「往々にして」という言葉をご存知ですか?「〜は往々にしてございます」など耳にしたことがある表現なのではないでしょうか。今回は「往々にして」の正しい意味と使い方を例文付きで解説します。また、「往々にして」の類語や対義語、英語表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「往々にして」は「おうおうにして」と読みます。 「往」は音読みで「オウ」と読みます。 「々」は「前の言葉を繰り返す」という意味の記号ですね。 「踊り字」「繰り返し符号」「重ね字」と呼ばれています。
「往々にして」の意味は、「そうなることが何度も繰り返してある」です。 「往々にして」は繰り返して起こることを表しているだけなので、頻度は「たまに」から「よく」まで幅広い点に注意です。 極端な例をあげれば、年に一度しか起こらないことでも10年間では10回起こるわけなので「往々にして」と表現することが可能です。 どれぐらいよく起きることなのかは会話の前後で伝える・読み取る必要があります。
「往々にして」を品詞分解すると、 名詞「往々」+格助詞「に」+サ変動詞「す」の連用形+接続助詞「て」 です。 「往々」という言葉は「往」という漢字が二つ重なっています。 「往」は「往く(いく)」とも読み、「(目的地に)向かう。進む」という意味もあります。 「往路」「往診」「往復」などの熟語で使われていますよね。 「往」は「いく」という意味から転じて時間に対しても使い、「すぎさったこと。過去。昔」という意味も持ちます。 「往年」「往時」「既往」などの熟語で使われています。 時間を意味する「往」を二回繰り返すことで「あの時もこの時も」と、一定期間中に何かが繰り返す発生する意味を持つようになりました。
「往々」には、「あちこち」という意味で使用されることもあります。 上述したように「往」には、「進む」「先に向かう」という意味がある漢字です。 したがって「往々」と重ねて使うことで色々な場所や方向を表したり、色々なところへ向かう様子を表す言葉になります。
といった言葉と同義になりますが、「往々」は頻度を表す言葉として使用されるのが一般的です。
「往々にして」は、ビジネスシーンなどかしこまった場面で使用します。
といったように、ネガティブなことが続くことを伝える場合に使用する表現です。 「往々にしてある」は「よくあることだ」「可能性がある」ということを指します。
例文
「往々にしてある」の敬語は「往々にしてあります」です。 「ます」が丁寧語なので、「往々にしてあります」でもすでに敬語です。 しかしビジネスシーンで使う場合はより丁寧な「往々にしてございます」を使うのがベターです。 ビジネスシーンでは、取引先など目上の人に対して「ございます」を使うことによって相手に丁寧な印象を与えることができます。
例文
「往々」は「往々にして」の形で使うことが多いですが、「往々に」の形で使うこともできます。 「往々に」の場合、「往々に〜...ということがあります」といった使い方をします。 「往々に」でも意味は同じです。
例文
「往々にして」は、上述しているようにマイナスな事が繰り返しおこることに対して使用される表現です。 したがって、「往々にして」の後にポジティブな内容を続けてしまう使い方は誤用です。 例えば、「往々にして成功することがある」などというのは間違いです。
「往々にしてよくある」という表現をよく見聞きしますが、厳密には重語(二重表現)です。 ただかなり一般的に使用されているのも事実で、慣習的に許容ともいえます。 よって、ビジネスシーンなどかしこまった場面での使用は避ける程度に注意しておけばよいでしょう。
「得てして」は、「ある事態になる傾向にある」という意味で副詞的に使います。 「得(え)」は副詞で「可能」という意味で古くから使用されていた言葉です。 「得てして」は「〜になる可能性がある」というのが原義で、そこから転じて「〜になる傾向にある」という意味で使われています。 「傾向があること」と「繰り返して起こること」は似ていますが、厳密には違います。 「傾向」とは「性質や状態が一定の方向にかたむくこと」を指し、必ずしも繰り返して発生するとは限りません。 ただし「繰り返して起こる」ということは「その傾向がある」ことになります。 したがって、「往々にして」は常に「得てして」に言い換え可能ですが、「得てして」は必ずしも「往々にして」に言い換えることはできません。 「得てして」もネガティブなことに対して使う点では、「往々にして」と共通しています。
例文
「得てして」の類語には、
などがあります。 これらの表現は「得てして」より弱い傾向、物事が起こる可能性が低いことを示します。 「やや」は、「その状態に進んでいく様」を意味しています。 つまり「ややもすれば」は、何もせずに放置したままにしておくと、ある状態になりそうなさまを表す言葉であるということがわかります。 漢字では「動もすれば」と書きますが、ひらがなで表記されるのが一般的です。 「ややもすれば」も、「往々にして」と同じように「起こってほしくないことが起きてしまう」というマイナスなニュアンスで使用さます。
例文
「往々にして」の同義語は「しばしば」です。 「しばしば」を「たまに」という意味で誤解している人がたまにいますが、「しばしば」は「何度も繰り返される」という意味です。 「往々にして」を、「しばしば〜ということがあります」と言い換えても同じ意味になります。
例文
「時々」には2つの意味があるので注意です。 主な意味は「たまに」で、「まれであるさま」を表します。 例えば、「時々親を訪ねる」などと使います。 2つ目の意味は「ある時間を置いて、繰り返される」「断続的に」です。 例えば、「曇り時々雨」などがそれにあたります。 「時々東京へ行く」の場合、1つ目の意味でも2つ目の意味でも取ることができますが、この使い方の場合は基本的に1つ目の意味でしょう。 「時々」の2つ目の意味が「往々にして」の類語に当たります。
例文
「まま(間間)」は、「時々現れるさま」です。 「たまに」という意味に近く、「頻繁に」というほど多く起こることには使用しません。 「〜ということは間間ある」で、「〜ということは、まれにある」という意味になります。 そうなる頻度は多くはないが、そうなる可能性があるということを伝える場面で使用されます。 日常生活では、あまり耳する言葉ではないでしょう。
例文
「折に触れて」は「機会があるたびにいつも」という意味があります。 「折」には「機会、その際」といった意味があり、一度きりのことに対しては使用することができません。 例えば、「折に触れて連絡いたします」は「その都度連絡します」という意味になります。 「往々にして」は「〜になることがよくある」という頻度を表す言葉として使用されますが、「折に触れて」は「その繰り返し行われること」という意味で使用されるので若干ニュアンスが異なります。 「一度ではなく繰り返し起こること」という点で言えば類語であると言えるでしょう。
例文
「往々にして」より頻度が低いニュアンスの副詞には、
などがあります。 起こりうる頻度としては高くないが、たまに起きるという意味で使用されます。
例文
「全く起こらない」というニュアンスならば、
などがあります。 可能性としてはかなり低いが、起こる可能性があるという場合に使用される表現です。
例文
「往々にして」は繰り返すさまなので、直訳的には「keep repeating...」になります。
She keeps repeating the same mistake.
彼女は往々にして間違う。
「よく」という意味合いならば、
などの単語が使えます。
That sort of thing happens frequently.
そのようなことは往々にして起こる。
「ときどき」という意味合いならば、
などの英語が使えます。
「往々」の意味は、「心が満ち足りない様子」です。 心が晴れず、不平不満がある様子を「往々」という言葉を使用して言い表すことができます。 心が晴れないことに加え、ふさぎ込んでしまっている様子を「怏々鬱々(おうおううつうつ)」という四字熟語で表現することもあります。
例文
「汪々」は、「水の広く深い様子」を言い表す言葉です。 「汪」には、「ひろい・深い」という意味があります。 「々」で「汪」を重ねて使うことで、広くて深い様子を強調しています。 海のように水が広くおおって深い様子を「汪々」という言葉を使って言い表すことができます。 転じて、人の心が広いことを表す言葉としても使用されることがあります。 また、「目元に涙を溜めている」という意味で使用されることもあります。
例文
「嚶々」は、「鳥がお互いに鳴きあっている様子」を言い表す言葉です。 「嚶」という漢字に「鳥が鳴く」という意味があります。 「嚶」を「々」を使用することで重ねているので、「お互いに鳴き合う鳥」を表現する言葉になります。
例文
いかがでしたか? 「往々にして」という表現について理解していただけたでしょうか。 ✓「往々にして」の読み方は「おうおうにして」 ✓「往々にして」の意味は「そうなることが何度も繰り返してある」 ✓「往々」には「あちこち」という意味もある ✓「往々にして間違う」「失敗は往々にしてある」などとビジネスで使うことも可能 ✓「往々に」の形でも使う