「おります」の方が、自身をへりくだった目上の相手に対して敬意を含んだ敬語表現となります。 例えば、「◯◯さんはいますか?」と聞かれた場合。同等や目下の人から聞かれたら「います」、目上の人から聞かれたら「おります」と答えます。
「います」は丁寧語ですからビジネスシーンで使用しても誤りではありませんが、ビジネスシーンでは謙譲語の仲間である「おります」を使うことが多いです。「おります」の方が「います」よりもさらに丁寧な響きがあり、ビジネスの場には適しています。 「います」は単に「存在していること」を表す語ですが、「おります」は「存在していること」を敬意を持って伝えます。 「思っております」「考えております」などと使います。他にも、自分や身内の動作でなく、「寒い日が続いております」「あの場所には野良猫が多くおります」などとものごとに関して使う場合もあります。 「いつもお世話になっております」「お陰様で元気でやっております」などビジネスシーンでは挨拶の言葉として使うことも多いです。 「思っています」「考えています」「続いています」と言うよりも「おります」とした方が、丁寧に聞こえますよね。 「おります」は同等や目下の人に使うにはやや抵抗があるかもしれませんが、目上の人以外にも使用できます。 主に、ビジネスメールや手紙で「お世話になっております」「元気に暮らしております」などと用います。 ただ、相手や状況によっては嫌味であると捉えられてしまう恐れもあるので、十分注意しましょう。
上記でも説明したように、「おります」は「◯◯が存在している」という意味です。 「〜ております」とすることによって「存在している」という意味ではなく、動作や状態が継続することを表す補助動詞となります。「しております」は動詞「する」+「おります」なので、「行為が現在進行中・継続中である」ということを表します。 「しています」でも意味は通じますが、目上の人に対しては「しております」を使います。 「ご無沙汰しております」「元気にしております」「恐縮しております」「楽しみにしております」「お待ちしております」「承知しております」「感謝しております」などと様々に使うことができます。 「してあります」と言ってもよいが、「しております」の方が丁寧です。 「あります」は動詞「ある」+丁寧語「ます」で成り立っています。
二重敬語とは、同じ種類の敬語を1つの文章で2つ使ってしまうことをいいます。 「させていただいております」=動詞「する」+謙譲語「いただく」+丁重語「おります」の形なので、二重敬語ではありません。 丁重語は謙譲語の一種なので、二重敬語のような気もしますが、敬意を示している対象が違うので、二重敬語ではないということができるでしょう。 例えば、「働かせていただいております」の場合、「いただいて」は雇用主に対する敬意、「おります」はこの会話の聞き手に対する敬意を示しています。 また、この表現は「さ入れ敬語」も注意が必要です。「さ入れ敬語」とは、本来助動詞の「せる」を付けなければいけない動詞に「させる」を付けてしまう誤った表現です。 よって、「働かさせていただいております」などは誤った敬語になります。「働かせていただいております」が正しい表現になります。 しかし、「〜せていただいております」は少しクドいと感じる人がいるのも事実です。とても丁寧な表現ではありますが、一方で冗長でもあります。したがって、「働かせていただいております」よりも「働いております」の方がシンプルでスマートに聞こえます。
例文
「いたしております」=「する」の謙譲語「いたす」+丁重語「おります」の形なので、二重敬語ではありません。 この場合の「おります」は「しております」ということなので、動作の継続を表します。 「しております」と同義ですが、謙譲語ということもあって「いたしております」の方が丁寧になります。 「おります」は社内の目上の人に使うことが多いですが、「いたしております」は社外の目上の人やお客様に対して使うことが多いです。馴染みのある目上の人に「いたしております」を使うと、かしこまりすぎてかえって違和感を与えます。 「申し上げております」=「言う」の謙譲語「申し上げる」+丁重語「おります」の形なので、二重敬語ではありません。 「お待ち申し上げております」という形で使うことが多いです。「待っています」という意味です。 親しい人や目下の人にはそのままで良いですが、目上の人やお客様には「お待ち申し上げております」を使いましょう。 よくお店に行ったときなどに「またのご来店をお待ち申し上げております」「ご来館をお待ち申し上げております」などと言われますよね。 ただ日常会話で、「お待ち申し上げております」を使ってしまうと、相手に対する敬意が強い表現のため、堅苦しい・冷たい印象を与えてしまう可能性があります。一般的には「お待ちしております」を使うのが良いでしょう。 自分のことに関して使うので、「社長が申し上げております」などとは言いません。
例文
「います」「おります」を尊敬語にすると「いらっしゃる」「おいでになる」になります。 尊敬表現なので、自分自身や身内に関しては使うことができません。相手の動作や事物などに対して使います。 例えば、相手の名前を伺う場合に「◯◯様でいらっしゃいますね」と言います。ここで「◯◯様でいますね」「◯◯様でおりますね」などと言ってしまうと、敬意を表現できません。 「いらっしゃる」を使うことによって、敬語表現を用いて相手の名前を確認したということになります。 また、目上の人にこちらへ来てくださいということを伝える場合は「いらしてください」「いらっしゃってください」を使ってお願いします。 よくある間違いとして「いらっしゃる」「おいでになる」を自分や身内に使ってしまうことがありますが、相手からしたらものすごく失礼なので注意しましょう。 例えば、「しばらくしたら、担当の山田がいらっしゃいます」「では、明日の午前10時に御社へおいでになります」などは誤用です。逆に、相手に関して「◯◯さんはおりますか」と使うのもNGになります。
例文
「おられる」は「いる」の尊敬語です。 「おられる」には尊敬表現として様々な解釈があります。 「おられる」は謙譲語「おる」+尊敬を表す助動詞「られる」で成り立っているので、誤りと言われています。 ただ、地域や個人によっては差があり、一般的に使われていることも多いでしょう。 関西地方では、「いる」の代わりに「おる」がよく使われています。 ですので、「いっらしゃる」という言葉の代わりに「おられる」も使われていることが多いです。 一方で、関東地方では謙譲語+尊敬だと意味がおかしいという理由で、使用することに抵抗を示す人が多くいます。 また、「おる」は「〜しておる」という形でも用いられていて、謙譲表現というよりも「いる」を少々改めた言葉と思っている人がいます。「おる」に「られる」を付けたところで、おかしなところはないと考えられています。 「おられる」は決して間違いであるとは言えませんが、人によっては誤りであるという意識が強いです。 「おられる」を使用しても問題ありませんが、なるべく「いらっしゃる」「おいでになる」に言い換えるようにしましょう。
「います」「おります」について理解できたでしょうか? ✔︎「います」も「おります」も「存在している」ことを意味する ✔︎ 目上の人には、「います」よりも丁寧な「おります」を使う ✔︎「しております」とすると「ものごとや動作の継続」を表す ✔︎「います」「おります」を尊敬語にすると、「いらっしゃる」「おいでになる」となる
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