「奇特」という言葉をご存知でしょうか。「奇特な人」「奇特な行為」などと使います。あまり聞き馴染みがない、という人が多いかと思います。日常会話ではあまり使われる言葉ではありません。実はこの「奇特」は、誤用されていることが多い表現です。間違った意味で使われていることがほとんどなので、意味をしっかりと理解して使う必要があります。そこまで頻繁に使う言葉ではないため、使い方を覚えられるか不安かもしれませんが、知っておけばすぐにでも使えます。そこで今回は「奇特」の意味や使い方、「殊勝」との違い、類語について解説していきます。「奇特」を正しく知って、上手く使えるようにしましょう!
「奇特」は「奇妙で珍しい。風変わりなさま。変な様子」という意味で多く使われていますが、これは誤りです。 例えば、「今日電車の中で、女子高生の制服を着たおじさんがいたんだよ〜。本当に奇特な人だよ」などとは使いません。「奇特な人」は「奇妙で変わっている人」という意味ではないのです。 「奇」という漢字が、「奇行」「怪奇現象」「猟奇的」「奇妙」「奇抜」「珍奇」などと使われていることから、「奇特」も「風変わりな。変わっている」という意味だと勘違いされています。 他にも、人気漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』で変わった人間を特集するコーナーが「奇特人間大賞」と呼ばれていたことから、奇特=変わっている、という意味に捉えられたのではないかと言われています。 文化庁が発表した『国語に関する世論調査』でも「奇特」を、「奇妙で珍しい」という意味を選んだ人が29%で、本来の意味を選んだ人が49%という結果が出ました。 「奇特」は間違えて覚えている人が多い言葉ですが、実際にはどのような意味なのでしょうか?
「奇特」の本来の意味は、 1.心がけや行動が優れていて褒めるべきこと。行いが感心なさま。あまりにも優れていて珍しいこと 2.不思議な効力。霊験。超人間的な力 です。 「きとく」もしくは「きどく」と読みます。一般的には、「きとく」と読むことが多いです。 「奇」は「普通の程度をはるかに超えてすぐれている」、「特」は「 他と異なってそれ一つだけのさま。それだけ目立って著しいさま」を意味します。 「奇特」には2つの意味がありますが、主に1つめの意味で使うことが多く、2つめの意味ではほとんど使いません。 賞賛するほど優れている行いに感心すること・言動や心構えが優れていて褒めることを表します。 「奇特」は褒め言葉に値します。 例えば、「君は奇特な人だね」は「感心するほど特別に優れている人柄」という意味です。 「奇特者」ともよく言いますが、これは「行為が優れて感心な人。神妙な人」を意味します。 ただ、意味が勘違いして使われてることが多いということもあるので、「奇特」は目上の人にはなるべく使わないようにしましょう。
「奇特」に非常に似ている言葉に「殊勝(しゅしょう)」があります。 「殊勝」の意味は、 1.特に優れていること、非常に立派なこと、格別 2.神々しいこと、おごそかであること、心打たれること、そのさま 3.心がけがしっかりしていること、健気なさま、感心なさま 4.もっともらしいさま、とってつけたような様子 と、広くあります。 どれも似たような意味を持っていて、主に人の様子や態度が良いことを指します。 「殊勝」は「心がけや行動が健気なさま。感心なさま」 「奇特」は「心がけや行いが優れて褒めるべきものであること」 「殊勝」と「奇特」はほとんど同じ意味で、違いという違いはありません。
例文
神妙 (意味:けなげ。殊勝) 「いつも神妙な心がけを気をつけている」 感心 (意味:心を動かされるほど立派であるさま。褒めるべきであるさま) 「本当に感心な子だね」 立派 (意味:文句のつけようもなく十分なさま) 「立派に成し遂げることができた」 健気<けなげ> (意味:心がけや態度がしっかりしているさま) 「困っている人を助けるなんて健気な子だ」 感服 (意味:深く感じて服従または敬服すること) 「見事な演奏に感服した」 素晴らしい (意味:大層優れていて、無条件に褒め称える有様だ) 「素晴らしく綺麗な青空が広がる」 恐れ入る (意味:相手の力量や実力に圧倒され、屈すること) 「恐れ入りました!」 忠実 (意味:まごころを尽くしてよくつとめること) 「忠実な部下を持つ」 誠実 (意味:他人や仕事に対して、真面目で真心がこもっていること) 「彼は誠実な人柄である」 詠嘆 (意味:声に出して感嘆すること) 「景色の素晴らしさに詠嘆の声を挙げること」
平凡 (意味:特に優れたところがなく、並なこと) 「平凡に暮らす」 普通 (意味:どこにでも見受けるようなものであること) 「普通の成績である」 月並み (意味:平凡なこと。ありきたりなこと) 「月並みな台詞である」 陳腐<ちんぷ> (意味:ふるくさいこと。ありふれていて平凡なこと) 「陳腐な趣向である」 人並み (意味:一般の人と同様の程度や状態であること) 「人並みの暮らしをおくる」 凡庸<ぼんよう> (意味:優れたところのないこと。なみなみ) 「凡庸な人物である」 平坦 (意味:土地の平やかなこと。また、そのようなさま) 「人生は平坦ではない」 尋常 (意味:普通。通常。当たり前) 「尋常な手段では解決しないだろう」 当たり前 (意味:ごく普通であること) 「当たり前の服装をしている」 ありきたり (意味:もとからあること。普通にあって珍しくないこと) 「ありきたりな挨拶である」
古語においての「奇特」は「非常に珍しい。不思議だ」を意味します。 主に、「奇特なり」と形容動詞として使われています。 本来の意味とは違い、古語における「奇特」は「不思議なさま」を表します。 「奇特」を「変わっている。風変わり」という意味で使うのは間違いですが、古文においては間違いではありません。 「奇特」と名詞で使う場合は、「(神仏の)不思議なしるし。霊験」を意味します。 こちらの意味は今でも含まれていますが、ほとんど使うことはありません。
苗字の場合も「きとく」あるいは「きどく」と読みます。 「奇特さん」は山梨県・静岡県・神奈川県・千葉県・埼玉県に多い苗字です。 全国の「奇特さん」は、推定人口約140人と言われています。 ちなみに、一番多い「佐藤さん」の推定人口は約189万人とされています。 このことから、「奇特さん」は「珍しいほど優れている」という意味通り、非常に稀な名前であることが分かります。
「奇特」のように「素晴らしい」を意味する英語単語はたくさん存在します。
などがあります。
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「奇特」と同様に、よく誤用されている言葉があります。間違いが多い言葉について紹介します。
「琴線に触れる」は<きんせんにふれる>と読みます。 「琴線に触れる」の意味は「人間の心の奥深くにある感じやすい心情に触れて感動すること、感動を与えること」です。 大きな感動をしたり、強く感銘を受けたり、日々の小さな驚きや喜びではなく心の奥から感動し共鳴することを表します。 最近では、「琴線に触れる」は「怒りを買うこと」の意味で誤用されています。 誤用の原因としては、「逆鱗に触れる」と「触れる」が同じことから混同してると考えられています。 「逆鱗に触れる」とは「目上の人などの気持ちにさからって怒りを買うこと」です。 しかし「琴線に触れる」に「怒りを買うこと」といった意味はありません!
例文
「斜に構える」は<しゃにかまえる>と読みます。 「斜に構える」の意味は、 1. 剣道で刀を斜めに構える 2. 改まった態度を取る。身構える 3. 皮肉で不真面目な態度で臨む です。 1つ目の意味が語源で、もともとは2つ目の意味でした。3は誤用として使われ始めましたが、今では定着しつつあります。 「斜に構える」は物事に正対せず、皮肉やからかいなどの態度で臨むことを表す時に使います。 「斜に構える」は誤用されていたものの、それが浸透して今では誤った意味で使われることが多いというパターンの言葉です。 「斜に構える」は誤解を招く可能性が高い言葉なので、なるべく「根性曲がりの」や「偏屈な」などと類語に言い換えるのが無難でしょう。
例文
「御の字」は<おんのじ>と読みます。 「御の字」の意味は、 1.最上のもの。極上のもの。結構なもの 2.ありがたい、しめたなどの意 です。 主に、2つめの「ありがたいこと。満足なこと」という意味で使うことが多いです。 非常に結構であること、望みが叶って十分満足であることを表す場合に「御の字」を使います。 「今回は50点取れれば御の字だ」と言った場合は、『30点から40点あたりかな』と思っていた試験で50点を取れたことを表します。自分の予想よりも良い結果を残せたことを意味します。 「御の字」は「まあまあ悪くない。良くはないがそこそこ」という意味で使われていることが多いですが、間違いです。 「御の字」は妥協を表す語としては用いません!
例文
「失笑」の意味は「(笑ってはならないような場面で)おかしさに堪えきれず、吹き出して笑うこと」です。 不意を突かれ、我慢しきれずについ笑ってしまう様子・笑いがこみ上げてきて堪えられないさまを表します。 「失笑」は「笑いを失う」と書くため、「笑いも出ないほど呆れる」「笑いを通り越して呆れてしまう」「あざわらう」ことを表していると思っている人が多いですが、間違いです。 「間抜けな姿に失笑する」などと、「失笑」は言動や行動がおかしい様子を馬鹿にしたように『フッ』と笑う、冷淡な笑みを浮かべるといったイメージが強いですが、誤用になります。 「失笑」には相手を見下すといった、ネガティブな感情は含まれません。
例文
「奇特」について理解できたでしょうか? ✔︎「奇特」を「風変わりなさま。変わっているさま」という意味で使うのは間違い ✔︎「奇特」は「心がけや行いが優れて褒めるべきものであること。行いが感心なさま」が正しい意味 ✔︎「奇特な人だね」などは、決して悪口ではなく、褒め言葉として捉えることができる ✔︎「奇特」の類語には、「神妙」「感心」「素晴らしい」などがある