「後顧の憂い」という言葉をご存知ですか?日常生活ではあまり耳にすることがない表現なので、意味や使い方を理解しているという人は中々いないのではないでしょうか。今回は、「後顧の憂い」の正しい意味や使い方を例文付きで紹介します。また、類語や英語表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「後顧の憂い」は、「こうこのうれい」と読みます。 「後」は音読みで「ゴ・コウ」、訓読みで「のち・うしろ・あと・おくれる」と読みます。 「顧」は音読みで「コ」、訓読みで「かえりみる」と読みます。 「憂」は音読みで「ユウ」、訓読みで「うれえる・うれい・うい」と読みます。
「後顧の憂い」は「後日の心配」を意味する慣用句です。 少し古風な響きがありますが「後顧の憂え」ともいいます。 「後日の心配」といわれてもしっくりこない人が多いと思いますので、「後顧の憂い」を分解して意味理解をしていきたいと思います。 「後顧」・・・後ろを振り向くこと 「憂い」・・・心配事や不安な気持ち です。 「後顧の憂い」は、「後ろを振り向く」という意味から分かるように、元々は「旅立つ時に残された家族を不安に思う気持ち」を表現した慣用句です。 昔の連絡手段は手紙だけですし、帰宅するのにも長い時間がかかったわけですから、当然ですよね。 そこから転じて、現代では「将来予測される悪い事態に対する心配」という意味で使われます。 実際に後ろを振り返るわけではありませんが、「後顧」は「後日。のちのち。あとにも残る」というニュアンスの比喩になります。
『後顧之憂』は、昔の逸話を元にしてできた言葉です。 中国の故事である魏書「李沖伝」には、 「我をして、境を出し、後顧の憂い無からしむ」という一文が記されています。 これは、現代訳にすると「李沖は私が国の外に出るときに、後の心配がないようにしてくれた」となります。 この一文から「自分がいなくなった後の心配・気遣い」という意味で「後顧之憂い」という言葉が使用されるようになりました。
「後顧の憂い」は、
など否定文で使うことが多いです。 「後顧の憂いなく」は、「後や未来に対して心配事がない」という意味になります。 例えば、自分のお店を持っていても誰も後継者がいなかったら「自分が死んだらこのお店はどうなってしまうのだろう?」と将来が心配になってしまうことでしょう。 でも、信頼できる後継者がいたらどうでしょうか。 「自分が死んでしまっても後継者がいるから大丈夫だな」と思えますよね。 この未来に対する心配事がない状態を「後顧の憂いがない」と表現することができます。
例文
「後顧の憂いを断つ」は「懸念事項を今のうちに払拭する」という意味で使用される言い回しです。 「何かこの先心配事となって、つっかかってしまいそうなことを無くす」という場面で「後顧の憂いを断つ」と言います。 「後顧の憂いを絶つ」と表記してしまう人がいますが、これは誤用です。 「絶つ」は、「続いていた物を半永久的に終わらせる」という意味で使用します。 「断つ」は、「続いているものを途中で切る」という意味で使用されます。 「憂いを断つ」は、心配事になりそうなことを「断ち切る」という意味なので「絶つ」ではなく「断つ」を使用するのが正しい表記になります。
例文
「後顧の憂い」の類語は、
などがあります。 どれも、心配だったり不安で気にかかっている様子を言い表す言葉です。
例文
「後顧の憂いなく」の類語は、
などがあります。 すべて「気がかりなく、落ち着いた心の状態」を言い表す言葉です。
例文
「後顧の憂い」の直訳は英語にはありません。 単に「心配」という意味を英訳するしかありません。 「free of worry」で「心配なく」という意味で副詞的に使えます。 「worry-free」とすると「安全な」という意味の形容詞になります。
I left for America free of worry.
後顧の憂いなく米国に発った。
「without anxiety」の方が一般的な表現です。 「心配なく」という意味です。
いかがでしたか? 「後顧の憂い」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「後顧の憂い」の読み方は「こうこのうれい」 ✓「後顧の憂い」の意味は「後日の心配」 ✓「後顧の憂いなく」など否定文で使うことが多い ✓「後顧の憂いを絶つ」ではなく「後顧の憂いを断つ」なので誤用に注意